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UDトラックス、「クオン」8リッターエンジン搭載車の説明&試乗会【360度動画付き】
JARIの城里テストセンターで試乗
2019年2月25日 14:16
- 2019年2月22日 開催
UDトラックスは2月22日、大型トラック「クオン」に新たに採用された8リッターシングルターボエンジン「GH8」搭載モデルの試乗会をJARI(日本自動車研究所)の城里テストセンターで開催した。
同社は1月29日に近・中距離輸送中心のユーザーや積載量を重視するユーザーのニーズに応えるために、クオンに直列6気筒 8リッターターボディーゼル「GH8」型エンジンを新たにラインアップした。GH8エンジンは、最高出力263kW(357PS)/2200rpm、最大トルク1428Nm(145.6kgfm)/1200-1600rpmを発生。トランスミッションは全モデル12速AT「ESCOT-VI(エスコット・シックス)」が組み合わされる。
8リッターエンジンの採用により、シャシーを約300kg軽量化して積載量を向上させるとともに、架装メーカーと協力して完成車両「パーフェクト Quon」の高積載仕様車においては、カーゴモデルでは11.0リッターエンジン車との比較で500~700kgの積載量向上を実現。また、ダンプにおいては10t以上の積載を可能にするテレスコ式リアダンプを新たに設定し、ミキサー車ではクラス最大の容量4.5m3のドラムも選択可能にした。
けん引免許を持たないドライバーの輸送効率を上げる
同試乗会には、国内営業部門車両営業本部統括 常務の柴崎徹氏のほか開発メンバーら出席して、8リッターエンジンを導入する狙いや特徴についてプレゼンテーションを実施した。
同社のクオンについて、柴崎氏は「2017年のモデルチェンジでは、運転性能、燃費環境性能、安全性、生産性、稼働率といった5つの基本性能に着目して、さらに一歩先ゆくレベルを目指して開発して導入したクルマです」と紹介。今回の8リッターエンジンの導入は、その5つの基本性能の中の生産性に着目したものであるとした。
現在の運送事業者を取り巻く環境について、柴崎氏は「やはりドライバー不足が深刻化していて、ドライバーさんをどのように確保していくのかが継続した事業者さまの悩みかと思います。弊社としてどのように協力できるのかという部分で、各事業者さんでトレーラーの導入も進んでおりますが、トレーラーにはけん引免許が必要なので1人のドライバーがより多く運べるほうがいいといった点に着目して、このクルマを投入させていただきました」と導入の狙いを話した。
新たに導入される8リッターエンジンについて、柴崎氏は「低回転のところから高いトルクをフラットに出すのが特徴のエンジンです。昔の8リッターエンジンは、中型車用に回転を回して使うエンジンでしたが、今回は大型車用に使うということで低回転域から高いトルクを出すエンジンに仕上がっています。その低回転でフラットなトルクを、12段のトランスミッションを使ってスムーズに動かしていくコンセプトのクルマです。全モデルATとの組み合わせですので、エンジンとトランスミッションの組み合わせでどういう走りをするのかを評価していただきたい」と述べた。
可変容量式シングルターボを選択した「GH8」エンジン
新たに導入される直列6気筒 8リッターターボディーゼルエンジン「GH8」については、パワートレイン エンジニアリング プロダクト&プロジェクト マネージメント シニア プロダクト マネージャー PMP 望月武文氏が説明した。
GH8について望月氏は、コモンレール式燃料噴射システム、可変容量式のシングルターボを採用するとともに、ヘッドカバー内に内蔵したクランクケースベンチレーションシステムはフィルター交換不要とし、燃料フィルターやオイルフィルターはユーザーの使い方に合わせた交換インターバルを設定、オイルについては欧州で使用されている「VDS-4」、日本市場に多く流通している「DH2」に対応するなど、ユーザーのメンテナンス性を考慮した開発を行なったことを紹介。
シングルターボを選択したことについて、望月氏は「可変容量式にすることで下のトルクから高回転側の伸びまで確保できる設計適合にしております。ターボ1つで25~26kg重量がありますので、周辺のダクトを含めると結構な重量となります。小排気量エンジンのメリットを殺すことなく軽量化や整備性への貢献などを考慮して、可変容量式のシングルターボを選択しました」と説明した。
また、ターボのすぐ後ろに排気シャッターを設けたことをこのエンジンの特徴として挙げ、望月氏は「これには3つの効果があり、1つは排気ブレーキで使用しています。2つめは走行中の排気温度をコントロールすることで燃費に振ったチューニングに活用しています。3つめは走行時の煤の再生に活用していて、98%以上のお客さまでクルマを停めることなく走行中に煤の再生が可能になっていて、お客さまに喜ばれている機能です」と紹介した。
ESCOT-VIの制御で補助ブレーキ性能をアシスト
開発部門 車両評価部 ダイレクターの越川英幸氏からは、同エンジン搭載車全車に使われる12段電子制御式トランスミッション「ESCOT-VI」について説明された。
越川氏は、小排気量化で課題となるエンジンブレーキや排気ブレーキといった補助ブレーキ性能について、ESCOT-VIの制御を活用したオートシフトダウン機能を備えていることを紹介。補助ブレーキレバーに設定された4段目のポジションでは、シフトダウンによりエンジン回転を高く回すことなどで補助ブレーキ性能を確保するチューニングを施したという。
また、加速性能について、越川氏は「積載量や勾配など、その時の車両の状態に合わせてギヤ飛びをさせています。加速中に変速をすると加速が止まってしまいますので、その止まる回数を減らして必要最低限のシフト回数でスムーズな加速を実現させています」と明かした。
架装メーカーとの協業による高積載仕様車を完成車にラインアップ
完成車のラインアップについては、国内車両営業本部 商品企画・技術部 マネージャーの長松茂雄氏が説明。今回、8リッターエンジンの採用によりシャシーを300kg軽量化するとともに、完成車「パーフェクト Quon」に架装メーカーとの協業によりボディを軽量化した高積載仕様車を用意したことが紹介された。
長松氏は、カーゴの高積載仕様車ドライウィングでは「アルミ製床枠」「アルミ製ラッシングレール」「中間柱レスのアオリ2方開」「プラパール製の内張り」を採用することで、ボディだけで約220kgの軽量化を実現させたことを紹介。11.0リッターエンジン車との比較で500~700kgの積載量向上を実現させたことを強調した。
また、ダンプには新たにテレスコピック式ホイスト ハーフパイプ型ボディを設定して、アンダーデッキ式と比べて約660kg軽いボディを実現させ、10.4tの積載を可能にしたことを紹介した。
そのほかにも、ミキサー車では標準の容量4.4m3に加え、クラス最大の容量4.5m3のドラムも選択可能にしたことや、石油ローリー、粉粒体運搬車の架装例が紹介された。
ドライウイング高積載仕様でJARIテストコース外周路を試乗
今回の試乗会では、完成車「パーフェクト Quon」のドライウイング高積載仕様に荷物を積載した状態の試乗車に乗ることができた。試乗コースとなったのは、JARI 城里テストセンターの外周路で1周は5722m。郊外道路を再現したアスファルト道路となっており、加速性能やブレーキ性能、全体的な乗り心地の評価に加えて、途中にある勾配を利用して坂道発進や微速後退時の速度調節のしやすさや、車線逸脱警報の作動状況、補助ブレーキ性能を確認できる試乗プログラムが用意された。
実際に試乗体験をすると、荷物を積載している状態においても一般公道を走るうえで十分な加速性能やブレーキ性能を持っていると感じるとともに、エンジンの小排気量化で課題となる補助ブレーキ性能については、補助ブレーキレバーの4段目を使用するとオートシフトダウン機能が働き、エンジンを高回転させて強い補助ブレーキ性能を確保していることを確認できた。また、試乗した際の「ECOモード」では、燃費向上に向けてトランスミッションは、ギヤを積極的にニュートラルにして滑走走行を利用するようにプログラムされているのを体験することができた。
試乗して印象に残ったのは、ステアリングの操作感、ブレーキペダルのタッチやブレーキの効き具合など、乗用車のような操作感覚を実現させていること。ATであることや坂道発進をアシストする機能などを含めて、大型トラックに乗り慣れていないドライバーでも運転操作に関する緊張を迫られることなく、安全運転に集中することができるトラックであると感じた。