【SUPER GT 第2戦 富士】ブリヂストン vs ミシュランの熱いレースが繰り広げられた令和最初の日本のビッグレースで優勝したのは38号車 ZENT CERUMO LC500（立川/石浦組）

令和最初のGT500クラスを制した、38号車 ZENT CERUMO LC500（立川祐路/石浦宏明組、BS）

　5月3日～4日の2日間にわたり、SUPER GT 第2戦「2019 AUTOBACS SUPER GT Round 2　FUJI GT 500km RACE」が富士スピードウェイで開催された。4日には決勝レースが行なわれたが、スタート直前の降雨により、最後の最後まで勝者がわからない波乱のレースとなった。

　GT500で優勝したのは8番グリッドからスタートした38号車 ZENT CERUMO LC500（立川祐路/石浦宏明組、BS）。予選ポールからスタートした23号車 MOTUL AUTECH GT-R（松田次生/ロニー・クインタレッリ組、MI）は2位、1号車 RAYBRIG NSX-GT（山本尚貴/ジェンソン・バトン組、BS）が3位となった。

　GT300は2番手グリッドからスタートした11号車 GAINER TANAX GT-R（平中克幸/安田裕信組、DL）が、前戦も2位だった55号車 ARTA NSX GT3（高木真一/福住仁嶺組、BS）をわずか0.239秒差で下して優勝。3位は88号車 マネパ ランボルギーニ GT3（小暮卓史/元嶋佑弥、YH）だった。

最後の最後まで競り合ってGT300クラスの勝利を手にした、11号車 GAINER TANAX GT-R（平中克幸/安田裕信組、DL）

レース開始直前に降り出した雨により、セーフティカー先導のスタートに

　最終的に約9万1800人と昨年よりも5500人多い観客が詰めかけた富士スピードウェイは、14時前から始まったグリッドウォークの最中に、ポツポツと雨が降り出し、レースがスタートする頃には路面を完全に濡らすまでは行っていないが、雨が降り続く状況に。このためレースはパレードラップとフォーメーションラップを省略し、セーフティカースタートに切り替えれることになった。これにより全車がレインタイヤに交換し、セーフティカーを先頭にしてレースが開始された。

レーススタート直前に雨が降り出したことでセーフティカー先導のスタートに

　セーフティカーが3周目にピットに入りレースがスタートすると、1コーナーを回った段階ではほぼ順位通りだったが、レースが始まると予選2位からスタートした37号車 KeePer TOM'S LC500（平川亮/ニック・キャシディ組、BS）がポールからスタートした23号車 MOTUL AUTECH GT-R（松田次生/ロニー・クインタレッリ組、MI）をダンロップコーナーでオーバテイクし、トップに立った。開幕戦の岡山国際サーキットでもそうだったが、ミシュランのレインタイヤは、ブリヂストンのレインタイヤに比べるとやや暖まりが遅いという傾向は変わっていないようだ。

3周の先導の後にスタート。雨がさらに強くなるのか、あるいはやむのか、判断の難しい状況でのスタートとなった

　しかし、今度はタイヤが暖まってくると、37号車と23号車の差が縮まり、再び逆転する。これで23号車がトップに返り咲く。そうした37号車の背後に迫ってきたのは、8番グリッドからスタートした38号車 ZENT CERUMO LC500（立川祐路/石浦宏明組、BS）だ。立川選手がドライブする38号車は、16号車 MOTUL MUGEN NSX-GT（武藤英紀/中嶋大祐組、YH）や17号車 KEIHIN NSX-GT（塚越広大/ベルトラン・バゲット組、BS）などと競り合いながら3位に上がってきていたのだ。38号車は、ダンロップコーナーで37号車が飛び出した隙などに2位にあがり、13周目の1コーナーで、トップを走っていた23号車をレイトブレーキングで目の覚めるようなオーバーテイクを見せてトップに立った。

　ところが、その次の瞬間に雨が多いということで、セーフティカー導入が宣言され、さらにその2周後には赤旗が掲示され、レースは中断されることになった。

雨脚がさらに強くなり、再びセーフティカーが導入。その後赤旗でレースは一時中断

徐々に乾いていく路面、ミシュランを履く23号車と、ブリヂストンを履く38号車のマッチレースに

　15時33分にセーフティカー先導で再スタート、19周目にレースが再開されると、トップから再スタートした38号車 ZENT CERUMO LC500が2位以下を大きく引き離してトップにたつ。2位を走っていた23号車 MOTUL AUTECH GT-Rはやはりタイヤの暖まりがよくないようで、後ろを走る37号車 KeePer TOM'S LC500が23号車をオーバーテイクし、さらに17号車 KEIHIN NSX-GT、12号車 カルソニック IMPUL GT-R（佐々木大樹/ジェームス・ロシター組、BS）も23号車をオーバーテイクし、23号車はずるずる順位を下げることになってしまった。

　24周目にトップを走っていた38号車 ZENT CERUMO LC500を、37号車 KeePer TOM'S LC500がオーバーテイクしてトップに立つ。そこに一度はタイヤが暖まらず後退していた23号車 MOTUL AUTECH GT-Rが再び2位にあがり、トップの37号車との勝負を征して再びトップに返り咲いた。

　レースのおよそ1/3程度となる40周前後に上位勢はピットに入る。この時に徐々に路面が乾いてきているということもあり、上位勢は全車スリックに交換してピットアウトしていった。スリックに変えた12号車が37号車と接触して、12号車がスピン、この接触は後ろから当たる形になった37号車に責任があると判断され、37号車にはドライブスルーペナルティが出て最後尾に後退することになった。

　全車が1回目のピット作業を終えると、23号車、38号車、3号車、1号車、12号車、17号車、37号車、39号車、64号車、6号車の順になっていた。レースは23号車のGT-Rと38号車のLC500のマッチレースとなっていた。3番手に上がってきた3号車 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R（平手晃平/フレデリック・マコヴィッキィ組、MI）、4番手に上がってきた1号車 RAYBRIG NSX-GT（山本尚貴/ジェンソン・バトン組、BS）以下が1分32秒～33秒台で走っているのに対して、トップの2車はコンスタントに1分31秒台で走っており、ロングランという意味で徐々に3位以下を引き離し始めていた。

　そんな上位2車が1秒以内でマッチレースを繰り広げているなかで、59周目の1コーナーで石浦選手操る38号車が23号車のアウトに並び、そのまま1-2コーナーをクリアすると、コカコーラコーナーではイン側になり、38号車が23号車を抜いてトップに立った。だが、23号車も離されることはなくついて行き、引き続き38号車、23号車と順位を入れ替えてマッチレースが続くことになった。

気温と路面温度がどんどん下がっていく中で、より広い作動温度レンジのブリヂストンを履いた38号車が優勝

　62周目のダンロップコーナーで、36号車 au TOM'S LC500（関口雄飛/宮田莉朋組、BS）がオイルを出してストップ。エンジンなどからも煙を噴いており、なんらかのメカニカルトラブルに見舞われたようだ。また、6号車 WAKO'S 4CR LC500（大嶋和也/山下健太組、BS）にはピット規定違反でピットスルーペナルティを出されてしまい、こちらも10位以下に後退する結果となってしまった。

　2回目のピットストップを終えると、ピットに入る前は2位だった23号車 MOTUL AUTECH GT-Rがトップにあがり、ピット前にはトップを走っていた38号車 ZENT CERUMO LC500が2位になっていた。3位は3号車 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rだが40秒以上トップ2からは離れてしまっており、優勝争いは完全に23号車と38号車の2台に絞られた。

序盤、タイヤの暖まりにくさからか順位を落とした23号車が再びトップに躍り出る

　残り20周になった段階で、38号車が23号車に追いつき2台はテールツーノーズ状態に。毎ラップ毎ラップ、2位を走る38号車が23号車を抜くタイミングをうかがう展開になった。99周目、残り12周となった1コーナーで、38号車をドライブしている立川選手がもう1度レイトブレーキングで、止まれるのか？という勢いで突進し、23号車をドライブするクインタレッリ選手はクロスラインで対抗するものの、1コーナー、2コーナーでアウトのラインをとった立川選手は次のコカコーラコーナーでイン側になり、見事にオーバーテイクが成功。トップにたった。

レースも終盤、気温が下がったせいか、38号車のペースが落ちる。後ろから迫る23号車をブロックして防いでいたが、99週目、ついにトップの座を23号車に明け渡すことに

　この時点で18時に近くなっており、路面温度は17度と大きく下がっている。この路面温度がミシュランを履く23号車と、ブリヂストンを履く38号車の明暗を分けたようだ。というのも、23号車のパフォーマンスが低下するのと期を同じくするように同じミシュラン＋GT-Rの3号車もタイムを大きく落としており、ミシュランが用意した今日のタイヤに低い路面温度がマッチしていないようだった。実際抜かれた後の23号車は38号車からズルズルと引き離されている状況で、タイヤの作動温度領域の広さが明暗を分けた形だ。

　その後のレースの見所は3位争い、39号車 DENSO KOBELCO SARD LC500（ヘイキ・コバライネン/中山雄一組、BS）、1号車 RAYBRIG NSX-GT、17号車 KEIHIN NSX-GTが追いつき105周目の1コーナーで山本選手がドライブする1号車が39号車をオーバーテイクし、表彰台の一角へと食い込んだ。

　結局38号車 ZENT CERUMO LC500は最終的に2位の23号車 MOTUL AUTECH GT-Rに20秒近い差をつけて優勝。3位は1号車 RAYBRIG NSX-GT、4位は39号車 DENSO KOBELCO SARD LC500、5位は17号車 KEIHIN NSX-GT、6位は3号車 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rとなった。

38号車にパスされた後は徐々に差を広げられ、20秒近い差を開けられてGT500クラス2位になった23号車 MOTUL AUTECH GT-R

GT500クラス3位は1号車 RAYBRIG NSX-GT

GT500クラス優勝の38号車 ZENT CERUMO LC500（立川祐路/石浦宏明組、BS）

GT500クラス 獲得ポイント

順位	車番	ドライバー	第1戦	第2戦	合計	次戦WH
1	23	松田 次生/ロニー・クインタレッリ	8.5	15	23.5	47
2	38	立川 祐路/石浦 宏明	1.5	20	21.5	43
3	8	野尻 智紀/伊沢 拓也	10	2	12	24
4	1	山本 尚貴/ジェンソン・バトン	-	11	11	22
5	3	平手 晃平/フレデリック・マコヴィッキィ	4	5	9	18
6	39	ヘイキ・コバライネン/中山 雄一	-	8	8	16
7	17	塚越 広大/ベルトラン・バゲット	-	6	6	12
8	12	佐々木 大樹/ジェームス・ロシター	5.5	ｰ	5.5	11
9	37	平川　亮/ニック・キャシディ	-	4	4	8
10	24	高星 明誠/ヤン・マーデンボロー	3	-	3	6
11	6	大嶋 和也/山下 健太	-	3	3	6
12	19	国本 雄資/坪井　翔	2.5	-	2.5	5
13	16	武藤 英紀/中嶋 大祐	2	-	2	4
14	64	ナレイン・カーティケヤン/牧野 任祐	0.5	1	1.5	3
15	36	中嶋 一貴/関口 雄飛	1	-	1	2

GT500クラスの表彰式

スタートしてすぐトップに立った11号車が独走、最後は55号車が追い上げたが0.239秒差で逃げ切り優勝

　GT300のレースも、降雨の中でセーフティカースタートとなった。いずれも予選順位どおりで1コーナーに入っていったが、2番手グリッドからスタートした11号車 GAINER TANAX GT-R（平中克幸/安田裕信組、DL）が、7周目にポールからスタートした56号車 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R（平峰一貴/サッシャ・フェネストラズ組、YH）を抜きトップに立つ。序盤のもう1台のスターとなったのは予選8位からスタートした、34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3（道上龍/大津弘樹組、YH）。34号車はスタートでするすると順位を上げて4位にあがって来たのだ。

GT300クラス、スタート直後は予選順位どおりだったが、7週目に11号車 GAINER TANAX GT-Rがクラストップに立つ

　セーフティカー導入からの赤旗になってから再開後、3位に上がっていた55号車 ARTA NSX GT3（高木真一/福住仁嶺組、BS）が1コーナーで止まりきれずオーバーシュート。これで4位に後退して、代わって34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3が3位に上がり表彰台圏内になった。

　ところが、その34号車は30周目に他車より早くピットに入りレインからレインへ交換し、大津選手から道上選手にドライバー交代して再スタート。ところが、その数周後にピットに入ったチームはいずれもドライへの交換を選択。そこから暫く走ると、路面はドライへと移行して34号車はもう一度ピットに入ってドライタイヤへと交換せざるを得ない状況に追い込まれた。その結果34号車は周回遅れになってしまい、トップ争いから後退してしまった。

　そうした2回のピット作業が終わると11号車 GAINER TANAX GT-R、55号車 ARTA NSX GT3、56号車 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R、88号車 マネパ ランボルギーニ GT3（小暮卓史/元嶋佑弥、YH）の順になっていた。

　この段階で、1位と2位、3位と4位はいずれも数秒の範囲内で、1位から4位までも10秒差以内という大接戦のレースが展開されていた。残り4周で88号車が1コーナー、2コーナーで見事なオーバーテイクを見せて3位表彰台圏内に浮上し、そして1位の11号車 GAINER TANAX GT-Rと2位55号車 ARTA NSX GT3も1秒以内の大接戦になり最終周回まで激しい争いが展開されることになった。

GT300クラストップの11号車 GAINER TANAX GT-R、そのすぐ背後には55号車 ARTA NSX GT3が僅差で迫り、最後の最後まで接戦を繰り広げた

　最終周のセクター3で完全に追いついた55号車 ARTA NSX GT3が何度も11号車 GAINER TANAX GT-Rに仕掛けるが抜くに至らない。そして最終コーナーでクロスラインで11号車を抜きに行った55号車だがバランスを崩して最終コーナーのトラクションがやや足りず、ストレートで若干離されてしまい勝負あり。11号車 GAINER TANAX GT-Rがわずか0.239秒引き離して優勝、2位は2戦連続で55号車 ARTA NSX GT3となった。3位は88号車 マネパ ランボルギーニ GT3、4位はポールからスタートした56号車 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R、5位は昨年のチャンピオンチーム65号車 LEON PYRAMID AMG（黒澤治樹/蒲生尚弥組、BS）、6位は4号車 グッドスマイル 初音ミク AMG（谷口信輝/片岡龍也組、YH）となった。

GT300クラス2位は55号車 ARTA NSX GT3

GT300クラス3位は88号車 マネパ ランボルギーニ GT3

GT300クラス優勝の11号車 GAINER TANAX GT-R（平中克幸/安田裕信組、DL）

GT300クラス 獲得ポイント

順位	車番	ドライバー	第1戦	第2戦	合計	次戦WH
1	55	高木 真一/福住 仁嶺	8.5	15	23.5	47
2	11	平中 克幸/安田 裕信	-	20	20	40
3	88	小暮 卓史/元嶋 佑弥	0.5	11	11.5	23
4	56	平峰 一貴/サッシャ・フェネストラズ	3	8	11	22
5	96	新田 守男/阪口 晴南	10	-	10	20
6	65	黒澤 治樹/蒲生 尚弥	2.5	6	8.5	17
7	4	谷口 信輝/片岡 龍也	1.5	5	6.5	13
8	52	脇阪 薫一/吉田 広樹	5.5	-	5.5	11
9	61	井口 卓人/山内 英輝	4	-	4	8
10	60	吉本 大樹/宮田 莉朋	2	2	4	8
11	33	ショウン・トン/マーチー・リー/道見 真也	-	4	4	8
12	21	リチャード・ライアン/富田 竜一郎/アレッシオ・ピカリエロ	-	3	3	6
13	34	道上　龍/大津 弘樹	1	-	1	2
14	10	星野 一樹/石川 京侍	-	1	1	2

GT300クラスの表彰式