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日産「キックス」の“電気の走り”を光るスケボーのライトペインティングで表現

日本を代表するスケーター達との“デンキのコラボ”「ELEC-TRICK CHALLENGE」プロジェクトムービー

2020年9月30日 公開

【キックス】#ELECTRICK CHALLENGE by NISSAN KICKS e-POWER(1分46秒)

 日産自動車は9月30日、特別に開発したスケートボードをスケーターが使い「キックス」の電気の走りをグラフィックで表現する「ELEC-TRICK CHALLENGE(エレク-トリックチャレンジ)」のプロジェクトムービーを公開した。

 ムービーでは、世界大会で5度の優勝経験を持つ、日本が世界に誇るスケートボード選手、瀬尻稜選手を始め、日本を代表するスケーター達のプロジェクトチームが「ライトペインティング」という技法でキックスの世界観を表現することに挑戦。

 ELEC-TRICK CHALLENGEのプロジェクトは、企画、演出を務めるテクニカルディレクター集団BASSDRUM(ベースドラム)が電気の刺激的な走りを表現するため“ライトペインティング”というデジタルアートの技法を応用し、独自のスケートボードを開発し、このスケートボードが発行する光を長時間露光撮影という技法で撮影し、任意の画像を描くことにも挑んだ。

 瀬尻稜選手を始めとするスケーター達は、電気を表す“ELEC-TRICK”のTRICKをスケートボードの技で表現するために、ダイナミックかつキレのあるライディングやライトペインティングを掛け合わせることで「キックス」の電気によるパワフルな走りや躍動感を表現することに挑戦した。

「ELEC-TRICK CHALLENGE」内のスケートボードのトリック

 トリックは「オーリー」を始め瀬尻選手も難しかったと語る「バックサイド ケーグラインド」など、難易度が高い技を含んだ全12種類にチャレンジした。

オーリー
バックサイド ケーグラインド
フロントサイド エアー テールボーン
ボードスライド
ピボットフェイキー・フロントサイド5-0
フロントサイド JT エアー

プロスケートボーダー瀬尻稜選手のコメント

瀬尻稜選手:幼い頃からアジアを中心とした国内外での大会に参戦し、11歳で最年少AJSA グランドチャンピオンを獲得。2010~2012年まで3年連続でグランドチャンピオンに輝く。2013年には17歳でワールドカップで日本人初となる優勝を果たし、その後も挑戦の場を世界へ広げていき、世界の“Ryo”へとその名を轟かせている。スケートボードのイメージを大きく変化させているスケーターの1人とされている

 初めて企画内容を聞いたときは正直想像がつかなくて、どんな撮影になるんだろう、そもそも可能なのかな?って言う感じで、LEDをつけたスケートボードでテストを行なうたびに、新しい課題が見つかるくらい難しいチャレンジでしたが、制作チームと課題をクリアするごとにこの企画を成功させたいという気持ちが強くなっていきました。実際の撮影はとても楽しくて、途中LEDが壊れたりとか色々なトラブルもありましたが、現場にいるみんなでそれを1つ1つ乗り越えていくような感じで。終わった時はものすごい達成感がありました!

 あと、競技を続ける上で、仲間と滑ることでいつも刺激をもらっているのですが、今回もスケート仲間と一緒に挑戦できたことも刺激的でよかったです。お互いに高めあいながら滑ってる感じですかね。

 LEDが光る瞬間にトリックをしてそれを写真に収めてもらうのですが、ほんの少しでもタイミングがずれたり、板の角度が違ったりすると文字が綺麗にでないので、何度もやり直したりしながら結構苦労しましたね。技の難易度としてはレールの「Kグラインド」が映像に出てくる中で1番難しいトリックなので、ぜひ注目して見てほしいです。

 軽量化されたLEDとはいえ通常の1.5~2倍重いデッキでやっているので、ピンポイントでレールにかけるのがなかなか上手くいかず大変でした。デッキの重さで難易度が上がっているのは、すべてのトリックに共通して言えることですね。

 それと映像や写真に出ているLEDの線や文字は実際にスケートに着けたLEDの線から発光してるものなので、合成無しのリアルなデンキの走りを見て感じてもらえたらいいですね!

 実際にキックスに乗ってみたのですが、まずエンジンをかける時の音がめっちゃ静かで驚きました! 最初から運転もすごいしやすくて、デンキのチカラってすごいなと思いました! 車内のスペースも十分なので、家族と出かけるもよし、仲間とスケートに行く時にももってこいですね。この動画を観て少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです!

BASSDRUMエンジニア/テクニカルディレクター泉田隆介氏のコメント

泉田隆介氏:大学卒業後、光学ドライブやゲームコントローラなどのファームウェア開発を経験。2013年に広告制作業に転向し、株式会社ソニックジャム、株式会社BIRDMANに所属。体験型コンテンツのソフトウェア/ハードウェア制作やテクニカルディレクションなどを担当。2018年より独立し「マニュファクチュア」という屋号で活動するとともにテクニカルディレクター・コレクティブ「BASSDRUM」にも参画。広告制作のほか、企業の新規事業プロジェクトやスタートアップ企業に向けたハードウェアプロダクトのプロトタイピング/開発支援も行なっている

 過去にさまざまな難易度の高い撮影に関わってきましたが、その中でもこれは段違いで難しい企画でした。スケボーのトリックの滞空時間の約1秒。その短い間にグラフィティを表示させるためには、デバイスに高い精度が求められると共に、スケボーの衝撃は精密機器のデバイスにとって想像を遥かに超えるものであることも頭をめぐり、リアルに挑戦だなと直感的に感じました。

特別に開発したスケートボード

 約4か月の開発期間を要し、木の棒にLEDを取り付けたレベルの初期のプロトタイプから始まり全部で5バージョン製作しました。トリックのスピード感に追従できる高速描画の実現や着地の衝撃に耐えうる制御ボックスの開発など、挙げるとキリがないほど未知の要素を1つずつ潰しながら完成しました。

今回の挑戦を実現させるために導き出した3つの工程

LEDのついたスケボーの軌跡でグラフィティを描くためにまず、大きく3つの工程を考えました。

1.トリックの3Dデータ化
 テスト用スケボーデッキに取り付けたSLAMセンサー(画像処理と加速度センサーの組み合わせで自己位置推定が可能)と、LiDARというクルマの自動運転などにも利用される3D空間認識するセンサーを組み合わせて行ないました。本来ならモーションキャプチャーを利用するのですが、屋外で撮影、広大な撮影スペース、トリックの速度が速いことから時間も、コストもかかりすぎる事が分かりました。また、ライダーのコンディションも現場で変わるため、リアルタイムセンシング技術でトリックを3Dデータ化しています。

2.LEDを光らせるパターン作成
 デッキを真下に落下させるだけであれば、ロゴデータをLEDで表示させれば問題ありません。しかし、トリックの中で3次元回転のある動き、かつカメラのアングルに対して、グラフィティが正対に見えるようにするには、逆算して予め歪めたデータをLEDで光らせる必要があります。そのためにプロジェクトマッピングの技術を利用しました。

 3Dデータ化したスケボーの「軌跡の面」に対してカメラアングルにだけグラフィティが正対になるようプロジェクションマッピングし、あえて歪んだデータをLEDで描写することで、写真になったときにキレイに文字が読めるようにしています。

3.LEDを付けたスケボーデッキを実際に光らせ、長時間露光で撮影する
 本企画の肝であるLEDのついたデッキは、バーサライタと呼ばれるもので、LEDストリップに映像にあわせたパターンを表示し、それを長時間露光で撮影することで空間上に像を映し出す技術です。これ自体は製品化などもされている一般的な技術ですが、今回トリック中という瞬間的な時間で高速表示させなければいけないところが挑戦的なポイントでした。LEDを高速で点滅させることが、グラフィティの解像度に直結します。結果的に2/1000秒間隔で表示しています。

 また撮影技術も単純な長時間露光撮影ではありません。通常、写真を撮るときは1/100秒程度でシャッターを切りますが、今回はLEDの軌跡を残すため、トリック全体の長さ(15~30秒間)シャッターを開き続けています。レンズに特殊なNDフィルターを付け感光する光量を減らすことで、軌跡を撮影できます。しかし、そのままでは人物はブレて映らないので、大光量のストロボをタイミングよく発光させ、ポーズが一番美しく写るように工夫しています。LEDデッキの光、ライダーやクルマのライティング、すべての光のバランスを上手く調整しています。

もっとも苦労したポイントは「トリックをすることでグラフィティが出せる向きと、クルマが美しく見せるアングルの探し」

 グラフィティを表示するためには、表示面積が十分確保できるトリックを採用したいのですが、トリックの滞空時間は約1秒。肉眼ではその「軌跡の面」を探すことは不可能でした。瀬尻さんにあらゆる技を見せていただき、その膨大な技の動きを3D化することでやっとその面を発見することができました。その「軌跡の面」と車が美しく見えるアングルを、カメラマンと撮影場所に何度も訪れて検証。3Dデータの空間の中でも試行錯誤を重ねることで、やっと撮影にこぎつけました。

実際の撮影では“完璧”なタイミングでのトリックが必須

 このように綿密に計算して挑んだ撮影ですが、今回お願いした技は、非常に難易度が高い技で、かつ普段と違う重さ、重心のLEDデッキを使用しながらのトリックです。グラフィティをキレイに表示するためには、失敗しないだけでは不十分で、“完璧”なタイミングで技を成功させることが必須でした。そのため、何度も難易度の高い技にトライしていただき、やっとの思いでグラフィティが表示されたときには、全スタッフから大きな歓声があがりました。

この挑戦に果敢に挑んだ「ライダー、スタッフたちの真剣な目つきにぜひ注目してください!」

 光の調整以外にも、LEDパターンを複数外部メディアに記録してすぐに読み出せる機能や、遠隔操作で映像のキュー出しができる機能、輝度や表示速度を細かく調整できる機能など、映像には映らない細かい現場用の機能を駆使しての撮影となりました。ぜひそういった背景にも思いを馳せていただけると幸いです。

 また、技術のプロ、撮影のプロなど、さまざまな要素が組み合わさった複雑な現場の中で、無謀とも言える撮影に果敢に挑戦するライダーや、スタッフたちの真剣な目つきにぜひ注目してください!

今回独自開発したスケートボードの技術

 電気(LED)を搭載したスケートボードと、これまでにない撮影技法を組み合わせることで、ライトペインティングで描くデンキのアートを新しく開発しました。

・スケートボード
 デッキの周囲にLEDを搭載したスケートボードを制作、周囲の明滅をコントロールするプログラムを開発。トリックに応じて明滅の仕方が変化するプログラミングを行なっています。長時間露光撮影により、トリックによって描かれた光の軌跡の中に任意のイメージを浮かび上がらせることができることに成功しました。

・撮影技法
 長時間露光撮影(シャッター開きっぱなし)の技法で実施しました。その状態でスケーターが光るボードで滑り、トリックを決める瞬間に明滅が変化して軌跡が浮かび上がるように撮影しました。さらにフラッシュを焚くことで、人物や車体もしっかり映り込んだ映像が撮影できます。