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ボッシュ、2019年に48Vのハイブリッドシステムを日本のメーカー向けに納入

NVIDIAとの協業についても紹介

2017年6月8日 実施

ボッシュ株式会社 代表取締役社長 ウド・ヴォルツ氏

 ボッシュは6月8日、東京 渋谷にある本社ビルで「2017年ボッシュ・グループ年次記者会見」を実施した。会場ではボッシュの業績のほか、AIやIoTを利用したネットワーク化事業についての取り組みなどについて紹介した。

ボッシュ株式会社 代表取締役社長 ウド・ヴォルツ氏

 会見に登場したボッシュ 代表取締役社長のウド・ヴォルツ氏は、2016年度の業績や今後の展望について発表。「ボッシュ・グループの2016年度の売上高は2015年度に対して3.6%増の731億ユーロの成長で、3~5%という売り上げ成長目標を達成することができた。そして、アジア太平洋地域の売り上げは前年比8.3%増の208億ユーロとなり、重要な成長要因である。2017年の世界の経済成長は2.8%で長期的な平均は下まわる見込みではあるが、ボッシュ・グループの売り上げ伸び率は3~5%を目指していく。また、日本のボッシュの2016年度の業績は2670億円の売り上げで、円高と中国の経済減速などの影響といったマイナス要因はあったが、車載インフォテインメントシステムや2輪車向けの販売が堅調で、2015年度と比べると横ばいの結果。2017年度はグローバルのボッシュと同じ3~5%程度の成長率を見込んでいる」と述べ、「今後期待される変革は短距離走ではなく、マラソンになると考えている」と、IoTやモビリティのAI化などの分野において、大きな事前投資を行なっていく考えを示した。

 また、電動化や自動化、ネットワーク化についての取り組みも紹介。電動化においては48Vのハイブリッドシステムを2019年に日本のメーカー向けに納入を予定しており、すでに2017年の初めに燃料電池向けの開発チームを新たに立ち上げることを発表している。自動化については2016年にシステム開発グループを日本に設立したことに触れ、システム開発の能力と、自動運転を含む先進技術の開発をそれぞれ強化していくとした。

 ネットワーク化についてヴォルツ氏は、2016年末から日本で開始している事故の衝撃を検知するとボッシュのサービスセンターに自動的に通報されるシステム「eCall」を紹介。車載ファームウェアを無線アップデートする「FOTA」を2019年に日本の自動車メーカーへ向けて提供開始予定であることを発表し、「無線でのアップデートがよりセキュリティを保ったやり方でクルマにも提供されることになる」と話した。

 さらに、駐車にネットワーク化技術を取り入れた「コネクテッドパーキング」について「ドイツだけでなく米国や日本への導入も積極的に検討している」と述べ、「クルマはパーソナルアシスタントとなり、新たにカーナビのシステムなどで車載センサーを使ったほかのシステムとの組み合わせが見込まれる。これからはインフラを使ってクルマとクルマや、クルマと道路の間で通信を行なうといったネットワーク化がされるだろう」と今後について語り、「ボッシュには大手企業の力があり、ベンチャー企業のようなファシリティも存在する。そして日本のボッシュからそのようなベンチャーが始まっている」と締めくくった。

ボッシュ株式会社 代表取締役社長 ウド・ヴォルツ氏による「2016年業績とビジネスハイライトの発表」のスライド
Global Head Bosch Center for Artificial Intelligence クリストフ・パイロ氏

 続いて「ボッシュにおける人工知能研究」についてGlobal Head Bosch Center for Artificial Intelligenceのクリストフ・パイロ氏が講演。AIの学習や自動運転におけるディープラーニングの適用、車両の電動化の際にIoTをベースにした開発を行なった事例などを紹介。

 ボッシュのコネクテッドパーキングについても触れ、「駐車スペースを探す際に、通常だと平均して4.5kmを探し回っている。センサーを活用してどこに駐車スペースがあるのかをクルマやドライバーに知らせてくれるこの技術は大きな時間短縮になり、AIが価値を発揮できる分野であると考えている」と話していた。

 さらにパイロ氏はNVIDIAとの協業についても触れ、「未来のクルマは多くのセンサーなどが搭載されボッシュだけではすべてに対応できないため、クルマのネットワーク化には欠かせないディープラーニング演算ができるNVIDIAとパートナーシップを結んだ。私たちのセンサーと組み合わせ、センサーからのインプットを消化して、アルゴリズムにフィードする。そのことで、誰にとっても生活が改善するのです」と述べた。

 パイロ氏は最後に「将来の製品は認知能力を持ち、人間が求めるものを予測してくるようになると考えている。製品は時間が経つにつれて学習をして、人のニーズに合わせるようになり、価値を増していく。そしてボッシュはAI分野で非常に重要な役割を果たすことになるだろう」と話し、講演を終えた。

Global Head Bosch Center for Artificial Intelligence クリストフ・パイロ氏による「ボッシュにおけるAI(人工知能)の研究開発と事業への活用」のスライド
ボッシュ株式会社 FUJIプロジェクト プロジェクトリーダー 鈴木涼祐氏

 2つ目の講演は「AIを活用したスマート農業向けソリューションの発表」として、ボッシュ FUJIプロジェクト プロジェクトリーダーの鈴木涼祐氏が登場。AIを利用したソフトウェアによる病害予測サービス「Plantect」を6月8日に受注開始すると発表した。

 Plantectはセンサーを使ってハウスのデータを集め、栽培するトマトの病害を予測。Webアプリケーションを介して最も有効的な農薬の散布時期などを案内するサービス。100棟以上のハウスから集めた病害の要因となるデータをもとに、AIの技術を用いてアルゴリズムを開発。病害の予測精度は92%となる。

 鈴木氏は「Plantectで収集したデータはクラウドに蓄積され、今後の学習によって病害予測の精度は徐々に上がっていく。今後はきゅうりやイチゴ、花卉といった作物への対応や、日本以外の国での販売も計画している」と述べた。

ボッシュ株式会社 FUJIプロジェクト プロジェクトリーダー 鈴木涼祐氏による「AIを活用したスマート農業向けソリューションの発表」のスライドの一部
「Plantectのセンサーは小型でワイヤレスなため、場所を選ばずに設置できる」と語ったボッシュ株式会社 FUJIプロジェクト プロジェクトリーダー 鈴木涼祐氏