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ワークスドライバーが語るアストンマーティンの楽しみ方

アストンマーティンワークスドライバー、ダレン・ターナー選手に聞いた

2019年8月1日 開催

アストンマーティンワークスドライバー、ダレン・ターナー選手

 アストンマーティン・ジャパンは8月1日、来日中のアストンマーティンワークスドライバー、ダレン・ターナー選手のメディア向けインタビュー会を開催した。

 会場は、東京都港区北青山にあるアストンマーティン ブランドセンター。ヴァンテージを眺めながらくつろげる応接スペースでインタビューは始まった。

 まず、今回の来日の理由だが、これは8月3日~4日に富士スピードウェイで開催されるSUPER GT 第5戦「AUTOBACS SUPER GT Round5 FUJI GT500mile RACE」に参戦するため。ターナー選手がドライブをするマシンは、GT300クラスで出走する7号車の「D'station Vantage GT3」で、藤井誠暢選手、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手とチームを組む。

 この参戦についてターナー選手は「SUPER GTを走るのは初めての経験になりますが、とても楽しみにしています。D'stationとはスーパー耐久シリーズですでに2回組んでいるのでここは心強いところであります。ちなみにスーパー耐久シリーズでは富士と鈴鹿を走り、鈴鹿では勝っています」と言う。

 SUPER GTについては「ヨーロッパでも非常に注目の高いレースです。もちろん私も注目していて、とくに興味があるのはGT500とGT300が混走しているということです。おそらく両クラスとも大変レベルが高いものだと思っているので、そのレースに参加できることにとてもワクワクしています」と意気込みを語った。

 そして「このレースにおいて私にとっての大きなチャレンジがヨコハマタイヤを使用するということです。初めて使うヨコハマタイヤをどれだけ早く理解でき、特性をつかめるかがポイントですね。そんなことから非常にエキサイティングな週末になると期待をしています」と語った。

来日して驚いたのは日本の気温だという。先頃イギリスでも高温に見舞われたが、日本は湿度も高く、そこがレースでは厳しく感じるかもしれないと語った。ただヴァンテージ GT3にはエアコンが付いているのでそれほど心配はしていないとのことだ

 SUPER GTとタイヤの話はやはり気になるので、まずは、初めて使用するヨコハマタイヤをどう理解していくのかを聞いてみた。

 するとターナー選手は「D'stationはスーパー耐久で一緒に戦っているのでチームの雰囲気はある程度は分かっています。また、このチームには2人の経験豊富なドライバーがいるのでプラクティスから適切なアドバイスがもらえると思っています」と語った後「スーパー耐久シリーズではピレリを履いていました。このタイヤはヨーロッパのブリティッシュGTで使うタイヤに近いので理解することは容易でした。しかし、SUPER GTはタイヤメーカーの競争が激しいジャンルであるので、その中で戦うヨコハマタイヤについては使ってみないとなんとも言えません。だからタイヤを理解するためにはとにかく走ること、これが何より大切です。やり方としては5周ほど走った段階でテレメトリーのデータをチェックしますが、ここでは自分のデータだけでなくチームメイトのデータとも比較して、疑問があったらレギュラードライバーの2人にどんどん質問していきます。適切な温度や空気圧などですね。また、ドライバーごとのセクタータイムなども比較して検討していくことが大切でしょう。」と答えてくれた。

ヨコハマタイヤを使うのは初めてなので、限られた時間を有効活用し特性を掴みたいと語った。そのためにはチームメイトのアドバスも受けていくとのこと

開発ドライバーとして「ヴァンテージ GT3」について聞く

 さて、ターナー選手はアストンマーティンのレース用マシンである「ヴァンテージ GT3」の開発ドライバーを務めていた。そこでこのマシンについての質問が出た。

 ターナー選手は「以前のヴァンテージ GT3と今のマシンではとくに空力の面が強化されています。ここは大きなポイントです。そしてエンジンですが、旧型はNAのV12エンジンです。それに対して新型はV8のターボになりました。ここはドライブフィールに関して大きな違いのように思えるかも知れませんが、ドライバーから見ると実は些細な違いでしかないのです。ただ、その僅かな特性の違いをしっかりとアジャストできるかどうかがとても大事なことになります。なお、ヴァンテージ GT3は旧型からドライビングがしやすいクルマで、そこは新型のヴァンテージ GT3にも受け継がれています。ヴァンテージ GT3は“速くて運転しやすい”というのが特徴のクルマなのです」と語った。

 そしてGT3マシンとヴァンテージのロードカーとの繋がりについては「開発の初期段階ではロードカーのヴァンテージを“偉大なロードカーである”ことを開発の使命としていました。そうして作りあげられた“偉大なロードカー”の部分は、GT3マシンを作る際にもしっかりと受け継がれています」と説明した。

ヴァンテージ GT3とライバルの違いについて、中高速コーナーが大きな違いになるとのこと。富士スピードウェイでは100Rや300Rがそれにあたる。ただ、ターナー選手はヨコハマタイヤはGR Supraコーナーが得意ではないかとコメントした

 次にロードバージョンのヴァンテージについて。ターナー選手によると「私は現在ヴァンテージに乗っています。自分のガレージにこのヴァンテージが止まっているのを見ると“いいな”と毎日感じています。そしてドライバーとして印象ではとにかく使い勝手のいいクルマです。毎日使えるクルマだと思います。私は郊外に住んでいるのでクルマを走らせるには適した道がたくさんあり、そこを走る度にクルマと人が一体になる感覚が得られます。とくにハンドリングはエンジニアが非常にいい仕事をしているので、常に4輪のタイヤが路面をつかむ感覚があって安心感が高く,しっかりしたフィードバックも得られています。なお、ヴァンテージは将来的にはATと7速MTから選べるようなります。これはヴァンテージに乗られる方にはいいニュースだと思います。その他ヴァンテージではエンジンのパフォーマンスや気持ちを昂ぶらせるエキゾーストノートも気に入っています」とオーナーとしての意見も含めてヴァンテージを紹介した。

アストンマーティン ヴァンテージ(ロードカー)。エンジンは4.0リッターV8ツインターボ。今後は7MTモデルが追加されるとのこと

開発ドライバーに聞くアストンマーティンに乗る時の心得

 そんなヴァンテージを含むアストンマーティンのラインアップだが、こうしたクルマは乗っていると非常の注目を集めるし、クルマの持つ魅力的にも“らしい乗り方”や“クルマといるときの振る舞い方”にこだわりを持ってほしいと言う気持ちがあった。

 そこでターナー選手に最後にアストンマーティンのワークスドライバーとして、アストンマーティンのクルマに乗る際に心がけて欲しいマナーや振る舞いはあるのか尋ねてみた。

 するとターナー選手は「とても難しい質問ですね。こんなことを聞かれたのは初めてだよ」と言いつつ「ユーザーの1人ひとりがアストンマーティンの楽しみ方を見つけて、それを軸にアストンマーティンを味わって欲しいと思います。そしてアストンマーティンに乗っていただくのであれば、ドライバーシートに座って仏頂面をするのではなく、アストンマーティンに乗る楽しみからくるジェントルなほほえみをたたえていただきたい。それにアストンマーティンで出かけるすべての旅行がよい記憶に残るものになって欲しいと思います。私はレーシングドライバーとして恵まれた環境にいますし、日々、アストンマーティンというスペシャルなクルマを自分の足として使えています。これらは大変幸福なことです。今回の日本行きに関してもヒースロー空港のターミナル5に自分のクルマを止めて荷物を降ろし、ドアをロックしてということをしてきましたが、アストンマーティンならそれだけでもスペシャルな気分になれます。オーナーの方、またはこれからオーナーになられる方には自分なりのアストンマーティンとの楽しみを見つけていただきたい。そうしたことができるようクルマを作っているのがアストンマーティンなのです」と語ってくれた。

何気ないクルマの使い方であってもアストンマーティンはスペシャルな気分にさせてくれると語る。そして乗るときは楽しさから来るジェントルなほほえみをたたえて欲しいとのコメントした

 ここでターナー選手へのインタビューは終了。インタビュー中は笑顔が多かったターナー選手だが、次の日には富士スピードウェイに移動してレースウィークへ入る。すると表情はレーシングドライバーのそれとなるだろう。そしてインタビューでも答えていたように、初めてのレース、初めてのタイヤの攻略を開始する。そしてその結果は土曜日の予選、日曜日の決勝で見られるので、サーキットへ行く人はもちろん、TVで観戦する人もこのラウンドはいつも応援しているクルマのほかに「7号車 D'station VantageGT3」にも注目していただきたい。