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横浜ゴムの最新技術を詰め込んだ新型タイヤ「ブルーアースGT」技術解説

2019年2月より順次発売

横浜ゴムが2月から発売する「ブルーアースGT」。今後同社の中心製品となるタイヤ

 横浜ゴムが2月より順次発売する「BlueEarth-GT(ブルーアース・ジーティー) AE51」。横浜ゴムは2018年シーズン、燃費性能に優れる「BlueEarth(ブルーアース)」シリーズとして、低燃費タイヤのラベリング制度で転がり抵抗性能「A」/ウェットグリップ性能「a」の「BlueEarth-A(ブルーアース・エース)」、同AAA/cの「BlueEarth AE-01F」、同AAA/aの「BlueEarth-1(ブルーアース・ワン)」、同A/aの「BlueEarth RV-02」の4製品をラインアップ。

 ブルーアース1は、いわゆるプリウスサイズの195/65 R15、185/65 R15、215/45 R17の3サイズのみを用意する技術的なシンボルタイヤで、AE-01Fはコンパクトカーや軽自動車をターゲット、RV-02はミニバンやSUVをターゲットとしており、シリーズの中心的な存在となっていたのがブルーアースAだった。

 横浜ゴムはこのブルーアースAを完全に置き換える形でブルーアースGTを2月から順次発売。低燃費タイヤ指標で転がり抵抗性能を「AA」と1段引き上げつつ、最高のウェットグリップ性能「a」を確保。155/65 R14~245/35 R19まで57サイズをそろえ、2019年内にさらに4サイズを追加していく。いわば、横浜ゴムのメインとなるタイヤだ。

タイヤサイド部のレタリングも美しいブルーアースGT。GTというネーミングも狙っている層が分かりやすい部分

 低燃費性能に優れるタイヤでありながら、独特のしなやかなグリップ、そして最高のウェットグリップ性能を持つなど走りのよさには定評のあったブルーアースAだが、横浜ゴムはこのブルーアースAに対して低燃費性能を向上させつつ、力強い走りの性能を与えたブルーアースGTを生み出した。

 その特徴がひと目で分かるのが同社が「圧倒的な力強さをもたらすグランドツーリングデザイン」というトレッドパターン。イン/アウト非対称のパターンという基本コンセプトは同じながら、3本の分断されないトリプルセンターリブでしっかりした直進性能を確保。排水性を強化するライトニンググルーブはブルーアースAよりもアウト側に配置。さらに、トリプルセンターリブには、しなやかさを確保するためか「日本刀のような」というブレードカットサイプが刻まれる。

こちらは旧製品のブルーアースA。ブルーアースGT同様に3本のセンターリブがあるが、分断されている部分がある
こちらは新製品のブルーアースGT。ブレードサイプによって剛性調整されているが、3本のセンターリブの分断箇所がない
ブルーアースGT。右がアウト側となり、ブロックの剛性を高めることでコーナリングフォースを受け止めていく狙いを読み取れる

 コンパウンドもブルーアースGT用に新開発。低燃費性能とウェットグリップ性能という相反する性能を両立するにはシリカの分散性をいかに上げるかがポイントとなる。ウェット性能に効くシリカ、低燃費性能に効くシリカのダブルシリカを配合し、さらにウェット性能に効くポリマー、低燃費性能に効くポリマーのブレンドポリマーを採用しているという。

 これらに加え、タイヤのゴムを練り上げる技術に新混合技術「A.R.T.Mixing(Advanced Reaction Technology in Mixing)」を採用。分散性が向上したので、同じ配合でもウェット制動距離を短縮できたという。

ブルーアースGTの開発陣。横浜ゴム株式会社 タイヤ第一設計部 設計1グループ グループリーダー 池上哲生氏
同 消費財製品企画部 製品企画1グループ グループリーダー 小畑恒平
同 タイヤ第二材料部 材料1グループ グループリーダー 中野秀一
ブルーアースGTの技術説明には、横浜ゴムの開発首脳陣が勢ぞろい。ブルーアースGTへの力の入れようが分かる
横浜ゴムの開発を率いる取締役常務執行役員 タイヤ技術統括兼タイヤ消費財開発本部長兼研究本部担当兼MB生産・技術担当 野呂政樹氏もあいさつ

 これら基本グリップ性能を確保した上で、低燃費性能を強化。トレッド面の内部ゴムに低燃費レイヤードゴムを配し、サイドとリム部にも発熱を抑える低燃費ゴムを採用している。さらにプロファイル面でも、スポーツ系のタイヤに採用された接地圧を均一化するプロファイルを採用すると同時に、サイドプロファイルはひずみを低減する、歪低減プロファイルを採用。熱の発生を抑えることで無駄なエネルギーの消費を減らし、低燃費性能とグリップ性能の両立を図っている。

横浜ゴムのタイヤラインアップ
ブルーアースの歴史
2018年シーズンのブルーアースシリーズ
ブルーアースAについて
ブルーアースAについての市場の声
期待されること
ユーザーの期待
ブルーアースGTの開発に向けて
ブルーアースGTの製品名由来
商品メッセージは、「揺るぎない走りを。」
ビジュアルイメージ
商品特徴
トータルバランスの向上を目指した
走りの進化
低燃費性能を向上させるとともに、全サイズウェットグリップは最高性能へ
ターゲット車種。幅広いのが分かる
サイズレンジ
発売はこの2月から
技術特徴
パターンデザインについて
非対称パターン
トリプルセンターリブ
ライトニンググルーブ。ブルーアースAよりもアウト側に移動
面取りしたサイプである、ブレードカットサイプ
内部構造について
専用ナノブレンドゴム
発熱コントロールに重要な内部ゴムには低燃費レイヤードゴム
低燃費サイドゴム
接地圧均一化
歪低減プロファイル
発熱シミュレーション
転舵時発熱シミュレーション
コンパウンドについて
新混合技術「A.R.T.Mixing(Adva nced Reaction Technology in Mixing)」
接地面積を拡大
ブルーアースAとブルーアースGTの比較レーダーチャート。ウェット能力を上げるとともに、大幅にドライの操安性を向上させている

 タイヤの技術要素は、トレッドパターン、コンパウンド、構造(コンストラクション)、プロファイルと一般的に言われるが、すべての面で新技術が注ぎ込まれたのがブルーアースGTになるわけだ。

軽自動車も、ミドルセダンもハンドリング性能をグレードアップ

ミドルセダンによく似合うブルーアースGT

 その走りのインプレッションについては、橋本洋平氏の記事「ミドルクラスセダンもターゲットに開発された横浜ゴムの『ブルーアースGT』」を参照していただきたいが、記者が軽自動車のN-BOXやミドルセダンのアテンザで簡単な試乗を行なった限りでは、しなやかなグリップ感が特徴的だと感じた。

 ブルーアースAは、横浜ゴムのサマータイヤの中でもしなやかなハンドリングのタイヤだったが、そこにすっきりしたステアリングの切り心地が加わる。ステアリングをすっと切れば、すっとクルマが回頭していき、微少な舵角にもきちんと反応してくれる。リアから感じるグリップ感も高いため、ステアリングを切ることで発生する前輪のコーナリングフォースを、リアが妙にずれることなく受け止めてくれ、クルマ全体で気持ちよく曲がっていける。かといってしなやかさを持つため神経質なタイヤではなく、景色を楽しみながら走りが楽しめる。

 サイドの剛性も上がっているようで、とくにN-BOXのような重心が高めのクルマでは安心感が増し、グランドツーリングを意味するGTと名付けた意図が分かるような気がした。

タイヤがしっかりすっきりしているので、N-BOXの運転がさらに楽しくなる。サイズラインアップが広いのもうれしいところ

 このステアリングに対する追従性の高さ、タイヤのしっかり感について開発者に確認したところ、それはおそらくサイド部の構造が強く影響しているのだろうという。ブルーアースGTでは、ブルーアースAに比べサイドのカーカスの最頂部を引き上げてあり、それによってタイヤ全体の剛性が高まる方向になっている。ただ、そのままだと剛性が強くなりすぎて、いわゆる硬いタイヤになってしまうため、トレッド部のカーカスの強度を新素材に変更するとともに調整。全体としての剛性バランスを整えているとのことだ。

 また、1段階引き上げられた転がり抵抗性能については、アウディ A4でブルーアースAとブルーアースGTを乗り比べた際に惰性走行などで確認してみたが、「気分、ブルーアースGTのほうが転がりがいいかな」という感じ。ブルーアースAもしっかり転がるタイヤだけに、明確な差を感じることは難しかった。ただ、この点についてはしっかり数値で裏付けられているので、ブルーアースGTが燃費面で有利なのは実証されている。

 ブルーアースGTは、低燃費タイヤのラベリング制度で、転がり抵抗は最高性能1つ手前の「AA」(一部サイズは「A」)、ウェットグリップ性能は最高性能の「a」を獲得しつつ、マルチサイズ展開するなど横浜ゴムのサマータイヤの最先端技術を詰め込んだ製品だ。乗用車用サマータイヤを選ぶ際には、今後1つの基準となっていくタイヤであるのは間違いない。

ブルーアースGTの開発スタッフで記念写真