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ヴァレオ、自動運転レベル4を実現する「Drive4U」 お台場地区での実証走行を初公開

レーザースキャナ「SCALA」と高精度地図で実現

2020年11月26日 公開

自動運転レベル4を実現する「Drive4U」を搭載したヴァレオの実証実験車

 ヴァレオジャパンは11月26日、自動運転レベル4を実現する「Drive4U」のお台場地区での実証走行を報道向けに初公開した。ヴァレオジャパンは、世界的な大手自動車部品サプライヤーであるValeoの日本支社になるほか、日本に研究・開発・製造拠点を持つ。つくばテクノセンターなどでは自動運転の研究・開発を行なっており、同センターも加わり2018年10月に自動運転による日本一周「ハンズオフジャパンツアー」が実施されている。

 内閣府が主導するSIP-adus(戦略的イノベーション創造プログラム 自動運転)にも加わっており、東京お台場地区での自動運転実証実験に参加。ヴァレオが開発・実証を行なっている自動運転レベル4「Drive4U」が公開された形になる。

 自動運転のレベルは、アクセルやブレーキなど速度方向のサポートを行なうレベル1、レベル1に加えステアリング操作などのサポートを行なうレベル2はすでに実用化されている。ACC(アダプティブ クルーズ コントロール)がレベル1自動運転、ACCに加えLKA(レーン キーピング アシスト)がレベル2自動運転となり、すでに普段から使用している人も多いだろう。

 実際には、すでに実現されている技術をレベル1、レベル2として定義し直したものだが、このレベル2までがドライバー責任による自動運転となり、運転支援装置として位置付けられている。

 ホンダが2020年度内に発売するという自動運転レベル3を搭載する「レジェンド」は、日本の国内法が定めた自動運転レベル3に必要な自動運行装置を備えたもので、例えば高速道路などある特定の条件化でのハンズオフ(ステアリングから手を離す)運転などを認めていくものになる。その特定の条件を運行設計領域(ODD)として設計していく必要があり、その条件があることから自動運転レベル3は条件付き自動運転とも言われている。

 このレベル3の領域から本格的な自動運転車となり、それに伴う法改正などが必要になっていた。日本では2020年4月1日より道路運送車両法の一部を改正する改正法(令和元年法律第14号)が施行され、実際の市販車が道路を走ることが可能になり、ホンダのレジェンドはその第1号車となって登場する。

 この法改正のためには、さまざまな実証実験が必要で、その実証実験を先んじで行なっているのが内閣府が各省庁を巻き込んで運営しているSIP-adusになる。

「Drive4U」の認識状況。信号機の色はV2Xによって信号機から受け取り、レーザースキャナ「SCALA」によって空間認識。位置は「SCALA」と高精度地図で特定していく

レーザースキャナ「第一世代SCALA」「第二世代SCALA」で自動走行する「Drive4U」

 ヴァレオの自動運転レベル4を実現する「Drive4U」は、そのSIP-adusが行なっている次世代自動運転である自動運転レベル4の実証実験に対応するものとなる。自動運転レベル4は、レベル3より走行領域を広げたもので高速道路だけでなく、より自動運転が難しいと言われる一般道などにおいても自動運転を実現するものだ。

 ヴァレオは、この自動運転レベル4を同社が開発・製造するレーザースキャナ「SCALA」と高精度地図データを使って実現させ、カメラだけではない自動運転のあり方を提供していく。レーザースキャナ「SCALA」は、LiDARとも呼ばれている機器と同じで、レーザーを使って周囲にある物体の距離情報を算出。カメラシステム、とくに単眼カメラシステムはクルマの移動情報などを使った高度な演算で見える物体の距離情報を算出しているが、レーザースキャナ「SCALA」であればレーザーを飛ばして戻ってくるまでの時間を計算しているので、カメラシステムより容易に物体までの距離情報が分かる。もちろん、真っ暗闇でも距離情報が分かるのも便利なところだ。

 今回の自動運転レベル4を実現する「Drive4U」では、第一世代に比べ上下方向にスキャニング範囲の広がった「第二世代SCALA」をフロント部に、すでに市販車にも搭載されている「第一世代SCALA」を各コーナー部など6か所に搭載している。カメラも搭載しているものの、今回の実証実験車では、レーザースキャナで走るのが特徴となる。

「第二世代SCALA」をフロント部に備える
「第一世代SCALA」を各コーナーなどに6か所に設置

 もちろん標識を読んだり、車線情報を読んだりするためにはカメラシステムが必要なのだが、今回の実証実験車では高精度地図+「SCALA」での走行を披露。高精度地図+「SCALA」で走行できることを実証することで、カメラシステムとの併用で、より安全な自動運転ができるようにするためのものだ。

 自動車メーカーは、この「Drive4U」を自社のクルマに組み込むことで、さらにさまざまな条件に強い(ロバスト性の高い)自動運転車を開発することができるようになる。

株式会社ヴァレオジャパン コンフォート&ドライビングアシスタンスシステムズの西田豊氏(CDV&CCC プロダクト・マーケティング主査、左)と、伊藤善仁氏(R&D ディレクター、右)が、同社の実証実験について説明
市街地での「Drive4U」
実証運転を行なっている地域。今回は臨海都心地域のお台場地区

 お台場地区では、信号情報が各信号機から出ているため、この信号機を使っての自動運転を実施。つまりV2Xという形での自動運転を行なっている。

 ちなみに自車位置は、基本的な位置をGPS-RTKで把握。この精度は数メートルずれることもあり、この自車位置をベースに高精度地図+「SCALA」で正確な自車位置を把握している。

 実際に助手席や後席で実証走行の同乗を行なったが、高精度地図+「SCALA」でしっかり車線内を走って行くのには感心する。信号機との連動もしっかり行なわれており、赤信号であれば止まるし、青信号になればクルマが進む。信号機については、現時点では近い信号を判断して自動運転を行なっているが、将来的には遠くの信号も判断して、よりスムーズな自動運転も行なっていきたいという。

 信号機については、今回は起きなかったが無線状況によっては、信号機の色が判断できないことあるとのこと。これは信号機側の問題であり、そういう問題点を洗い出すことも実証実験の役目とのことだった。

 また、同乗してみて驚いたのは「SCALA」が本当に周囲の状況をよく見ていること。前後左右のクルマはもちろん、クルマとクルマの間に見える自転車やバイクを判断(クルマはオレンジで、自転車やバイク、歩行者は赤のボックスで描かれる)し、信号で止まっていると目の前の横断歩道を横切る歩行者の個々をきれいに分離して見ている。

歩行者の認識も優れたものがある。ちなみにクルマの後ろにある走行軌跡で、青いのがGPS-RTKによるずれた位置データ。それを高精度地図と「SCALA」で補正し、赤い履歴で示されるように車線内の中央を走った

 これだけまわりが見えているのであれば、一般道で自動運転が行なえるのも納得の部分だ。ただ、クルマの制御に関しては実証走行車両が一般的なエンジン車であることから、お世辞にも「うまい運転」とは言えないもの。もちろん、この部分はヴァレオと自動車メーカーが一体になって開発していく領域であり、自動運転レベル4を実現する「Drive4U」では、自動運転に必要な情報をどれだけ正確にクルマに提供していけるかがポイントになる。そういった意味で、市街地化しつつあるお台場地区においての実証走行では、高度な位置認識、物体認識、空間認識を行なっていたのが印象的だった。