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佐藤琢磨選手が10代の若者に「No Attack No Chance」の大切さを伝える特別授業「The Power of Teen シェア夢授業」

「常に挑戦を続ければいつか自分の夢は叶う」

2020年11月14日 開催

 レーシングドライバーの佐藤琢磨選手は11月14日、本田技研工業が開催した10代の若者に向けたオンラインの特別授業「The Power of Teen シェア夢授業」に出演。「No Attack No Chance」と挑戦を続け夢を叶えてきた佐藤選手が、速く走ることへ夢中になっていた自身の10代の時の話を交えながら、若者に向けて夢に向かって挑戦し続ける大切さを説いた。

 この特別授業は、本田技研工業が「The Power of Teen」と題して“コロナ禍で大変な状況だからこそ、次世代の夢を応援したい”という想いからスタートさせた現在展開中の社会貢献活動の一環。

 その活動の中で展開されるシェア夢授業は、今もチャレンジを続ける”夢のスペシャリスト”によるオンライン授業として、ホンダ エアクラフト カンパニー社長兼CEOの藤野道格氏、レーシングドライバーの佐藤琢磨選手、Honda HEAT ラグビー選手の具智元選手が登壇して、全3回で生配信されるもの。

 第2回目となるシェア夢授業では、2017年に続き2020年のインディ500を制した佐藤琢磨選手が登場して、夢に向かってチャレンジし続ける大切さや夢を叶える秘訣などを伝えた。

10歳のときに鈴鹿サーキットで観戦したF1日本グランプリの感激

10歳のときに鈴鹿サーキットで観戦したF1日本グランプリの写真が公開された

 佐藤選手による特別授業では、10歳のときに鈴鹿サーキットで観戦したF1日本グランプリの感激が忘れられなかった話から始まり、高校時代には自転車競技でインターハイに出場するため自身が通っていた高校に存在しなかった自転車部を設立してインターハイへの参加を果たしたことや、開設されてから3期目となる鈴鹿サーキット レーシングスクール フォーミュラに入校するために、父親と相談しながら面接することを提案して選考方法を変えさせたことなど、周囲の大人を巻き込みながら自らの人生を切り開いてきたことなどが語られた。

 そうした、佐藤選手が置かれた環境を自ら変えていく原動力としては、速く走ることへの欲求があったという。それを感じさせる話として、鈴鹿サーキット レーシングスクール フォーミュラに参加していた当時、スクールに参加する選手の走行データを記録するために練習用マシンに装着されていたデータロガーシステムに着目したエピソードが語られた。

 佐藤選手は「これは本来講師しか見せないという話だったんですけども、どうしても自分が上手くなりたいし足りないところを探したいということで、その先生にお願いをしてですね。やっぱり“スクール中ではどうしても平等に皆さんの時間を作らなきゃいけないのでそれはできないと、でも終わってからちょっと来ていいよ”っていうことで、その当時パーソナルコンピューターを持ってなかったですし、まだフロッピーディスクの時代で、事務局に行ってそのデータを見さしていただいたんですね。すごく面白くて、もう本当に時間を忘れて夜の10時ぐらいまで見ていて、本当に鈴鹿サーキットさんのほうも“ちょっと勘弁してくれ、もう帰ってくれ”っていうことになって、それでも“全然終わってないんです”って言ったら、もういいから、いいからコピーしていいからっていうことで、全部データを頂いてですね、それを家に持ち帰って、すぐにパーソナルコンピューターを買いに行って……」などと、ある1つのコーナーにおける速さを知るためにデーターを研究したことなど、貪欲に速さを求めていたエピソードが話された。

 鈴鹿サーキット レーシングスクール フォーミュラに参加していた当時について、佐藤選手は「自分にとっては本当に1回、1回、1周、1周ですね、もう無駄にしたくなかったし、何よりその上手くなりたい、強くなりたい、速くなりたいっていう気持ちが先行していたので、もう一生懸命やってるとかいう気持ちは自分にはないですね。ただ無我夢中に運転することだけが、もう楽しくて仕方がなかったっていう時代だったと思います」と振り返った。

周囲を巻き込み周囲の環境を変える佐藤選手のコミュニケーション力

 大学時代にこれまでいた自転車競技の世界から、モータースポーツの頂点を目指すため鈴鹿サーキット レーシングスクール フォーミュラの門を叩いたことについて、佐藤選手は「そもそも僕にとって、入ること自体がハードルがすごく高かったですから、入ってしまえばもう絶対なんとかなるだろう、何とかしてやろうという、そういうその半分若気の至りなんですけども、その世界を知らないからこその無謀な自信って言うんですかね」との意気込みで参加していたという。

 しかし、佐藤選手のエピソードを聞いていると、速く走りたいという自らの欲求だけではなく、周囲を巻き込むコミュニケーション力によって自らの環境を変えて、チャンスを掴み取っているように感じた。

 世界的なレーシングチームと数々のレースを戦ってきた今、そのコミュニケーションについて、佐藤選手は「何をするのでもそうだと思うんですけども、その同じページにいるって凄く大事なんですね。最終的にコミュニケーションていうのは言葉である必要は、実はないんですよ」と話す。

 佐藤選手は「英語だから日本語だからということではなくて、その人にどう伝えるかってのは、やっぱり同じ時間をある程度一緒に居て、同じ空気を吸って、同じ食べ物食べて、そういう時間ってすごく大事ですね。どこのチームにいってもイギリス、アメリカのチーム、ほかにもいろんなところで走らせていただきましたけども、まずは彼らのやり方っていうのをリスペクトしてですね、その中で一緒にまずは自分が吸収して、自分が違うなと思っても一緒にやってみる。やってみてうまくいけば自分の知らない世界で“これ得したぞ”っていう風になる。知らない世界をやってみてダメだった時に初めて“こういうやり方どう?”っていう提案をしてみて、彼らも“それやってみようか”となった時には、“絶対に成功させてやる”となる、そうすることで自分が主導権を得るわけですね」などと話して、コミュニケーション上の戦略的な部分も示した。

 続けて、佐藤選手は「その中で信頼関係も生まれ、どんどんどんどん仲も良くなって、冗談も言えるようになり、そうすると今度言葉っていうものもしっかりと使えるようになります。やっぱり、お互いに確認をして常に同じ方向を向いて行く、そうじゃないと、結局最後に自分に跳ね返ってきてしまう。みんなも世界に出ていった時に、同じ分野で自分より秀でている人は何万人と見ることになります。でも、その中でどうやって自分がその中で共存してくのか、あるいは一番になっていくのか、負けてしまうのかっていうのは、やっぱりお互いに一緒に作り上げてくっていう気持ちがないとダメなんです」と話した。

 そうしたコミュニケーションの力で生み出されるものについて、佐藤選手は「(高校時代に英語で赤点を取っても)それでも、やっぱり興味を持ってこの人に伝えたい、この人に言ってることは分かりたいと思ったらやっぱり(しっかりコミュニケーションを)やりますよね。そうすれば、もう本当に最後は阿吽の呼吸になります。そこまで行くと、結局自分がやりたいことを誰かがやってくれないと、物っていうのは生まれないですから、そういう共同作業の上で成り立つという意味で、最終的にコミュニケーションが自分を助けてくれる。そして、そういう仲間とともに苦難を乗り越えた後に、僕で言えばレースに優勝することで、最高の形でお礼をできますし、その瞬間の喜びというのは、1人ではなくてたくさんのみんなで共有でき、何倍にも膨らみますね」と話した。

2020年のインディ500優勝時のようす

 この特別授業ではその後、Zoomを使ったセッションが用意されて、参加した若者からの質問に佐藤選手が答えた。イベントの締めくくりとして、佐藤選手は「本当に楽しかったです。今日話した“ノーアタック、ノーチャンス”という言葉をですね、今日は1つ覚えといていただいて、いついかなる時にもですね、チャンスを掴めるために常に挑戦を続ける、本当にそれを続ければいつか自分の夢は叶うと思うので、これからも一生懸命頑張っていただきたいと思います」とのメッセージを語った。