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パナソニック、2018年度上期(2018年4月~9月)の連結業績。売上高は3.9%増の4兆81億円、営業利益は0.7%減の1952億円

車載関連事業は売上高が前年同期比9%増

2018年10月31日 発表

パナソニック株式会社 津賀一宏社長

 パナソニックは、2018年度上期(2018年4月~9月)の連結業績を発表。売上高は前年同期比3.9%増の4兆81億円、営業利益は同0.7%減の1952億円、税引前利益は同1.3%増の1972億円、当期純利益は同4.5%減の1136億円となった。

 そのうち、車載関連事業を行っているオートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が前年同期比9%増の1兆4696億円、営業利益は同26%減の290億円となった。

 また、第2四半期(2018年7月~9月)のオートモーティブ&インダストリアルシステムズの売上高は前年同期比7%増の7358億円、営業利益は同77億円減の136億円となった。

2018年度2Q連結業績
事業別の売上高増減
事業別の営業利益増減
セグメント別実績
セグメント情報
セグメント別見通し修正
セグメントの見通し修正
オートモーティブ事業 セグメント別見通し修正
エナジー事業 セグメント別見通し修正

 パナソニックの梅田博和取締役常務執行役員兼CFOは、「オートモーティブ&インダストリアルシステムズのうち、オートモーティブは、国内および北米カーメーカー向けインフォテインメント、ADAS・電動化関連の売上が好調に推移したが、営業利益は開発費などの増加によって減益になった。エナジーは、円筒形を中心にした車載電池が大きく伸長したほか、蓄電システムも堅調に推移して増収となったが、営業利益は車載電池工場の立ち上げ費用などによって減益になった」と総括した。

 パナソニックでは、車載向けリチウムイオン電池を中心に急拡大する二次電池事業において、4月1日付で顧客・業界別に事業を再編。効率的な開発体制のもとで成長戦略を加速しているところだ。さらに、7月にはインドネシアにおいて、本田技研工業と着脱式可搬バッテリーと電動2輪車を用いたバッテリーシェアリングの実証研究を開始することに合意。さらに、トヨタと発表した車載用電池の共同開発での協業についても、「引き続き協議を進めており、それは順調に進んでいる」(パナソニック・津賀一宏社長)としているという。

 同社では、2018年度通期見通しについて当初計画を据え置いたが、セグメント別の業績見通しを変更。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高は上方修正、営業利益は下方修正を発表した。2018年5月の公表値に比べて、売上高では700億円増の3兆700億円、営業利益は330億円減の1030億円としている。また、その内訳は、オートモーティブの売上高が590億円増の9817億円、営業利益が160億円減の274億円。エナジーの売上高が300億円増の7880億円、営業利益が70億円減の221億円としている。

「日米のインフォテインメントは好調に推移しているものの、欧州や中国では苦戦している状況や、開発費や固定費の増大、米国関税リスクなどを営業利益の修正額に織り込んだ。インフォテインメントの課題は、開発プロセスの管理であり、とくに欧州地域での開発費コントロール力が重要なテーマになっている。これらの解決を図るべく、グローバル開発管理体制を最適化するとともに、プラットフォームの共通化を進め、収益性向上に取り組む」とした。なお、「2017年度の課題であったインフォテインメント領域におけるモノづくりのオペレーションの混乱は収束した」としている。

 また、テスラ向け電池生産の影響が大きいエナジー事業において、営業利益の年間見通しを下方修正する理由として、北米のテスラ向け車載電池工場の急速な立ち上げを挙げている。

「北米車載電池工場での急速な立ち上げに伴い、追加的な費用が生じていること、また、急激に生産を拡大していることから一時的に生産効率が低下し、生産ロスが生じている。こうした状況を踏まえ、北米電池工場での安定的な生産オペレーションの定着を早急に図る。今年度内には、北米工場の35GWh分の生産体制を確立し、下期以降、確実に増販益の刈り取りを進めるほか、いっそうの材料合理化や固定費削減を進め、収益を伴った成長を実現する」と説明した。

 なお、2018年度(2018年4月~2019年3月)のパナソニック全体の連結業績見通しは、売上高は前年比4.0%増の8兆3000億円、営業利益は11.7%増の4250億円、税引前利益は10.9%増の4200億円、当期純利益は5.9%増の2500億円としている。

 パナソニックには4つのカンパニーがあるが、その中でもオートモーティブ&インダストリアルシステムズは最大の売り上げ規模を誇る。その業績を大きく左右しているのがテスラとの協業であることは間違いない。

 今回の上期業績の減益および通期見通しの営業利益の下方修正は、いずれもテスラの影響を大きく受けたものといっていい。

 パナソニックが車載電池を供給しているテスラ初の大衆車となる「モデル3」は、ここにきてようやく量産が安定化。今年夏以降、週5000台の生産体制を確立している。

「テスラ向けのエナジー事業は、第1四半期がボトムとなり、それ以降、立ち上がっているが、それが急激であったため、立ち上がりのカーブでの生産ロスと、立ち上げに多くの人を割いためコストが増加している」と、パナソニックの梅田博和取締役常務執行役員兼CFOは説明する。

パナソニック株式会社 梅田博和取締役常務執行役員兼CFO

 津賀社長も、「なかなか立ち上がってこなかったが、テスラの車両の生産量が急激に上がり、一時的には電池の方が作り負けをしていたところがあった。電池の量産も軌道に乗ってきており、クルマと電池の量産が、やっと歩調が合いつつあるというのが今の状況」と述べ、「最初は生産が遅れたり、その後、生産が立ち上げるとわれわれが生産する電池が足りなくなるという事態が起こっていたが、お互いの歩調合わせに向けて十分なコミュニケーションをとっている」とする。

 立ち上がりの遅れが業績に影響し、さらに、立ち上げの急激さも業績に影響するといった状況は、テスラに振り回されている感が否めないのも事実だ。

 さらに、テスラとのビジネスにおいては、米中貿易摩擦の影響も織り込む必要がある。これも通期の業績修正に影響を与えていることを明かす。

 津賀社長は「米国のテスラ向けの電池工場で使用する材料で一部中国製のものを使用している。これは直接的な関税対象になり、影響が出ることになる。どうやってコストを下げるのかということは、今後、テスラとの話し合いをすることになる」とする。

 そして、テスラのイーロン・マスクCEOによる数々の発言の影響も気になるところだ。

 8月には、株式を非公開化するとTwitterで発言。さらには、モデル3に関して投資家に誤解を与える発言があったことを理由に、FBI(米連邦捜査局)が捜査を開始したとの報道もある。

 津賀社長は「テスラの事業が順調に進まないと、電池事業に対する投資がテスラ向けに使えなくなる。テスラの事業が長期的に安定して成長するということが、われわれにとってはこの事業を進めていく上で絶対条件になる。その絶対条件が崩れないかどうかを絶えず確認しながら、また、絶えずコミュニケーションしながらやっていくことになる。これがわれわれがやるべきことである。契約内容によるリスクヘッジもやっている」と前置きし、「一連の出来事は、心配はしたが、それによってテスラの事業そのものが混乱しているわけではないと判断している。イーロンのことなので、これからどんな発言をするのかは予想がつかないところがあるにせよ、事業に混乱が出ないということをしっかりと見守りながら、われわれは電池の生産で歩調を合わせていく」と語る。

 一方で、年度内に35GWhの生産体制を立ち上げることになるが、それ以降の投資も次のステップとして視野に入れようという動きもありそうだ。

 津賀社長は、「35GWhの電池生産のキャパシティを超えることになれば、テスラとしても、クルマを生産するために大きな投資が必要になる。ここは、電池生産とクルマの生産の歩調を合わせなくてはならない部分である。拡張のタイミングは両社で合わせていくことが基本的な考え方である。これを拡張するというのであれば、パナソニックとしては米国への投資を優先していく。具体的な規模などはテスラと協議している。建物の大きさの制約もあり、どれぐらい詰め込めるかということも考えていく必要がある」などとする。

 今後はテスラ向け車載電池工場における収益を刈り取るフェーズに入っていくことになるが、それがどんな形でパナソニックの業績にプラスになるのか。今後のパナソニックの決算発表において、注目されるポイントになる。