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奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2018」(後編)
2018年の出来事と雨の予選、快晴の決勝を振り返る
2018年11月30日 00:00
Car Watch創刊の2008年から毎年掲載している「撮ってみましたF1日本グランプリ」も2018年で11回目となった。11月14日に掲載した前編ではピットウォークなどが行なわれた木曜日とフリー走行が行なわれた金曜日の様子をお伝えした。後編は予選が行なわれた土曜日、決勝が行なわれた日曜日の様子を中心にお届けしよう。
前編の冒頭で11回目なので少しリニューアルと書いたが、おそらくどこがリニューアルされたか気付いた人はいないと思われる。2017年の記事と2018年で異なるのは交通情報がなくなったことだ。「撮ってみましたF1日本グランプリ」は筆者の撮影記だが、思いとしては1人でも多くの人に「F1を見に行こう」「カメラで撮影しよう」と感じてほしいという筆者の願いが込められている。
その1つが交通情報で「金曜の朝は6時20分までにみえ川越インターを通過」「決勝後、名古屋まで1時間20分で帰宅」といった情報をお伝えしてきた。「F1って大渋滞するんでしょ」など、よく耳にする不安に対する回答でもあった。前編に登場したCar Watch読者の矢吹さんは「記事とGoogleマップを照らし合わせて渋滞が回避できるようになった」と言っていたので、それなりの効果はあったと思っている。
加えて、最近、筆者は渋滞に遭遇することが減った。理由は単純で、早く行って遅く帰るようになったからだ。創刊当初はサーキット周辺の民営駐車場を利用し、そこから自転車でサーキットに移動して普通の観戦券で撮って記事掲載していた。セッションが終わると速攻で駐車場に戻り、四日市の帰宅ラッシュなど、さまざまな渋滞を回避していた。ここ数年はセッション後にライター氏と記事を作成するので、サーキットを出るのはセッションから数時間後。今年は日によって多少の渋滞はあったが、木曜日~日曜日で大渋滞に遭遇したのは日曜日の帰りだけだった。
2017年はシーズンを通して鈴鹿サーキット周辺の駐車場を調べた。それを「撮ってみましたF1日本グランプリ2017」の後編で紹介した。駐車場の情報も毎年大きく変化はしないと思うので、交通情報に関してはたま~に紹介する程度に止めたいと思っている。
2018年のサーキット撮影
リニューアルで追加するのはシーズン全体の撮影話だ。F1は日本で行なわれるモータースポーツの最高峰だが、地理的な制約などでF1は行かないけど、SUPER GTやMotoGP、スーパーフォーミュラなどを観戦、撮影している読者は多数いると思う。そこでF1&鈴鹿の枠を広げて、2018年のサーキット撮影という視点で話をしてみたい。
今シーズン筆者が取材、撮影をしたレースはF1、MotoGP、SUPER GT(4戦)、スーパーフォーミュラ(2戦)、富士SUPER TEC 24時間レース、鈴鹿10時間耐久レースの10戦だ。この中で印象に残ったレースは富士スピードウェイで行なわれた24時間レース。筆者にとって初めての24時間レースとなった。
写真と光(太陽)は切っても切れない関係で、普段のレースでは撮ることのできない夕方~夜間~早朝の撮影は印象的だった。その時間帯に撮ってフォトギャラリーに掲載した写真から、数点を時系列で並べてみた。
レース前は「24時間あったらお腹いっぱい撮れるぞ」と思っていたが、終わってみると「あの時間にあそこで撮れば……」と反省点も多い撮影だった。ちなみにサーキットに24時間いたわけではない。23時40分にサーキットを出て御殿場のホテルへ。少し寝て3時40分にホテルを出てサーキットへ。4時過ぎから早朝の撮影を済ませ、7時にサーキット出て再びホテルへ。また少し寝て10時にサーキットに戻ってきた。一般観戦ならサーキット内で車中泊をして、夜間や早朝に時々撮影するという楽しみ方もできそうだ。
今年、1番楽しく撮影したのはプライベートで観戦、撮影に行った8月の「ツインリンクもてぎ2&4レース」だ。楽しかった理由は仕事抜きの撮影だったから。仕事だと記事用に1~3位の右向き、左向き、正面を証拠写真的に撮っておこうなどと考えるが、プライベートの撮影は好きな場所でお気楽に撮ることができる。写っていないマシンがあってもOK。記事で使用できないスローシャッターの写真ばかりでもOKだ。
また、観客席には報道エリアとは違う魅力がある。ツインリンクもてぎの90度コーナーは、コース脇の報道エリアよりも観客席の方がベストポジションだ。S字付近は土手、階段で撮影する高さが変えられるので、報道エリアよりも撮影の幅が広がる。
ツインリンクもてぎは10月のMotoGPと11月のSUPER GT最終戦を仕事で撮影しているが、10月、11月は逆光が美しいというよさがある半面、芝生の色がイマイチ。8月の2&4はS字の芝生が素晴らしい。パドックにも報道エリアにも入らず、日曜日の日帰りの撮影だったので、S字イン(フィールド)側、S字アウト側、90度アウト側、90度イン側の観客席で撮影をした。仕事抜き=フォトギャラリーの掲載はなかったので、フォトギャラリーサイズにレタッチした写真を掲載しよう。
筆者は仕事でもプライベートでも、報道エリアでも観戦席でも撮影することが楽しい。F1は鈴鹿サーキットに限定されるが、SUPER GT、スーパーフォーミュラが開催されるサーキットは日本に6か所ある。ぜひサーキットに足を運んで、観戦や撮影を楽しんでいただきたい。参考程度に10月のMotoGPで撮った写真も見ていただこう。
撮影以外で印象に残ったのは、富士スピードウェイで開催されたSUPER GT(8月)のサーキットエクスペリエンス。5月に鈴鹿サーキットのSUPER GTで笠原氏が体験して記事掲載されているので、サーキットエクスペリエンスの詳細はそちらを参照いただきたい。
34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3でSUPER GTのGT300クラスに参戦する大津弘樹選手のドライブで、ホンダ「シビック TYPE R」の助手席に乗せてもらい、富士スピードウェイを1周。この直前のセッションで34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3はもらい事故で大破していたので、走行を開始してすぐ「仕事なくなっちゃいましたね」と筆者が言うと、大津選手は「今日の仕事はこれだけですから」と応えつつガンガン加速。ストレートエンドのブレーキングのG、1コーナーの横Gに筆者が歓声をあげると、コーナーの立ち上がりで縁石を脱輪。大津選手は「オッと」、筆者は「いいねえ~」と楽しい体験となった。
ヘアピンで走行中の写真を撮ってくれたのは高橋学カメラマン。ヘアピンのアウト側はパドックからすぐにアクセスできるが、わざわざイン側まで行って撮っていただいた。走行直前に「3番目の乗車です」と電話したらヘアピンのイン側にいると言われたので、100Rを抜けたところで「高橋さんがヘアピンのイン側にいるのでゆっくり行きましょう」と大津選手に伝え、ヘアピンへの下りで2人で「いた~」と言って減速。年甲斐もなくはしゃぐ筆者を撮っていただいた。滅多に経験することのない強烈なGは感動ものの体験となった。
レンズの使用頻度を調べてみた
筆者が現在サーキットで使用している主なレンズは「EF24-105mm F4L IS USM(II型ではない)」「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」「EF300mm F2.8L IS II USM」の3本。カメラボディが「EOS 7D Mark II」なので焦点距離はそれぞれ1.6倍となる。
標準ズームを「EF-S15-85mm F3.5-5.6 IS USM」から「EF24-105mm F4L IS USM」に代えたのは4~5年前。その際に24mm(35mm判換算で38mm)の広角端は室内などの撮影に困ると思い、「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」を追加。当時はこの広角ズームをコースサイドで使うことはあまり考えていなかった。
数年が経って「EF24-105mm F4L IS USM」で撮る機会が徐々に増え、「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」もコースサイドで使用するようになった。時々「今日は望遠よりも標準ズームで撮る機会が多かった?」とさえ思うほどとなった。
1度調べてみようと思っていたレンズごとの使用頻度を、この機会に集計をしてみた。撮った写真全部は膨大な枚数となるので、フォトギャラリーに掲載した写真に限定。対象とするレースは4月の鈴鹿2&4からスーパーフォーミュラ最終戦まで掲載済みの9戦。
表は横軸がレース、縦軸がレンズ(焦点距離のみ表記)、赤文字が各レースのフォトギャラリーで最も使用頻度が高かったレンズとなる。「EF24-105mm F4L IS USM」の使用頻度が高かったレースは3つ。そのすべてが富士スピードウェイ(表の緑色)。「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」の使用頻度が高かったレースは4つで、すべて鈴鹿サーキットの4輪レース(表の黄色)。「EF300mm F2.8L IS II USM」の使用頻度が高かったレースは2つで、鈴鹿2&4のJSB1000とツインリンクもてぎのMotoGP、いずれも2輪のレースとなった。9レースのトータルで最も使われたレンズは「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」。サーキットの超便利レンズであることが結果で証明された。
F1グランプリは「EF600mm F4L IS III USM」が断トツで使用頻度が高いが、前編で紹介したように、今年のF1グランプリは発売前の貴重な「EF600mm F4L IS III USM」を借りたので特種事情。普段どおり「EF300mm F2.8L IS II USM」を使用していたら異なる結果となっただろう。100mmとあるのは「EF100mm F2 USM」。「EF85mm F1.8 USM」「EF200mm F2.8L USM」などと同じくお蔵入りしているレンズの1つで、試しに使ってみようということだった。
読者の皆さんはフーンだと思うが、筆者にとってこの結果は衝撃的。例えば富士スピードウェイで「EF24-105mm F4L IS USM」の頻度が高い理由は? 鈴鹿10時間耐久レースの「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」の10枚はどんな写真? など、深掘りをする結果となった。
土曜日は赤旗と雨に玉砕
Car Watchでは2010年から取材パスをもらえるようになったが、それ以降もずっと自腹でチケットを購入している。チケットの購入も1987年から32年間継続中だ。チケット購入はF1日本グランプリが続くようにという筆者の微々たる貢献なのだが、買ったチケットは当然余る。2年前は余ったチケットを周辺機器メーカーに勤めていたころの同僚のKさんに「チケットあるけど行く?」「行きます。いくらですか?」「タダだよ~」ということで土日は名古屋~鈴鹿を一緒に移動した。9月下旬、そのKさんから「今年はF1のチケットを買ったので、土日はクルマに同乗できますか」との連絡があった。1人観戦者が増えた……。うれしい。
観戦された人はご存じだと思うが、今年のチケットは30回記念のアニバーサリーチケット。紙チケットとは別格なかっこいいチケットだ。3年後に契約延長となり、その先の35回記念大会もアニバーサリーチケットになることを期待したい。木曜日~日曜日の4日間、筆者はメディアパスとアニバーサリーチケットをずっと首から下げていた。
土曜日のF1のセッションは12時からフリー走行3回目(FP3)、15時から予選。FP3はデグナーのアウト側、予選はシケインで撮影する計画だ。だが、この日はFP3の前に、10時45分から行なわれるポルシェ カレラカップの予選をスプーンで撮影することにした。目的は「EF600mm F4L IS III USM」のレビュー記事用のテストだ。
スプーン進入を正面からカメラホール越しに撮影できる土手の中段と、金網の上から撮影できる土手の上には何人かのカメラマンがいた。土手上に過去の記事で写真を提供してもらった松本さんを発見。毎年、何の打ち合わせもしていないのに、土曜日の5万3000人という観客の中でバッタリ会うのは凄いことだと思った。
土手の中段で1時間半後のFP3待ちをしている人に「ポルシェだけ撮らせてもらえますか」とお願いすると、「昨日、逆バンクで……」と言われた。前日に「それIII型ですか」と会話したII型のEF600mm F4Lを使っていた人だった。これまた凄い偶然。その隣の人もII型のEF600mm F4Lを使用しているとのことで「日本のアマチュアカメラマン、恐るべし」と感じた。
スプーンのカメラホールは手前の金網の上から、その先の金網のホールを抜いて撮るので金網の影響を受けない。最初はEOS 5D Mark IVで10台ほど撮影。モニターでピントをチェックして問題なさそうなので、カメラボディをEOS 7D Mark IIに代えて撮影。あっという間に撮影は終了した。
撤収しようとしたら、矢吹さん、森本さんたち“かぶり物集団”がスプーンに到着。こちらも何も連絡を取っていないがバッタリ。カメラマン同士、行動パターンが似ているということだろう。先ほど紹介したフェラーリとトロロッソのアニバーサリーチケットを撮らせてもらい「では皆さん、頑張って」とあいさつをしてスプーンを後にした。
アップダウンを乗り越えてデグナーの外側まで移動。ダイヤル錠を開けてデグナーのアウト側にたどり着くと雨がポツリポツリ、時々雨足が強くなるなどFP3は微妙な天気となった。結果として周回数は少なめ。撮った写真のExifを確認すると、12時17分から32分まで1枚も撮影していない(走っていない)。元々FP3は時間が短いので残念なセッションとなった。
デグナー1つめの進入から立体交差出口まで撮影ポイントは多いエリアだが、周回が少なめとなったのでデグナー1つめから2つめのストレート、デグナー2つめのクリッピング、デグナー2つめの立ち上がりと3か所の定番ポイントだけとなった。
最初はデグナー1つめから2つめのストレート。まずはEOS 7D Mark II、焦点距離278mm、シャッター速度1/125秒でマシンを大きめに撮影。長い中断の後、焦点距離100mm、シャッター速度1/30秒でマシンは小さめ、背景の土手の緑を意識して撮影した。ここで時間を使いすぎ、残り時間は10分ちょっと。あわててデグナー2つめに移動した。
デグナー2つめの最初の1枚の撮影時間は12時51分30秒。チェッカーまで残り8分半。EOS 5D Mark IVとEF600mm F4Lを構えるとフレームにちょうど収まる距離だ。先を急ぐので2分だけ撮影して移動した。
撮影している人は認識していると思うが、各セッションのチェッカー=撮影終了ではない。チェッカーを受けたマシンはインラップで1周回ってピットに戻る。チェッカー直前に周回を開始したマシンは1周回ってチェッカーを受け、それからインラップでもう1周。最後のマシンが通過するのは、2コーナーあたりならチェッカーから約2分後。シケインなら3分半後となる。セッション終盤は走行するマシンが増える傾向もあるので、残り5分+数分は撮影のゴールデンタイムだ。
立体交差をくぐり抜けてヘアピン側へ。チェッカーまで残り5分。実質7~8分は撮影ができるはずだった。ところがセッション残り3分でヒュルケンベルグ選手のクラッシュで赤旗。赤旗になると全車ペースダウンし、そのままピットへ向かうので即撮影終了。最後の1枚は12時58分20秒。実質3分しか撮ることができずガッカリ。雨で撮れない時間も長く、最後は赤旗という消化不良なFP3だった。
セッション終了後、通常ならメディアバスに乗ってパドックに戻るが、自分のクルマを西パドックに置いてあるのでデグナーの外に移動。道路を横切って記憶にないくらい久々にデグナーの外側の観戦エリアに寄り道した。ここは2009年に撮影ポイントとして記事で紹介している。
筆者自身はここで走るマシンを撮ったことはなく、当時は作業用のトラックの写真で距離感だけお伝えする記事だった。その記事を読んだ前述の松本さんは実際にここから撮影。その後、知り合いになったので2013年の撮影ガイドでその写真を提供いただいた。
長いレンズを持っていたので、距離感だけ撮っておこうと思い撮影したのが以下の写真。デグナーの外側はヘアピンからも逆バンクからも離れていて、撮影に行くのを躊躇するポイントだ。国内レースなら決勝前のウォームアップ走行で撮りに行き、1時間後の決勝は他のエリアに移動するという手はありそうだ。
午後の予選は予定どおりシケイン。予選の記事で使う写真を撮ることが最優先だ。Q1は「EOS 5D Mark IV」+「EF600mm F4L IS III USM」でシケインを抜けるマシンを基本的に全車撮影。シケインとダンロップは背中合わせなので、ダンロップからデグナーへ向かうところでクラッシュしたエリクソン選手がマシンを降りるところも撮影。Q2は「EOS 7D Mark II」+「EF24-105mm F4L IS USM」で、シケインから最終コーナーに下っていくマシンの流し撮りだ。ここは予選の記事で使用した写真を掲載しておこう。
Q3は最終コーナー側に移動してシケインから浮き上がってくるマシンの撮影し、予選の最後は2017年からの宿題、1年前に上手く撮れなかったピットへ戻るマシンと観覧車、グランドスタンドをからめた写真を撮る計画だ。Q3が始まる前にEOS 7D Mark IIのレンズを広角ズームに付け替えて準備万端。このときはまだ青空も見えていた。
通常、予選はセッションのチェッカーが出た後に各車がゴールラインを通過してアタックを終え、1周回って続々とピットロードに入ってくる。チェッカー後に最終コーナーから観覧車の前に移動して撮る予定だ。
ところが、予選終盤に雨が降ってきた。後で録画した中継映像を見ると、ハミルトン選手が最後のアタックでコースインするのが残り約6分。アタックラップに入るのが残り約4分。それから15~20秒後方を走るボッタス選手が2コーナーでコースオフ、ライコネン選手も2コーナーでコースオフ。このときの残り時間は2分50秒だ。コースの場所によるが残り3分ちょっとでザーッと雨が降り出し、残り2分半の時点では全車アタックを中止してピットに戻ることとなった。
その時筆者はラストアタックに入る直前のハミルトン選手を16時1分59秒に撮影(残り4分1秒)。ボッタス選手、ハートレー選手、ガスリー選手が続き、ベッテル選手を撮ったのが16時3分38秒(残り2分22秒)。ここで全車アタックを中止してピットへ戻って来ると気付き、最終コーナーの撮影を終了。あわてて観覧車前に向かった。
悲しいかなスロー走行するマシンと比べても人間の移動速度は桁違いに遅い。雨が降る中、小走りに移動する筆者の横を続々とマシンがピットに向かっていく。あと何台コースに残っているか把握できていないので、観覧車前まで行くのをあきらめて少し手前で撮影することに。広角レンズの撮影はマニュアル露出、マニュアルフォーカスで撮ることが多いので、あわてて設定をして撮影開始。数台ほど撮影した中からオコン選手の写真をフォトギャラリーで使用したが、イマイチな写真となった。
今年もこの写真は上手く撮れなかったが、レースはF1だけではない。2017年のF1でヒントをつかんだので、SUPER GTや鈴鹿10時間耐久レースで実践済み。2017年のF1でお試しで撮ったお陰で、筆者の中では新しい撮影ポイントが増えたと思っている。
またF1から話がそれるが、新しい撮影ポイントを見つけることは写真の醍醐味だと思う。同じ場所でも別のレンズでそれまで撮ったことのない絵が撮れるとうれしい。今年、鈴鹿サーキットで新しく撮った絵をいくつかお見せしよう。
雨の中をピットロードまで歩いて行くと、パルクフェルメでは予選3位までの選手がインタビュー中。インタビューの後に記念撮影があるのでそれを撮って撮影終了となった。FP3は赤旗、予選は雨と、最後の数分で予定が狂い消化不良の土曜日となった。
キヤノンのプロサービスの作業を見せてもらった
突然の雨でカメラもレンズもびしょ濡れになったので、真っ直ぐキヤノンのプロサービスに向かった。もう何年もサーキットでお世話になっているが、「お願いします」と機材を預けるだけで実際の作業を見たことはなかった。ということで、預けたカメラとレンズの清掃作業を見せてもらうことにした。
初めてプロの作業を見て、ミラーアップ後に電池を抜くことと、マウントのネジを確認するのは目から鱗だった。アマチュア時代はブロアーで取れない撮像素子のホコリを、割り箸の先にレンズペーパーを巻いて清掃していた。現在はほとんどのレースでプロサービスを受けているので、自分で撮像素子の清掃をする機会はなくなったが、初めて見るプロの作業は大いに参考となった。
日曜日は快晴
台風が去って日曜日は快晴。決勝前は恒例のドライバーズパレードだ。2017年は時間ギリギリにピットに向かったら入れないという原因不明のトラブルに遭ったので、今年はピットウォーク開始前にスタンバイしてピットへ。結果として、今年はギリギリでもトラブルはなかったらしい。
早めにピットに入ったので、ザウバーチームのタイヤ交換の練習を見学、撮影。何度も繰り返しタイヤ交換の練習をしていた。
他のチームを見ると(日本風の)ラジオ体操で準備運動をしたり、テニスボールを使ってキャッチボールをするなど和やかな雰囲気だった。
今年のドライバーズパレードは「EF600mm F4L IS III USM」で撮影。毎年上手く撮れないドライバーズパレードだが、パパラッチ風に至近距離で後ずさりしながら撮るのではなく、少し離れたところから撮ってみた。フルサイズ一眼+超望遠なので、背景のボケはさすがだ。今回のフォトギャラリーは納品し、掲載された後になって「あっ、ドライバーの写真を忘れた」と気付いたので、ここだけの掲載となってしまった。
ドライバーズパレードが終わり、コースインまで30分弱、決勝スタートまで1時間ほどとなった。ここで筆者は自分のチケットが観戦者数にカウントされていないことに気付いた。関係者駐車場からメディアシャトルでパドックに入っているので、観戦者の入場ゲートを1度も通過していない。
チケットの自腹購入で売り上げに微々たる貢献はしているが、観戦者数の増加を願う筆者としては人数のカウントにも貢献したい。2年前のようにKさんにチケットを譲ったりすれば入場者としてカウントされているが、今回はアニバーサリーチケットなので誰にも譲らず木曜日から筆者の首に下げたままだ。
グランドスタンド裏のGPエントランスを通過すればカウントされるのか? その先の遊園地を抜けてメインゲートまで行かないとカウントされないのか? 今からメインゲートまで行くのは無理だろ……。気付くのが遅かった。「観戦者のゲートを通過する」は2019年以降の宿題となった。とは言え、決勝スタート直前にS字付近から各スタンドを見ると、2017年よりも明らかに人が多い。素晴らしい光景だ。
決勝はS字進入のイン側で、2コーナーから真っ直ぐマシンが向かってくるポジションでスタートを撮影。セーフティカーが出たので撮影を切り上げて2コーナーのイン側に移動。国内レースでは激感エリア前はお客さま優先で撮影禁止となっているので、F1の時しか撮影できないポイントだ。
S字方向に戻り、S字に進入するマシンを2コーナーをバックに撮影。S字1つめの右ターンでマシンがフレームに収まる焦点距離と、マシンの後部がフレームアウトする焦点距離で撮影。背景が大きく入るほどシャッター速度を遅くしないとスピード感がないので、それぞれシャッター速度は1/100秒と1/160秒で撮影。これでイン側の撮影を終了して、S字トンネルを抜けてアウト側に移動した。
2コーナー方面に移動してB1/B2席をバックに撮影。2コーナーからS字への短いストレートを流し撮り。EOS 5D Mark IV+EF600mm F4Lに持ち替えて芝生から浮き上がって来るマシンを撮影する。いつもはここで逆バンク方面に移動するが、600mmのレンズを持っているので少し2コーナー側まで移動して、2コーナーを立ち上がるマシンを撮影してから逆バンクへ移動した。
2コーナー側に移動した分だけいつもより時間がなくなったので、S字2つめの左ターンは撮らずに逆バンクへ。逆バンク手前でマシンを斜め後ろから、エミレーツ航空の看板の文字が読める程度のシャッター速度1/80秒で流し撮り。最後は逆バンクの正面に移動して撮影。決勝記事で使用したハミルトン選手のウィニングランの写真まで撮って1時間半の決勝の撮影は終了した。
逆バンクからトンネルを抜けて表彰式へ。ウィニングランまで撮ったので表彰式は途中から撮影。メモリーカードを抜いて撮影機材をキヤノンのプロサービスに預け、決勝の記事の写真の選択、レタッチをして17時30分ごろに作業を終了した。
預けた撮影機材を受け取って撤収作業をしつつ、渋滞状況を確認。17時48分の鈴鹿サーキット周辺はサーキット道路がかなりの渋滞。サーキットホテル前の道伯町方面も渋滞していた。東名阪自動車道の鈴鹿IC(インターチェンジ)は手前の一般道が渋滞。東名阪の名古屋方面の渋滞は短め。
国道23号は白子駅手前から四日市方面が断続的に渋滞。その先、鈴鹿川を越えたあたりから四日市競輪付近までがかなりの渋滞となっていた。
大量の荷物を持ってパドックから交通センターの関係者駐車場に移動。ドライバーの出待ちをしている人のいるスポーツゲートで、スタンドで観戦していたCar Watchの編集者をピックアップ。18時30分にゲートを出た。サーキット道路は白子方面が大渋滞。ライターの笠原氏と編集者を近鉄 白子駅まで送ることになったので、いったん逆方向に走って鈴鹿サーキット前の交差点へ。ここまでは渋滞したが、左折して逆バンクゲート方面に向かうと渋滞はなし。
「いつか役に立つかも」と別のレースの時に試走しておいた抜け道を通って、セブン-イレブンのある野村町交差点でサーキット道路を横切り、白子駅に18時50分に到着。ゲートを出て20分。鈴鹿サーキット前交差点から15分。早かったのかは不明だが、ほぼ渋滞なしで走れたので気分的にはOKって感じだ。
2人を下ろしてKさんと国道23号を名古屋へ。23号の渋滞は続いていたので、早々に県道6号にスイッチ。JR四日市駅前を抜けてカインズホームの踏切で23号に戻り、名古屋高速の呼続ランプを19時54分に降りた。鈴鹿サーキットから1時間24分。白子駅から1時間4分。まずまずの時間で名古屋まで戻ることができた。
大渋滞に遭遇したのはこの日曜日の帰りだけ。1時間24分は木曜日~日曜日で最長。帰路の最短は21時前にサーキットを出た金曜日で呼続ランプまで56分だった。
撮影に関して振り返ると、今年のF1日本グランプリは「EF600mm F4L IS III USM」を意識して使いすぎた感じはするが、仕方ないだろう。撮った写真は後日掲載する「EF600mm F4L IS III USM」のレビューを見ていただくとして、手になじむまで時間を要しなかった印象は強い。たった3日間の撮影だが、2週間後のMotoGPで自分の「EF300mm F2.8L IS II USM」を構えると、左手の位置が異なるためサンニッパは短いと感じた。それは「EF600mm F4L IS III USM」がすぐに手になじんだということだ。
「EOS 5D Mark IV」を使用するのは数回目だが、フルサイズの解像度の魅力は毎回感じている。Car Watchに掲載するサイズは大きくてもフルHD(1920×1080ピクセル)なので、「EOS 5D Mark IV」の恩恵はそれほどでもないが、F1とMotoGPの写真を筆者のWebサイトに「4Kフォトギャラリー」で掲載する際に「EOS 7D Mark II」との差を感じることが多い。刺激的なレンズとボディを使用して「欲しいな」「泥沼に踏み込んではいけない」と葛藤をする筆者だった。ちなみに「EF600mm F4L IS III USM」と「EOS 5D Mark IV」は、決勝翌日の午前中に宅配便で筆者の元を去っていった。
2019年から2021年のF1日本グランプリはF1ファンにとって重要な3年となる。今年の観客増の要因として、30回記念大会&アニバーサリーチケットに加え、「もしかすると今年で最後の日本グランプリになるかも」という気持ちがあったと思う。
これらの要因は来年の観客増にはならない。期待できるプラス要素はレッドブル・ホンダだろう。2018年のレッドブル・ルノー以上の成績であれば、表彰台、優勝という可能性は高い。トロロッソの2台が予選Q3進出を決めた瞬間のサーキットの歓声は凄かった。2019年シーズンはレッドブル・ホンダの活躍に、TVの前でもサーキットでも声援を送りたい。