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WEC車両ベースのポルシェ「919ハイブリッドEvo」、メルセデスF1が樹立したスパのコースレコードを更新
ルイス・ハミルトン選手の記録を0.783秒短縮する1分41秒770をマーク
2018年4月12日 19:59
- 2018年4月9日(現地時間)記録更新
独ポルシェAGは4月9日(現地時間)、2017年のWEC(FIA世界耐久選手権)に参戦した「919ハイブリッド」をベースにするEvoバージョンが、ベルギーのスパ・フランコルシャン(全長7.004km)でトラックレコードを樹立したと発表した。
スパでは、2017年にルイス・ハミルトン選手がメルセデスF1 W07ハイブリッドで出した1分42秒553がトラックレコードとなっていたが、ポルシェのワークスドライバーであるニール・ジャニ選手が駆る919ハイブリッドEvoが従来の記録を0.783秒短縮し、1分41秒770で周回。ジャニ選手がトラックレコードを記録したラップをスタートしたのは10時23分で、最高速359km/h、平均速度245.61km/hをマークした。
ポルシェは2017年末を持ってWECから撤退し、2019年からFIA フォーミュラE 世界選手権に参戦することを表明している。今回トラックレコードを樹立した919ハイブリッドEvoは、2017年のワールドチャンピオンシップカーをベースにしており、2017年末の撤退が決まったことからレースでは試されなかった開発事項を盛り込むとともに、エアロダイナミクスに関して複数の変更を行なったという。
具体的には最新のソフトウェアを装備してV型4気筒2.0リッターターボエンジンの出力を720PS(レース本番ではレギュレーションに基づいたセッティングで約500PSだった)まで引き上げたほか、回生システムによるエネルギー量は従来では6.37メガジュールだったところ8.49メガジュールまで引き上げ、回生エネルギーの出力を400PSから440PSへと10%増大。
また、エアロダイナミクスについては大型化されたフロントディフューザーや新しい超大型リアスポイラーを採用するとともに、アンダーフロアでは固定式のサイドスカートと回転式ベーン、フロアを最適化するなど、2017年のWECスパ戦の予選と比較して全体でダウンフォースが53%増大し、効率が66%向上したという。
加えて1周を走るのに必要ないエアコンディショナー、フロントウィンドウのワイパー、複数のセンサー、レースコントロール用の電子機器、ライトシステム、空気圧ジャッキシステムなどが全て取り外され、乾燥重量は39kg減の849kgとした。
今回の偉業について、ポルシェAG LMP1担当副社長のフリッツ・エンツィンガー氏は「本当に素晴らしいラップでした。ニールのドライバーとしての実に優れた才能と、偉大なエンジニアリングの技術が合わさった結果です。私たちの目標は、レギュレーションによって課せられている制限がなくなったとき、ポルシェ919ハイブリッドはどれほどのことが可能なのかを示すことでした。今回のトラックレコードは、現代で最も革新的なレーシングカーの究極のパフォーマンスを圧倒的な形で証明しました」とコメント。
また、ドライバーを務めたニール・ジャニ選手は「919 Evoは、とてつもなく圧倒的です。私がこれまで運転した中で、間違いなく最速のクルマです。グリップは私にとってまったく新しい次元というべきレベルで、これほどのものだとは、実際に運転するまで想像もつきませんでした。919 Evoで1周しただけで体感できるスピードは非常に速く、求められる反応速度は私がWECで慣れていたものとは大きく異なりました。2017年のベルギーGPにおけるポールポジションよりも速かっただけではありません。今日のラップは、昨年の私たちのWECでのポールポジションと比較して12秒も速いものでした。私たちはスパで非常に密度の濃い3日間をすごしました。今日の午前中、私は1周目からクルマのパフォーマンスがすばらしいことを知りました。レースエンジニアはクルマのセットアップで優れた仕事をしてくれ、ミシュランのタイヤも抜群でした。こうした体験を可能にしてくれたポルシェには、心からお礼を言いたいと思います」と述べている。