ニュース

ホンダ、新型EV「Honda e」開発責任者の一瀬智史氏が概要発表。開発当初、実はFFだった

154PS/315Nmのモーター搭載。航続距離は283km

2020年8月5日 開催

本田技研工業株式会社 「Honda e」開発責任者の一瀬智史氏が車両概要について説明

 本田技研工業は8月5日、新型コンパクトEV(電気自動車)「Honda e」の量産モデル(日本仕様)を公開するとともに、開発責任者の一瀬智史氏が車両概要について説明を行なった。発売日や価格などは後日発表されるが、Honda eを会員制レンタカーサービス「EveryGo(エブリ・ゴー)」に導入し、青山本社をはじめとして東京、神奈川、大阪、福岡の各拠点に計10台導入して8月27日からレンタル開始すること、全国のホンダ正規ディーラーにHonda e試乗車約140台を導入し、10月以降に配備することがアナウンスされた。

 Honda eは新開発となる後輪駆動のEV専用プラットフォームを採用し、前後重量配分50:50を実現するとともに、最高出力113kW(154PS)、最大トルク315Nmを発生する電動モーター(「アコード」e:HEVの駆動モーターを流用)を採用。リアのトランク下に配置されるドライブユニットは529×397×402mm(前後×左右×高さ)とコンパクトに仕上げられ、ラゲッジスペースに大きな影響を与えないパッケージとした。電力の出し入れ性に優れるという高出力型リチウムイオンバッテリーは35.5kWhの容量で、1回の充電で283km(WLTC)走行を可能にしている。また、急速充電にも対応し、30分の急速充電で走行可能なレンジは202kmとアナウンスした。

 走行モードは「ノーマル」「スポーツ」の2種類。これに加えて「シングルペダルコントロール」を用意し、これはOFFのときは通常のAT車の感覚で走行でき(クリープ動作あり)、最大減速は約0.1G。ONのときはアクセルペダルだけで停止まで減速でき(クリープ動作なし)、こちらの最大減速は約0.18Gとのこと。

 愛らしいデザインの外観では丸形のヘッドライト&テールランプを採用したほか、視界と空力を考慮した電子ミラーシステム「サイドカメラミラーシステム」(標準装備)、ポップアップするフラッシュアウターハンドル、軽量・高剛性を目指した16インチホイール&独創的なデザインの17インチホイールなどが特徴として挙げられる。

Honda e日本仕様
Honda eは専用プラットフォームを採用

 室内ではダッシュボード全面に12.3インチのデュアルタッチスクリーンを装着して先進性を表現するとともに、人工知能とコネクテッドサービスとして「OK ホンダ」の言葉で起動するAIアシスタント機能「Honda Personal Assistant」、スマートフォンアプリ「My Honda+」を使用して車両のロックやロック解除ができるデジタルキーなどを採用する。

Honda eのインテリア
ワイドディスプレイの表示例
会場に展示されたパネル

開発当初、実はFFだった

Honda eについて一瀬氏がプレゼン

 説明会で登壇した一瀬氏は、Honda eのコンセプトとして「2030年を見据えた先進性」「EVが生きる街なかベストのクルマ」「ホンダらしい徹底したこだわり」の3点を挙げるとともに、「昨今の他社のEVはガソリンエンジンの能力をそのままEVで何とかしようという課題に直面して戦っております。その結果、大きなバッテリーを積んで幅も大きく重量も重く、取り回しもそれほど楽ではない。そういうEVが出来上がっていると思いますが、Honda eはその呪縛から1回逃れ、小さく作って都市部で使いやすいクルマにすると同時に、未来の技術を詰め込んでこれらを磨きに磨いて魅力あるクルマにしたいと考えました。タブレットも大きくて見やすいのですが、普段ポケットに入れて使い勝手のいいスマートフォンのようなものを目指しました」と語る。

 そのHonda eの特徴点としては、「デザイン」「ダイナミックパフォーマンス」「HMI」「コネクテッド」の4点を挙げた。

Honda eのコンセプト
Honda eの特徴点

 まずデザインは親しみやすくモダンなものとし、シンプルでクリーンなものに仕上げた。開発チームはこのデザインのことを“ツルピカデザイン”と呼んでいるという。また、フロントフードに設けられたチャージリッドはあえて見せるデザインとしており、その理由について「EVは毎日充電するもので、一番使うものではないかということできれいにデザインし、気の利いた開き方をしたり、コミュニケーションランプを付けたりという演出をしました」(一瀬氏)。

 室内では「人とモノとの親和性・安らぎ 新しい生活を予感させるモダンさ」を目指し、リビングを想起させるソファのある水平基調の空間デザインを採用したほか、「ユーティリティは当社の“色々なものが乗せられますよ”という方向ではなく、上質で気の利いたものを備えました。またリビングのソファーに合うインテリアライトを採用し、後席用に4つのLEDダウンライトを備え、これはピラーのスイッチでON/OFFができます」とのこと。

 カラーラインアップはプラチナホワイト・パール、ルナシルバー・メタリック、モダンスティール・メタリック、クリスタルブラック・パール、プレミアムクリスタルブルー・メタリック、プレミアムクリスタルレッド・メタリックとともに、ホンダ新色のチャージ・イエローを用意。チャージ・イエローについて、一瀬氏は「気持ちが明るくなって、元気になるような色ということで、このクルマのテイストに非常に合うのではと思っています。個人的にはこの色が一番好きです」と語った。

デザインについて

 一方、ダイナミックパフォーマンスについては「開発当初、トップクラスの最小回転半径にしたいとか、低重心にしてハンドリングをよくしたい、だけども乗り心地のわるいのは嫌だ。ハンドリングも楽しいクルマにしたいということで“これやりたい”というものをマンガにしました。この当時、クルマはFFを想定していましたが、色々と検討していく中でFFだと“こんなオーバーハングは無理”とか“こんなに転舵できません”というプロジェクトリーダーからの反論があり、そうした経緯からRRに変わっていきました」と、Honda eの開発当初はFFだったことを明かした。

 また、このEV専用プラットフォームでは最小回転半径4.3mを実現しており、「ホンダの軽自動車はだいたい4.6mくらいで回りますので、それよりもクルクル回ります。この感じはぜひ体感いただきたい」「昔のホンダ車ではヨーロッパの石畳などでよく跳ねていたのですが、今回のクルマは4輪独立懸架を採用していますし、低重心化しているということで非常に乗り心地がいいものに仕上がっています」とアピール。

 航続可能距離に関しては、「日本では283km(WLTC)となり、航続距離に関しては色々と言われるのですが、私たちは“街なかベスト”なので十分だと思っています。これ以上走るとなると急速充電が必要になり、その急速充電時の充電性能というのは今回の新型バッテリーでは優れ、充電警告灯が点いてから30分の充電で202km走ることができます」と、Honda eの特徴について語った。

ダイナミックパフォーマンスについて

 HMIのパートでは5つのディスプレイを水平に組み合わせた「ワイドビジョンインストルメントパネル」について触れ、「ワイドディスプレイでは春夏秋冬の写真が壁紙として入っていますが、自分好みの写真を映し出すことが可能です。インパネの多くを占めているこの面積を自分なりにカスタムできるというのはこれまでそうできるものではなかったですが、この大きな画面を使うことによって自分のお気に入りの部屋にできるという機能になります」「ワイドディスプレイではスマートフォンのようにアプリの履歴からひと目で選べるRecent機能を備え、この機能を使うとこれまで使ったアプリが並ぶので、そこからアプリをさっと選べるようになっていて非常に便利です」とした。

HMIについて

 そのほかコネクテッドでは「EVはエアコンやヒーターなど、温度管理にエネルギーを使いがちです。これらは特に初期にエネルギーを使うため、使用することで航続可能距離が落ちてしまう。そのため、充電器と接続した状態でスマートフォンでエアコンを操作し、部屋にいながらクルマの中を適温にすることができます」と述べるとともに、手元のスマートフォンがクルマのカギになる「Hondaデジタルキー」、車内Wi-Fi、インテリア空間のカスタマイズなどが可能になる「Hondaアプリセンター」などについて紹介している。

コネクテッドについて
まとめ