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てん菜の運搬業務の無人化に大型トラックのレベル4自動運転を活用。UDトラックス、日本通運、ホクレンが北海道で実証実験公開

レベル4自動運転の2020年の実用化を目指すUDトラックス

2019年8月29日 開催

UDトラックス、日本通運、ホクレンが北海道で大型トラックのレベル4自動運転の実証実験を実施

 UDトラックス、日本通運、ホクレンの3社は8月29日、てん菜の運搬業務の無人化を試みる共同実証実験として、8月5日~30日の日程で実施してきた大型トラックを用いたレベル4自動運転技術の実証実験を公開。大型トラックとしては国内初という公道を一部含めた約1.3kmの運搬ルートを20km/hで自動走行した。

 今回、UDトラックス、日本通運、ホクレンの3社は、7月に交わした合意に基づき、8月5日~8月30日の期間、ホクレン中斜里製糖工場(北海道斜里郡斜里町字川上111)において、砂糖の原料となるてん菜の運搬業務を想定した走行を、特定条件下における完全自動運転「レベル4」自動運転技術を搭載したトラックで再現した。

ホクレン中斜里製糖工場(北海道斜里郡斜里町字川上111)

 公開された実証実験では、中斜里製糖工場周辺の公道から工場入口を経て、てん菜集積場、加工ライン投入口へ横持ちする、約1.3kmの運搬ルート(公道、舗装道路、未舗装道路を含む)を、自動運転車両が20km/hで自動走行した。

UDトラックス、日本通運、ホクレンによるレベル4自動運転実証実験
てん菜を搬入することを想定して移動してくる自動運転車
収穫期になるとてん菜が山積みになるというてん菜集積場での自動走行
てん菜受入加工ライン投入口に移動する自動運転車

 実証実験に参加したUDトラックスでは、2020年の実用化を目指して開発を進めている、港湾内、工場構内、物流施設、建設現場など特定条件下における完全自動運転レベル4の自動運転技術を2018年12月に公開しており、この実証実験でより具体的なアプリケーションとして活用方法を示した。

 また、今回の共同実証実験では、自動運転の技術的な実証や実用化における課題の抽出が主目的といい、今後の取り組みとして、3社は農業の輸送効率化をはじめとする物流業界を取り巻く課題の解決に向け、今回の実験結果を検証して、各社で引き続き検討していくとしている。

写真左から、北海道 副知事 土屋俊亮氏、ホクレン農業協同組合連合会 代表理事会長 内田和幸氏、日本通運株式会社 代表取締役副社長 竹津久雄氏、UDトラックス株式会社 代表取締役社長 酒巻孝光氏、開発部門統括責任者 ダグラス・ナカノ氏

 8月29日に行なわれた記念式典には、UDトラックス 代表取締役社長 酒巻孝光氏、日本通運 代表取締役副社長 竹津久雄氏、ホクレン 農業協同組合連合会 代表理事会長 内田和幸氏、北海道 副知事 土屋俊亮氏が出席してあいさつの言葉を述べた。

UDトラックス株式会社 代表取締役社長 酒巻孝光氏

 UDトラックスの酒巻氏は「私たちは、昨年末にレベル4自動運転技術を搭載した大型トラックで、日本初のデモンストレーションを埼玉県の本社敷地内で行ないました。今後はこのような大規模農業、建設現場、港湾、工場など、反復輸送を必要とする限定領域での実用化を目指して、さまざまな知見を積み上げていきたいと思っております」と述べるとともに、「レベル4自動運転技術を搭載したトラックの限定領域での活用は、まさに今時代が求めているソリューションだと思っております。今回のような実証実験を通して物流業界や農産業など、さまざまな産業のお客さまのニーズを知りノウハウを積み上げ、よりよい社会実装を早く実現していきたいと思っております」との意気込みを述べた。

日本通運株式会社 代表取締役副社長 竹津久雄氏

 酒巻氏に続いて、日本通運 代表取締役副社長 竹津氏があいさつ。日本通運では2017年、先端技術を活用し物流の効率化に取り組むため「ロジスティクス・エンジニアリング戦略室」を立ち上げて、自動運転技術を活用したトラック隊列走行、物流センターの無人化・省力化、人工知能(AI)活用の物流ソリューション、ドローンの多目的活用、トラックマッチング(求車求貨)のシステム化などを主要テーマとして研究・開発を推進しているという。

 竹津氏は「これまでもお客さま企業と連携、協力してさまざまな物流効率化に取り組んできましたが、ドライバー不足は今後深刻化していきます。物流事業者としてさまざまな業種、業態のお客さまと取り引きさせていただいていますが、その中でも、大量の貨物を反復して同じ経路で輸送するような業務に自動運転トラックを活用することができれば、省人化や効率化が期待されます。また、工場、港湾、空港などの大規模施設内は限定空間であり、運用ルールも徹底しやすいことから比較的早期の実用化が期待できると考えます。本実証実験の結果を踏まえ、今後も引き続き、具体的な物流シーンへの活用に向けて検討していきます」との考えを話した。

ホクレン 農業協同組合連合会 代表理事会長 内田和幸氏

 現在、年間約350万tの農畜産物が北海道外に運ばれており、その7割をホクレンが取り扱っているという。物流業界の人手不足などで運転手の確保は難しく、農畜産物の物流にも大きく影響を及ぼしていると言い、ホクレンの内田代表理事会長は「将来に向けた輸送力確保の新たな手段として、自動運転車両の早期実用化に期待しています」との期待感を話した。

北海道 副知事 土屋俊亮氏

 この実証実験に協力した北海道庁では2016年に「北海道自動車安全技術検討会」を設置し、全国に先駆けて産官学連携のもと、自動走行に関して実証試験の円滑化と研究開発促進のための環境整備や情報提供を行なっており、自動車・部品メーカーなどが道内に持つ自動運転の試験場は全国最多の28か所になっている。

 土屋北海道副知事は「本道の基幹産業の1つである農業、それを支える物流は、本道はもとより日本経済を支えており、自動運転技術など先端技術の積極的な活用による物流効率化の実現は、ますます深刻化するドライバー不足などの課題解決につながるものと期待されています」との考えを述べた。

ネットワークRTK-GPSと自動運転技術を組み合わせて誤差数cmの精度を確保

 実験に使用された車両はUDトラックスの大型トラック「クオン」をベースに開発されたもので、RTK-GPS(リアルタイムキネマティック全地球測位システム)や3D-LiDAR、ミリ波レーダー、操舵アクチュエーターなどの自動運転技術を搭載。

RTK-GPS(リアルタイムキネマティック全地球測位システム)や3D-LiDAR、ミリ波レーダー、操舵アクチュエーターなどの自動運転技術を搭載した大型トラック「クオン」

 今回の実証実験では、さらに4Gで受信するRTK基地局からの補正信号を使って、GPS衛星から得られる位置情報を補正することで、誤差数cmの精度を確保することができるネットワークRTK-GPSを導入。ネットワークRTK-GPSと自動運転技術を組み合わせることで、悪天候や高い建物の近くなどGPS信号の受信状態がわるい場所でも、高精度な自動走行が可能になるという。

UDトラックス株式会社 開発部門統括責任者 ダグラス・ナカノ氏

 開発を担当するUDトラックス 開発部門統括責任者 ダグラス・ナカノ氏は、「レベル4技術を反復作業が中心である大規模な限定領域で活用すれば、物流は大幅に効率化されます。今回の実証実験で得られたデータを活用して、多様な物流の現場で求められるソリューションとしてのレベル4自動運転システムを開発し、ここ北の大地で、農産業そして持続可能な食糧生産を支援したいと思います。そしてさらに大規模な用途へと応用していければと考えています」とコメントしている。

UDトラックスは限定領域での自動運転の実現を目指している