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【インタビュー】シトロエンS.A. CEOのリンダ・ジャクソン氏に、これからの10年について聞く
「これまでの30年間と比べても非常にエキサイティングな時代になる」
2019年12月19日 15:54
シトロエン(プジョー・シトロエン・ジャポン)は、二子玉川ライズ・ショッピングセンター ガレリア(東京都世田谷区)において、シトロエンブランドの体験無料イベント「COMFORT LA MAISON CITROEN(コンフォート・ラ・メゾン・シトロエン)」を11月27日~12月1日に開催。11月27日には新コンセプトMPVの「ベルランゴ」、超小型EV(電気自動車)コンセプトカーの「AMI ONE CONCEPT(アミワン・コンセプト)」を日本初公開した。
イベントの詳細は別記事でご確認いただきたいが、このイベントに合わせて本国シトロエンS.A. CEOのリンダ・ジャクソン氏が来日した。前回の来日は2015年の東京モーターショーの時だったので、4年ぶりに日本の地に降り立ったことになる。幸いにも少しの時間だったがインタビューする機会に恵まれたので、その詳細をお伝えする。
驚きのCEO就任
――最初にお尋ねしたいのですが、2014年にシトロエンのCEOに決まった時にはどのように思いましたか。
リンダ・ジャクソンCEO:それはもう本当に驚きました。当時、私はシトロエンの英国&アイルランド法人のマネージングディレクターをしていたのです。2014年1月に当時のCEOに会って話をしたのですが、その時はビジネス的な話が中心でこのような話題はありませんでした。その後何度か電話で話す機会もありましたがその時も別に(笑)。そして4月にすぐにインタビューしたいと呼ばれたのです。そこで初めて「私の仕事(CEO)を引き継がないか」と言われました。もちろん夢でしたからぜひやりたいと思いましたよ。戦略を新しく作り出し、新しいポジショニング、新しい市場などすべて見ていかなくてはなりませんので、非常に大きなチャンスでしたしとても嬉しかったですね。しかし、仕事を始めて1週間経った時に、これは大変なことを引き受けてしまったと思いました(笑)。それでもチャレンジングですから楽しんで仕事を進めました。それが今回の結果につながったのでしょう。
3つの戦略でファンタスティックな結果に
――その結果ですが、2014年に就任されて以降確実に成長しており、2018年はグローバルで100万台を超える販売台数を達成。ヨーロッパでは5年間連続で成長。2013年から28%も成長していますね。この“実績”についてご自身ではどう評価されますか。
リンダ・ジャクソンCEO:ファンタスティック!(大爆笑)。この成功のキーになったのは、私がCEOになったときに1つの戦略を立てたことが挙げられます。シトロエンの伝統や歴史に基づきながらも、全国のシトロエンユーザーからインスピレーションを受けたいという思いから、“INSPIRED BY YOU”というシグネチャーを作りました。そこから製品、サービス、カスタマージャーニーという3つを軸に戦略を立てたのです。製品ではユニークなデザインとともに、どれもがシトロエンファミリーに見えること。これはドアを開けた時、また道路で見かけた時に絶対にシトロエンだと分かることが重要です。そしてコンフォート。もちろん乗り心地のよさは重要です。しかし今のお客さまは乗り心地以上のものも求めています。接続性や使いやすさ、収納性などですね。これらを含めたコンフォートを追及していきます。これは私たちの中心、核となるものです。
次にサービスです。お客さまがより快適にストレスなくサービスを受けられることによって、他ブランドと差別化できるかを考えています。最後はカスタマージャーニー。これはお客さま自身の体験で、ディーラーでの対応を軸に、例えば東京ではシトロニストカフェをオープンするなど、お客さまの生活をより快適に、より気楽にしようというためのものです。
これらを成功させるためにはもう1つ重要なキーがあります。それはベストなチームを作ることで、パリだけではなくて日本も同様です。例えば2015年、私が日本に来た時には1000台規模でしたが、そこからチームとして戦略を進めて現在は4000台規模まで成長しています。戦略を実行してくれたチームは非常に素晴らしいと思っています。
新しい技術を手の届く価格で提供
――さて、シトロエンはPSAグループの一員としてこれから10年先を見据えた時に、どのようなポジショニングで、また、どのようなラインアップをそろえていこうと考えていますか。
リンダ・ジャクソンCEO:まずポジショニングは引き続きお客さまの求めているものを反映していくということに変わりはありませんし、いま述べたデザインやコンフォートも継続します。もちろん新しい技術も導入していきますので少しは進化していくでしょう。
また、よりインターナショナルになりたいと思っています。現在シトロエンはヨーロッパが80%ほどの売り上げを占め、それ以外が20%です。これを2021年には2倍の40%にしようと考えています。その時にヨーロッパの数を減らすのではなく、新しい市場での伸びをさらに増やすのです。例えば2020年にシトロエンはインドへの導入を発表していますし、もちろん現在導入している日本を含めた市場でもさらにボリュームの拡大を推し進めます。
10年の間には市場も変わるでしょう。特に電動化という動きが顕著です。そこでわれわれもプラグインハイブリッドや電気自動車をグローバルに展開していきますが、それだけではなく自動運転やコネクティビティも重要です。その動きの中でわれわれはわれわれの役割を果たしていきます。その役割とはそういった技術をお客さまに手の届く価格で届けることです。われわれはいわゆる主流のお客さまを相手にしているのですから。
これからの10年は今までの30年間に比べて非常にエキサイティングな時代が自動車業界には来るでしょう。電動化や自動走行だけではなく、お客さまが自動車とどのようにインタラクションするかも重要です。買ったりリリースをしたり、あるいはカーシェアなど新しい方法も出てくるでしょうから、そういったことも踏まえながら戦略を進めていかなくてはなりません。
歴史は財産
――さて、シトロエンは今年、100周年を迎えた非常に大きなヘリテージを持っている会社です。そして日本にも古くからディーラーがあり、シトロエンのヒストリックカーも数多く存在しています。そういったオーナーに対してシトロエン本社としては何らかの活動や対応は考えていますか。
リンダ・ジャクソンCEO:答えは2つあります。日本についてはインポーターであるプジョー・シトロエン・ジャポンからお話をした方がいいのですが、私からはヘリテージは非常に重要視しているということを強調したいのです。100年規模というのはなかなか他にはありません。実は2014年に新しい製品のミーティングをした時に、デザインやプロダクトチームも一緒になって、コンセルバトワールに行きました。そこはシトロエンの多くのヒストリックカーやコンセプトカーが置いてある場所なのですが、そこで一番好きなモデルは何か、シトロエンとは何かということを議論し、これらにインスパイアされて今日のモデルにつながっています。すごくアイコン的なモデルもあれば、ダブルシェブロンも含めてフロントまわりに強い個性を持っているクルマも多くあり、こういったところは他にはないものです。また、乗り心地や使い勝手という意味も含めたコンフォートな部分を強調したクルマたちも数多くあります。このように、過去を忘れることはできませんし、忘れてはいけません。それによって将来に向けてインスパイアされ、シトロエンの歴史を継承していくのです。
また、ヒストリックオーナーのこともやはり重要視しています。彼らはファンでもあると同時に、われわれにとってアンバサダーにもなってくれる人たちで、グローバルで1700万規模もいらっしゃいます。そういう人たちを非常に大事にしていきたいと思っています。
――特に日本市場においてはクルマ(ヘリテージカー)のメンテナンスも含めて対応していただきたいですね。
リンダ・ジャクソンCEO:非常によいポイントだと思います。
クリストフ・プレヴォ社長:日本だけではないのですが、ヨーロッパでもパーツの問題は出ています。今後お客さまとコンセルバトワールとの関係をより深くし、こういった問題を解決していきたいですね。