ニュース
ブリヂストン、2020年度決算は売上高が前年比15%減「ゴムのリサイクル事業を本格化させる」と石橋CEO
人と協働できる“柔らかいロボット”を作るソフトロボティクス事業も準備中
2021年2月17日 16:32
- 2021年2月16日 発表
ブリヂストンは2月16日、2020年度(2020年1月1日~12月31日)決算および中期事業計画を発表した。オンラインで行なわれた発表会に登壇したのは、代表執行役 Global CEO 石橋秀一氏、財務統括部門長・ Global CFO 菱沼直樹氏の2名。
第4四半期は大きく回復したものの、2020年度の売上高は対前年比15%減収
まずは菱沼氏が登壇し、2020年度第4四半期を振り返り、当初は新型コロナウイルス感染拡大の影響が出ると業績予想をしていたが、結果として影響は限定的に留まったと説明。それを踏まえたうえで、北米の建設資材事業売却をはじめ、経費削減とコストコントロールをしながら業務再編を推進などを実施し、2030年のその先へ向けた「サスティナビリティビジネス計画」を策定してきたことを紹介した。
タイヤ販売本数は第4四半期単体では前年比100%を超える部門も多かったものの、乗用車/小型トラック部門(リトレッド:再利用タイヤを含む)が前年比84%、トラック/バス部門が同87%、鉱山鉱物タイヤ部門は同83%となった。
2020年度の連結業績は、売上高が前年比15%減の2兆9945億2400万円、営業利益が同35%減の2229億3200万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は233億100万円の赤字となったと発表。ただし、第4四半期単体では回復基調が見られ、日本、米州、中国・アジア・大洋州の3エリアで増益に転じていると解説した。欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカエリアにおいては、ロックダウンの影響を受け赤字となっている。
また、その他の事業については、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け化工品事業が赤字となり、今も厳しい状態が続いていると語られた。
2021年度の業績見通しは前年比増収増益。タイヤ販売は前年比106%~110%を見込む
続けて菱沼氏は、2021年度の業績見通しを発表。原材料の天然ゴムは2020年度とほぼ同等としながらも、原油はやや上昇を想定しているという。しかし、タイヤの需要に関しては新型コロナウイルス感染拡大からの回復による需要増加を見込み、販売本数については、乗用車/小型トラック部門が前年比106%~110%、トラック/バス部門が同111%~115%、鉱山鉱物タイヤ部門は同106%~110%と、2019年レベルにまで回復すると予測していると発表した。
それらを踏まえて2021年度の連結業績予想は、売上高が2020年度比1%増の3兆100億円、営業利益が同17%増の2600億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は2610億円を見込むとした。
2030年の先を見据えたサスティナビリティビジネス構想
続てGlobal CEO 石橋氏より、2030年度を見据えた新たな中期事業計画の発表が行なわれた。
ブリヂストンは「最高の品質で社会に貢献」という創業から変わらぬ使命をもとに、2020年をブリヂストンの“第3の創業”と位置付けることを2020年に発表。2030年のその先へ向けたサスティナビリティビジネス構想として、タイヤ・ソリューション事業は独自のビジネスモデルを構築、持続的に成長するスパイラルアップを目標に掲げている。また、将来に向けて新たに「探索事業」を設立し、これまでの「創って売る」「使う」に続き「戻す」というリサイクル事業という新事業の探索を開始したという。リサイクル事業は、資源の循環と同時にカーボンニュートラルの活動と連動させて両輪のように回していくことが狙いだと明かした。当面はタイヤ事業がコアで、リサイクル事業が成長事業となるが、常に時代の変化に対応できる強い企業への成長を目指すとした。
また、中期事業計画の具体的な内容としては、これまでは「危機管理を中心とした守りのフェイズ」だったが、今年からは稼ぐ力の再構築をベースに戦略的成長投資を本格的に開始する「攻めと挑戦ステージ」に入ると宣言。
ビジネスの質の向上と新たな事業ポートフォリオを反映することで、粗利率を2015年レベルを上まわる40%とし、売上高も3.3兆円を見込むという。すでに進めている経費・コスト構造改革に関してはさらに推進させ、固定費と変動費に関しては2019年~2023年で合計530億円の改善を見込むという。また、タイヤ生産拠点に関しては今後も10年スパンで継続的に再編を行なっていくことも示唆。2019年時点での160拠点を2023年までに約4割の削減を計画していると明かした。
タイヤ販売に関しては高インチタイヤの販売を強化。中国ではOEM供給をより拡販させていくことを目指すという。また、加速するEV化の波を受け、サスティナビリティを中核にした次世代環境対応商品である現在販売している「ENLITEN(エンライトン)」の販売を強化。さらに高付加価値商品、技術を拡大・拡充させていく戦略が語られた。また、フリートソリューションについては、海外企業のM&Aも視野に入れ、グローバルでのリーディングポジションを狙うという。
またソリューション事業では、成長事業であるサブスクリプションモデルをグローバルに展開させるという。すでに稼働している欧州の「mobox」モデルを日米に展開。2023年までに20倍に拡大。同時に日欧で稼働しているトラック・バス向けの契約を2023年までに2倍に拡大させることを目指すという。
これらを実行するために4つのカテゴリーそれぞれにおいて、「日・米・鉱山のタイヤ・ソリューション事業」をより強固にさせること。現状は全体売上の2割程度だが伸びしろのある「中国、南米、インド、アジアパシフィック、中近東のタイヤ販売シェア拡大」。欧州向けタイヤと航空タイヤに関しては、ピンポイントで投入。中国とインドのトラック&バス、ロシアとアフリカのタイヤに関しては事業の立て直しを図る。といった目標を挙げ、現状の赤字からの脱却を目指すとした。
「リサイクル」「ソフトロボティクス」の事業準備室を設置
2050年のカーボンニュートラル化と100%サスティナブルマテリアル化の達成に向け、「創って売る」「使う」「戻す」というサスティナビリティビジネス構想を技術革新や新しい領域の探索なども含めて加速。探索事業については、2月1日にリサイクル事業準備室を設置、7月1日にはソフトロボティクス事業準備室を設置する予定であることも明かされた。M&Aや戦略的パートナーシップも想定して推進していくという。
また、探索事業に関しては、現在拡大中の「ブリヂストン イノベーション パーク」を新たな価値を創造するグローバル拠点とし、共創を生み出す場所として活用していくという。ここでは、タイヤをゴムに戻すのは難しい技術だが、あらゆるパートナーと共創して、熱を加えることで再加工ができるゴムの開発、タイヤを原材料まで戻す技術についても研究していくとしている。ソフトロボティクス事業については、人と協働することができる“柔らかいロボット”を目指すという。
この2021年~2023年にかける中期事業計画では、戦略投資・戦略経費に3500億円、M&A・CVC・戦略的パートナーシップに3500億円、計7000億円の投入を明言。コア事業の体質変革については、課題からの脱却や抜本的変革も含め、フレキシブルに再配分を行なうほか、成長事業については新しい体質を創造する必要があるので、今抱えている約1600人のデジタル人材を、もっと育成して活躍してもらうとのこと。探索事業は挑戦分野となるので、若手もどんどん挑戦できるような体制を構築し、会社全体にいい影響を与えてくれるような環境を目指すと締めくくった。