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アウディ、2019年度の振り返りと2020年度の展開と戦略

フィリップ・ノアック社長がAudi City 紀尾井町オープン記者会にて発表

2020年2月4日 開催

アウディ ジャパン株式会社フィリップ・ノアック社長

 アウディ ジャパンは2月4日、新しい都市型ショールーム「Audi City 紀尾井町」のオープン記者会見を開催した。Audi City 紀尾井町は、1階に3台ほど展示するほか、30台分の駐車場を確保することで、ほぼフルラインアップの試乗を可能とした。また、新たな試みとなるデジタルショールームでは、VRゴーグルを装着することで、3D空間でアウディの車両が体感できるという。オープン記者会見ではフィリップ・ノアック社長がAudi City 紀尾井町の紹介に加え、2019年度の振り返りおよび、2020年度の展開と戦略を発表した。

「ここは世界で6拠点目となる“Audi City 紀尾井町”です。大都市の中心部にフィットしたコンパクトストアであり、プレミアムな販売方法を新しいモデルとして、将来に向けて試すベースにもなっています。また、デジタル化が大きなテーマとなっていて、デジタルを活用した販売方法を生み出していきます」と、2月7日オープンとなるAudi City 紀尾井町の説明から始まった。

交差点の角地にあり遠くからでも目立つ立地
1階には3台の車両を展示可能という
店舗から車道を挟んだ向かい側にある駐車場

「2019年は世界で184万台を販売しました。これは前年比1.8%の成長で、Q3、Q5、Q8と、Qシリーズが非常に貢献してくれました。また、さらに重要なのが、昨年2万6000台のe-tron(電気自動車)を販売したことです。これはまったく新しい技術の新型車で、今後アウディが目指す方向性を示しています。しかし、残念なことに日本においては販売台数2万4222台と前年比8.4%のマイナス成長となってしまいました。ただし、その要因はA1、Q3、TTといった主力商品がほぼ1年間欠品状態が続いていたことで、これらはWLTP(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure:乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)への対応が原因で、その厳しい状況を考えれば、とても健闘した数字だと思っています。ほかにもA6で2.0リッターの導入が遅れたこともマイナス要因の1つに挙げられます」。

「しかし、決して暗い話題だけではありません。明るい光も差しています。それは中古車の販売台数が1万3550台と、対前年7%以上の成長を遂げました。今後もオペレーションを改善し、拠点を強化し、マーケティング活動も積極的に行ない、ネットワークも強化していきます。中古車はアウディの将来のビジネスに重要な柱の1つだと考えてます」とノアック社長自ら2019年度の振り返りを解説した。

2019年の全販売台数は184万台超
日本国内の販売台数は2万4222台
日本国内の中古車販売は1万3550台

続いて2020年度への展望

「1年前に発表していますが、アウディ ジャパンの販売戦略には3つの柱があります。それは『商品構成』『販売ネットワークの強化』『顧客中心主義』です。ユーザーのニーズにしっかり応える。これが最も重要なポイントだと考えています。そして、2020年の商品構成については、1月にはA6、A7の2.0リッターTSFIエンジンを導入。今後も販売の重要な柱となるエンジンです。第2クオターにはディーゼルエンジンの導入を予定しています。さらにA1の1.0リッターエンジンを年度の中旬に導入を予定しています」。

販売戦略の3本の柱

「そして新たな成果通過点となるのが、新型Q3、Q3 スポーツバックの同時販売(予定)です。また、現行型のA4、A5、Q7もアップデートモデルを発売します。これらも重要な柱になってくれると期待しています。そしてTT RSとRS Q3。この本当にカッコイイこの2台を今年導入する予定です。さらに今年はアウディの最新モデル、アウディの技術進化の舵を担う、アウディ初の電気自動車e-tronの発売を予定しています。新型モデルをもって技術の先進を体現していきます」。

2020年の主力モデル構成

「多くのディーラーがアウディのビジネスに対して未来を一緒に見てくれていて、ディーラーから総額60億円の投資があり非常にうれしく思っています。昨年の利益率が2.2%でしたので、この数値を基準に将来の投資を決めたディーラーがたくさんいました。日本での販売台数は前年割れをしてしまいましたが、平均2.2%の利益率は素晴らしい数字だと考えていて、これはディーラーとアウディ ジャパンの強い協力関係の表れであり、今後も継続していきます」。

販売ネットワークの強化

「最後に最も重要だと考えている販売戦略の根幹である『顧客中心主義』についてですが、特に日本は今でもアウディの販売台数トップ10に入る国なので、日本の顧客のニーズを理解することがとても重要だと考えています。そのためにディーラー向けのオンライン研修、オフライン研修、集合研修、オンサイトトレーニングも提供していきます。そして、昨年はセールス部門がJ.D.パワーで1位を獲得。とてもうれしく思っています。さらにアウディが主催しているサービスアドバイザーとテクニシャンの実力を競う大会「アウディツインカップ」の世界大会で、見事に日本が優勝しました。両方のカテゴリーで優勝できたのはとても誇らしく思っています」。

顧客中心主義

アウディのブランド戦略のこれから

「アウディは今年、新しいブランド戦略を掲げました。それは『持続可能なモビリティの美しさを解き放つ』これがテーマです。これが今重要な戦略となっています。また、技術による先進の再定義でもあります。このブランド戦略は、電動化、持続可能性、顧客中心主義、コネクティビティを中心に置く。それを実現するためのステップとして、まず、2025年までに30種類以上の電気自動車を発売します。そして販売台数全体の4割を電気自動車にします。もちろんその狙いはCO2の排出量を2015年より3割削減すること。しかし、電気自動車以外にも取り組みはあります。まだほかにもやることがあり、世界全体を見渡しながら、サプライヤー、生産拠点などでも持続可能の実現を目指していきます」。

アウディのEV(電気自動車)の展開予定

「持続可能なためにアクションを起こすとはどういうことか? 例えばベルリンではe-tronの使用済バッテリーのリサイクルを始めています。また、e-tron生産工場であるブリュッセル工場ではカーボンニュートラルの生産を実現しました。Q5の生産拠点であるメキシコ工場では『廃水ゼロ』の生産を実現しています。これらはほんのいくつかの例ですが、今後も積極的に取り組んでいきます。もちろんアウディジャパンも同様の取り組みを行ないます。まずはカタログを完全にデジタル化します。これで30トン以上の紙の削減が可能となります。ほかにもつい先日ですが「マイミズ」とパートナーシップを結びました。これはペットボトルの廃棄削減を目ざす活動で、アウディジャパンは給水スポットを探すアプリを提供しています。同時にディーラーも給水スポットとして登録しています。これも小さな一歩ですが、アウディの方向性を示すためにも大事な取り組みのひとつと考えいますので、今後も継続していきます」。

世界の工場で持続可能なための活動が行なわれている
すべてのカタログが電子化される
mymizuとパートナーシップを結んだアウディジャパン販売

「2020年の重要な取り組み分野ですが、もちろんクワトロの40周年記念です。自分はクワトロと一緒に育った世代なのでとてもうれしく思います。1980年にデビューしたクワトロが40周年を迎えます。また、Eモビリティの未来を見据えてe-tronを導入します。今度も電気自動車への取り組みを強化し、自動運転、AI、コネクテッドカー、そして持続可能なモビリティ。今年はこういった分野を重点的に取り組んでまいります。持続可能な未来のために変化を見逃さず、チーム全体で、ネットワーク全体で行動を起こして、電動化への取り組みを進めていきます」。

e-tronの導入は2020年末ころが濃厚とのこと

Audi Cityについての解説

Audi Cityのコンセプトを解説するチン氏

Audi Cityの解説はノアック社長からバトンを託されたチン氏が行なった。

「Audi Cityのコンセプトは、2012年に実店舗の強みと、デジタルイノベーションを組み合わせたサイバーストアとして、デジタルでつながった販売活動のための実験場としての役割を持ち、新たなカスタマーエクスペリエンスを創造するものとして誕生しました。このコンセプトは、各国の主要都市の中心部用に開発しました。トレンドが生まれ、社会の多様性が息づき、他業界のプレミアムブランドが息づく都心部用のコンセプトです。Audi Cityは従来の実店舗と本物と変わらないバーチャルテクノロジーの双方を駆使しして、アウディの全商品ポートフォリオを紹介するプラットフォームであり、革新的かつユニークなカスタマーエクスペリエンスを組み合わせ、トップレベルのパーソナルなアドバイスやサービスを提供することで、本当の意味でのユニークなブランド体験を提供します」。

世界に数か所しかないAudi City
各店舗で先進的な取り組みが行なわれている

「ロンドン、北京、ベルリン、イスタンブール、モスクワ、パリ、ワルシャワ、そして今日はウィンブルドンもオープンする日になります。出展するごとに成功への磨きをかけてきました。デジタルショールームを、従来型のディーラーにも展開できるように日々開発を行なっています。東京では江戸時代の徳川将軍家に由来する、豊かな文化や歴史のある紀尾井町に決めました。2フロアで400m 2 と小さなショールームではありますが、アウディ ジャパン販売と協力して、日本のユーザーにニーズと期待にマッチするアウディコンセプトを形にしました。デザイン戦略は物理的と実験的と、2つのパートに別れています。物理的な部分は、フロントグリルやヘッドライトといった商品デザインをモチーフにしています」。

Audi City紀尾井町は日本の風土を意識したモチーフが多用されている
店内にはオリジナルグッズやカー用品、レーシングスーツも展示される

「また、さまざまな日本の要素も取り入れています。例えば『緩やかに区切る』という考えに共感してパーテーションを設計。さらにモダニストの設計家に絶賛されている大谷石を使用。ほかにも麻の葉模様をAudi Cityのシグネチャーとアウディロンバスパターンと融合させ、天井やカーペットのデザインに取り入れています。1階のスペースをあえてオープンに設計し、商品のハイライトやお客さまとのインタラクションに合わせてフレキシブルに展示レイアウトを変えられるようにしてあります。さらにカスタマーラウンジは地下に配置し、商品説明や新車の納車ができるようになっています。プライベートとセミプライベートのセールスラウンジを組み合わせることが日本では重要だと考え、お客さまの好みに合わせて使用できるように設計するとともに、デジタル体験が可能になっています」。

デジタルショールームでは、VRヘッドディスプレイを装着することで、運転席の感覚や車内空間の広さ、カラーリング、クルマの外観、屋根の開閉、ドアの閉まる音までリアルに再現されて疑似体験することができる

「また、商品とサービスにおけるアウディブランドの功績を展示するために、アフターセールスの板金塗装チームの成果物である『ミサノレッド』に塗ったパネルを地下に展示し、日本の高い品質とワークマンシップを表現しています。Audi City 紀尾井町は、日本のネットワークに加わったユニークな店舗といえるでしょう。ぜひ来店して、お楽しみいただきたいです」。

ノアック社長とチン氏

 Audi City 紀尾井町では、アウディのほぼフルラインアップを試乗でき、さらにデジタルショールームでは、VRゴーグルを装着することで、3Dでカラーリングの変更や、乗車した状態を仮想体験できる。ぜひ1度、足を運んで新しい体験をしてみてはいかがだろう。