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つながる車両100万台。UDトラックスがコネクティビティの最新動向を伝えるセミナー開催

清水和夫氏とNTTドコモの中村武宏氏を交えて議論を展開

2019年7月11日 開催

ボルボグループのつながる車両台数は約100万台になっている

 UDトラックスは7月11日、NTTドコモ本社においてロジスティクスを中心にしたコネクティビティの最新動向を伝えるセミナーを開催。国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏、NTTドコモ執行役員で5Gイノベーション推進室室長の中村武宏氏を招いて、UDトラックスの担当者とともに物流の未来についての議論も行なわれた。

「コネクティビティが変革する物流の未来―つながるトラックが生み出すスマートロジスティクスの可能性を探る―」と題したセミナーは、物流業界に押し寄せているEコマースの増大やドライバー不足などの課題に対して、コネクティビティ・ソリューションを活用することで、物流を効率化できる可能性について議論を深めることを目的にしたもの。

 清水氏、NTTドコモの中村氏のほか、UDトラックスのプロセス&ソリューション部 統括責任者 サティシュ・ラジュクマール氏、コネクテッドソリューション部 部長 シェティ・ライ・チャンドリカ氏、コネクテッドソリューション部 ビジネスアナリスト 森弘一氏の3名が参加して、プレゼンテーションやパネルディスカッションが行なわれた。

ビッグデータの実現にはデータの標準化が必要

国際自動車ジャーナリスト 清水和夫氏

 セミナーの冒頭に行なわれた清水和夫氏のプレゼンテーションでは、内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)によって政府と自動車メーカーで行なわれている取り組みについて紹介。政府が目指す超スマート社会「ソサエティ5.0」を実現するためのカギとなるビッグデータについては、データの標準を実現する最低限の共通ルールが必要となってくることを伝えた。

 SIPによる自動運転の社会実装に向けた取り組みについては、これまでに自動運転に必要なダイナミックマップが構築されたことを紹介。自動運転の実用化を進めるには、コネクテッド機能によりリアルタイムに情報を更新していく必要性などが説かれた。

 また、2023年を目標にしたSIP 第2期の活動について、清水氏は「さまざまな民間情報をコネクトしてもっと大きなビッグテータにチャレンジしていくのがその役割。ただ、このビッグテータというのは、言葉はすごいが実際にやってみると日本にはさまざまな情報があり、その情報を全部入れるとカオスになってしまう。それぞれ出口の目的を定めてデータのプラットフォームを作っていこうというのが、第2期の自動走行に関わるSIPの役割」と強調した。

プレゼンテーションで示されたスライド

ボルボグループのつながる車両台数は約100万台に

UDトラックスのプロセス&ソリューション部 統括責任者 サティシュ・ラジュクマール氏

 UDトラックスのプロセス&ソリューション部 統括責任者 サティシュ・ラジュクマール氏によるプレゼンテーションでは、物流は社会の血液であるとともに、「交通安全と渋滞」「環境問題」「高齢化」「ネット通販の拡大」「コストと生産性の拡大」「規制強化」「ドライバー不足」「輸送ニーズの変化」といった課題があると説いた。

 ラジュクマール氏は「UDトラックスとしてはお客さまやビジネスパートナーともに、こうした課題を解決していく責任があると思っています」と、コネクティビティを通じてそうした課題解決に貢献していきたいとの意気込みを述べた。

物流業界の課題解決にコネクティビティを通じて貢献していきたいとの考えを示した

 ソサエティ5.0に向けた日本政府の取り組みについては、シンガポールやオーストラリアなど、似たような取り組みがすでに多くの国で行なわれているとし、そういった社会の実現にカギとなるビッグデータについては、ボルボグループにおいても“つながる車両”の台数が100万台になっていることが強調された。

 ラジュクマール氏は「ボルボグループのつながる車両台数は100万台に達しております。それによって得られるデータをそれぞれの市場に合わせて適用することができます」との考えを述べた。

ソサエティ5.0の実現に向けてボルボグループとして100万台のつながる車両を備えていることを強調した

利用者に意味のあるデータに変えて新しいサービスを提供

UDトラックス コネクテッドソリューション部 部長 シェティ・ライ・チャンドリカ氏

 UDトラックス コネクテッドソリューション部 部長 シェティ・ライ・チャンドリカ氏からは、そうしたデータをどのように活用するかについて説明があり、コネクテッドソリューションの重点領域として「生産性」「稼働率」「車両の最適化」「安全とセキュリティ」「アナリティクス」「ソリューション」「エレクトロモビリティ」「自動運転」に定めていることを紹介。

コネクテッドソリューションの重点領域

 コネクテッドに対する取り組みとして、チャンドリカ氏は「集まってくる多くのデータをお客さまにとって意味のあるデータに変えて提供しています。燃費や保守性の向上といったサービスだけでなく、トラックや建設機械、インフラからのデータを組み合わせて、港湾や鉱山などのソリューションも提供しています」と明かした。

コネクテッドサービスのエコシステム

 また、ボルボグループのコネクテッドサービスのエコシステムとしては、ソフトを開発するデベロッパーが参加しやすく、顧客となる利用者がなるべく1つのチャンネルで見れるように、Googleやアップルのモバイルアプリといったすでに普及が進んでいるプラットフォームに対応していることが強調された。

日本国内を走行するつながるUD車両の状態を示すスライド

つながるUD車は2025年に約15万台に

UDトラックス コネクテッドソリューション部 ビジネスアナリスト 森弘一氏

 具体的に国内で展開されているサービスについては、UDトラックス コネクテッドソリューション部 ビジネスアナリスト 森弘一氏から説明があり、通信機能を持ったつながるUD車の台数について、2006年から搭載を開始して、2019年に約6万台、2025年には約15万台に達する見込みであることが示された。

つながるUD車両の台数

 そうしたつながるUD車に対する国内市場向けコネクテッドサービスとしては、稼働率向上に向けた「遠隔故障診断」「車両位置情報」「予防整備」、品質向上に向けた「不具合分析」、生産性につながる「燃費コーチ」「省燃費レポート」、安全性向上に向けた「安全運転レポート」を用意していることを紹介。

国内市場向けコネクテッドサービス

 森氏は「車両からは故障の情報や故障になりそうな情報、車両の位置情報を組み合わせて、車両の情報を確認した上で適切なロードサービスを提供することができます。また、故障になりそうな情報を活用して予防整備にも取り組んでいます」などとサービスの特徴を話し、「日本市場では稼働率、安全性向上に注力しているところです」とサービスのポイントを示した。

海外市場向けサービスでは稼働率、生産性の向上に向けた、2つのサービスを用意していることが示された

9月20日からプレサービスを開始する5G導入スケジュール

NTTドコモ 執行役員5Gイノベーション推進室 室長 中村武宏氏

 NTTドコモの中村武宏氏からは「通信の進化が物流とモビリティの未来に与える影響」と題したプレゼンテーションが行なわれ、高速大容量を特徴とする次世代サービスの5G導入に向けたスケジュールや、自動車メーカーと行なっている実証実験の事例などが紹介された。

5G導入に向けたスケジュール

 5Gの導入スケジュールについては、9月に開催されるラグビーワールドカップに合わせて9月20日から5Gプレサービスを開始。その後、高速大容量を必要とする都市部、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの施設を中心に展開を進めていく考えを示した。また、ロジスティクスに関わる道路の部分では、国道や高速道路を中心に展開を進めていきたいとした。

5Gの展開イメージ
5G周波数の割当結果
5G導入に合わせて新たなサービスを生み出す「5Gオープンパートナープログラム」

 5G導入に合わせて新たなサービスを生み出す「5Gオープンパートナープログラム」として2800社とともに取り組みを行なっているという。ロジスティクスやモビリティに関わる部分では、タクシーの需要予測、自動運転を活用した高度化MaaSに取り組んでいることが報告された。

自動車メーカーとの取り組みなどを紹介するスライド

テクノロジーの進化によってひろがるコミュニケーション

 各参加者のプレゼンテーション後に行なわれたパネルディスカッションでは、清水氏がモデレーターとなって、スマートロジスティクスの実現に向けた課題や期待感などが聞き出された。

 SIPに参画する清水氏は、物流に使用される車両は走行エリアがある程度決まっていること、港湾での物の移動といった公道ではない限定されたエリアでの自動運転の可能性など、乗用車と比べてロジスティクスの領域ではイノベーションを進めやすい環境にあるとの考えを示した。

セミナー後に開催されたパネルディスカッション

 スマートロジスティクスの実現に必要なコネクティビティについて、ラジュクマール氏は、ボルボグループで取り組むコネクテッドのプラットフォームについて、そのオープン性を強調した。また、チャンドリカ氏は「私達はさまざまなプラットフォームを持っていますが、協調領域を増やしてデータ量を増やすこと」との認識を示した。

 そのコネクティビティ活用して、具体的にロジスティクスの市場で求められているサービスについては、中村氏から「ユーザーから求められているのは効率性と安全性の向上」との考えが示された。

 チャンドリカ氏は「日本は情報が豊富で、私達もテクノロジーを開発するのが容易です。一方で日本ではいいサービスが当然のものとして求められます。日本でサービスを開発するにあたって、適切なサービスをお客さまやパートナーに提供するには、テクノロジーだけではなく人の側面があり、お客さまとの関係性が重要になってくると思います」との認識を示した。

 こうしたロジスティクスの課題解決に向けた取り組みについて触れたドコモの中村氏からは、いずれもコミュニケーションが重要になってくるとの認識が示された。中村氏は「労働者人口が減っている中で、女性の活躍を後押ししなければならないですし、グローバル化のよって多様性が必要になってくると思います。海外の方が日本に来られて活躍するには言葉や習慣の壁などがありますが、あらゆるコミュニケーションツールを介して解決できる部分があります」と、テクノロジーの進化によってひろがるコミュニケーションへの期待感が示された。