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旭化成、自動車向けシート生地シェア世界No.1の「セージ」買収に関する記者会見

自動車分野向け事業のグローバル展開に向け拠点活用。2025年度に売上高約3000億円を目指す

2018年7月19日 開催

2017年5月に旭化成がGLMとともに公開したコンセプトカー「AKXY(アクシー)」のインテリア

 旭化成は7月19日、米国の自動車内装材メーカー「セージ オートモーティブ インテリア(Sage Automotive Interiors, Inc.)を約7億米ドル(約791億円)で買収すると発表。同日、旭化成 代表取締役社長 小堀秀毅氏、専務執行役員 吉田浩氏、上席執行役員 工藤幸四郎氏が出席する記者会見を開催した。

 今回、旭化成が買収したセージはシートファブリック市場においてグローバルでシェアNo.1。米国、イタリア、ポーランド、ルーマニア、ブラジル、中国に生産拠点を持ち、2017年度の売上高は4億7490万米ドル(約536億円)。これまで旭化成はスエード調人工皮革「ラムース」をセージに納入し、セージがそれらを加工して部品メーカーや自動車メーカーに供給していた。

旭化成株式会社 代表取締役社長 小堀秀毅氏

 会見で旭化成 代表取締役社長 小堀秀毅氏は「これから成長するであろう自動車内装市場でのポジションをセージ社を買収することで強化し、旭化成全体の自動車分野向け事業の拡大実現を目指す」と述べ、今回の買収の狙いと効果について以下の3つを示した。

・自動車メーカーや部品メーカーに対するアクセスを強化して、自動車市場の動向やニーズを迅速かつ的確に把握

・セージの有するマーケティング力・デザイン力と、旭化成の有する繊維製品、樹脂製品、センサー、さまざまな製品技術を組み合わせて、車室空間に関する総合的なデザイン、ソリューションを提案提供

・セージの営業・製造・マーケティング拠点を、旭化成のグローバル展開にあたっての経営インフラ・リソースとして活用

 また、中期経営計画においては「自動車」「環境・エネルギー」「ヘルスケア・生活衛生関連」と、自動車を重点分野の1つと位置付けていることを示して、自動車分野向け売上高については、既存事業の拡大、新しいトレンドを取り入れたさらなる価値提供、M&Aを取り入れながら、2025年度に売上高を約3000億円と、2015年度の売上高の約1000億円から3倍とする目標を掲げた。

買収の効果と狙い、効果
中期経営計画において「自動車」は重点分野の1つとの位置付け
自動車分野向け売上高を2025年度に約3000億円と、2015年度の売上高の約1000億円から3倍とする目標を掲げた
買収の目的として示されたスライド

 小堀氏は「自動車分野については、10年後の2025年度に売上高3000億円を目指して活動を行なっており、その1つの手段として常にM&Aは考えていて、今回成長に向けてのM&Aを実行する意思決定を行なった。具体的な内容は、次期中期経営計画が2019年度からスタートするので、そこで改めて精査したい」と話した。

 現在、自動車分野向けの取り組みとして、小堀氏は「グループ横断で強化、拡大に注力する」といい、2017年に公開したコンセプトカー「AKXY(アクシー)」に搭載された同社グループの自動車関連製品や技術について自動車メーカー、部品メーカーとの関係強化、グローバル拠点の確立に取り組んでいるという。

旭化成グループの製品を紹介するコンセプトカーAKXY
現在行なっている自動車分野向けの取り組み

 同社のオートモーティブ事業について、専務執行役員で高機能ポリマー事業本部 オートモーティブ事業推進担当の吉田浩氏は「2年前にオートモーティブ事業推進室を立ち上げて、今は十数人のメンバーで東京、ドイツ、シリコンバレーに人を置いています。昨年にコンセプトカーを披露してお客さまとの対話の糸口を作って、そこから各OEMさんでプライベート展示会を開催して、そこからビジネスの機会が生まれつつある状況」と報告。

旭化成株式会社 専務執行役員 兼 高機能ポリマー事業本部 オートモーティブ事業推進担当の吉田浩氏

 買収したセージについて、吉田氏は「短期では繊維本部が中心となって、セージ社のビジネスを大きくする。中長期では旭化成全体で自動車ビジネスを大きくする姿と思っている。セージ社の強みであるデザイン力、マーケティング力、OEMやTier1との人脈は強力で、このへんは旭化成全体のオートモーティブ事業を大きくするための先生となりノウハウとなる。セージ社との関係を蜜にして、われわれが提供できるものをできるだけ早く完成させたい」と将来への意気込みを述べた。

 また、今回の買収の目的として、セージの営業・製造・マーケティング拠点を、旭化成の経営インフラ・リソースとして活用することが含まれている。

セージの営業・製造・マーケティング拠点を、旭化成の経営インフラ・リソースとして活用する

 質疑応答で「Tier1の存在を目指すのか?」という問いに、吉田氏は「いま自動車のマーケットを観察すると、日本においては素材メーカー、Tier1、Tier2、OEM(の役割)がはっきりしているが、ヨーロッパなどに行きますとそこが渾然としている状態。OEM、自動車メーカーにしても、これだけ変化の速い状況ですと5年後、10年後どういう商品を出すのかとなると、OEMだけで開発のすべてを賄うことができなくなりつつあり、Tier1やわれわれ素材メーカーと一緒に新しいものを開発していく姿になっている。われわれがTier1の存在になるというわけでなく、OEM、Tier1との距離は縮まっていく必要がある」との考えを述べた。

 また、社長の小堀氏は「われわれの提案力次第ではあるが、(自動車メーカーに向けて提案する)そういった流れを作っていきたい。自動車産業はグローバルな産業で、われわれとしても自動車事業をグローバルな事業として展開していくために、インフラをしっかり揃えていくのは重要なこと」との考えを示した。

左から、旭化成株式会社 代表取締役社長 小堀秀毅氏、専務執行役員 吉田浩氏、上席執行役員 工藤幸四郎氏