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UDトラックス、ドライバーを疲れさせない「UDアクティブステアリング」世界初公開 大型トラック「クオン」に搭載
2021年7月1日 16:30
- 2021年7月1日 発表
UDトラックスは7月1日、ドライバーの疲労軽減を目指して開発した新機能「UDアクティブステアリング」を搭載する大型トラック「クオン」を世界初公開した。UDアクティブステアリングは、LDP(車線逸脱防止支援システム)との組み合わせで、CG後軸エアサス WB 7520mm車、GK WB 3200mm車にオプション設定され、7月1日より販売が開始される。
今回発表されたUDアクティブステアリングは、ドライバーの運転環境を改善することを目的に開発された技術で、従来の油圧式ステアリングギヤの上部に新たに搭載した電気モーターの支援機能によって、ドライバーに快適で安定したステアリング感覚を提供するという。
技術的には、電気モーターに付随する電子制御ユニット(ECU)が、1秒間に約2000回の頻度で様々なセンサーから運転環境を感知して走行方向とドライバーの意図を判断し、あらゆる走行条件下においてドライバーの運転操作をアクティブにサポート。
後退・右左折・旋回などの低速走行時には取りまわしが軽く、速度が上がるにつれてステアリングの安定感が増していくチューニングが施されており、積み荷や路面状況、横風などにも左右されない安定したステアリングを実現させることで、ドライバーの疲労軽減と安全に寄与するという。
同日開催された記者発表会に登壇したUDトラックス 代表取締役社長 酒巻孝光氏は「中期経営計画として2025年にサステナビリティの4つの領域、物流、環境、従業員や地域社会、そして事業パフォーマンスで、リーダーとなることを目指しております。とりわけ物流とそれを支えるドライバーの暮らしをよりよくすることが、私たちの使命と考えています」と新技術導入の背景を語った。
また、酒巻氏は「コロナ禍においても社会を動かし続けているドライバーのみなさんの大切さが改めて認識されています。どんな状況にあっても、私たちの暮らしはドライバーによって支えられています。環境負荷、交通事故、労働時間の規制、中でもそのドライバー不足は大変深刻な状況でございます。ドライバーのここ数年間の有効求人倍率は全業種平均の約2倍と高くなっています。要因は様々にあります。少子高齢化、若者のクルマ離れ、給料、長時間労働や荷役作業のような体力的に過酷な労働環境などが挙げられます。こうしたことからドライバーという職業へのイメージは決してよくはありません。だからUDトラックスは大型車メーカーとして、こうした課題の解決にどのように貢献できるかということを常に考えています」と語った。
そして、酒巻氏は「私たちUDトラックスは、トラック作りにおいてドライバーをいつも念頭に入れてまいりました。運ぶをもっと楽に、そして豊かな気持ちで運んでもらいたい。私たちUDトラックスにできることは、技術力でドライバーをサポートし、いつでもドライバーに寄り添っていくことだと考えています」との思いを話した。
LDP(車線逸脱防止支援システム)とUDアクティブステアリングでドライバーをサポート
今回、LDP(車線逸脱防止支援システム)とのセットで導入されるUDアクティブステアリングについて、UDトラックス開発統括責任者 ダグラス・ナカノ氏からは「自動運転につながる技術を、現在の課題を解決するために応用しました。人のために、技術は進化します。ドライバーの疲労を軽減し、快適に運転できるトラックを提供することで、人材の多様化を図り、ドライバー不足に貢献していきたいと思います」との考えが述べられた。
また、UDトラックス 車両開発 車両設計 サスペンション/ステアリング担当エンジニア 高際琢弥氏からは、「UDアクティブステアリング」における5つの主な特徴が示された。
1.「低速走行時の軽いステアリング」として、重量物輸送時でも軽い力で操舵でき、疲労を大きく軽減させた。
2.「高速走行時の直進安定性」として、スピードに応じて、ステアリングを適度な重さになるよう制御することで、直進走行時にドライバーの緊張感を軽減させた。
3.「不整路走行時の路面状況の影響軽減」として、路面の凹凸から受ける影響を自動補正し、振動や意図しないステアリングの動きを軽減させた。
4.「横風発生時の走行補正」として、横風の影響によるタイヤの微細な動きを素早く感知し、自動補正で直進走行をサポートする。
5.「後退・右左折時の自然なハンドル戻り」として、後退時や交差点の旋回時にステアリングは自動でニュートラル位置に戻るようにした。
これらのポイントを紹介した高際氏は「実際に運転していただければ高速時なども含めて、UDアクティブステアリングがどれだけ運転しやすいのかというのが分かるかと思いますので、ぜひ運転していただければなと思います」と仕上がりに自信を示した。
日本の道路状況やドライバーの好みに合わせて日本独自にチューニングした「UDアクティブステアリング」
同発表会では「物流業界の課題にトラックメーカーができること」と題したトークセッションも開催され、日通総合研究所取締役の大島弘明氏、ジャーナリストの橋本愛喜氏、交通コメンテーターの西村直人氏らが参加。このトークセッションでは、実際に「UDアクティブステアリング」搭載車に試乗した、橋本氏と西村氏からその印象も語られた。
そのトークの中でUDアクティブステアリングについて、西村氏は「毎日プロとして運転されてるドライバーの方にも非常に効果が分かりやすいかなと思いました。UDアクティブステアリングは、エンジンをかけてPレンジからDレンジ、リバースに入れた瞬間から機能するわけで、速度や道路に依存しない、しかも目的地に着くまでずっと運転手をサポートしてくれるわけで、その辺りは非常に有用性が高いところが分かりました」と評価。
また、UDトラックスに先行してボルボトラックに搭載されている「ボルボ・ダイナミック・ステアリング」との違いについて、西村氏は「ボルボトラックの場合は、走る道路環境ですとか速度域が違うのと、距離も当然違ってくるということで、より高速領域でしっかりとしたステアリングフィールを求めているんだなというところが分かりました」と解説した。
同セッションに参加した開発実験の責任者であるUDトラックス 開発部門 車両評価部 ダイレクターの越川英幸氏からは「UDアクティブステアリングは、システムユニットそのものはボルボトラックに搭載しているものと基本は一緒です。ですが、日本の運転手さんの好みとか、日本の道路状況に合わせて、ヨーロッパのものとはずいぶんチューニングを変えています。ステアリングの重さですとか、車速による重さ、ステアリングの戻るスピードですとか、入力によるステアリングの動きとかもですね、すべて日本のドライバーさんがこれなら受け入れてくれるだろうというものを目指して、日本独自で作りこんだものになります」ということを明かした。