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ホンダとLooop、「Honda e」のバッテリーで生活する「V2H&V2L体験会」レポート

2021年4月12日 実施

Honda e

 本田技研工業と電力会社のLooopは、Looopの宿泊施設「Looop Resort NASU」において「Honda e」からの給電を実演。建物一棟をHonda eの電力でまかなって夕食や朝食の調理のほか、屋外でHonda eの電力を使ったグランピングなどV2H(Vehicle to Home)、V2L(Vehicle to Load)の体験会を実施した。

V2H設備のある“泊まれる”太陽光発電所

 今回、Honda eからの給電を実演した場所は、栃木県那須町にあるLooopの施設「Looop Resort NASU」。7694m 2 の敷地面積に太陽光パネルを多数設置し、発電出力は203.84kWとなる太陽光発電所と宿泊施設を兼ねた施設で、自然のなかで宿泊しながら自然エネルギーについて学べる場所。Looopによれば年間発電量は22万2000kWhで約55世帯分だという。

Looop Resort NASU

 Looop Resort NASUは2019年5月に完成し2020年より一般の利用も可能。電気自動車用の設備として、V2Hシステムを設置し、電気自動車の充電ができるだけでなく、電気自動車から電力を建物に供給でき、それによって先進的でスマートな過ごし方も可能となっている。

ニチコン製のV2Hシステムを備えている

 また、Looop Resort NASUは「人と森とエネルギーの共生」をコンセプトとしており、太陽光パネルの設置も、木々の伐採量を最小限にし、一般的な太陽光発電所と違って太陽光パネルの設置場所を高くして、高さを活かした構造となっている。

Looop Resort NASUは太陽光発電所でもあり、発電出力は203.84kW
一部透過する構造の太陽光パネルにより、パネル下であっても明るく、屋根のあるスペースとして活用している
すべての建物の上には太陽光パネルがあり、カーポートも同様に太陽光パネルがある

 太陽光パネルはセル間は光が透過する構造となっているものを採用、太陽光パネルの下であっても「木漏れ日」のように光が差し込むようになっている。パネルの下ではバーベキューをしたり、リラックスして過ごすことできるようになっている。また、パネルを支える骨組みも黒で統一、パネル間の配線も見えないようになっていて、一般的な太陽光発電所のパネル裏とは違った空間となっている。

Looop Resort NASUの宿泊する個室棟は2棟あり、どちらも2階建てで上には太陽光パネルが載る。軒下が大きく、テラスも日陰になって過ごしやすい
個室棟の内部。2階がリビング
個室棟では1階が就寝場所になる
温泉棟には温泉を引いていて、浴室には外からの光も差し込む構造

 なお、V2Hシステムから電気自動車への充電は可能だが、太陽光からの充電も機器は対応しているが、現在、Looop Resort NASUの太陽光発電は全量売電の契約となっているため、いったん電力網を経由しての充電となる。日中の発電量は多いので、実質的には太陽光発電の電気で充電することになるが、厳密には太陽光発電だけを使った電気自動車の充電とはなっていない。

いろいろなものとシームレスにつながるHonda e

 Honda eについては開発責任者である本田技研工業のデジタル改革統括部 プロセス改革部 プロセス企画課のシニアチーフエンジニア、一瀬智史氏が説明した。Honda eは登場時から後輪駆動と最小回転半径が4.3mとの小回りが効くこと、AIを搭載したインターフェースなどクルマ本体を訴求してきたが、Honda eのコンセプトは「シームレスライフクリエーター」。一瀬氏は「2030年にクルマがさまざまなものと有機的につながることを想像しながらHonda eを作ってきた」とし、家、リビングと仕事場ともシームレスに繋がっていきたいという。

本田技研工業株式会社 デジタル改革統括部 プロセス改革部 プロセス企画課 シニアチーフエンジニア 一瀬智史氏
Honda eのコンセプト「シームレスライフ」
Honda eの3つのコンセプト
あらゆるものと繋がっているHonda e

 そして今回のLooopとのコラボレーションは「クルマそのものだけでなく、社会とつながり、エネルギーとシームレスでつながっていくコミューターというのをめざした」という点を具体化するものと説明した。

 次に、本田技術研究所 先進パワーユニット・エネルギー研究所 PUシステム開発室 第1ブロック チーフエンジニアの武政幸一郎氏は、Honda eの開発の当初からV2Hなど電気を取り出すことは「必然」だったと言及、急速充電用のCHAdeMOのポートにホンダのV2L機器、「Power Exporter 9000」を接続すると9kVA(家庭用電力のおよそ9000Wに相当)が取り出せることをアピールした。

Honda e開発責任者である株式会社本田技術研究所 先進パワーユニット・エネルギー研究所 PUシステム開発室 第1ブロック チーフエンジニア 武政幸一郎氏
Honda eはV2Hなど社会とつながることを前提としている
V2Hシステムを組み合わせると建物へ給電が可能で、通常と同じように電気が使える
V2L装置でHonda eの移動先で電気が使える。外部給電器のほか、上級グレードでは100Vのコンセントも装備
イギリスとドイツで、電気を電力網に戻すV2Gの実験を行なっている

 また、Honda eの上級グレード「Honda e Advance」では車内のコンセントから1500Wの電力が同時に取り出しが可能で、昨今の災害時の電力供給に関心が寄せられているとした。

ホンダのV2L機器「Power Exporter 9000」をHonda eと接続

 武政氏は欧州の事情を紹介。日本のCHAdeMOのコネクターは電気を取り出す「放電」をサポートしているが欧州で使われるCCSのコネクターにはその機能が実用化されていない。ホンダでは独自に放電に対応する充放電器を開発、イギリスとドイツで充放電器の認可をとり、電力網にHonda eの電力を戻すV2Gの実験を開始しているという。

「Looopでんき」の活用で高額補助金を得て電気自動車購入を後押し

 続いて、Looop 電力事業本部イノベーション創造部EV事業課課長の高橋良彰氏が、Looopの会社紹介とEV普及に向けたLooopの取り組みなどを説明。2021年度に追加された最大80万円の購入補助金を得るために必要な再エネ100%電力のプランを開始したことをなどを説明した。

株式会社Looop 電力事業本部イノベーション創造部EV事業課 課長 高橋良彰氏

 Looopの現在の主力事業は「Looopでんき」。電力自由化で選べる電力会社のひとつで、基本料金がなく、使った電力量だけ支払う完全従量制が特徴。そして、Looopは2020年10月現在で新電力会社のうち、一般家庭などが含まれる低圧での需要量ランキングで8位。ほかの上位の電力会社はガスや通信などで顧客を抱えたなかでサービスを開始しているが、「Looopはゼロから事業を起こして顧客を集めている」と独自性と好調さをアピールした。

株式会社Looopの概要
Looopの電力小売の実績
EVへのLooopの取り組み

 一方、EV普及の取り組みでは電気自動車所有者向けの「EV割」などを紹介、さらに2021年度の補助金と密接な関係のある再エネ100%電力の提供を開始したことを紹介した。

 再エネ100%電力が必要とされるのは、2021年度の環境省の最大80万円の補助金。電気自動車購入時の補助金は、これまでの経済産業省の補助金があったが、2021年度はさらに高額な補助金額となる環境省の補助金も選べる。環境省の補助金では再エネ100%電力の契約が条件だからだ。

 Looopでは2021年4月から再エネ100%のプランとして「eneco」の受付を開始、通常のプランにオプションとして申し込みが可能なメニューとなり、enecoを利用することで環境省の最大80万円の補助金の申請が可能になる。費用はLooopの通常の電気料金に対して1kWhあたり1.43円(2021年度)が加算されるが、環境にやさしい電力が使えるだけでなく、増額した補助金で、より電気自動車が買いやすくなる。

2021年度の電気自動車購入時の補助金。
再エネ100%のメニューを追加し、受付開始した
充電器はV2H機器を設置すると補助金対象となる

V2Hシステムで建物まるごとHonda eで電源供給

 さて、いよいよHonda eから建物に電源供給し、電気をふんだんに使った夕食や朝食の準備を行なった。これはV2Hシステムから「放電」として供給した電気を使ったものとなる。

V2Hの実演はキッチンのあるホール棟で行なった。
ホール棟内部、ここで肉を焼くなどしてHonda eから供給される電気を堪能する
V2Hシステムと接続した。運転席から出ている細いケーブルは、停電からの復旧のためV2Hシステムに電源を供給するためのもの。
Honda eの充電ソケットはフロントのボンネット上になる。コネクターは2つあり、V2Hシステムに接続するのは左側のCHAdeMOコネクター
V2Hシステムで「放電」を選ぶと電気自動車のバッテリーから電気が供給される
停電状態を再現
V2Hで給電を開始すると建物内の照明が点灯した
HONDA×Looop 停電復旧体験(15秒)

 今回利用したニチコン製のV2Hシステムは、電力出力が6kW未満となっており、大型冷蔵庫が稼働して室内照明などを使った上で、複数のホットプレートや電子レンジ、電気ポットをフル活用するとあまり余裕がない。備え付けの電気温水器やIHクッキングヒーターまでフル活用すると簡単に使用量が6kWを超えてしまう。そのため、使用電力を監視しながらの調理となった。

ホットプレートで肉と野菜を焼く。焦げ目もしっかりついて、野菜もしっかり火が通っている
油断すると焼きすぎるほど火力が強い
IHクッキングヒーターでお湯を沸かすことも可能
備え付けのV2H機器は、状態をスマートフォンに表示することが可能。5.7kWと容量ぎりぎりまで給電していることがわかる

 容量内では電気の供給は問題なく行なわれ、ホットプレートも通常となんら変わりなく利用ができた。肉をホットプレートに乗せればすぐに熱くなり、焦げ目もきちんと付く。火の通りにくい野菜もしっかり焼くことができた。十分な“火力”のため、油断していると肉が固くなってしまうほどだった。

 また、電気ポットや電子レンジも利用すれば、通常時と変わりなく温めができる。最大電力に注意しながらであれば、IHクッキングヒーターに鍋をかけてお湯を沸かすことも可能だった。

夕食開始前の状態。このあとすぐに充電から放電に切り替えている
夕食終了後の状態。94%から75%まで消費したことになる

 そして、大量の肉や野菜を焼くなどひととおりの夕食を楽しんだあとで、Honda eの電気消費量を見ると、当初94%だったものが75%に減少した。この減少量を多いとみるか少ないと見るかは状況によるが、停電時などで電気をふんだんに使って夕食の準備をしても電気が一気になくなってしまうことはないと言えそう。災害時など、Honda eに蓄えた電力で数日間生活することに問題はなさそうだ。

 なお、今回は複数のホットプレートの同時利用を行ない、一気に大量の肉や野菜を焼くなどしたため、V2Hで想定された電力使用量を超えやすいものとなった。V2Hシステムの上限の6kWとはブレーカーの契約ではおよそ60Aに相当するため、60A契約の一般家庭でのV2Hの利用では電力使用量を気にしながら使う必要はほとんどなく、ふだんどおりの生活ができそうだ。

朝食もホットプレートでソーセージとアスパラを焼く
ホットサンドメーカーでパンも焼く
Honda e開発責任者自ら、Honda eの電気でソーセージを焼く

Honda eとPower Exporter 9000を使って電気をフル活用したグランピング

 続いて、V2L(Vehicle to Load)の体験として屋外に場所を移してグランピング。電源のないところでのキャンプを想定したこのデモでは、Honda eからの電源供給はホンダの「Power Exporter 9000」を介して行なった。外部給電のV2L機器であるPower Exporter 9000は、CHAdeMOのコネクターから電気を受け取り、100Vと200Vの電源を供給する機器。「9000」という名のとおり最大電力は9kVAとなる。

Honda eの電気でグランピング

 200Vを供給できることなど電源供給について見ればV2H機器に近いが、V2H機器は家に備え付けて電気の充放電という双方向のやりとりができるが、Power Exporter 9000は可搬型でクルマの電気をほかに供給する、という違いとなる。

 早速、Power Exporter 9000を介して電源を供給、テントの中に1000Wクラスの電気ストープを稼働させた。Looop Resort NASUは標高約1000m、夜になると冷え込みも激しく、暖房がほしくなるが、通常の部屋と違って天井が低いこともあり、電気ストープを使うことでだいぶ温かくなった。

テント内の様子。1000Wの電気ストーブと電気マッサージチェアがあるほか、電気毛布なども用意している
電気マッサージチェアにはヒーターも装備してあり、非常に快適かつ気持ちがいい
Honda eの電気を受けてテントの中では電気ストーブと電気マッサージチェアでくつろいでいる

 さらに、今回は電気マッサージチェアを持ち込み、疲れた体を電気でもみほぐすという体験も行なった。テントの中で電気ストープや照明をふんだんに使いながら、電気マッサージチェアで体を癒やすという体験はこれまでにないもの。キャンプ場で電気を使えるということになれば、これまでキャンプでは使わなかったような家電製品の活用が考えられそうだ。

 Power Exporter 9000の供給量は9kWと余裕があるため、ホットプレートを使って寒空の屋外でレトルトの具を温め、温かいうどんを用意するということしてもなんら問題なし。しっかり温まったホンダ特製のカレーうどんを温かいままでいただいた。

ホットプレートで各地のホンダ社員食堂味のカレーうどんの具を温めた
給電中のHonda eとPower Exporter 9000。外気が10度以下だったため、冷却ファンもまわることなく静かに電気を供給していた

 一方、キャンプでは野外で静けさも楽しみたい。気温が10度以下という状況で行なった今回の試みではPower Exporter 9000の動作音はほぼ無音。Honda eも無音なので、電気ストーブや電気毛布で暖かさを確保しながら、自然の音に耳を傾けることもできそうだ。ただ、夏など気温の高い状況では、Power Exporter 9000の冷却ファンが回ることもあるとのことだ。

Honda eの電力供給は実用的

 今回、Honda eからの電力供給を試してみたが、複数のホットプレートを使って大量の肉を一度に焼くことも可能。調理のほかに建物の照明を使っても、電力供給は問題なくできることがわかった。

 どれだけ長時間供給できるかという問題でも、Honda eの35.5kWhの走行用バッテリーがあれば、一晩の夕食では全く問題がなく、数日間に渡って利用可能だ。

 また、電気自動車の特性として、低速から強大なトルクがあり、急坂を登ることが得意。しかも、エンジン車のように登坂時に多量の排出ガスも出さずエンジン騒音もない。V2HやV2Lという特徴のほかにも、自然との親和性は高いことが実感できた。

急坂のある山道でも、騒音も大量の排ガスもなしに軽々と登っていくHonda e

取材場所

名称:「Looop Resort NASU」
料金:素泊まり 6875円/人~
宿泊特典:下記の通り
那須ハイランドパーク「入園無料」
りんどう湖ファミリー牧場「入園無料」
NOZARU「宿泊者限定割引」:大人4600円→3000円/子供3600円→2800円
KOZARU「宿泊者限定割引」:大人3600円→2800円/子供2000円→1600円