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トヨタ、無償ハードウェアアップグレードでLiDAR 3個を新型「ミライ」など高度運転支援車に装着 レベル3自動運転の布石か?

自動運転機能「アドバンスドドライブ」を装備したトヨタ「MIRAI(ミライ)」

高度なレベル2自動運転機能を持つ新型「ミライ」などのアドバンスドドライブ

 トヨタ自動車が4月8日に発表した高度運転支援技術「Advanced Drive(アドバンスドドライブ)」。トヨタからは新型「MIRAI(ミライ)」に、レクサスからは「LS500h」に装備され、すでに発売されている。ステアリングから手を離して運転できるハンズオフドライブ機能も備えるアドバンスドドライブだが、これを新たに装着したミライの価格は845万円~860万円、LS500hの価格は1632万円~1794万円と、ミライのベース車両(Z、Z“Executive Package”)790万円~805万円、LS500hのベース車両(“version L”、“EXECUTIVE”)1534万円~1728万円との価格差は小さい。ミライについては補助金制度の利用も可能のため、さらに入手へのハードルは低くなっている。

 このアドバンスドドライブは、高度な運転支援を実現するために、フロントにデンソー製の第6世代LiDARを搭載するほか、新開発の自車位置特定のためのSiS ECU(Spatial Information Service ECU)、ルネサス製SoCを二重化して搭載したADS ECU「Advanced Drive System」、NVIDIA製SoCをAI認識のために使用するADX ECU「Advanced Drive Extension」、ステレオカメラ、ロケータ望遠カメラ、前方ミリ波レーダーなど新技術満載のクルマになっている。

デンソー、トヨタ「アドバンスドドライブ」製品解説 新型LiDARやルネサス搭載ADS、NVIDIA搭載ADXなど

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1317883.html

 これらの多種多様なセンサー、そして強力な演算装置、ソフトウェアファーストの開発によってアドバンスドドライブは、ステアリングから手を離して運転できるハンズオフのレベル2自動運転を実現しているのだが、正直、それだけのために搭載された機能としては豪華すぎる(しかし、価格差は新型ミライで55万円と驚くほど小さい)ことが指摘されてきた。

 そして、新型ミライやLS500hには、側方と後方にLiDARを装着するための穴が用意されているのも外見の特徴となっており、ここにいずれLiDARが装着できるようになるハードウェアアップグレードが準備されているのも登場時からインフォメーションされてきた。

無償でハードウェアアップグレード

新型ミライの側方にあるLiDAR装着用エリア。なんと無償でLiDARが増設される

 今回、新型ミライの取材を進めている中で、側方に2つのLiDAR、後方に1つのLiDARを増設するハードウェアアップグレードが無償で行なわれることが分かった。その理由としてトヨタは、「本来、新型ミライとLS500hは前方、側方、後方にLiDARを搭載して登場する予定だった。諸般の事情により、前方のみにLiDARを搭載して登場することになり、そのため側方と後方のLiDARに関しては無償で提供させていただく。すでにLiDARを取り付けるための配線まで終わっている」とのことだ。

 一般に、各種センサー類でもっとも高価なのがLiDARと言われている。これは高度な機能を有する部品であること、自動車用途として数が出ていないことなどで、これによりLiDARを複数個搭載する市販車はレベル3自動運転を世界で初めて実現した本田技研工業「レジェンド」など1000万円級のクルマばかり。もちろんレクサスは1000万円級のクルマとなるが、新型ミライは800万円台であり、環境先進車であることを考えると各種補助金も用意されている。常識的なコストを考えると利益を求める販売というより、環境対応車を普及させたい、より安全なクルマを普及させたいというトヨタの願いを強烈に感じることができ、これは販売ではなく施策というレベルのクルマだろう。

 大量のデータを吐き出すLiDARが4つも搭載されるのであれば、ルネサス製SoCを二重化して搭載したADS ECUや、NVIDIA製SoCをAI認識のために使用するADX ECUなど豪華な演算システムも納得いくものだ。

 すると興味の先は、新たに搭載されるLiDARはどこのものになるのだろう。前方に搭載されるLiDARはデンソー製の第6世代だが、デンソーの説明会ではもちろんノーコメント。積極的に話したいという感じも受けなかったことからデンソー製ではないと見られている。

 すると、次に候補に挙がってくるのがヴァレオ製になる。ヴァレオ製のLiDARはアウディ「A8」でレベル3自動運転レディのクルマに世界初採用されたほか、ホンダのレジェンドにも採用されるなど、レベル3自動運転車の切り札的に使われている実績のあるものだ。ただ、新型ミライの取り付け予定部分を見ると、側方を予定しているためか前方LiDARほどのものではないように見える。側方のため、より小型化を意識した、例えばメカ式ではなくソリッドステートタイプの……。

 と、LiDARについても興味は尽きないが、実用的な観点から考えると、この3つのLiDAR装着によって「トヨタのアドバンスドドライブはレベル2自動運転から、レベル3自動運転になるのか?」という部分だろう。こにについてもアナウンスは当然なく、実際の発表を待つ必要がある。ただ、センサーなど部品レベルではレベル3に対応する高性能部品を搭載しており、演算装置も世界的に見ても突出したものを搭載してきている。後は、トヨタの意思と、どのくらい走り込みをしてデータを蓄えているのか、という部分になるのだろうか。

 ただ、1つ言えることは、トヨタがソフトウェアのアップグレードだけでなく、ハードウェアアップグレード(しかも、事情により無償予定)まで踏み込んできたところだ。

 時期についての明言もなかったが、それほど待たなくてもよい雰囲気は漂っていた。進化する新型ミライとLS500hに期待したい。

デンソー製センサーの配置図