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パナソニック、2020年度決算を発表 テスラ向け円筒形車載電池「4680」セルの研究、検証ラインを国内設置へ

2021年5月10日 発表

パナソニック株式会社 取締役専務執行役員兼CFOの梅田博和氏

オートモーティブの営業利益は109億円の黒字に転換

 パナソニックは5月10日、2020年度(2020年4月~2021年3月)連結業績を発表。その中で、テスラ向けに開発を進めている円筒形車載電池「4680」セルの研究、検証ラインを2021年度の早いタイミングで国内に設置する意向を明らかにした。

 4680セルはエネルギー密度を高めた新たなセルモデルであり、テスラへの搭載が予定されている。2022年以降と見られる導入時には世界最高のエネルギー密度を持つ車載用バッテリーになる見込みだ。

 パナソニック 取締役専務執行役員兼CFOの梅田博和氏は、「4680セルの商品化の時期は検証を経てからの話」として商用化の時期については触れなかったが、「開発については順調に進んでいる。研究および検証を行なうことができるラインを2021年度の早いタイミングで設置し、手作りの状態から生産ラインを使って試作を行ない、能力や安全性を検証する段階に入りたい」とした。

 研究、生産ラインは日本国内に設置する予定であり、梅田CFOは「住之江あたりになる」と述べた。

 パナソニックが発表した2020年度のオートモーティブの売上高は前年比10%減の1兆3394億円で、営業利益は前年の466億円の赤字から109億円の黒字に転換。調整後営業利益も327億円改善し、22億円の黒字に転換した。

 梅田CFOは「2020年度は当初公表値では赤字の計画であったが、第2四半期から黒字化し、年間でも黒字化を達成した。車載機器の良化とともに、テスラ事業が黒字で着地したのが理由」と総括した。

2020年度のオートモーティブの売上高は前年比10%減の1兆3394億円、営業利益は109億円の黒字に

 2020年度上期は新型コロナウイルスの影響により、自動車メーカーの工場の一時停止などによって需要減が響き、通期でも減収となったが、営業利益は車載機器での固定費削減や円筒形車載電池の材料合理化などに加えて、車載用角形電池事業の合弁会社化に伴う利益や、前年ののれん減損の反動もあって黒字になったという。

 梅田CFOは、「第1四半期を中心としたコロナ影響による自動車減産の影響が大きかったが、第2四半期は販売が回復。下期は前年を上まわる水準で推移した」と、オートモーティブ事業が下期に向けて回復基調に転じたことを示した。

 テスラと共同で行なっている北米工場の生産能力の拡大では、2020年度に高容量技術の導入が完了しており、すでに35GWhの生産能力に到達。2021年度には生産ラインを1本増設して、38~39GWhへ能力を拡張する予定だという。また、国内工場の活用を拡大することで、1865セルの生産を拡大する考えも示した。

 2021年度(2021年4月~2022年3月)連結業績見通しでは、オートモーティブの売上高は前年比16%増の1兆5600億円、調整後営業利益は478億円増の500億円、営業利益は171億円増の280億円を見込んでおり、「自動車市場の回復や、円筒形車載電池の北米工場での新ライン稼働に加えて、経営体質強化や材料合理化などにより、増収増益を見込んでいる」と述べたほか、「車載機器、車載電池ともに増収増益を見込んでいる。テスラ向けを含めた円筒形電池事業は黒字化が定着している」(梅田CFO)とした。

 オートモーティブ事業の調整後営業利益は、2019年度に305億円の赤字だったものが、2020年度は22億円と黒字化。2021年度は500億円に拡大する計画であり、収益を刈り取るフェーズへと入ってきた。「2021年度の調整後営業利益見通し500億円のうち、6割強が車載機器、テスラ向けを含めた車載電池で4割弱を見込んでいる」という。

 また、「オートモーティブの車載電池の領域では、気候変動への対応の観点からEV需要の拡大に応えることで、持続可能な世の中に貢献していくことになる。北米工場の生産能力拡大、国内工場の活用拡大を進めていく」などと述べた。

 一方、パナソニック全体での連結業績は、売上高は前年比10.6%減の6兆6988億円、営業利益は12.0%減の2586億円、調整後営業利益は7.2%増の3072億円、税引前利益は10.4%減の2608億円、当期純利益は26.9%減の1651億円と減収減益になった。パナソニックの売上高が7兆円を切ったのは25年ぶりとなる。

2020年度の連結業績

 パナソニックの津賀一宏社長は、「新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、どんな活動ができ、どんな数字になるのかが予想できなかったのが正直なところであった。第2四半期からは利益が戻り、第3四半期には従来では出せなかった利益率を出すことができた。厳しい中でもじっくりとした経営をやろうと考え、頑張った結果が今回の着地になった」とコメント。また、梅田CFOは「第3四半期決算発表時の修正公表値を上まわる着地となった。売上高は、事業ポートフォリオ改革による非連結化影響に加えて、コロナ影響により減収となったが、調整後営業利益の増益は経営体質強化への取り組みの着実な進捗や、社会変化を捉えた事業の増販が寄与している」と述べた。

パナソニック株式会社 津賀一宏社長

 オートモーティブ以外のセグメント別業績は、アプライアンスの売上高が前年比4%減の2兆4944億円、営業利益は87%増の1043億円。ライフソリューションズの売上高は前年比21%減の1兆5073億円、営業利益は62%減の692億円。コネクティッドソリューションズの売上高は前年比21%減の8182億円、営業損失は前年の920億円の黒字から200億円の赤字に転落。「航空便数の激減や航空機の大幅減産の影響を受けたアビオニクスの減販が大きく影響したが、調整後営業利益では36億円の黒字を確保した」という。インダストリアルソリューションズは、売上高が前年比2%減の1兆2555億円、営業利益は前年から616億円増加し、662億円となった。

2020年度のセグメント別実績

 また、2021年度の全社連結業績見通しは、売上高が前年比4%増の7兆円、営業利益は28%増の3300億円、調整後営業利益は27%増の3900億円、税引前利益は27%増の3300億円、当期純利益は27%増の2100億円と増収増益を見込む。

 セグメント別の業績見通しは、アプライアンスの売上高が前年比1%減の2兆4800億円、調整後営業利益は114億円増の1230億円、営業利益は7億円増の1050億円。ライフソリューションズの売上高は前年比1%増の1兆5300億円、調整後営業利益は56億円増の900億円、営業利益は58億円増の750億円。コネクティッドソリューションズの売上高は前年比9%増の8900億円、調整後営業利益は263億円増の300億円、営業利益は380億円増の180億円。インダストリアルソリューションズは、売上高が前年比4%増の1兆3000億円、調整後営業利益は159億円増の900億円、営業利益は188億円増の850億円とした。

「各国経済の回復や、社会変化を捉えた事業の増販益に加え、経営体質強化の取り組みの継続により、全社での増収増益と全セグメントでの増益を目指す」(梅田CFO)と、業績回復に意欲をみせた。

2021年度のセグメント別見通し
2021年度の連結業績見通し