「CEATEC 2019」が10月15日に開幕した。「つながる社会、共創する未来」をテーマにした大規模展示会で、会場は千葉市美浜区の幕張メッセ。会期は10月18日まで。入場料は無料だが、入場者はオンラインでの登録が必要となる。
「あらゆる産業・業種による『CPS/IoT』と『共創』をテーマとしたビジネス創出のための、人と技術・情報が一堂に会する場」としており、自動運転やEV(電気自動車)や運行管理といったもののほか、それを支える電子デバイスなどクルマにも関係の深い展示会となっている。
公道試乗ができる自動運転バス
SBドライブはホール2のブース内に自動運転バス「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」の展示を行なうとともに公道での走行を行ない、一般来場者の試乗を受け付け、乗客を乗せた状態で公道を走行した。
ブースでは展示用の車両に自由に乗り込んで見学できるほか、当日分の乗車整理券を配布しているが、乗車定員はドライバーを含む11名と少なく、配布時は行列ができてすぐに配布終了となるほどの人気となっている。配布時間は1日6回の走行ごとに決められており、乗りたい場合はまず配布時間を確認したい。
走行するのは幕張メッセ付近で、走行距離は約1.5kmを18km/hの低速で走行する。所要時間は約15分。信号に従った走行となり、赤信号では停車して走行する。
ブースに展示した自動運転バス「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」。展示車もナンバー付き 停電時にも有効。EV向けの給電ソリューションを展示
V2H機器のラインアップが充実しているニチコンは、39万8000円からという価格で話題となった新しいV2Hシステムを展示した。EVを蓄電池として使える「EVパワー・ステーション」は大電力で充電ができるだけでなく、EVを蓄電池として活用できるほか、上位モデルは対応する太陽光発電のパワーコンディショナーと組み合わせることで、停電時に太陽光発電から大きな出力を取り出し、EVに充電できるなどの特徴がある。
ニチコンは新しい「EVパワー・ステーション」を展示 ニチコンはまた、EVから電源を供給するための可搬型給電器「PowerMover」も展示した。台風15号による停電時にEVとセットで使われた機器で、その活躍から現在は問い合わせも多いという。
そのほか、蓄電池と太陽光発電、EVを組み合わせる「トライブリッド蓄電システム」なども展示した。
右下の蓋を開くとコンセントが3つあり、1500Wを同時に3回路提供できる 蓄電池と太陽光発電、EVを組み合わせる「トライブリッド蓄電システム」を展示 さまざまな技術を融合した展示が目立つCEATEC
初出展のJapanTaxiはトヨタのタクシー用車の「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」を展示。内部にはタブレットを備え、京都で実証実験を行なっている翻訳機能のデモを実施していた。タブレット画面で翻訳のボタンを押すと、音声認識され、ドライバーのディスプレイに日本語が表示される仕組み。
JapanTaxiはトヨタ「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」を中心としたブース タクシーが収集したデータを展示。1週間もあれば90%の道路の画像データが集まるといい、道路の補修などでの活用も期待 タクシー車内での翻訳機能の実証実験。画面から翻訳を選べば利用者が話した外国語が日本語に訳されてドライバーのディスプレイに表示される ディー・エヌ・エーは「働き方改革タクシー」の展示を行なった。各アプリを組み合わせてタクシードライバーの働き方を改革するというもので、「お客様探索ナビ」ではAIとビッグデータを活用。アプリの指示に従って走行すると、利用客が多いエリアに誘導されるというもの。交通事故削減支援サービス「DRIVE CHART」、タクシー配車アプリ「MOV」なども併せて搭載した。
クルマは日産自動車「リーフ」で、6kW普通充電器も展示した 三菱電機はコンセプトカー「EMIRAI4(2019)」を展示した。最新のHMI技術を搭載し、クルマ自体は電動、自動運転、コネクテッドに対応するもので、コクピットに座り、そのコンセプトを確認できる。
なお、三菱電機はコンセプトキャビン「EMIRAI S」を東京モーターショーで初公開するが、それは今回とは別のものになる。
NECは「空飛ぶクルマ」の試作機を展示した。これは、8月に同社の我孫子事業場にて行なわれた実証実験で浮上させた試作機で、新たな空の移動環境への取り組みを示したものとなる。
電子部品を中心にクルマの部品も多く展示された
CEATECでは、コンセプトカーやサービスの展示のほか、電子デバイスの展示も豊富。今後、クルマに採用されそうなデバイスも展示された。
太陽誘電のブースでは圧電アクチュエータでディスプレイを振動させ、触感を変化させるデモを行なった。指でなぞると石畳や池、砂場などをなぞった際に指に伝わる感覚が変化する ディスプレイだけでなく、単なる樹脂パネルでも圧電アクチュエータによって触感を変化させることができる 実際の車載器に応用した例。平面のパネルだが、触った場所によって触感を変えることでき、画面を見ないで操作しやすいなどの応用ができるという 圧電アクチュエータによる振動で警告を出すステアリング。まだ採用例はないが、車線逸脱警告では音や表示よりも直接ステアリングを振動させる方がドライバーに分かりやすい警告が可能 アルプスアルパインでは操作デバイスの参考展示として、静電センサ対応加飾印刷パネルを展示した。タッチするスイッチを加飾したパネルに備えることができ、インテリア性と操作性を両立できる。展示はパワーウィンドウと集中ロックの操作 アルプスアルパインではヘッドレスト内蔵スピーカーなども展示。自動車メーカーに導入を働きかける 従来ながらのアフターマーケットのカーオーディオも引き続き展開。自動車メーカー納入のオーディオとともに発展させるという AGCは移動体通信の「5G」に対応したガラス設置アンテナを展示した。5Gの試験車の日産「GT-R」にアンテナを装備 AGCに展示されるGT-Rには5Gのアンテナを前後左右に4基搭載。5Gの通信ができることを実証した 参考展示の5G用のフレキシブルアンテナ。見えにくいがガラスに内蔵させて、透過率も保安基準をクリアすることで、フロントガラスにも内蔵できるという こちらは実験で試用した5Gの合成石英ガラスアンテナ。室内側にガラスが出てしまうため、実用には向かないという ロームは自動車用のさまざまな半導体などデバイスを多数展示 ロームは出力コンデンサーを使わなくても電源ICを安定動作させる技術「Nano Cap」を採用したレギュレーターを展示した。電源の平滑化には従来コンデンサーが必要だったが、使用数の削減を実現し、コストや調達リスクの削減、信頼性確保にメリットがあるとしている 「Nano Cap」においてコンデンサーをなくした場合の波形をさまざまな組み合わせから確認できるディスプレイ TDKは「3Dホールセンサー」を展示した。先端に磁石がついたスティックをかざすとその位置が表示されるもので、シャシーの位置検出のほか、ペダルやステアリングの位置検出を非接触で可能にするというデバイス また、超音波指紋センサーも展示。スマートフォンなどでは静電容量式が多いが、超音波式は指の奥まで検出できる可能性があり、動作の確実性やセキュリティ面などで普及が期待される。クルマでは車両のディスプレイに内蔵してドライバーの認証などに応用できるという まだ普及前だが、車載イーサネットに対応したコイルなども展示されている 日本ケミコンはカメラモジュールを展示。ドライブレコーダーの人気で、出荷に占めるドライブレコーダーの割合は高まっているという こちらは車載キャパシター。コンデンサーよりも容量が多く、アイドリングストップの再始動などに使われ、各社で採用が進んでいるという 車載カメラとキャパシターのデモを「プチ電車」で再現した。カメラ搭載の電車が走行中 こちらの電車はキャパシターを搭載したもの。手前の線路部分が金属で、車両の車輪も金属で集電すれば、この区間の充電だけで永久に走り続けられるという フジクラは車載ハーネスのほか、乗車の検知とシートヒーターを兼用したデバイスなどを展示した CEATEC名物、フジクラの超電導のデモンストレーションは今年も健在。磁気で浮上した模型のクルマが滑るようにレールの上を走る