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奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2018」(前編)
発売前のIII型のEF600mm F4Lで撮影してみた
2018年11月14日 11:00
Car Watch創刊の2008年から毎年掲載している「撮ってみましたF1日本グランプリ」。2018年は11回目となり、気分的には2ndシーズンに入ったと感じていて、少しリニューアルを考えている。10回目となった2017年は「よくこんなネタが10年も続いたなあ」と思ったが、F1日本グランプリは3年の延長契約で2021年までの開催が決まった。14年連続掲載を目標に心機一転でお届けしたい。
とは言え、過去記事を読んでいる人はご存じだと思うが、この記事はさして役に立たない話が多い、筆者の私的な撮影記。個人のブログといった感じなのでご了承いただきたい。
筆者は2018年のF1日本グランプリの結果に大いに満足している。「えっ」と思われた読者もいるだろう。レースはハミルトン選手の圧勝。ベッテル選手は序盤にスプーンでフェルスタッペン選手と接触してほぼ最後尾まで落ち、ドイツグランプリ、イタリアグランプリなどに続く「オイオイ」という内容だった。
筆者が満足した結果は観戦者数だ。決勝日は2017年の6万8000人に対して8万1000人(119.1%)、3日間の延べ人数は2017年の13万7000人に対して16万5000人(120.4%)と、対前年比で約20%の増加となった。決勝日の対前年比19.1%増は富士スピードウェイの2年を含めた32年間で最大の伸び率となった。素晴らしい、うれしい、満足だ。そして鈴鹿サーキットに観戦に訪れたファンとサーキット関係者に感謝したい。
ここ数年更新しているF1日本グランプリの観戦者数推移のグラフもチョットだけ上昇した。小さな数字で見づらいが、今回のグラフから決勝日の観戦者数をラベル表示した。来年以降、ググッと上昇することを期待したい。
目指せ12万人
8月末に行われた「SUZUKA 10h」でモビリティランド 山下晋社長の記者会見が行なわれた。その時間、筆者には別の予定があったが、鈴鹿サーキットの広報の方にエスコートされて参加することになった。会見の内容は、SUZUKA 10hと2019年以降のF1日本グランプリ継続についてだ。翌週にモンツァで開催されるイタリアグランプリで最終交渉を行なうとのことで、実際、会見の数日後には2019~2021年の3年間の日本グランプリ継続が発表され、遅れに遅れていた2019年のF1カレンダーもFIAから公開された。
筆者はF1日本グランプリの継続に危機感を持っている。そのことを知っている広報の方に、わざわざ招待していただいたので、会見の最後にいくつか質問をした。あらためてスマートフォンに録音した会見を聞き直したので、そのやり取りを一部紹介しよう。
――2006年は決勝日16万人、2017年は6万8000人。(今年の)目標とする観戦者数は何人くらいですか。
山下社長:サーキットの環境は当時より整備されましたが、それでも16万人は多すぎで、混雑してお客さまにも迷惑だと思います。適正な人数は12万人から13万人でしょうか。その人数でも収支は厳しく、カツカツではあります。
――民間企業が開催するF1グランプリはほとんどなく、ロシア政府、シンガポール政府など国や自治体がグランプリを開催するのが一般的になっています。自治体の開催であれば新幹線や近鉄、名古屋市内のホテルまで満室になる経済効果で収支を考えられますが、現状はJRや近鉄、ホテル、コンビニなども鈴鹿サーキットに1円も落としてくれません。今後、鈴鹿市との共同開催などは考えていませんか。
山下社長:純粋な一民間企業でF1を開催しているのは鈴鹿サーキットだけです。ホンダグループでなければ30回の開催はできなかったと思います。16万人が観戦した当時、百五銀行(三重県津市)が試算したF1の経済効果は250億円だったので、今でも100億円チョットの経済効果があると思われます。FOM(Formula One Management)からも「経済効果を考えれば開催権利金は合っている」と言われ、「われわれには1円も入らないから合っていない」という議論が続いています。
行政の方々に資金面の援助を求めたい気持ちはゼロではありませんが、民間企業が30年続けてきたものを、自治体の資金で開催することは容易ではないと思います。ですが、資金面以外では、F1開催時は中勢バイパスをバス専用道にしてもらうなど、鈴鹿市や国交省の皆さんに協力をいただいています。今後も行政の皆さんとの協力関係は継続、発展をしていきたいと思っています。
毎年F1日本グランプリを観戦している人は、今年は観客が増えたと感じたはずだ。決勝直後、メディアセンターですれ違った山下社長に質問してみた。
――今日は何万人でしたか?
山下社長:まだ、集計が出ていません。
――9万人には、行かないですかね。
山下社長:そこまでは……。
――では、これから3年で10万、11万、12万人を目指したいですね。
山下社長:そうですね。
F1日本グランプリは全21戦ある中の1戦で、残り20戦はTV観戦をしているのが現実だ。ただ、筆者のように写真を撮りたい人は、日本の鈴鹿で、たった1戦でもF1が開催される意義は大きい。過去は5年契約が2回続いたのが今回は3年契約となった。筆者はこの3年を「執行猶予3年」と思っている。F1日本グランプリ消滅の危機から脱したとは言えない。これからの3年で観客数が決勝日10万人を超えるようにF1ファンの協力をお願いしたい。
念のために付け加えると、レース結果に興味がないわけではない。強いて言えば、日本グランプリより翌々週のアメリカグランプリの方が面白かった。キミ・ライコネン選手の優勝は、もしかするとライコネン選手の最後のF1優勝になるかもしれない。レース終盤の緊張感はなかなかのもので、感動的なレースだった。
木曜日はピットウォーク。かぶり物の裏話とベッテル選手にサインをもらう秘策?
昨年、一昨年と同じく今年も木曜日にサーキット入りした。このときは台風の接近が心配され、ピットウォークも雨がパラつくことがあった。この日の目的は、取材パスの受け取りと機材の搬入。そしてCar Watchの読者、森本さんが作成した“かぶり物”をチームに手渡す瞬間を目撃することだ。
ドラマの相関図ほどではないが関係のおさらいをすると、2015年に筆者は「ツインリンクもてぎ撮影ガイド」を執筆。直後のF1のキヤノン超望遠レンズ試撮会で、この記事を読んだ矢吹さんに「Car Watchの奥川さんですか? 自宅近くのツインリンクもてぎの撮影ガイド読みました」と声をかけられ、その後Facebookでつながっていた。
2017年の夏ごろ、矢吹さんのタイムラインにF1仲間である森本さんが作成したかぶり物が登場。そのかぶり物は木曜日のピットウォークでマクラーレン・ホンダに渡され、アロンソ選手やバンドーン選手がかぶっている写真や動画がマクラーレンの公式Twitterなどに掲載された。2017年はFP2が豪雨になって走行がほとんどなく、このかぶり物は国際映像にも映ることとなった。
2017年のピットウォークから森本さんともFacebookでつながり、今年の5月くらいからかぶり物の製作過程がタイムラインに投稿されていた。現在はさまざまなかぶり物を作成する人やコスプレ姿の人が何人もいて、F1日本グランプリの風物詩的な存在となっている。国内外のメディアがそれを取り上げ、TV放送でも目にするし、記事などでも紹介されるが、製作過程を目にすることはないと思うので、その一部を写真で紹介しよう。
Facebookにはマクラーレンのかぶり物は登場しなかった。なぜなら、徹夜でマクラーレン分を完成させたのは、ピットウォーク当日の朝だったからだ。F1仲間がかぶる分とチームに渡す分をダンボール+キャリーで引っ張ってピットウォークに参加。筆者もピットロードで彼らと合流した。
昨年はマクラーレン・ホンダとフェラーリだったが、今年はトロロッソ・ホンダが加わった。2018年バージョンの特徴はHaloとだるま。だるまは娘さんが製作を担当したらしい。
まず訪れたのはマクラーレンのピット。ピットウォークの通路とピットはそこそこ距離があり、なかなか気付いてもらえない。しばらく経ってからスタッフが近付いてきて、渡すことができた。昨年はピット前に入れてもらって記念撮影ができたが、今年は入ることができず残念。
続いてトロロッソ・ホンダのピット。こちらも少し待っていると、外国人スタッフがこちらを見て指を上げて反応。しばらくすると、日本人スタッフを連れて受け取りに来てくれた。
最後はフェラーリ。フェラーリのピット前は桁違いにファンが多く、近付くことが困難。なんとか渡すことはできたが、人気チームだけに反応は鈍く「渡すだけ」といった感じだった。
3チームにかぶり物の提供を終えてひと段落したころ、ベッテル選手がコースの下見に出てきた。ファンは騒然。民族大移動が始まった。サインを求めるファンが大勢いたが、凄い人数なのでベッテル選手は基本スルー。かぶり物もスルー。
ところが、ベッテル選手が突然足を止め、ファンに近付いてサインをはじめた。……と思われる。人垣が凄くて確認できなかったが、写真で再確認すると、レプリカのミニヘルメットに反応したようだ。超信頼度の低い筆者情報だが、来年のピットウォークでサインが欲しい人は、色紙やプログラムではなくレプリカヘルメットがお勧めかもしれない。
ピットウォークの大騒ぎを終えて、メインストレートで30回記念&冠スポンサーのホンダロゴをバックに記念撮影。「今年はマクラーレンのピットに入れなかったね」とやや残念な木曜日となった。
筆者は関係者駐車場に戻り、機材を取材センターに搬入。昨年同様にEOS 5D Mark IVをお借りしたので、自分のEOS 7D Mark IIと同様に設定。ロッカーに機材を収め、帰り際にグランドスタンド裏のGPスクエアを散策し、本日の目的はすべて完了した。
木曜日は早々にサーキットを後にして名古屋の自宅へ。例年、F1仲間=高校の同級生との飲み会は金曜日なのだが、今年は金曜日夕方にサーキットで予定を入れたので木曜日開催となった。筆者を含めてF1仲間は3人。筆者は1987年から富士スピードウェイ開催を含め32年皆勤賞。友人2人も運動会や仕事などで数回欠席しているが30回近く観戦しているオールドファンだ。
飲み始めると、翌日の駐車場をどこにするかという話になり、友人は昨年筆者が「奥川浩彦の『撮ってみましたF1日本グランプリ2017』(後編)」で掲載した駐車場マップをスマホに表示して、もう1人の友人と検討を始めた。内心で「俺の記事を読んでるんだ」と思いつつ、航空写真では分かりにくい高低差などを伝えた。
その後は、今どき会社の飲み会では許されない昭和オヤジのセクハラ、パワハラ発言が続いたところで事件が発生。「奥川さん」と背後から声をかけてきたのはデジタルカメラマガジンの副編集長(とスタッフ)。夕方、東京駅から新幹線で移動とは聞いていたが、まさか名古屋駅の飲み屋の2階で遭遇するとは思わなかった。内心「ヤバイ。いつからすぐ近くの席にいたの? われわれのお下品な会話を聞かれてしまった? 俺は何をしゃべった?」とビビり、しばらく会話にブレーキを掛けた筆者だった。
金曜日フリー走行1回目。III型のEF600mm F4Lを実戦投入
金曜日になり、ここからがF1日本グランプリの本番。懸念された台風は日本海を抜けそうで、金曜日、土曜日は曇りか小雨。土曜日の深夜に北陸の北の日本海を通過して、日曜日は晴れ予報となった。
F1日本グランプリの数週間前、Car Watchの編集長とデジタルカメラマガジンの編集長から相次いで電話があり「キヤノンさんからEF600mm F4L IS III USMが貸し出されます」との一報が入った。「えっ、マジ」が最初の印象だ。
「EOS R」と同時に「EF400mm F2.8L IS III USM」と「EF600mm F4L IS III USM」が発表されたのは知っていたが、凄すぎて自分には縁がないレンズだと思っていた。デジカメ Watchの記事で再確認をすると、III型の600mm F4LはII型に対して870g軽くなったという。
発売は2018年12月下旬で、この時点では約3か月先。貴重な貸出機で、前の週末に大阪のイベント会場に展示されたものが筆者に送られてくることになった。筆者が火曜日に川崎のオフィス兼住居から名古屋の自宅に移動予定だったので、水曜日に名古屋でEOS 5D Mark IVと同時に受け取り、木曜日にメディアセンターに搬入。金曜日のFP1から実戦投入となった。
III型の第一印象は「軽っ」。レンズ単体で持ち上げると、その軽さを実感できる。フード単体もめっちゃ軽っといった感じだ。デジカメ Watchの記事下に、2011年2月のII型発表時の記事リンクがあったので確認すると「EF 600mm F4 L IS USM」(いわゆるI型)は5360g、「EF 600mm F4 L IS II USM」(II型)は3920g(1440g軽量化)、今回の「EF600mm F4L IS III USM」(III型)は3050g(870g軽量化)となっている。
軽さと並んでインパクトがあるのが196万5600円という価格。実勢価格はもう少し安くなるだろうが、クルマ並みの価格だ。ただ、クルマと違うのは、高級レンズの価格は中古になっても下がりにくい。クルマは10年経つと評価額はほんのわずかだが、高級レンズは10年後に手放しても(程度によるが)それほど評価額は下がらない。
クルマ並みの価格、世界に数本(?)の貴重な貸出機ということで、小心者の筆者は撮影を始める前にキヤノンのプロサービスに立ち寄って、養生テープを一脚(三脚)座とフードの先端に貼り、傷がつかないように対策をした。撮影中、地面に置くときも、ガードレールに立て掛けるときも、普段ではあり得ないほど慎重に扱った。
フリー走行1回目となるFP1は、報道エリアではなく観客席で撮影することにした。逆バンクオアシスのキヤノンブースに行くと、貸出用のEOS 5D Mark IVとEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMが大量に準備されていた。昨年から配布を始めたカメラの設定方法のチラシは筆者が制作したもの。今年は裏面に鈴鹿の撮影ポイントを加えて配布した。
ほどなく、名古屋駅の飲み屋で昨晩遭遇したデジタルカメラマガジンの副編集長とスタッフが到着。手配しておいたカメラマンエリアのタバードが間に合わなかったので、報道用のタバードのままセッション前に筆者の撮影をしてもらった。FP1は逆バンクからS字、2コーナーと一緒に移動して撮影を行なった。
2009年、鈴鹿サーキットが大幅改修をした直後に逆バンクの最下段からカメラホール越しの撮影ポイントを紹介した。そのころはF1でも国内レースでも、それほど混雑なく撮ることができたが、最近はどのレースでも大勢のカメラマンが撮影をしていて、ここ数年は近付くことも諦めていた。参考までに、筆者がCar Watchで執筆した鈴鹿サーキット、ツインリンクもてぎ、富士スピードウェイの撮影ガイドは筆者のWebサイト「モータースポーツ・サーキット撮影ガイド」にまとめてある。
大人気の逆バンク最下段。正面ゲートにオープン前から並んで、カメラホールの“ベスポジ”を確保するかぶり物集団の動向を、筆者はFacebookで見逃さなかった。前日のピットウォークで会った矢吹さんたちを見つけ「新しいレンズのテストをしたいから、金網のボケ具合を撮影させて」とセッション直前にホール越しに撮らせてもらうと、「金網2枚抜きでお願いしますよ」とリクエストがあり、カメラホールから少しポジションを移動して目の前の金網+サービスロードの先の金網の2枚抜きで、絞りを変えながら金網のボケ具合を撮影した。
隣にいた人から「それIII型ですか。僕、II型使ってます。軽いですか」と聞かれたので「レンズ単体だとメッチャ軽いですよ」と感想を伝えた。周囲にいる人は初対面でもF1好き、カメラ好きの仲間なので、雑談をしている内にセッション開始。そのまま金網2枚抜きで少し撮影をさせてもらい移動した。
セッション開始10分。逆バンクの最上段、カメラマンエリアの空いているところに移動して少し流し撮り。モニターで確認すると何枚かヘルメットに芯がきていた。筆者は器用ではないので、慣れない機材で撮影すると、上手く振れない、思い通りに撮れないことがあるが、この600mm F4は違和感なく撮れたのでホッとした。
S字方面に移動し、スタンドの中段から逆バンクを立ち上がるマシンを斜め後ろから撮影。この場所から撮るのは初めて。普段と焦点距離が違うレンズを手にすると「ここから撮れるかも」と発想が広がる。セッション開始から20分ほどだが、初めて使うレンズのシャッター速度1/60秒で問題なく撮ることができた。
続いてS字のカメラマンエリアの土手に移動。S字に進入するマシンを1/125秒で流し撮り。さらにすぐ隣のC席スタンドに入り、最下段の金網に沿って移動。S字寄りで1か所、中間で1か所、最後は2コーナーのコースマーシャルのポストまで移動してFP1の撮影を終えた。
FP1で使用したレンズはEF600mm F4L IS III USMのみ。ボディは最初はEOS 5D Mark IVで、途中からEOS 7D Mark IIも併用した。筆者が撮影している様子を背後から撮ってくれたのはデジタルカメラマガジンの副編集長。途中、金網の向こう側の報道エリアに、同誌で連載を持つF1フォトグラファーの熱田護氏を発見。「熱田さ~ん」と黄色い声を上げ「熱田さんを撮ってきます」と一時的に熱田さんを追っかけていなくなったが、後から送られてきた写真を見ると、FP1で撮影した7か所のポイントの様子をすべて撮っていただいた。少々気になったのは、筆者のつむじ部分が薄くなったこと。デブ対策も進まない中、次はハゲ対策かと感じた。
2コーナーから逆バンクオアシスのキヤノンブースに戻る途中で「新しいレンズですか」と声をかけられ、このレンズの注目度の高さを感じた。また、Car Watchの読者の人から「いつも後ろを気にしていただいて、ありがとうございます」とも言われ、「ゴルフでパットのラインを踏まないのと同じですよね」などと雑談をしながら逆バンクオアシスまで戻った。
このときは気に止めなかったが、後になって「いつも」の意味が気になった。この読者の人は、筆者が撮影している姿を何度も見ているのだろうか。筆者は報道エリアで撮影するようになって10年、それ以前の二十数年は観客席から撮影をしていた。報道エリアと比べ、観客席は数少ない撮影ポイントで撮らなければならない。
例えば富士スピードウェイのダンロップコーナーやレクサスコーナーは、観客席からカメラホールを通してピンポイントで撮影しているアマチュアカメラマンが背後にいる。わずかな隙間を狙って撮影しているので、100%ではないが、撮る前に後ろを振り返り、邪魔にならないようにと思っている。それをこの読者は過去にも見ていたのだろうか……。またいつか会ったら聞いてみたい。
金曜日フリー走行2回目。デグナー、130R、立体交差
FP2は報道エリアのデグナーカーブと130Rに挟まれたエリアで撮影。130R付近でセッション開始を待つ間、熱田カメラマンに「夕方のセミナー、取材させていただきます」とご挨拶。熱田カメラマンから「新しいレンズ、軽い? 撮った写真はパソコンで見た?」と聞かれ、「レンズ単体、メッチャ軽いです。午前中に撮った写真はまだ見ていません」などと話した。
FP1は逆バンクから2コーナーで撮影したので、マシンが左向きの写真が主となった。そこで、FP2は右向きの写真が撮れるポイントを選択。仕事で撮影すると、毎日右向き、左向きのバランスを考なければならない。以下はこの日の記事で使用した写真の一部だ。
セッションの最初はデグナー2つめを高台から撮影。続いてシケインに進入するマシンを、観客席を入れて背後から。西ストレートを正面から撮ってダンロップコーナー方面に移動。グランドスタンドをバックに撮影し、少しデグナー側に移動して観覧車をバックに撮影。さらにデグナー側に降りて、デグナー1つめ、デグナーの中間、立体交差の入口、立体交差下と移動しながら撮影した。
セッション終了後はメディアバスがコースを1周し、報道カメラマンをパドックまで運んでくれる。バスに乗ると、近くの外国人カメラマンがEF600mm F4を指さし「New one?」と聞いてきた。ここでもIII型のEF600mm F4Lの注目度は高く、何人かの外国人カメラマンが持ち上げて軽さを確認していた。
念願が叶って熱田カメラマンのセミナーに参加。面白い、参考になる、お勧め
金曜日と土曜日の夕方に、キヤノンブースでカメラマンスペシャルセミナーが開催された。金曜日は熱田護氏、土曜日は原富治雄氏が担当。原カメラマンのセミナーは何度か参加したが、熱田カメラマンのセミナーはタイミングが合わず、以前から参加したいと思っていた。
セミナーを含むキヤノンイベントに関しては、掲載済みの「F1日本グランプリのキヤノンイベントは今年も盛況だった」で紹介した。熱田氏のセミナーで筆者が参考になったことはいくつもあり、その後のレースで試行錯誤をしている。その中からいくつか紹介しよう。
雲を大きくフレーミングして撮影するときは、空の露出が白飛びしないようにして、マシンが暗くなったときはPhotoshopなどで調整する。
これは少し前のデジタルカメラマガジンでも、熱田氏がその手法を説明していた。F1の後に開催されたMotoGP 日本グランプリ 2018で撮った写真を見ていただこう。
同様に、上の写真のようにマシンが小さく写るときは、広角レンズでもブレやすいので、思っているより高速シャッターを切るとのこと。この写真は1/1000秒で撮影している。
レンズフードを固定するネジを上部やや左にして、それを持ってレンズを振る
筆者は左手はレンズを下から支える派だが、疲れると上から押さえることがある。これまではネジを最上部にしていたが、とりあえずマネをしてやや左側にした。
既載の「F1日本グランプリのキヤノンイベントは今年も盛況だった」にも書いたが、熱田氏のセミナー参加者は150人ほど集まり、キヤノンブースのテントの外まで人が溢れていた。予定の1時間では終わらず、1時間半を超えて次に予定されたカメラマンミーティングのトークショーに移動するギリギリまでセミナーは続いた。
サーキットホテルに隣接するS-PLAZA「サクラホール」で開催されたカメラマンミーティングの会場で、筆者が借りていたEF600mm F4L IS III USMが展示された。メディアセンターで金曜日のレポート記事を完成させてからカメラマンミーティングの会場に立ち寄り、レンズを受け取って帰宅した。
かぶり物に急展開
さて、時間を少し戻そう。木曜日のピットウォークでピットに入れずやや残念となったが、その後トロロッソ・ホンダから製作者の森本さんに、金曜日のFP1にトロロッソ・ホンダのピットへ招待するというメッセージが届いたとのこと。FP1の中継を見ると、セッション開始10分くらいのところでトロロッソのかぶり物を身につけた森本さんがアップで映し出されていた。トロロッソの公式Twitterにも森本さんが登場。グランプリ期間中、トロロッソ・ホンダのガスリー選手、ハートレー選手それぞれのピットにかぶり物が飾られていた。
ホンダ広報さんの尽力か、かぶり物にドライバーのサインも入れてもらうなど、昨年以上の成果となった。一方、マクラーレンはアロンソ選手がインスタで動画を公開していた。
アロンソ選手のInstagram
前編はここまで。後編は予選が行なわれた土曜日と快晴となった日曜日の様子をお届けしよう。また、後編とは別に「EF600mm F4L IS III USM」のレビューを予定してる。そこでは元画像の掲載も行なうので、掲載までしばらくお待ちいただきたい。