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ブリヂストン、新拠点「Bridgestone Innovation Park」で新たな技術イノベーションを目指す「中長期事業戦略進捗」説明会レポート
2021年末オープン予定の「Bridgestone Innovation Park」の位置付けが示される
2020年9月16日 13:46
- 2020年9月15日 発表
ブリヂストンは9月15日、中長期事業戦略構想について説明する「中長期事業戦略進捗」説明会を開催。同説明会に、同社代表執行役 Global CEO 石橋秀一氏、執行役専務 Global CTO 坂野真人氏が出席した。
新たな技術イノベーションの拠点となる「Bridgestone Innovation Park」
説明会に登壇した石橋氏は、同社の中長期事業戦略において「2050年サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というビジョンを掲げていることを紹介。そのビジョン実現に向け、コア事業のタイヤ・ゴム事業を強化しながら、その強みを活かして成長事業であるソリューション事業を進化させていく考えを示した。
具体的には、コア事業においては経費やコスト構造改革など稼ぐ力の再構築に取り組むとともに、成長事業と位置付けるリトレッドなどのソリューション事業への取り組みをコア事業の製品開発に反映させ価値の増幅を図る。また、ソリューション事業においては、製品が使われる場面での課題解決に取り組むことになり、今後はパートナー企業との協力が重要になってくるという。
こうした事業環境の中、同社技術開発拠点である小平地区を再構築して開設する「Bridgestone Innovation Park」については、新たな社会価値と顧客価値を生み出していくための複合エリアという位置付け。Bridgestone Innovation Parkを、社会・顧客・パートナーに共感してもらうことからはじめて、共議・共研・共創へと関係を深めて、技術・ビジネスモデル・デザインのイノベーションを加速する場にしていくという。
Bridgestone Innovation Parkの最初の施設として「Bridgestone Innovation Gallery」を11月にオープン予定。続いて、2021年末には、社内外の交流を促進してオープンイノベーションを推進する場とする「B-Innovation(ビーイノベーション)」、B-Innovationで生み出されたアイデアを実車を使って体感、検証するミニテストコース「B-Mobility(ビーモビリティ)」をオープンする予定。
石橋氏は「リアルとデジタルを組み合わせることで、すぐ形にしてすぐ試す、これをすぐ繰り返す、アジャイルな開発が可能になってまいります。これら3つの施設で構成されるブリヂストンイノベーションパークが新しい価値を共創する新たな拠点として、当社の中長期事業戦略に大きく貢献していきます」と同施設で行なわれる取り組みへの意気込みを述べた。
さらに石橋氏は、小平のイノベーションパークにある技術センターに加えて、ローマのデジタルガレージ、アクロンにモビリティラボと、3つのイノベーション拠点を有していることを紹介。
これら3つの拠点では、開発プロセスにおけるシミュレーション技術を各拠点が連携して推進していくとともに、独自のアルゴリズムを用いて市場、顧客データを分析することで、摩耗、タイヤ性能予測の精度を上げ、ソリューション事業の進化に活用するなど、リアルとデジタルを組み合わせた活動をグローバルで行なっているという。
石橋氏は「これらの取り組みをさらに加速させるために、市場データ、開発データなど各拠点で共有し、さまざまな分析研究を実施。ブリヂストンイノベーションパークを中核に、迅速かつ的確なアウトプットにつなげてまいります」と話した。
サステナブルなビジネスを支える技術イノベーションへの取組み
続いて登壇した坂野氏は、ブリヂストンにおける技術イノベーションの考え方について紹介。同社は、これまでゴムを使った技術開発を極めることで市場での競争優位性を作り出してきたが、今後の成長に向けてデジタル技術との融合によって新たなイノベーションを生み出していこうという具体的な取り組みが紹介された。
その中で坂野氏は、JALとブリヂストンがタイヤ摩耗予測技術を活用して航空機整備作業を効率化した取り組みについて触れ、「航空機用タイヤは機体の重量を支えながら高速で離着陸を繰り返すという過酷な条件下で使用され、通常は航空機が数百回離着陸するたびに新しいタイヤに交換する必要があります。ところが使用環境によってタイヤの摩耗速度は異なりますので、突発的なタイヤ交換や交換時期の集中が発生しておりました」とこれまでの現状について説明。
坂野氏は「今回、JALさま、J-Airさまの持つ航空機に関するさまざまなデータ、これに同社独自のアルゴリズムを活用した摩耗予測技術、この2つを掛け合わせることでタイヤの交換時期を予測することができるようになり、精度の高い計画的なタイヤ交換が可能になりました。これによりホイール、タイヤ在庫の削減および、航空機整備作業の効率化などが期待されます。また生産、使用過程でのCO2排出量を削減することで、地球との共生へも繋げてまいります。このタイヤに関する技術サービスを、トラックバスや乗用車などほかのタイヤカテゴリへ展開、活用を始めております」と、同取り組みの展開事例を紹介した。
同社のイノベーションに対する取り組みは、パートナー企業との協業による成果を新たな製品開発に反映させることで自社製品の競争力を向上させるとともに、そうした取り組みを繰り返すことでパートナー企業の信頼を獲得して、新たに開拓した事業領域とそこに供給する製品において確固たるポジションを得ることを狙いとしている。
坂野氏は「当社はこれまで技術者の経験や能力、現場での匠の技を生かして、一品一葉のモノベースの開発で強いリアルを築いてまいりました。この匠の技で得られた強いリアルに、独自のデジタルを融合することで、断トツ商品を提供し、社会価値や顧客価値の創造につなげてまいります」と話し、「匠の技、現場力をデジタルで繋ぎ、より速く、より正確に、より容易に、より断トツな商品を開発する、いわばデジタルによる価値のスパイラルアップ。これが当社の考えるエンジニアリングチェーンのイノベーションであり、これがブリヂストンの新しい働き方です」と強調した。