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GLMと旭化成が共同開発した“走るコンセプトカー”「AKXY(アクシー)」発表会
“2025年度に売上高3000億円”を目指すオートモーティブ事業の象徴
2017年5月18日 00:00
- 2017年5月17日 開催
GLMと旭化成は5月17日、共同開発したクロスオーバータイプのEV(電気自動車)コンセプトカー「AKXY(アクシー)」の完成発表会を都内で開催した。
AKXYは旭化成グループが取り扱っている自動車向けの製品や素材、次世代システムなどを自動車メーカーや部品メーカーにアピールすることを目的に生み出されたコンセプトカー。一般的にこのようなケースで製作されるコンセプトカーは動かないモックアップであるケースが多いが、AKXYは見た人により現実味を持って感じてもらえるよう、走行可能な「走るコンセプトカー」となっている。発表会でも実際の走行シーンが披露されており、この模様は関連記事「GLMと旭化成が共同開発した、コンセプトカー『AKXY(アクシー)』発表会を動画で紹介」で紹介している。
ボディサイズは4685×1813×1562mm(全長×全幅×全高)で乗車定員は3名。このほかの詳細は関連記事の「GLMと旭化成、ガルウイングを採用したクロスオーバータイプのEVコンセプト『AKXY(アクシー)』共同開発」を参照していただきたい。
AKXYは“2025年度に売上高3000億円”を目指すオートモーティブ事業の象徴
発表会では冒頭にAKXYが会場後方から姿を現わし、EVらしい静かな走りで集まった取材陣などの側面を走り抜けてステージに登壇。この車内から旭化成 常務執行役員 兼 高機能ポリマー事業本部長の吉田浩氏が下り立ってそのままプレゼンテーションをスタートした。
吉田氏は「私ども旭化成は、現在推進中の中期経営計画『Cs for Tomorrow 2018』のなかで『Connect』をキーワードに、多角的な事業と多様な人材の結集の促進。新事業の創出やさらなるグローバル展開を推し進めています。なかでも重要分野に位置付けております自動車関連事業では『2025年度の売上高3000億円』を目指し、各事業それぞれの活動に加え、『Connect』のために2つの新しい組織を昨年度に立ち上げております」。
「その1つは『旭化成ヨーロッパ』。これはエンジニアリングプラスチック、合成ゴム、繊維、バッテリーセパレーター、エレクトロニクス事業といった弊社のマテリアル領域を統合した組織です。欧州マーケットでの活動を強力に推進しております。そしてもう1つの組織は、昨年4月に発足した『オートモーティブ事業推進室』です。この新しい組織を軸に自動車分野の総合戦略を策定し、強力に展開してまいりたいと思います」。
「本日、みなさまにご紹介いたしますコンセプトカーのAKXYは、旭化成がこれまでに築き上げてまいりました自動車領域での総合力を、お客さまに分かりやすくお伝えするため、素材やシステムを横断的に融合。コンセプトカーとして旭化成の自動車事業の象徴となるよう形作ったものです。また、このコンセプトカーは、すでにクルマの大きなマーケットニーズになっている軽量化に対してソリューションを提供する次世代素材はもとより、電子デバイスなど未来を見据えたシステムについて、搭載、提案させていただいております」。
「旭化成は、自動車のマテリアルソリューションパートナーとして、このコンセプトカーをつうじて世界の自動車関連のお客さまに向け、さらなるソリューションの可能性を提供し、より深くお客さまとの関係を築いていきたいと考えております」とコメント。オートモーティブ事業に注力していることを説明し、その象徴としてコンセプトカーのAKXYを完成させたことを紹介した。
5月24日~26日の「人とくるまのテクノロジー展2017」でAKXYを一般公開
吉田氏に続いて登壇した旭化成 オートモーティブ事業推進室 室長 宇高道尊氏は、AKXYについての解説を実施。
宇高氏は自動車産業を取り巻く環境が流動化していると語り、独ダイムラーが2016年に打ち出した「CASE」を紹介。「Connectivity」「Autonomous」「Shared」「Electric」の4つの頭文字に象徴される重要項目や、AI(人工知能)などの新しい技術が、この数年で破壊的な速度を持って大きな動きにつながっていると語り、この状況下で自動車メーカーの担当者が受け持つべき調整領域が非常に広くなっていると指摘。これに対し、旭化成ではサプライチェーンにいろいろな技術を持っていることから、「オールサプライチェーン」として激しい変動に挑戦していくことが必要な時代になっているとの考えを明らかにした。
また、総合化学メーカーである旭化成では、プラスチックの基礎原料や繊維類、高機能ポリマー、高機能マテリアル、2次電池向けセパレーター、カスタムLSI、センサー類といったマテリアル事業を手がけており、このほかにも住宅事業、ヘルスケア事業などを事業領域としている。
このマテリアル事業では、すでに自動車産業に対して多彩な製品を供給しているが、宇高氏は変化が激しくなっているこの時代において、ユーザーに新しい提案を行なってニーズに応じた新しい価値の創造、新しいチャレンジをユーザーと一体となって進めていきたいと語る。コンセプトカーのAKXYという名前はそんな思いを表現したものとして、「旭化成(Asahi Kasei)」と「お客様(You)」の思いを「かけあわせる(X)」ことで、新しい価値を生み出したいという気持ちが込められているという。
コンセプトカーのAKXYは「安全」「快適」「環境」をテーマに据えてプロジェクトをスタート。この条件から、EVメーカーであるGLMとパートナーシップを結んで共同開発を進めることになった。吉田氏はGLMを「EVの未来を見据えた企業」と評し、未来志向でエキサイティングな活動が進められたと語った。
具体的な車両解説では、AKXYの外観は未来を意識したもので、幾何学的、有機的なイメージを持たせて「環境、命、暮らし」を表現。クルマという機械ながら、呼吸をすることを感じさせるデザインとしている、また、上から見たときは丸いリング状のフォルムとして、クルマが優しく包み込むことで融合、結合といったイメージを表現している。
インテリアにも有機的なデザインを与え、人と接するときの柔らかさや温かさなどを表現。さらに素材でも柔らかさを重視して、安心、安全というイメージが触覚でも伝わるようにしているという。
そんなAKXYでは旭化成の製品を内外装に多用。合計で27品目が車両に使われており、さらに技術的な提案も実施。この車両を見て、触れることで「旭化成の総合力を体験できるコンセプトカーに仕上がっている」と吉田氏は解説。また、旭化成ではコンセプトカーの内外装だけでは紹介しきれない製品、表現しきれない技術などが多数あり、AKXYのほかに模型サンプルも用意。さらにエンジンカットモデルを製作して、この3点を5月24日~26日にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催される自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2017 横浜」の旭化成ブースに展示して一般公開することが紹介された。