レビュー

【タイヤレビュー】ミドルクラスセダンもターゲットに開発された横浜ゴムの「ブルーアースGT」

ウェットグリップ性能は最高グレードの「a」

ミドルクラスセダンもターゲットに開発された横浜ゴムの「ブルーアースGT」。低燃費性能を引き上げ、さらにウェットグリップ性能は最高グレードの「a」となる

 横浜ゴムの乗用車用サマータイヤのブランドは現在3タイプが柱となっている。ハイパフォーマンスタイヤの「ADVAN(アドバン)」、低燃費性能に優れる「BlueEarth(ブルーアース)」、そしてスタンダードタイヤの「ECOS(エコス)」がそれだ。今回はその中でも中心となるBlueEarth製品の1つが生まれ変わる。BlueEarthシリーズは現在4つの製品ラインアップを持ち、低燃費タイヤのグレードに特化したモデルからSUV&ミニバンへ向けたものまで、ユーザーニーズに応えられる製品を展開しているが、代表製品とも言える「BlueEarth-A(ブルーアース・エース)」が「BlueEarth-GT(ブルーアース・ジーティー)」となった。

 ブルーアースAは2012年に発売が開始され、ハイブリッドカーはもちろん、重量級のセダンやミニバン、そして輸入車をもターゲットにしたモデル。低燃費タイヤのグレーディングは転がり抵抗性能がA、ウェット性能は最高のa(一部サイズはA/b)だった。

 ブルーアースGTは、その新世代モデルとして投入され、低燃費タイヤのグレーディングをさらに高めつつ、剛性感や操縦安定性といった付加価値を与えられた。低燃費タイヤでありつつも中型~大型セダンも受け止めることを目指している。ブルーアースは低燃費タイヤのスタンダード的なイメージが強かったが、それを払拭しグランドツーリングカーに相応しい仕立てにしたという。ちなみにグレーディングはAからAAへ(31サイズ)、ウェットグリップは最高性能となるa(57サイズ)を達成。すでにクラウン、カムリ、シエンタ、レクサスESでも標準採用している。

レクサス車やクラウンに標準採用される「ブルーアースGT」。しなやかなタイヤとなっている

 トレッドパターンは非対称となっており、イン側は周方向細溝や対面サイプを配置することで剛性をチューニング。アウト側は幅広リブに非貫通のラグ溝を採用して高剛性を確保している。また、センター部には3本の分断されないストレートリブを配置することで高速直進安定性を確保。これらによって操縦安定性と乗り心地を両立させようというわけだ。ウェットグリップについては3本のストレートグルーブのうちの1本に稲妻型のライトニンググルーブを採用し、エッジ効果による水膜除去を強化。両サイドのリブには面取りしたサイプを与え、トレッド面を接地圧均一にするだけでなく、エッジ効果も発揮し、ドライとウェット性能を両立している。

トレッドパターン比較。左が旧製品のブルーアースA、右がブルーアースGT。いずれも右方向がアウト側となる。3本のセンターリブから明確な切れ目がなくなり、直進安定性が向上しているのが分かる。その一方サイプを刻みつつ剛性を調整してる

 コンパウンドについては配合されるシリカの分散性や均一性の向上に気を遣った、スタッドレスタイヤにも採用されている新混合技術「A.R.T.Mixing(Adva nced Reaction Technology in Mixing)」を採用。ウェットグリップを高めるにはゴムを補強する充填剤であるシリカを増量することが不可欠だが、シリカはダマになりやすく、そうなるとゴムが発熱しにくくなったり、転がり抵抗が悪化するなどのネガがある。A.R.T.Mixingによりシリカを増量しつつ、分散させることにより、ウェット性能も燃費性能も犠牲にせずに済んだというわけだ。このコンパウンドを横浜ゴムではナノブレンドゴムと名付けている。そのナノブレンドゴムの下にはタイヤサイズごとに厚みやプロファイルを最適化した低燃費レイヤードゴムを与え、トレッドの剛性をコントロールしている。また、サイド部やリムクッション部にも低燃費ゴムを採用。発熱をできるだけ抑えることで転がり抵抗を低減。歪をできるだけ少なくし、エネルギー損失となる発熱を発生させないようにしている。

 その進化を感じるために、まずは旧製品扱いとなるブルーアースAの225/50 R17サイズを装着したレクサスGS300hに乗り込んでみる。このタイヤは以前から割と走れるエコタイヤという認識があったが、そのイメージは変わらず。程よい剛性感があり、応答性にも優れている印象がある。ただ、ネガとして感じるのはグリップ感がさほど感じられないところだった。キビキビとしているがコシが無いといえばいいだろうか? また、タイヤが薄いようなイメージもあり、段差を乗り越す際にピンと弾けるような甲高い音を発するところが気になった。上級サルーンにはちょっと役不足というもの頷けるところだ。

ブルーアースGTを装着したレクサスGS300h

 続いて同じサイズ、同じクルマでタイヤをブルーアースGTに変更して走り出す。そこでまず感じられたのは、しなやかさが加わりダンピング性能が格段に向上したことだった。弾けて動くような感覚はなく、シャーという高い音が低くなったところが上質に感じる。ミドルクラス以上をターゲットにするというのはこの辺りのことを言っているのだろう。ステアリング極初期のキビキビとしたところは薄まったが、そこから切り足すと頼りがいのある反力があり、グリップ感も高まっていたことが印象的。それでいて転がり抵抗が悪化している感覚がないところも好感触だ。また、今回の試乗シーンではハーフウェットの路面もあったのだが、そこでの安心感も高まっていた。ここまでのバランスがあればGTという名前を与えたのも納得。これならロングドライブでも快適にこなすことができるだろう。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車はトヨタ86 RacingとNAロードスター、メルセデス・ベンツ Vクラス。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。