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三菱電機、MaaS社会に向けた3つの先進技術を用意するコンセプトキャビン「EMIRAI S」技術説明会
「フォレスター」で市販化した「フェイストラッキング技術」も応用
2019年10月9日 09:00
- 2019年10月8日 開催
三菱電機は10月8日、「第46回 東京モーターショー 2019」(一般公開日:10月25日~11月4日)で一般初公開するコンセプトキャビン「EMIRAI S(イーミライエス)」について解説する報道関係者向けの技術説明会を開催。合わせて実際に展示するEMIRAI Sを使い、搭載する3つの先進技術についてデモンストレーションを通じて紹介した。
EMIRAIという名称は電動化(Electric)のEと未来を組み合わせた造語で、2011年に行なわれた東京モーターショーで初代にあたるコンセプトカー「EMIRAI」を公開。三菱電機の先進技術を搭載して紹介するEV(電気自動車)のコンセプトカーとして、前回の東京モーターショー 2017に出展された「EMIRAI 4」まで進化を続けてきた。
新たに登場したEMIRAI Sは、これまでのEMIRAIシリーズで積み重ねてきた先進技術を継承しつつ、紹介技術のターゲットを「MaaS」にスイッチ。シェアード、サービス、セーフティなどの頭文字であるSが車名に与えられ、三菱電機が開発を続けている車内でのセンシング技術、HMI技術などを体感できるコンセプトキャビンとなっている。基本的に車内で利用される先進技術について紹介するために開発されたもので、“キャビン”とされているように車両としての外観は用意されていないが、コンセプトとしては将来的に実現される「完全自動運転(レベル5)よりも下の自動運転を想定した車両」とのこと。
神奈川県鎌倉市にある三菱電機 デザイン研究所で行なわれた技術説明会では、三菱電機 自動車機器事業本部 自動車機器開発センター 開発第二部長 石井純氏がEMIRAI Sに搭載された3種類の先進技術についての解説。石井氏はEMIRAI Sを東京モーターショーの会場で公開することで、さまざまな自動車メーカーや来場した一般ユーザーから体験した感想や製品化に向けた要望などを集め、開発にフィードバックして早期の事業化を目指したいとしている。
近赤外線カメラや温度センサーを使った生体センシング技術
乗員の体調や疲労、眠気などを検知する生体センシング技術では、ルーフ部分に設置された「温度センサー」とメーターフードに埋め込まれた「近赤外線カメラ」を利用。温度センサーによって車内にいる人の体表温度をセンシングして体調などを検知するほか、運転席に座るドライバーの脈拍については近赤外線カメラを使い、肌の輝度変化を継続的に観測して非接触で血流量の変化を検知。体表温度と脈拍を組み合わせて分析することでドライバーの体調を細かくチェックして、体調急変で運転の継続が難しいと判断した場合には車両を安全な場所に自動停車する制御も行なえるという。
近赤外線カメラを使うことで日差しなどの外光変動による影響を受けにくくなるほか、スバルの「フォレスター」でも採用されている「フェイストラッキング技術」を応用することでドライバーの顔の向きなどを正確に追尾。運転中の安全確認などでドライバーの顔が動いても輝度の変化を観測する領域を追尾し続けることが可能になり、脈拍を安定して計測できる。
同乗者についても、後席に座る子供に西日が差して体温が上昇している場合にエアコンの温度を下げたり、子供の眠気が強くなっている場合に心地よい音楽を流して眠りを誘ったりするなど、乗員の体調などに合わせた車内環境の最適化を行なうという。
近赤外線カメラとアレーマイクを組み合わせた音声分離技術
ドライバーによる前方注視の必要も不要となる自動運転が実現されると、移動中の車内で利用されるサービスについても拡大していくとの想定から、EMIRAI Sではドアトリムの部分にも横長のタッチパネルディスプレイを設置。後席の乗員とシートをディスプレイ側に向け、状況に応じてレコメンドされるイベントや買い物などの選択肢から2人の乗員が音声入力で自分が欲しいものを選択するというデモが行なわれた。
こちらでもディスプレイ上側に埋め込まれた近赤外線カメラを使用。カメラで乗員の位置を特定して複数のマイク素子を持つ「アレーマイク」の指向性を制御し、合わせて発話者の口の位置と動きを検知。複数の人が同時に発話したり、走行音や環境音などのノイズがあるような状況でも、それぞれが口にした言葉をしっかりと分離して音声認識できる技術が搭載されている。
情報の視認性を向上させ、高い操作性を実現する2種類のディスプレイ
HMI技術については音声分離技術に加え、用途の異なる2種類のディスプレイをEMIRAI Sに搭載。
インパネ上部の横全面に設定された「ワイドクロッシングディスプレイ」は、2つの画面を組み合わせることで浮遊感や奥行きを表現するディスプレイ技術。ベースとなるディスプレイを斜めに角度を付けて設置するほか、乗員の死角となるメーターフード裏側に反転表示のディスプレイをもう1つ設置。一般的なHUD(ヘッドアップディスプレイ)が下から斜め上のコンバイナに表示を投影していることを天地逆にして、ベースのディスプレイの水平面と異なる位置に情報を表示。これにより、表示を浮き上がらせて強調することなどが可能になり、情報の視認性を高めることができる。
ワイドクロッシングディスプレイはベースのディスプレイと透過タイプのハーフミラーが英字の「X」のような角度で設置されることを表現した名前となっており、2個のディスプレイをそれぞれ横に並べて174.8×1186mm(縦×横)のワイドサイズを実現している。
センターコンソール部分にレイアウトされた「リングノブオンディスプレイ」は、タッチパネルディスプレイの上にリング状の操作部を設置。回転やプッシュのほか、リング外周部分もタッチ操作に対応。ディスプレイの表示内容に合わせてさまざまな操作が可能で、タッチ操作に対応するリングの薄型化を実現したことで、リング内の表示領域が拡大されて多彩な用途に利用できるとしている。
なお、中央に設置されたリングはタッチパネルディスプレイ上に固定されているだけで、回転やブッシュ、タッチなどの操作は静電容量の変化を検知して行なっているとのこと。