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住友ゴム、2018年12月期 上半期の決算発表会で売上4253億5200万円、営業利益270億円の増収増益を発表

通年予想を下方修正も「年末に向けて出す新商品」で国内販売を維持すると池田社長

2018年8月7日 開催

住友ゴム工業株式会社 代表取締役社長 池田育嗣氏

 住友ゴム工業は8月7日、2018年12月期 第2四半期(2018年1月1日~6月30日)の決算内容について解説する決算説明会を開催。合わせて新しい「2022年に向けた新中期計画の取組み」の進捗状況や新しい施策などについて紹介した。

 第127期となる2018年の上半期における連結業績は、売上収益が前年同期比5.4%増の4253億5200万円、事業利益が同23.1%減の268億8700万円、営業利益が同27.4%減の270億490万円、親会社株主に帰属する四半期利益が同14.4%増の142億2200万円となり、各項目で数値を伸ばして増収増益となった。

 一方で2018年12月期の通期見通しについては、決算数値の各項目で予想を下方修正。売上収益は9100億円の予想から9000億円、事業利益と営業利益はそれぞれ730億円の予想から680億円、当期利益は480億円の予想から430億円に引き下げている。

2018年12月期 第2四半期(2018年1月1日~6月30日)の連結業績
2018年12月期の通期見通しは下方修正

 決算説明会で壇上に立った住友ゴム工業 代表取締役社長の池田育嗣氏は、同社グループを取り巻く事業環境として石油系原材料価格が2017年の同時期から高騰しているものの、天然ゴムの相場が低価格で安定しており、市場における競合他社との競争が激化しつつも、おおむね想定の範囲内で推移していると解説。

 タイヤ事業では売上収益が前年同期比4%増の3608億万円、事業利益が同19%増の207億円にそれぞれ増加。国内の新車用タイヤでは、自動車の生産台数は前年同期並みの数値となったが、低燃費タイヤを中心とする高付加価値タイヤの伸長で販売を拡大。国内市販用タイヤでは、ダンロップブランドで耐摩耗性、耐偏摩耗性を高めて「より最後まで使える長持ちタイヤ」を実現した「エナセーブ EC204」を新発売し、高付加価値タイヤの「LE MANS V」などを拡販を推進している。

 ファルケンブランドでは、2017年度から引き続き「レッドブル・エアレース」に参戦する室屋義秀選手を「Team FALKEN」としてサポートするなどブランド認知度の拡大に注力。製品でも高い高速安定性と優れたウェットグリップ性能を持つフラグシップタイヤ「AZENIS FK510」シリーズを2月に発売。このほか、年初の降雪によってスタッドレスタイヤなどの冬タイヤが好調な販売となったことを増収増益の理由としてアピールした。

 また、住友ゴムは2022年に向けた新中期計画の実現に向けて積極的な事業展開を行なっており、スポーツ事業では国内加害のゴルフ用品市場で販売を拡大。4月に買収を行なった海外におけるダンロップブランドのテニス事業についても増収に寄与しているとアピール。産業品他の事業領域でも、住宅用制振ユニット「ミライエ」やOA機器用精密ゴム、インフラ系商材などが好調に推移していることを池田氏は説明した。

セグメント別の売上と事業収益。各項目で前年同期を上まわっている
主力であるタイヤ事業の減速が予想の下方修正につながっている

 事業利益の増減要因で、2017年上半期から50億円の増益になった理由では、原材料価格で石油系原材料、その他の原材料の価格が高騰したものの、それを天然ゴムが安価で安定供給されたことから54億円の増収、2017年から原材料価格の高騰を理由に価格の値上げを行なったことの影響で57億円の増収などとなり、一方で中国や中近東市場で販売数が減少して29億円の減収、北米、南アフリカ、トルコなどにある工場の生産能力拡大に向けた投資による固定費拡大で32億円の減収で、タイヤ事業としてはそのほかの要因と合わせて32億円の増収。これにスポーツ事業での17億円、産業品他事業での1億円の増収を合わせて50億円としている。

 なお、中国市場での販売数減少について池田氏は、説明会後半に行なわれた質疑応答で「2017年4月にタイヤの値上げを行なった影響で、1~3月は対前年でマイナスになることは予想していました。ただ、4月以降で苦しんだ理由は(中国)政府による規制で『小売店が環境に対する監査で違反をしている』ということで閉めることになった販売店が増えたことがありまして、これは予期しないことでした。これで市販用タイヤが少し落ち込んだかなと。ただ、現在は中国の販売網をいろいろと組み替えまして、下期からは挽回をしていってプラスの方向に行くと思います」とコメント。このほかにも海外市場では、ブラジルで発生したトラックドライバーによるストライキで、景気の減速とタイヤの販売減少につながっていることも解説している。

 また、通期の業績見通しを下方修正した理由について、池田氏は是会経済は全般的に回復傾向で推移すると予測されている一方、米国、中国などでの通商問題、為替変動などの不透明な要素から景気の不確実性に留意が必要であると指摘。さらに原材料市況で天然ゴム価格は低い水準で安定すると見ているが、石油系原材料が高騰している現状がこれからも続くと想定。販売環境の変化に対して柔軟に対応するとしながら、保護主義の傾向から中国の景気が下振れする可能性を考慮して売上収益を100億円下方修正している。

 国内のタイヤ販売では市販用で2017年に行なった値上げの影響が残るとしながら、池田氏は「年末に向けて市販用タイヤで新商品を出していきます。これの影響で(前年同期)100%は確実にとれるだろう」とコメント。新しいタイヤの市場導入で市販用タイヤの販売を牽引する考えを示した。

上半期の事業利益増減要因。原材料価格と価格改定で111億円の増収要因となっている
通期利益の増減要因では、石油系原料の高騰が天然ゴム価格による増益分を上まわること、固定費や経費の増加が減益要因となる
海外のタイヤ生産能力については年初予想から変更なく、2017年と同じく3%増となる予定
販売拡大に対応するため、生産設備の稼働率を94%まで高める

ファルケンブランドのタイヤを新型「Gクラス」に納入開始

2018年の通期見込みを下方修正したが、「VISION 2020」で示した長期ビジョンの行動イメージに変わりはないと語る池田氏

 決算説明会では決算内容についての解説が行なわれた後、2月に行なわれた2017年12月期の決算発表会で紹介された「2022年に向けた新中期計画の取組み」についてあらためて解説が行なわれ、新たな展開などについて池田氏から説明された。

 2012年に掲げた長期ビジョン「VISION 2020」の内容をベースに、そこから5年間の国際情勢の変化、技術革新などの環境変化を反映。2022年までの5年間で取り組む新たな方向性について策定したこの中期計画では、2022年の売上収益を1兆1000億円、事業利益を13000億円に設定。事業利益と売上収益における海外比率を7割以上に高めて「海外で利益を上げる体質」にスイッチしていくことを掲げている。

 このため、前出の決算発表でも取り上げられているとおり、海外工場でのタイヤ生産能力を増強。南アフリカにある工場では、新たにトラック・バス用のタイヤの生産を7月から開始した。生産と同時に研究開発でも現地のニーズを取り入れるため、米国と欧州にタイヤテクニカルセンターを開設。7月から米国のタイヤテクニカルセンターにあるテストコースで現地向けタイヤの評価テストをスタートさせている。

 販売面では新車用、市販用の両面で強化していき、新車用タイヤではメルセデス・ベンツの新型「Gクラス」の新車装着タイヤとして、ファルケンブランドの「WILDPEAK A/T AT3WA」「EUROALL SEASON AS210A」を納入。これについて池田氏は「当社の開発能力や生産能力が評価されたことによるもので、ファルケンブランの価値向上につながると考えています」とアピールした。

 最後に池田氏は「当社はこの中期計画を着実に実行することで『真のグローバルプレーヤー』としてさらなる成長を目指してまいります」とコメントして解説を締めくくった。

長期ビジョン「VISION 2020」の概要
新中期計画で目指す数値目標
2022年までに「海外で利益を上げる体質」に切り換えていく
米国、欧州・アフリカを販売の軸にしていく
海外のタイヤ生産で中心となる米国、トルコ、南アフリカの3工場。各対応市場でニーズのあるタイヤの生産を拡大している
タイヤテクニカルセンターも米国と欧州に用意
欧州ではファルケンブランドをさらに訴求。2017年1月に買収した「ミッチェルディーバー」の販売店は、現在ある約140店舗から2018年中に150店舗以上に増やし、さらに2020年には200店舗を目指していく
SUV用タイヤが人気の米国では、ファルケンタイヤが持つ能力を試乗会や講習会などの開催で訴求している
新型「Gクラス」にファルケンブランドの「WILDPEAK A/T AT3WA」「EUROALL SEASON AS210A」を納入
レッドブル・エアレースやニュルブルクリンク24時間レース、サッカーの「リバプールFC」をサポートするプロモーション活動でファルケンブランドの認知度をアップさせている
テニス用品の分野でダンロップブランドを活用し、ブランド価値の向上と事業の最大化を図る
産業用品等の事業領域でも積極的に活動。医療用精密ゴム部品のグローバル展開も推し進めている
制振技術では住宅用の「ミライエ」が累計納入3万棟を突破。熊本城の天守閣で実施された耐震改修工事でも採用されている
従来から手がけている砂入り人工芝「オムニコート」に加え、新たにハードコートの「デコターフ」を買収で取得。インフラ系商材でもユーザーニーズに応えられる体制を確立している