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パナソニック、テスラ向け電池生産の好調をアピールした2018年度 第3四半期決算説明会

通期見通しは売上高を2000億円、税引前利益を350億円下方修正

2019年2月4日 開催

パナソニック株式会社 取締役常務執行役員兼CFO 梅田博和氏

 パナソニックは、米テスラのギガファクトリーにおける自動車向け円筒形電池の生産について、「2019年3月末を目標に、35GW/hの設備の設置を完了させ、その後、設備を稼働させる。2019年度第3四半期(2019年10~12月)以降には、35GW/hのフル稼働が可能になる」とした。だが、「50GW/hの設備投資については何も決まった事実はなく、いつからということも決まっていない」とした。

 パナソニックの梅田博和 取締役常務執行役員兼CFOが、2月4日に行なわれた2018年度 第3四半期決算説明会の席上で言及。テスラ向けの電池生産/供給が順調に動き始めたことを強調した格好だ。

 梅田 取締役常務執行役員兼CFOは、「テスラでの量産が立ち上がっており、それに伴う増販益がかなり大きくなっている。第2四半期から良化している」とした。

 また、テスラの中国市場に展開における電池の供給については、「まだ何も決まっていることはない」としながらも、「中国の生産拠点でも円筒形電池を生産しており、米国、日本、中国からの供給が可能であり、どれが効率的なのかを考えていくこともできる」とも語った。

米国 ネバダ州にある「ギガファクトリー」内にある電池セルの出荷倉庫(左)と、ギガファクトリーで生産される「2170」電池(右)

 一方、1月に発表したトヨタ自動車との合弁による車載用角形電池事業に関する新会社に関しても言及した。

 トヨタとパナソニックは、トヨタが51%、パナソニックが49%の出資比率で、2020年末までに合弁会社を設立することを発表。同社を通じて車載用角形リチウムイオン電池、全固体電池、次世代電池に関する研究、開発、生産技術、製造、調達、受注、管理を行なうことになる。

「2017年12月に両社による協業を発表し、角形電池事業の環境車対応において、どんな協業ができるのかといったことに加え、全固体電池の共同開発において、どんな提携が行なえるのかといったことを、技術、製造部門などが入り交じり検討するところから始まった」と説明。

2017年12月に開催された共同記者会見で握手するトヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 豊田章男氏(左)と、パナソニック株式会社 代表取締役社長 津賀一宏氏(右)

 出資比率においてトヨタがマジョリティを持ったことに対しては、「検討当初から出資比率ありきではなかった。両社で話し合ってきたのは、地球の温暖化問題の解決において電動車の急拡大が必須であるということである。そのためには、性能、安全面、コスト面で業界ナンバーワンの電池の開発を加速する上で、どう手を組むべきかを議論し、その目標点が一致したものである。そこで、自動車メーカーであるトヨタから、責任を持って推進をしていくという提案があり、それに賛同をした。トヨタ傘下での事業を推進することが、パナソニックにとっても社会貢献と事業規模拡大につながると腹落ちしている。パナソニック単独ではなし得ない生産リソースや、技術リソースを集結し、自動車産業全体の電動車化を拡大することができる。出資比率は49%と51%だが、イコールパートナーという考え方であり、パナソニックにとって、この事業が重点事業であることは変わっていない」とした。

 新会社では、トヨタは電池セルの開発、生産技術領域の設備および人員を移管。パナソニックは車載用角形電池事業の開発、生産技術、製造(日本および中国・大連)、調達、受注および管理機能に関わる設備を合弁会社に移管する。合弁会社に移管する対象事業に関わる両社の従業員数は約3500人になる見込みだ。

 生産した製品は、原則としてパナソニックを通じて広く自動車メーカーへ販売していく考えであり、「トヨタ側でも、トヨタのための合弁会社ではないとしている。広く自動車メーカーに使ってもらうつもりである。他社向けもトヨタ向けも、パナソニックが合弁会社からすべて仕入れて販売する。そこには現実的なファイヤーウォールも敷くことになる。他社からも理解を得られるように、高性能な電池をいち早く実現することに取り組む」と述べた。

2018年度の通期見通しを売上高2000億円、税引前利益350億円下方修正

パナソニックの2018年度 第3四半期(2018年4月~12月)連結業績

 パナソニックが発表した2018年度 第3四半期(2018年4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.9%増の6兆829億円、営業利益は同7.5%減の2927億円、税引前利益は同6.1%減の2943億円、当期純利益は同13.2%減の1737億円となった。

 オートモーティブ&インダストリアルシステムズの売上高は前年同期比8%増の2兆2346億円、営業利益は同13%減の553億円となった。また、第3四半期(2018年10月~12月)のオートモーティブ&インダストリアルシステムズの売上高は同5%増の7650億円、営業利益は同8%増の263億円。為替影響を除く実質ベースの売上高は、同6%増。そのうち、オートモーティブ事業の第3四半期の売上高は前年同期比3%増の2471億円、エナジー事業の売上高は25%増の1901億円となった。

 パナソニックの梅田 取締役常務執行役員兼CFOは、「第3四半期の売上高は、オートモーティブ&インダスリトアルシステムズの車載電池事業が伸張した。だが、営業利益では、コネクティッドソリューションズの航空機向け機内システムを提供するアビオニクスの減販損などが影響した」と語る一方、「エナジーが大幅な増収増益になっているのは、原材料の価格変動の精査といった一時費用が含まれているため」と説明した。

 オートモーティブ&インダストリアルシステムズの業績については、「オートモーティブは、日米顧客向けインフォテインメントや、カメラ・ソナー、充電器などが増収。営業利益では、前年度に計上した品質対応費用の反動があったものの、欧州での一部件名での開発資産の減損などにより減益となった。エナジーは、車載電池が円筒形を中心に大幅増収。営業利益は北米車載電池工場の立ち上げ費用があったものの、固定費コントロールやオペレーション改善に加え、法務関連引当見直しなどにより、増益になった。また、インダストリアルは、米中貿易摩擦の影響を受け、中国設備投資需要が減速し、モーターを中心にメカトロニクスが大きく減収減益になった」とした。

 だが、「中国は貿易戦争の影響もあり、短期的には需要が落ち込んで厳しく見ていく必要があるが、中長期的には成長市場であることは間違いない。重点地域として見ていくことになる」と位置付けた。

オートモーティブ&インダストリアルシステムズの2018年度 第3四半期(2018年4月~12月)連結業績
オートモーティブ&インダストリアルシステムズの2018年度 第3四半期(2018年10月~12月)業績

 なお、第3四半期累計でのセグメント別業績は、家電などのアプライアンスの売上高が前年同期比1%減の2兆1390億円、営業利益は同17%減の887億円。住宅関連のエコソリューションズは同6%増の1兆4684億円、営業利益は同6%増の501億円。BtoB事業を行なうコネクティッドソリューションズの売上高は、同1%増の8158億円、営業利益は同5%減の735億円となった。コネクティッドソリューションズは、プロセスオートメーションが車載・デバイス業界向けの実装機や、自動車業界向けの溶接機が引き続き堅調に推移して増収になったが、航空機向け機内エンターテインメントシステムをはじめとするアビオニクスや、業務用カメラの販売減があったメディアエンターテインメント、前年の大型件名の反動を受けたモバイルソリューションズが減収になった。

アプライアンスの2018年度 第3四半期(2018年4月~12月)連結業績
エコソリューションズの2018年度 第3四半期(2018年4月~12月)連結業績
コネクティッドソリューションズの2018年度 第3四半期(2018年4月~12月)連結業績
2018年度(2018年4月~2019年3月)連結業績見通しで、当期純利益以外の数値を修正

 一方で、同社では2018年度(2018年4月~2019年3月)の連結業績見通しは下方修正した。売上高は2018年5月10日公表値に対して2000億円減、前年比1.5%増の8兆1000億円、営業利益は同400億円減、前年比1.2%増の3850億円、税引前利益は同350億円減、前年比1.7%増の3850億円、当期純利益は公表値を据え置き、前年比5.9%増の2500億円とした。

 修正について梅田 取締役常務執行役員兼CFOは「アプライアンス、オートモーティブ&インダストリアルシステムズの悪化などを反映。足下の経営状況を踏まえて修正を行なった」と説明した。

 オートモーティブ&インダストリアルシステムズは2018年10月31日の公表値に比べ、売上高は850億円減、前年比6%増の2兆9850億円、営業利益は360億円減、前年比28%減の670億円とした。

セグメント別の連結業績見通し。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは売上高、営業利益共に大きく下方修正している

 梅田取締役常務執行役員兼CFOは、「オートモーティブ&インダストリアルシステムズにおいては、開示事業単位のすべてで売上高、営業利益ともに下方修正した。オートモーティブでは、中国における自動車販売の減速によって売上高を下方修正。営業利益では、欧州の一部件名での開発資産の減損や、北米顧客への品質対応にかかる一時費用などを織り込んで大幅に下方修正した。ここでは引き続きグローバル開発管理体制を強化。とくに課題である欧州事業については、件名管理体制の見直しなどを推進して収益改善を図る」とした。

 また、「エナジーでは、円筒形において北米工場の電池生産の期ズレ、角形では中国市場向けの環境対応車の需要減を売上高の減少に織り込んだ。また、リース会計における表示の見積もり差などを加味した。営業利益では、想定よりも北米工場の生産ロス改善が遅れていることなどから下方修正した。円筒形電池についてはオペレーション力強化を図ることで北米工場の稼働を安定させ、角形電池に関しては自動車メーカーに競争力ある電池を広く供給できる事業体制を構築する」とした。

 さらに、「インダストリアルでは、中国市況が悪化していることを受けて設備投資需要が急速に減速。モーターを中心に減販が拡大していることから、売上高、営業利益ともに下方修正した。オートモーティブ&インダストリアルシステムズの下方修正のほとんどがメカトロニクスによるもの。スマホ向け設備を納入するビジネスだが、モーターがかなり落ち込んだ。モーター事業においては中国市況のさらなる悪化に備え、スマホ製品や中国への依存度を低減させながら収益力を強化していく。来期以降も楽観視せずに、こうした状況が続くことを前提にしていく。事業立地そのものを変えていく必要がある」などとした。

オートモーティブ事業の各数値と修正要因など
エナジー事業の各数値と修正要因など
インダストリアル事業の各数値と修正要因など