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世界初の燃料電池医療車、熊本赤十字病院とトヨタが利活用実証開始

2021年3月31日 発表

燃料電池医療車

 熊本赤十字病院とトヨタ自動車は3月31日、2021年夏までに世界初の燃料電池医療車(以下、FC医療車)の実証実験を開始することに合意したと発表した。

 熊本赤十字病院とトヨタは、FC医療車の実証実験を通じて、医療や災害対策分野における有効性を確認するとともに、平常時や災害時に利活用できるFC医療車の運用モデルの構築を目指す。

 トヨタが開発しているFC医療車は、小型バス「コースター」をベースにして、動力源に燃料電池自動車「ミライ」に搭載されている「トヨタフューエルセルシステム」を採用した。

 FC医療車のスペックとしては、最高出力134kW(182PS)、最大トルク300Nm(34.2kgfm)を発生するモーターを1基搭載、最高速は約100km/h、航続距離は約210kmを実現するという。また、高圧水素タンクを3本搭載して水素貯蔵量は7.2kg。給電機能はAC100Vで最大9kW、DC(CHAdeMO)で最大9kWの出力に対応、供給電力量は約90kWhとなる。

 給電機能については、車内だけではなく、車の外側にもアクセサリーコンセント(AC100V)を装備して、様々な電気製品に電気を供給することが可能。加えてDC外部給電システムも搭載しており、高出力かつ大容量の電源供給能力(最高出力9kW、供給電力量約90kWh)を備えた。

 また、車内は空調とHEPAフィルターを経た排気装置の組み合わせで、乗員の活動時の感染予防を高めた。

 熊本赤十字病院とトヨタでは、FC医療車が従来の医療車にはない新たな価値創出の可能性があると考えており、災害発生時に安心して電気が供給できるよう、医療現場や被災地における電源供給能力の有効活用を視野に実証を行ない、また医療車として患者の緊急搬送のほか、献血バスや検診車への電力供給、過疎地への出張診療、PCR検査など、保健医療分野での幅広い応用や展開も期待できるとし、両社の知見と技術を持ち寄り、FCVならではの高い環境性能を活かし、医療スタッフや患者のストレスが軽減できる医療車として用途の拡大を探求していく考え。

 FC医療車の実証実験については、近年、台風や豪雨など自然災害の発生が増え、家庭や避難所に電気が届かない問題が発生しているだけではなく、被災地での医療活動の必要性も高まっている状況に対して、トヨタが2020年夏ごろから、熊本赤十字病院と対応について検討を進めてきた。

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