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東洋ゴム、ゴムのエネルギーロスを約20%低減するゴム配合技術に成功

トラック・バス用タイヤ開発と生産に向けて2018年末にマレーシアで実用化

2018年3月12日 発表

フィラーの粒子分散状態(左:従来プロセス/右:新プロセス)

 東洋ゴム工業は3月12日、同社のゴム材料開発基盤技術「Nano Balance Technology」により、天然ゴムを使用したコンパウンドにおいて、耐摩耗性能を維持しながら、従来に比べてエネルギーロス(tanδ)を約20%抑制できるゴム配合技術の開発に成功したと発表した。

 同社は進化したNano Balance Technologyとして、同社マレーシアタイヤ工場敷地内に研究開発設備棟を設置してすでに研究開発や実証を完了。今夏、これを生産化ラインとして整備して、年内をめどに新しいトラック・バス用タイヤの開発と生産に向けて実用化予定。

(tanδ:ゴムのような粘弾性体に正弦波を与えた時の損失弾性率を貯蔵弾性率で除した値)

高度なフィラー分散体を実現する新たなナノ加工技術の確立

 Nano Balance Technologyは「分析」「解析」「素材設計」「加工」という4つの体系を横断的に統合し、ゴム材料をナノ(分子)レベルで観察、予測、機能創造、精密制御することによって、理想的なゴム材料開発を実現していく基盤技術。

 今回、トラック・バス用タイヤの原料として用いるゴム材料において、Nano Balance Technology の体系の1つである「ナノ加工」の側面から、高い耐摩耗性能を維持しながら大幅な低燃費化を実現する新たな開発プロセスを確立した。

 同社は透過型電子顕微鏡やSPring-8を活用して、タイヤに用いるゴム中のフィラー分散性を分析。トラック・バス用タイヤの主原料として用いる天然ゴムにおいて、ミキサーによってコンパウンドを作製(固形ゴムとフィラーを混合)しても、フィラーが均一に分散しきらず、凝集塊として残存することを「ナノ分析」から確認した。

 コンパウンド中のフィラーを現状よりさらに高度に分散させるため、「コンパウンド作製前に固形ゴム中のフィラー構造を最適化する」という新たな「ナノ加工」技術のアプローチによってその加工プロセスを開発、確立。これにより、天然ゴムのような固形ゴムにおいても、フィラーの凝集塊は飛躍的に低減し、均一かつ高度に分散された理想的なフィラーの状態を確保することが可能となるという。

 新たに開発したナノ加工技術は、コンパウンド作製の前工程として、カーボンブラックを特殊な液中で解砕しながらナノレベルに分散させ、同時に天然ゴムラテックスと撹拌、共凝固させるというもの。さらに、目的である「ナノレベルでの高度なフィラー分散体の形成」を実現できるよう、このプロセスの最適化を図った。