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スバル、新型「フォレスター」が搭載する乗員認識技術「ドライバーモニタリングシステム」について聞く

6月20日に正式発表の新型「フォレスター」。写真は北米仕様のプロトタイプ

 スバルが6月20日10時30分より発表会のインターネットライブ中継を行なう新型「フォレスター」。スバルのグローバル主力販売車種であり、「XV」「アウトバック」といったスバル SUVシリーズの中心車種でもある。

 世界的に人気の高まっているSUVの新型車であり、今後日本市場においても世界市場においても、トヨタ自動車の新型「RAV4」、本田技研工業の新型「CR-V」といったSUVと戦っていくものになる。

 この新型「フォレスター」の新機能で注目されているのが、ドライバーの顔認識を行ない注意をしてくれる「ドライバーモニタリングシステム」。新型「フォレスター」に搭載されたこの新機能について、SUBARU 第一技術本部 電子商品設計部 本多雄二氏に、北米プロトタイプ公開時に聞いてみた。

株式会社SUBARU 第一技術本部 電子商品設計部 本多雄二氏

──ドライバーモニタリングシステムのカメラはどこにありますか?

本多氏:カメラはセンターにあるマルチファンクションディスプレイの上部に斜めに取り付けてあります。これは、右ハンドル左ハンドル対応などいろいろ理由はあるのですが、将来的にはドライバーだけではなくパッセンジャーも見ていこうとしているからです。

 カメラと同様に近赤外線のLEDもあり、夜間でも顔認識ができるようにしてあります。

──解説パネルを見ると、顔の特徴点を認識しているように見えます。目の位置、鼻の位置、口の位置など。そのような理解でよいですか? 例えばiPhone Xの顔認識だと顔の深度も記録しています。どのように認識しているのでしょうか?

本多氏:わき見ですと、もともと真っ直ぐ見ていたところに対して、横に顔を向けましたというところがあります。ビフォーアフターではないのですが、もともと真っ直ぐ向いていたときの顔のパーツ、目と鼻と口。真っ直ぐに向いている状態と、わき見をしている状態と位置関係が変わるので、その変化を検知しています。

 例えば、顔だけ真っ直ぐ向いて、流し目で見ているような状態はわき見ではないという判定です。

──瞳は認識していないのですか?

本多氏:瞳は見ています。瞳は見ているのですが、ちらちらメーターパネルやマルチファンクションディスプレイを見るというのはわき見と判定していません。瞳が単純に横に動いたというのは、顔が横を向いたということでないので、顔の角度が変わったということにならないので除外しています。

──例えば、高速道路の車線変更の際は顔をきちんと動かして確認ということが安全運転上推奨されています。そのように大きく顔を動かした場合はどうなるのですか?

本多氏:それは認識しています。ただ、横を向いている時間を見て警告を行なっています。

──サプライヤーはどこになりますか?

本多氏:三菱電機製です。スバル側が中心になって開発をしています。(話が戻って)目の認識なのですが、最初に目が開いている寸法を把握します。この開眼度の変化、時間を見ています。これによって居眠り警報を出しています。

 基本的には、わき見警報と、居眠り警報の2つの警報を行なうのが、今回のドライバーモニタリングシステムになります。

 ですから、登録機能もあるのですが、(変化を見ているため)わき見と居眠り警報については、登録をしていないドライバーが運転しても行ないます。

──その警告というのはどのように出るのですか?

本多氏:(マルチファンクションディスプレイを指差して)ここの表示と、音のブザーで行ないます。加えてEyeSightとの連携をしていて、EyeSightからの情報(※後述)によって早めに警報を出すなどをしています。

──顔や瞳を見ながらの警報となりますと、サングラスを運転している際が気になります。サングラスを利用することは問題ないのですか?

本多氏:サングラスは、8割以上の製品は認識に問題ありません。このシステムは赤外線を照射しているので、サングラスの赤外線の透過率の話になります。我々が試験をした上では、赤外線の透過率が50%以上であれば認識可能と見ています。ただ、サングラス製品にはそうした仕様が記載されていないものも多いので、サングラスを使うときには実際に(動作するかどうか)確認してもらえればと思います。

──登録人数が5人までとなっていますが、この制約はどこから決まっているのですか?

本多氏:何人でも登録できるのですが、ファミリーでの使用を考えると5人くらいでと思っています。

──再度確認したいのですが、ドライバー認証をした際にできることは、MFD(マルチファンクションディスプレイ)のへのアイコン登録と…….

本多氏:はい、MFDにはこうやってアイコンが8つ準備されているので。この8つから選ぶことができ、自分で自由なアイコンを登録することはできません。これで例えば、走行時の燃費データの比較ということもできるようになります。

 そのほか設定できるのはシートのポジションになります。クルマのドアを開けたときからカメラがドライバーの顔を見ていくので、もともと登録していた場合、登録した人が乗ってきましたねと判断します。シートがいったん中央位置まで動き、中に入り込んでドアを閉めると登録した人のポジションに来ます。この部分については利便性が高いかなと思っています。

──個人登録画面ですが、漢字、つまり2byte文字の登録はできるのですか?

本多氏:今回は小文字大文字のアルファベットとハイフンなどの記号となります。マルチ言語対応は大変なこともありますし、表示領域の問題もあります。まずはアルファベットということになりました。ただ、アイコンについては8つの中からお気に入りのものが選べます。

──個人認証の仕組みですが、いわゆるディープラーニングとかを用いているのでしょうか? それともルールベースですか?

本多氏:これはオリジナルで作っています。オリジナルで作っているんですけど、日本人もいるし、アメリカ人の方もいる。グローバルで何百人のパネラーの認識を実証した上で作り込んでいます。

──今回は、北米版の展示で左ハンドル仕様となっています。これは右ハンドル仕様も同様に動作するという理解でよいでしょうか?

本多氏:もちろんです。オーストラリア仕様もありますし、日本仕様もあるので。

──今回は、左ハンドル仕様のため、左ハンドル側の座席を赤外線で照射しているという理解でよいでしょうか?

本多氏:そこはあまり言えません。LEDの位置はどちらかという逆になります。角度を付けてエリアを照射した方がカメラでちゃんと顔を撮像できます。カメラが中心に対して、LEDは助手席側にあります。

──カメラが顔を認識しづらい状況とかはあるのですか? 赤外線が大量に外部から入ってくる状況とか……。

本多氏:レアケースですが、雪上で太陽光が反射している状況では、認識がしづらい状況が起きています。ただ、認識しづらくなるだけであって、認識しないということはありません。日本においても北海道で雪上の試験を行なっていますので。そういう意味では、認識率はほぼ100%に近いです。

──個人の認識ですが、一卵性双生児の双子とかは、それぞれを認識できるのですか?

本多氏:それは間違える可能性があります。やむを得ない部分です。このシステムはセキュリティ的なシステムではなく、侵入者を防止しようというものではありません。あくまで居眠りなどを警報しようという部分が主眼となっています。

──5人という数字はどこから決まったのでしょうか? 家族で使うとなると5人はよい数字だと思うのですが、もっと多くすることはできなかったのでしょうか?

本多氏:多ければよいと思うのですが、例えば顔認識はiPhone Xでもできますが、その場合は1人になっています。1人のみ登録の場合は、1人を認識すればよいのです。それが5人、10人、15人となっていくと、どんどん認識する対象が増えていき、認識の難易度が増えていきます。(答えの)選択肢が増えていくことになります。そこのバランスになります。5人がちょうどよいくらいかなと思っています。


 本多氏の触れているEyeSightとの連動に関してだが、これはわき見警告などをする際に、EyeSightで前走車を捉えていると、より早めのタイミングで警告が出るとのこと。EyeSightのブレーキ系との連動は行なっておらず、居眠り状態になると自動でブレーキがかかるような機能はない。

 このような機能を持つためには、運転するドライバーの主体性を奪うと同時に奪うだけの確実性を要求され、さらに運転責任の問題に踏み込む必要がある。現在のスバルのEyeSight、つまりアイサイト・ツーリングアシストはレベル2自動運転にあたり、あくまでも運転の主役はドライバー。ドライバー認識機能が居眠り状態かもと認識しても、警告するだけということになる。

 ドライバー認識の情報がEyeSightに影響を与えることはなく、EyeSightの情報がドライバー認識の警告機能にちょっとだけ影響するかたちになる。

 この注目の新型「フォレスター」だが、スバルは発表会の模様を、6月20日10時30分よりインターネットライブ中継。スバルの公式YouTubeチャンネル「SUBARU On-Tube」で、見ることができる。