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トヨタ、2021年3月期決算説明会 販売台数の回復で来期売上高は30兆円を見込む

2021年5月12日 実施

2021年3月期は前半のマイナスが響く

 トヨタ自動車は5月12日、2021年3月期(2020年4月~2021年3月)の決算説明会をオンラインで行なった。登壇したのは執行役員の長田准氏と同じく執行役員の近健太氏の2名。

 まずは近氏から販売台数の説明が行なわれた。2021年3月期の連結販売台数は、前期比85.4%の764万6000台。トヨタ・レクサスの販売台数は、前期比96.0%の908万7000台と、各地域で新型コロナウイルス感染拡大の影響により、前半期は大きく沈み込んだが、後半で巻き返したことと、電動車(HEV、PHEV、BEV、FCEV)に関しては、前期比112.3%の215万5000台であったと解説。

トヨタ自動車株式会社 執行役員 近健太氏

 連結決算については、営業収益が27兆2145億円(前期比2兆6519億円減)、営業利益2兆1977億円(同2014億円減)、税引前利益は2兆9323億円(同1394億円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2兆2452億円(同2091億円増)であった。

 営業利益の増減要因としては、特に為替・スワップなどの影響を除いた部分では、新型コロナによる販売面での影響があったものの、原価改善の努力、諸経費の増減・低減努力により100億円の増益にできたと報告。エリア別では日本、欧州、その他地域でマイナスとなったが、北米とアジアでは主に営業面の努力と原価改善により増益になったと説明した。

 2022年3月期の見通しについては、連結販売台数は前期比113.8%の870万台で、各地域ともに増加が見込まれるという。トヨタ・レクサスは前期比105.6%の960万台。電動車は各地域のユーザーニーズにあったラインアップを揃えることで前期比129.9%の280万台を見込むとし、電動車の比率は29.2%まで上がると予測、カーボンニュートラル実現に向けて、より魅力的な商品開発を心掛けるとした。

 通期の業績見通しは、営業収益が30兆円(前期比2兆7855億円増)、営業利益2兆5000億円(同3023億円増)、税引前利益は3兆1100億円(同1777億円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2兆3000億円(同548億円増)を見込むとした。営業利益の増減要因としては営業面の努力で8500億円の増益と、主に販売台数の増加が要因となると予測した。

 働き方変革で強化してきた収益体制をさらに改善させるとともに、未来への投資を積極的に行なうことで「モビリティカンパニーに向けた取り組みを加速させる」と結んだ。

HEV、PHEV、BEVのプラットフォームの共有化も今後検討していく

 また、今季の実績が結果的に高い水準となった要因を聞かれた近氏は、2020年5月に豊田社長が「販売台数800万台、営業利益5000億円」という高い目標を掲げたこところから取り組みが始まったが、実際にはリーマンショックの後からずっと取り組んでいる総原価改善によって損益分岐台数を落とせてきたこと、東日本大震災の後サプライチェーンとの減債の取り組みや在庫の保有、代替品の評価などの努力の積み重ねがあったことが挙げられるとした。

 それに加えて「春先の台数が出なかったときに、1台のクルマをお客さまに選んでいただくことの重要さをサプライチェーンを含めてみんなで共有できたこと、お客さまの方を向いて仕事をしてきた成果だと思う」と述べた。

トヨタ自動車株式会社 執行役員 長田准氏

 続いてカーボンニュートラルに関する課題や取り組みについての質問には長田氏が「カーボンニュートラルの考え方は、豊田社長が自工会でも言っているように基本的に目指していくのは電動化比率ではなく、2050年までにカーボンニュートラルを実現することである」と回答。CO2の削減だけでなく、LCA(ライフサイクルアセスメント)で考えるものとし、現段階では技術を限定するのではなく、さまざまな技術に挑戦していくことが大切だと説明。

 具体的にはHEV、PHEV、BEV、FCEVといった電動化に加え、先日富士スピードウェイで走行した水素エンジンも選択肢のひとつで、トヨタとしてはどんどんチャレンジしていくと解説。さらに「新車だけでなくすでに販売したクルマに使う“カーボンニュートラル燃料”などにもチャレンジしていく」と語った。もちろん、それらの技術が高額になっては意味がないとし、持続的で実用的(買いやすい価格)にすることもトヨタの責務だと考えているとした。

 また、2030年に向けた電動車販売比率と台数の見通しとして、地域の状況によって左右される部分があると前置きしたうえで、グローバルでの電動車販売台数は800万台とし、そのうち200万台をBEVとFCEVといった構成を目標にしていることを明かした。ただし、この数値を達成するには課題もあり、現状トヨタの生産量は6GWhで今の30倍の180GWhが必要となるうえに、EVの生産ラインも今の2ラインから30倍の60ラインが必要となるため、ここにも積極的に投資していくと説明。

 くわえてEVの開発時間も現状より15%~30%は短縮したい考えを明かすとともに「HEVとPHEVとBEVのプラットフォームの共有化なども今後検討して、BEVの供給を高める方法を考えていきたい」と述べ、「これらを含めて電動化に全力で取り組む」と語った。