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「空飛ぶクルマ」実現に向け福島県 内堀知事と三重県 鈴木知事らが構想発表。5地方公共団体による構想発表会
空の移動革命に向け福島、三重、東京、愛知、大阪の構想発表
2019年8月5日 20:25
- 2019年8月2日 開催
経済産業省と国土交通省は8月2日、日本における「空飛ぶクルマ」の実現を目指す「地方公共団体による空の移動革命に向けた構想発表会」を開催。福島県、三重県、東京都、愛知県、大阪府の5都府県が空の移動革命に向けた構想を発表した。
発表会では、福島県知事 内堀雅雄氏と三重県知事 鈴木英敬氏が自らプレゼンテーションを行なったほか、東京都 戦略政策情報推進本部 事業推進担当課長 藤林健太郎氏、愛知県 経済産業局長 伊藤浩行氏、大阪府 商工労働部 成長産業振興室 副理事 中原淳太氏が登壇して構想を話した。
「福島ロボットテストフィールド」を空飛ぶクルマの評価拠点に
福島県知事 内堀雅雄氏は「福島ロボットテストフィールドを中心とした空の移動革命への構想」と題して、2020年春に全面開所予定の「福島ロボットテストフィールド」の紹介を中心とするプレゼンテーションを実施した。
福島ロボットテストフィールドは、無人航空機、災害対応ロボット、自動運転ロボット、水中探査ロボットといった陸・海・空のフィールドロボットを主対象に、実際の使用環境を拠点内で再現しながら研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練を行なうことができる研究開発拠点。
南相馬市・復興工業団地内の東西約1000m、南北約500mの敷地内に「無人航空機エリア」「インフラ点検・災害対応エリア」「水中・水上ロボットエリア」「開発基盤エリア」を設けるとともに、浪江町・棚塩産業団地内に長距離飛行試験のための滑走路を整備する計画。
内堀氏は「福島ロボットテストフィールドでは産学官の連携により、ロボットの安全性を評価できるナショナルセンターになることを目指しています。自動車で例えますと、自動車教習所や車検場で行なう評価のルールを検討して実際に評価できる拠点になることです。まずはドローンにおいて主要業界団体、大学、研究開発法人と連携協定を締結して、操縦、機体、運行管理の評価手法の在り方をともに検討しており、ドローンの制度構築に深く関与していきたいと考えています」と述べるとともに、「こうした取り組みは、空飛ぶクルマにおいても2023年の事業スタートに必要な制度構築に向けて応用できるものと考えています。また、ロボットテストフィールドにはすでに東北大学やドローン関連事業者が入居を決めております。本日から追加の入居者募集を開始しております、研究室から1歩外に出ると目の前に試験フィールドがある環境で、開発サイクルを加速させるお手伝いをいたします」との考えを示した。
加えて、内堀氏は「福島県は、東日本大震災、原子力災害からの復興のためにも、被災地からのイノベーションを起こすためにも、本日ご来場している皆さん、空飛ぶクルマの関係者の皆さまに対して、開発環境のご提供、制度構築のお手伝いをしっかりするためこれからも力を尽くしていきたい」との意気込みを語った。
三重県知事 鈴木英敬氏。ビジネスモデルの検証や社会実装に適した地であることをアピール
三重県知事 鈴木英敬氏によるプレゼンテーションでは、三重県による構想として「離島や過疎地域などでの生活支援」「観光資源や新たな移動手段」「防災対策や産業の効率化」の3つの活用テーマを中心として、地域課題の解決、地域生活の質の維持向上を図るとともに、新たなビジネスの創出を目指すという。
将来的には、中部国際空港や関西国際空港、名古屋駅といった近隣空港、ターミナル駅と三重県の主要都市、観光地をエアモビリティで結ぶことや、エアモビリティが活躍する社会の到来を前提とした都市戦略や産業戦略の構築が必要であると説いて、ビジネスモデルの検証や社会実装、サービスインの地として、三重県がさまざまな展開を望むことができる地であることを強調した。
自動運転、ドローン、ロボットとともにエアモビリティへの取り組みも強化する東京都
東京都 戦略政策情報推進本部 事業推進担当課長 藤林健太郎氏によるプレゼンテーションでは、東京都では自動運転、ドローン、ロボットと社会課題の解決に関する先端テクノロジーの普及拡大に向けた取り組みを行なってきたことを強調。今後空飛ぶクルマを始めとするエアモビリティへの取り組みも強化していく考えを示した。
今後の取り組みとして、ロードマップに則して実用化までの各フェーズで必要となる取り組みを推進。具体的には、市区町村とも連携して都内での実証フィールド提供のための調整、社会的受容性を高めていくような取り組みとしてデモ飛行イベントなどの企画、空飛ぶクルマを活用したビジネスモデル構築に向けた検討を進めるとしている。
空飛ぶクルマの開発生産拠点を目指す愛知県
愛知県 経済産業局長 伊藤浩行氏によるプレゼンテーションでは、愛知県のモノづくり産業は自動車産業、航空宇宙産業、ロボット産業と空飛ぶクルマに必要な要素技術が集積していることを強調。空飛ぶクルマの開発生産拠点を目指すことを示した。
これまでに愛知県では、ドローン実証実験実績は60社以上、400回以上の実績があり、また、豊田市ではCART!VATOR/SKYDRIVEと空飛ぶクルマ開発で連携協定を締結するなどの実績があるという。今後についても、引き続き空飛ぶクルマの実証実験に活用できる新たなフィールドの調査を続けるとともに、空飛ぶクルマの研究開発をサポートしていくとしている。
バッテリー関連産業の進出支援などを構想する大阪府
大阪府 商工労働部 成長産業振興室 副理事 中原淳太氏によるプレゼンテーションでは、大阪府におけるビジネス展開としては、関西2000万人マーケットの中心にある、統合型リゾートの夢州への誘致といったポテンシャルがあることを強調。開発拠点としては、バッテリーやセンサーなどの構成部材の供給メーカーなど、多くの関連企業が立地していることを挙げた。
大阪府によるビジネス化支援では、産業化戦略センターによる金融機関やベンチャーキャピタルなどの民間事業者との連携のほか、バッテリー戦略推進センターによるバッテリー関連産業の大阪府への進出支援、大学や研究機関、評価機関などとのタイアップコーディネートなどを挙げた。
空飛ぶクルマと空の移動革命の実現に向けて福島県と三重県が協力
この地方公共団体による空の移動革命に向けた構想発表会開始前に、同会場において福島県と三重県が主催する「空飛ぶクルマと空の移動革命の実現に関する福島県と三重県による協力協定締結式」が行なわれた。
福島県と三重県の協力協定では、両県が連携して事業者による空飛ぶクルマの開発から活用までを支援して、空の移動革命実現に向けて取り組むとしている。協定内容は「実証実験等を実施する事業者等への支援及び関係機関との調整」「実証実験等において得られた知見及び情報の共有」「実証実験等を踏まえた制度や体制の整備に向けた関係機関等への提言」「空の移動革命の実現に向けた機運醸成」「その他目的を達成するために必要な事項」という5項目。
福島県知事 内堀雅雄氏は「東日本大震災と原発事故から8年あまりが経ちました。福島の復興は着実に前進しています。一方で福島県の海側の地域、浜通りと言いますが、この地域は地震、津波、原発事故、風評被害、この複合災害をすべて直接受けています。であるがゆえに、まだまだ厳しい状況が続いています。この地域を福島イノベーション・コースト構想というビジョンで大きく地域再生をしていきたいという思いで取り組んでいます。そのイノベーション・コースト構想の中核となるのが福島ロボットテストフィールドです。福島ロボットテストフィールドでは空飛ぶクルマの試験飛行ができます、すでに30を超える企業、研究機関がドローンや空飛ぶクルマの研究開発を進めており、今回の三重県さんとの協定を機に、福島イノベーション・コースト構想がさらに前に進むことに期待しています」と述べた。
三重県知事 鈴木英敬氏は「私が大学1年生のときに、当時原町市にありました自動車教習所に通って初めてクルマを運転することができたのが福島県。未来に向かって福島県とともに空飛ぶクルマのビジネスに向かってやっていける。そういうご縁ができたことを大変嬉しく思います。私は全国知事会の危機管理・防災対策特別委員会委員長、東日本大震災復興本部の副本部長を務めています。そういう観点で福島県の復興に全力で取り組んでいきたい強い気持ちを私自身も持っていますし、私を支えてくれる三重県職員や関係する企業の皆さんもそういう気持ちを大いに持っています。福島県と三重県の今回の協定締結を機に、福島の復興が進む、三重県の人口減少などの課題解決が進む形にしていきたい。福島県さんとは農林水産物でGAPの取得について連携しています。次世代に未来に向かってタッグを組むのが福島県と三重県です」との意気込みを語った。
この福島県と三重県の協力協定に向けて、経済産業副大臣 関芳弘氏、国土交通副大臣 大塚高司氏、福島ロボットテストフィールド 所長の鈴木真二氏、空飛ぶクルマ開発に関わっているCARTIVATOR 共同代表・ SkyDrive 代表取締役 福澤知浩氏、テトラ・アビエーション 代表取締役 中井佑氏、ドローンファンド 代表パートナーの千葉功太郎氏らがあいさつの言葉を述べた。
空飛ぶクルマを取り巻く現状について、ドローンファンド 代表パートナーの千葉功太郎氏は「世界との戦いの中で、ドローンとか空飛ぶクルマ、エアモビリティで(日本は)遅れているんじゃないかと思われていますが、そんなことはまったくございません。製品開発だけで見れば、中国 深センやアメリカのスタートアップで進んでいるところが数多くあります。ただ、日本が素晴らしいのは、官民学が完全に一緒になっているところ。これだけの先進国の中で『2023年までに事業化するぞ』『エアモビリティを飛ばすぞ』『実証実験、社会実装までもっていくぞ』と言い切った国がありますか? ここが日本のすごいところ」と評価。さらに千葉氏は「日本は新しいことに臆病だと言われますが、そんなことはまったくございません、空に関してはかなりアグレッシブにいい意味でリスクを取っている。今でこそ“空の産業革命”を推し進めるチャンスだと思います」との考えを話した。
先日、航空パイロットのライセンス訓練で1人でのフライトに成功したという千葉氏は「僕は1歩先を行って空を自由に飛ぶというのを先にやっています、空を使うのは自由です。既存のインフラに頼る必要なく、自由に行きたいところへ飛べる、こんな未来を皆さんに味わってほしいですし、これは日本の社会の力、そしてクルマに次ぐ新しい日本の産業になると確信しています」と空飛ぶクルマへの期待感を語った。