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【インタビュー】シトロエンS.A.マーケティング部長のアルノー・ベローニ氏に、日本市場で成長を続けている理由を聞く

「今後はコンパクト系と大きめのセダンを導入」とベローニ氏

シトロエンS.A. マーケティング部長 アルノー・ベローニ氏

 シトロエン(プジョー・シトロエン・ジャポン)が11月27日~12月1日に開催したシトロエンブランドの体験無料イベント「COMFORT LA MAISON CITROEN(コンフォート・ラ・メゾン・シトロエン)」に合わせ、フランス本国のシトロエンS.A.からマーケティング部 部長のアルノー・ベローニ氏が来日した。現在、シトロエンは年間100万台規模のメーカーとして順調に成長。また、日本においても2019年は4000台の販売を達成する見込みだ。そこで、この成長を果たした要因などについて話を聞いた。

グローバルでも好調なシトロエン

――シトロエンはグローバルで100万台規模のメーカーに成長しています。この状況をどのように評価していますか。

ベローニ氏:結論から言うと非常によい成績だと思います。しかもここ5年間成長し続けてきています。現在、この中で約8割がヨーロッパ市場での販売ですから、ほぼヨーロッパでの活躍が大きいということです。その一方で南米のブラジルなどには「C4 カクタス」を新しく投入しましたので、そこでも好調な実績が出ています。また、アフリカのモロッコでも非常に好調です。さらに、アジアでは言うまでもなく、日本で2019年は4000台を達成する見込みで、過去最高の実績を目指しています。

 唯一課題があるとすれば中国市場です。そこは気になるところなので、これから力を入れていきたいと考えています。

4000台は価値ある数字

――2019年、日本市場では4000台を超えようとしていますが、本国から見てその台数規模をどのように評価しますか。

ベローニ氏:数字だけを見ると確かに少ないと感じるかもしれませんが、数量そのものではなく、非常に重要で価値のある数字だと捉えています。その理由は、日本という国自体が洗練され、またデリケートな国というバックグラウンドがあり、しかも非常に数多くのメーカーがある自動車大国です。そんな日本市場は決して簡単に台数を増やせるところではありません。そこでシトロエンが成長し続けることができていること自体に重要な意味があるのです。

 お客さまの要求レベルが高い日本市場において成功することは、イコールどこの国でも成功できるという自負に繋がり、それを成し遂げているのです。つまり、過去数年発展し続けているということ自体に意味があると考えています。

「日本市場において成功することは、イコールどこの国でも成功できる」と語るベローニ氏

――その成功要因は具体的にどのようなことなのでしょう。

ベローニ氏:日本市場で学んだことは、ある程度ニュースを継続的に発信することをキープしていかなければいけないということです。これは日本に限ったことではないのですが、過去10年ほど、モデルを出した後はモデル末期になるまでそのまま出しっぱなしになっていたのです。その反省から、新しいものを継続的にどんどん市場に出していこうと進めてきました。そのことが日本市場でかなり大きく影響したのではないかと思います。

――それは市場に対して、限定車を含めて常にモデルラインアップに刺激を与え続けるということですか。

ベローニ氏:そういうことですね。われわれは実際に実施しているのです。

要求レベルが高い日本

大胆さや際立った個性を持っていることもシトロエンのアイデンティティ。写真は3月のジュネーブモーターショー 2019で公開されたEV(電気自動車)のコンセプトカー「Ami One Concept」

――本国から見て、日本市場の特徴はどういうところだと思いますか。

ベローニ氏:非常に要求レベルが高い市場です。とくに技術に関して求められるレベルが高いとともに、デザインにも強いこだわりがあり、またサービスのクオリティに関しても同様です。

 そしてそれらに応えていくため、いかにコンテンツを多くしていくかが重要です。技術レベルに関しては、シトロエンの場合、ADAS(先進運転支援システム)の技術が19個装備されていることなどをアピールしています。デザインに関してはスタイリッシュであり、アイデンティティがはっきりしていること。また、大胆さや際立った個性も持ち合わせてもいます。そしてより強調していきたいのはフランスのブランドであるということです。フランスという国に日本は好意を持ってくれていることが多いので、そこはアピールすべき点です。

 また、サービスクオリティに関して非常に力を入れています。セールスマンのことを採点できるアドバイザー制度も取り入れ、サービスクオリティを高めるための取り組みを進めています。

フルラインアップ化のためにセダンも投入

2020年第3四半期からの本格導入を予定している新コンセプトMPV「ベルランゴ」

――ラインアップについて伺います。「ベルランゴ」が投入されることにより、ほぼフルラインアップになります。そこで、今後の日本市場における展開と、PSA内でのシトロエンのポジショニングについて教えてください。

ベローニ氏:言われたとおり、日本市場においてもフルラインアップ化して、さらに次々とモデルを出していくことは確定しており、1年に1モデルは確実に出していく予定です。また、フルラインアップ化のために、今何が足りないかと言うとセダンですので、今後はコンパクト系と大きめのセダンを導入します。

 そして現在、PSAの中でブランドの差別化はしっかりできていると自覚しています。プジョーはプレミアム、DSはラグジュアリーで、競合メーカーは、プジョーの場合はフォルクスワーゲンやボルボ、DSはアウディとなります。では、シトロエンはどうでしょう。ポピュラーでメインストリート系に属しますので、ヒュンダイやセアト、シュコダと戦っていくブランドになります。その中で際立ったブランドにしていきたいという狙いは変わりません。

歴史はとても大切。パーツ供給にも今後は力を入れる

――シトロエンは100周年を迎えた大きなヘリテージを持っている会社であり、日本においても多くのヒストリックシトロエンが存在しています。今後、そういったオーナーたちに向けて何らかの活動、メンテナンスやさまざまな情報の提供といったものは考えていますか。

ベローニ氏:結論から言うとイエスです。そういったオーナーの方々を大切にしていくことは非常に重要です。実は、こういったことは4年前くらい前から100周年を迎えるにあたって意識的に思っているものです。今がある、イコール過去のおかげ、未来を作るのも過去のおかげです。従って、必ず過去に立ち戻って今後の活動を続けていくことに関しては、何の変更もありません。例を挙げると、「シトロエンオリジンズ」のWebサイトで公開しているバーチャルミュージアムや、シトロエンジェネレーションズというショートフィルムも日本用に作成しました。また、オーナーに向けたさまざまなイベントも開催しており、これからも続けていくので、決して軽視はしていません。

シトロエンは2019年で創業100周年を迎え、多彩でユニークなヘリテージを持っている

――ただ、メンテナンスやパーツ供給などに関しては、日本ではかなり難しいこともあるのが現実です。

ベローニ氏:それは非常によい質問です。現在検討中で、かつ、これは日本だけではなく本国でも大きな課題として挙がっていることです。いかにそういった方々の要望に応えられるかということで、シトロエン直轄ではありませんが、シトロエンブランドに関係している独立団体であるアバンチュール プジョー(プジョー歴史館)に属したヘリテージを大切にしようという団体企業があります。そこでは古いパーツなどの供給に力を入れおり、そこと協力しながら発展していきたいと考えています。

――そのことは日本でも期待していいですか。

ベローニ氏:ぜひやりたいと思っています。