CES 2018

【CES 2018】パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 副社長 上原宏敏氏に聞く

2018年1月9日~12日(現地時間)開催

パナソニック株式会社 執行役員 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 副社長(兼)インフォテインメントシステム事業部長 上原宏敏氏

 米国ネバダ州ラスベガスで開催された世界最大のテクノロジーイベント「CES 2018」。パナソニックは、2018年に創業100年を迎えることに合わせて例年より規模を拡大して出展。同社ブースを見ると数多くの自動車関連技術が展示されており、オートモーティブ事業の存在感を示していた。

 開催期間中、パナソニック 執行役員 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社 副社長(兼)インフォテインメントシステム事業部長 上原宏敏氏の取材会が開催されたので、その模樣をお伝えする。

 取材会では同社のオートモーティブ事業に関する説明があり、パナソニックの売上高7兆3000億円(2016年度実績)のうち、オートモーティブ事業は1兆3000億円で、全体売上の31%を占めていることが示された。上原氏は「2016年度に1.3兆円のものを、2018年度に2兆円(+24%)、その先には2.5兆円を目指しており、(+7%で成長する)業界を大きく上まわる成長を遂げている。とくに快適、安全、環境といった領域で、パナソニックのものづくりの資産が大きく貢献できるのではないかというのが今の思い」と述べた。

オートモーティブ事業について説明する上原氏

 上原氏が担当するインフォテインメントシステム事業については、TV、モバイル製品、デジタルカメラ等のデジタルAVで培った技術として、ディスプレイ、無線通信、光学技術、ソフトウェア、セキュリティ/クラウド技術があることを紹介。「フルTFTメーター」「IRMS(Intelligent Rea-View Mirror System)」「HUD(Head Up Display)」「センターディスプレイ」といったコックピットの要素技術、商材をシステム全体で提案できるのがパナソニックの強みであると強調した。

 上原氏は「クルマに搭載されるディスプレイの大型化、マルチ化が進んでいる。無線通信では将来的には5Gがスタートする。HUDには小さくするための光学技術が求められる。また、我々の強みであるソフトウェアやセキュリティ技術も求められる。コックピットの要素技術や商材を揃え、システム全体で提案ができるのが強み」と述べた。

 今回のCES 2018に同社は、ADASレベル2/部分運転自動化を想定する「スマートデザイン コックピット」、ADASレベル3/条件付き運転自動化を想定する「スマートビジョン コックピット」、ADASレベル5/完全運転自動化を想定する「次世代モビリティ キャビン」といった3タイプのコックピットキャビンシステムのコンセプトを出展し、将来のビジネスに向けた提案を行なった。

ADASレベル2/部分運転自動化を想定した「スマートデザイン コックピット」。4つのマルチディスプレイを連動させ、操作する人に合わせて操作画面を移動させたり、手の動きを正確に感知してストレスのない操作を可能にする「ジェスチャーコントロール」を実現する
ADASレベル3/条件付き運転自動化を想定した「スマートビジョン コックピット」。超ワイドディスプレイと大画面HUD、ドライバーモニタリングシステムを採用したコックピットシステム
ADASレベル5/完全運転自動化を想定した「次世代モビリティ キャビン」。「リビングルーム」「ビジネス」「リラックス」「エンターテインメント」の4つのスタイルで次世代の移動空間を提案する

 直近の提案となるスマートデザイン コックピットについては、高性能グラフィックスエンジンを搭載して4つのディスプレイをコントロールするマルチディスプレイを採用。ドライバーや助手席、同乗者のそれぞれに必要な情報を表示させようというもの。

 上原氏は「マルチディスプレイ化では、クルマの外部から入ってくるセンシング情報をどのディスプレイにどのタイミングで表示するのか、1つのシステムで複数のディスプレイを制御するソフトウェア技術がポイントになる。今回展示したものは、1つのSoCでマルチディプレイの表示を可能にしている」と紹介。加えて、「インテリアデザインにも凝っていて、左からクルマから近づいているといった時、実際の木を使ったサイドパネルを我々のインモールディング技術を使って光らせている。操作性についても、大画面、マルチディスプレイ化になったときにいかにシームレスに制御できるかが重要で、スマートフォンや民生TVでは当たり前のことを車載に持ち込む」と意気込みを述べた。

パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 オートモーティブ開発本部 本部長 水山正重氏

 続けて、インフォテインメントシステムの基盤技術に関してパナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 オートモーティブ開発本部 本部長の水山正重氏が説明した。

 現行ビジネスとして展開する車載機器に関して、車載機器向けOSはLinuxとAndroidへのシフトが進行中であるとし、同社はトヨタ自動車「カムリ」のインフォテインメントにLinuxで初のAGL適用製品を、Android(OAA)としては本田技研工業「アコード」に同社のインフォテインメントが採用されたことを紹介。LinuxとAndroidの両陣営で開発をリードしていると強調した。

 また、将来的にはCPUの性能が上がることで、カーナビ等の情報系のディスプレイ表示と、メーターや運転支援系のディスプレイ表示は、1つのCPU上で動くシステムに集約していくという。

 水山氏は「カーナビや情報系の製品はコンシューマー製品と同じ開発ができたが、メーターや運転支援系の製品に関しては機能安全への適合がOSレベルで求められる。(統合システムを実現する)複数のOSを1つのCPUで動かせるハイパーバイザーという仮想化技術があり、この技術に関しては各社が技術開発の真っ最中。当社は昨年にOPENSYNERGYという会社にM&Aを実施して、インテル、ルネサス、クアルコムといった各社のシステムLSIの上でハイパーバイザーを動かす技術があり、このOPENSYNERGYの持つ技術を駆使して統合コックピットにおけるアドバンテージを発揮する」と意気込みを述べた。

電動化システムとして出展した小型EV向け「ePowertrain」プラットフォーム

 この取材会ではインフォテインメントシステム事業のほか、電動化システムの領域として出展された小型EV(電気自動車)向け「ePowertrain」プラットフォームについても紹介された。

 会場に出展された「ePowertrain」プラットフォームでは、電源システム部(車載充電器、ジャンクションBox、インバータ、DC-DCコンバータ)と駆動部(モータ)を一体化させたIPU(Integrated Power Unit)が展示されていた。

 ePowertrainプラットフォームでは、このIPUを基本にモーターとインバーターを搭載するMTU(Motor Unit)を組み合わせ、車両の大きさや求められる仕様(走行速度やトルクなど)に応じて、MTUを複数組み合わせて使用できるのが特徴となる。

 水山氏は「民生で培ったパワーエレクトロニクスの技術を活かしたもの。他社と比較して電圧の低い48Vを採用するとともに高周波数で制御することにより、小型軽量、省電力なユニットを作ることができた。充電器、ジャンクションBox、インバータ、DC-DCコンバータといったEVの構成要素をコンパクトな1つのユニットとしてIPUに集約したもので、2輪車にはIPUを1台、コミューターのような乗り物にはIPUとMTUを組み合わせて、もう少し大きな乗り物にはIPUとMTU3台を組み合わせて4輪を駆動してパワーを拡大する。EVが普及すると専用形態の乗り物が登場すると想定して、簡単なプラットフォームを提供する」とその特徴を示した。

電源システム部(車載充電器、ジャンクションBox、インバータ、DC-DCコンバータ)と駆動部(モータ)を一体化させたIPU(Integrated Power Unit)の展示
車両の大きさに合わせてIPUを基本にモーターとインバーターを搭載するMTU(Motor Unit)を複数台組み合わせて使用する
持続可能なエネルギー利用を目指すパートナーとの協業を紹介。その一例として台湾ゴゴロとの取り組みなどが展示された
電動スクータ向けのバッテリーシステム

編集部:椿山和雄