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トヨタの第2四半期決算は「決して成り行きではない」、豊田章男社長のスピーチ全文

2021年3月期 第2四半期決算説明会より

2020年11月6日 発表

2021年3月期 第2四半期決算説明会

 トヨタ自動車は11月6日、2021年3月期 第2四半期決算を発表。第2四半期の実績として販売台数401万台、営業利益5199億円、通期見通しとして販売台数860万台、営業利益1兆3000億円という予想を示した。

 同決算の評価について、2021年3月期第2四半期決算説明会に登壇した豊田章男社長は「成り行きではない」と強調した。

第2四半期決算は成り行きではない、11年間の取り組みによりトヨタで働く人たちが強くなった

 同説明会において豊田社長は、第2四半期決算の発表内容について、リーマンショックや東日本大震災を乗り越えるなど、これまで11年間の取り組みによりトヨタで働く人たちが強くなったことによるものであると、すべての関係者に対して感謝を言葉を述べた。

 以下は豊田社長のコメント全文である。

 豊田でございます。

 本日は、第2四半期決算の発表内容を踏まえ、トヨタの経営をあずかる私の想いをお話いたします。

 コロナ危機という先が見えない時だからこそ、トヨタの見通しが自動車産業に関わる方々にとってひとつの道しるべになるのではないかと考え、本年5月の本決算では、全世界販売800万台、今期の営業利益5000億円という見通しを発表させていただきました。

 基準をつくったことにより、異常管理ができるようになり、各現場は、変化に、柔軟に対応することができました。

 今回の見通しの上方修正は、この6か月間の頑張りもさることながら、これまでの11年間の取り組みにより、トヨタという企業が少しずつ強くなってきたからだと思います。

 資金面や収益構造が強くなったということもありますが、一番は、トヨタで働く人たちが強くなったことだと思います。

 工場では、世の中が必要とするマスクやフェイスシールドの生産を自主的に行いました。非稼働日には、全員でカイゼンに取り組み、生産性が大きく向上いたしました。

 販売現場では、オンライン販売など、お客様との関係づくりを続けました。

 お客様の1台が私たちの工場を、日本経済を動かす。その1台1台を積み上げるために生産も販売も必死になって自分たちの「仕事」をしたと思います。それが急速な販売回復につながりました。

 リーマン・ショックの時のトヨタ販売は、市場を4%下回っておりましたが、今回のコロナ危機では、市場を3%上回るペースで回復しております。これは、みんなで生み出した「もっといいクルマ」とそれをお客様にお届けする努力の結果だと思います。

 こうして、コロナで止まった工場が動き出しました。工場が動き、人が働く姿は地域の人たちに元気を与えたと思います。

「自動車が日本経済のけん引役になろう」私は方向性を示しただけですが、すべては、その方向に向かい、動き続けた現場の力だと思います。

 この動きは、トヨタにとどまらず、日本自動車工業会をはじめとする5つの業界団体へと広がりました。

 自動車は波及効果が非常に大きい産業です。雇用は550万人。納税額は約15兆円。経済波及効果は2.5倍になります。

 まだ、第2四半期が終わったばかりですが、自動車産業の回復のスピードは速く、日本経済によい影響を与えられているのではないかと思っております。

 本日発表したトヨタの数字はこうした多くの方々の頑張りに支えられた結果です。

 決して、成り行きのものではございません。すべての関係者の皆様に改めて感謝を申し上げます。

幸せを量産する「トヨタフィロソフィー」

 また、同説明会において豊田氏は、「自動車で日本をけん引する」という想いは、コロナ危機だから生まれたものではないことを示すため、トヨタフィロソフィーにおける使命を「幸せの量産」と定義していることを紹介。豊田佐吉氏による織機、豊田喜一郎氏による自動車、つくるモノが変わったとしても「幸せ」を追求することは決して変わらないことを強調した。

 以下は、豊田社長のコメント全文である。

「自動車で日本をけん引する」。この想いは、コロナ危機だから生まれたものではありません。豊田喜一郎がトヨタを創業した時の「自動車で日本の人々を豊かにする」という想いそのものであります。

 CASE革命によって、自動車産業は「100年に一度の大変革の時代」を迎えております。先が見えない、正解のわからない時代です。「私たちはどこに行くのか」。それを知るためには、「私たちはどこから来たのか」を知らなければならないと思いました。

 この円錐形をご覧ください。これは、60年以上前に、創業者の豊田喜一郎が亡くなった後、タスキを受けた経営陣によってまとめられたものです。当時のトヨタが心をひとつにして、さらに前に進んでいくために、時の経営陣は「トヨタとは何か」、その原点を忘れてはならないと考えたのだと思います。

 日本で生まれたトヨタは世界に広がりました。そして、今の私たちもまた「大変革の時代」を生きております。グローバル37万人とその家族のために、そして、これからのトヨタを支えていく次世代のために、トヨタフィロソフィーでは、私たちの使命を「幸せの量産」と定義いたしました。

トヨタフィロソフィーで定義された「幸せの量産」

 佐吉は織機を、喜一郎は自動車をつくったわけですが、本当につくりたかったものは、商品を使うお客様の幸せであり、その仕事に関わるすべての人の幸せだったと思います。たとえ、私たちがつくるモノが変わったとしても、「幸せ」を追求することは決して変わらないと考えました。

 そして、ビジョンは「可動性を社会の可能性に変える」といたしました。

 やはり私たちはクルマ屋です。モビリティにはこだわっていきたいと思っております。そして、「可動性」という言葉には、もうひとつの意味を込めました。それは一人ひとりが行動を起こすということです。

 今の私たちに求められていることは、トヨタに働く一人ひとりが、地球環境も含めた人類の幸せにつながる行動を起こすことだと思っております。

 私は、豊田綱領から続くトヨタのフィロソフィーはSDGsの精神そのものだと思っております。そして、このフィロソフィーに基づいた経営をすることこそが、SDGs、国際社会が目指す「より良い世界づくり」に持続的に取り組むことにつながると考えております。

 現在もコロナ危機の中で、世界中の多くの人々が、苦しみに耐えながら、懸命に生き抜こうとしておられます。

 私たちは、「幸せを量産する」という使命のもと、有事の時こそ、自分以外の誰かのために、世の中のために、未来のために、仕事をしてまいりたいと思います。私たちが本当に「幸せ」を「量産」できているのか。ステークホルダーの皆様方には、厳しくも、あたたかい目でご指導とご支援をいただければ幸いです。

 ありがとうございました。