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「F1のPU開発は、軽自動車開発と同じ」、ホンダF1優勝の立役者 HRD Sakura センター長 浅木泰昭氏が語る
レギュレーションを理解するところから開発は始まる
2019年9月27日 19:40
本田技研工業は9月25日、本社内においてホンダのF1活動についての説明会を開催した。この説明会は、10月11日~13日に鈴鹿サーキットで開催される「2019 F1日本グランプリ」をより楽しく見てもらうため、ホンダの取り組みについて解説を行なったもの。
本記事では、本田技術研究所 HRD Sakura センター長 兼 F1プロジェクト LPL 浅木泰昭氏が語った、ホンダ F1 PU(パワーユニット)の開発についてお届けする。
浅木氏は、最初に自身の略歴について紹介。浅木氏とF1の関わりはホンダ第2期F1の開始直前から始まり、第2期F1参戦へ向けてのエンジン開発の初期メンバーであったとのこと。初期は浅木氏と上司の2人のみの開発であり、その後の成功はよく知られているとおり。浅木氏自身は1986年から市販車のエンジン開発に異動。レジェンドやオデッセイなどのV型6気筒エンジンの開発を行なってきた。その後、現在のホンダを象徴する大ベストセラー車「N-BOX」シリーズを開発責任者として生み出す。
N-BOX登場以前のホンダの軽自動車は、他社に負けている部分が多く、セールス的にも振るわない部分もあった。浅木氏はそれを「逆手にとって」N-BOXシリーズ、Nシリーズを生み出したという。
当時のホンダの軽は生産量が少なかったため、新しい軽自動車を一から設計でき、新しいエンジン、センタータンクレイアウトなどの新しい構造を導入。軽自動車というレギュレーションを読み込むことにより、最大のスペースを持つなど、他社を圧倒的に超えるクルマを作れたという。
浅木氏によると、F1のPU開発も軽自動車開発と同様にレギュレーションを読み込むことが大切だという。レギュレーションを読み込み、なにができて、なにができないのかを理解することが大切で、可能な部分に対して注力していくとのこと。
現代のF1のPUでポイントとなるのが、内燃機関エンジンによる運動エネルギーを回生・アシストするMGU-Kと、排気系の熱エネルギーを回生・回収して運動エネルギーとしてアシストするMGU-Hというハイブリッド機構があること。MGU-KのKはKinetic、つまり力学を表わし、MGU-HのHはHeat、つまり熱を表わしている。MGU-Kについては、足軸回生2MJ/Lap、アシスト4MJ/Lapという縛りがあり、ラップタイムが最短となるようなマネジメントが必要だが、ここは工夫の上限があるとのこと。
一方、MGU-Hについては、ターボ回生・アシスト無制限のため、このMGU-Hをどう使うかが大きなポイントだと言う。例えばその使いこなしの一つとして挙げられていたのが、ターボのタービンを電動で回すことによる背圧の低下。ターボのため過給圧の増加に使うのはもちろんだが、適切に回すことで排気圧力の低下にも使えると言う。排気の圧力を下げることで、空気がより効率よくエンジンの中に入るため、燃焼にも好影響があるとのことだ。
気になるのは、シーズン2勝を挙げたホンダPUの競争力。これについては、メルセデスやフェラーリに追いつきつつあるとし、「フェラーリに余力がなければ追いついてきている」と予測。イタリアGP、シンガポールGPではフェラーリの最大スペックが見極められていないものの、鈴鹿へ向けての取り組みは行なっているとのことだった。
【お詫びと訂正】記事初出時、OEM供給を受けた軽自動車がありとしていましたが、ホンダは軽自動車のOEM供給を受けていません。該当箇所については削除し、お詫びして訂正させていただきます。