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ホンダF1 田辺TD、次戦イギリスGPの“スプリント予選”は「FP1と事前シミュレーションが重要になる」

2021年7月2日~4日(現地時間) 開催

F1第9戦オーストリアGPの表彰台でガッツポーズを取るホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏

 F1第9戦オーストリアGPは、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手がポール・トゥ・ウィンで3連勝を飾った。ホンダのパワーユニットとしてはモナコGPでのフェルスタッペン選手の優勝から、セルジオ・ペレス選手のアゼルバイジャンGPでの優勝を挟んでの5連勝を達成した。

 ホンダパワーユニットの5連勝は、1988年のセナ・プロ時代(マクラーレン・ホンダ)の開幕11連勝以来となる。この結果により、マックス・フェルスタッペン選手はドライバー選手権においてポイントを182に伸ばし、2位のルイス・ハミルトン選手(メルセデス)と32点差と1レース優勝分(25点+ファステストラップポイントの1点)以上にリードを広げた。また、コンストラクターズ選手権でも、レッドブル・ホンダは286点となり、2位のメルセデスに44点差をつけ、1-2フィニッシュ(1位25点+2位18点+ファステストラップの1点)分の差となっている。つまり仮に次戦ノーポイントでもポイントリーダーの座を維持できるということだ。

 レース後にはホンダにとってうれしいサプライズプレゼントもあった。表彰台のコンストラクターズの代表として、ホンダF1テクニカルディレクターの田辺豊治氏が表彰台に上がることになったのだ。田辺氏にとっては2019年のF1復帰後初優勝のオーストリアGPに次いでの表彰台登壇となる。

 レッドブルの地元でのホンダ関係者による表彰台登壇は、両者の良好な関係を象徴するものだと言える。そうした表彰台から戻ってきた田辺氏によるオンライン会見が行なわれたので、その模様をお伝えしていきたい。

レッドブルとホンダのいい関係を象徴する田辺TDの表彰台登壇

──田辺TDから今日のレースの振り返りを

田辺氏:3連戦、3戦目のオーストリアGPだったが、マックス・フェルスタッペン選手がポール・トゥ・フィニッシュという力強いレースを展開して、レースを支配したという形で終了することができた。3連戦、3連勝という形で総括でき、5連勝というよい形で進んでいると思う。しかし、まだ23戦して9戦が終わっただけだ。

 ペレス選手に関しては、前を走るノリス選手に仕掛けてポジションを落としてしまった。その後アグレッシブな走りをして追い上げたが、他車を押し出したという形で5秒ペナルティを2回もらって6位。後続のクルマと9.6秒差だったので、あと0.5秒で順位を戻せたが及ばず6位になった。

 アルファタウリの2台はレースペースがよくなく、ガスリー選手が9位、角田選手はピットイン時の白線を越えてしまいペナルティを2回もらって12位だった。

 次戦はシルバーストーンで、多くのF1チームのホームになっている。レッドブルにとっても、ホンダにとってもイギリスでの拠点に近く、各チームもアップグレードを入れてくると思う。また、スプリント予選(筆者注:レース形式の予選)という新しい形のフォーマットも入ってくるので、それに向けて準備をしていく。

──田辺氏が表彰台に上がったが、表彰台に上がったこと、コンストラクターズなのにホンダを代表して上がった心境は?

表彰式に登壇する田辺TDとマックス・フェルスタッペン選手

田辺氏:2度目がまわってくるとはまったく考えていなかった。レースが終わってクリスチャンから無線が入って「田辺、ポディウムだ」と言われて、まわりの人たちに「行き方、覚えている? 今回は大丈夫?」などと言われながら行くことになった。前回のレースではヘルムート・マルコさんが登壇して、レッドブルにとってホームコースで特別な場所なのだと思いながら見ていた。そんな特別な場所で2年前にポディウムに乗ることができたこと、そんなところに自分がポディウムに登壇したのだと思っていたのが先週だった。自分の人生の中でいい思い出になったと思うし、レッドブルとしてもホンダに期待をしてくれているのだということを感じた。

──2年前は復帰後初優勝、涙でよく見えなかったと思うが、今日はどういう風に風景、光景で見えたか?

コンストラクターズのトロフィーを受け取る田辺TD

田辺氏:今回はお客さまが一杯入っていた。それでもグランドスタンドにはやや隙間があって昔のようには満席という訳ではないが、オレンジ一色のスタンドもあり、そういう雰囲気の中で前回のシーンを思い出しながらあの場に立っていた。今回は前回比べるとグランドスタンドを見回す時間があり、感慨も深かった。下に各チームのスタッフが集まっていて、マックスの優勝、ボッタス選手の2位、ノリス選手の3位を祝福していたのが印象的だった。

次戦のレース形式のスプリント予選に向けては、FP1と事前のシミュレーションが重要になる

マックス・フェルスタッペン選手とボトルを交わす田辺TD
──フランスで2基目を入れたが、メルセデス陣営からからパワーが上がったと言われて田辺氏が否定するような報道もあった。なんでもオイルが新しくなったと聞いているが、それも影響しているのか? 田辺氏:長いことエクソンモービルさんと燃料だけでなくオイルに関しても協力関係にある。これまでも燃料に関しては何度かお話しさせていただいたが、オイルに関してもアップデートをしている。信頼性やパフォーマンスの両方を向上させるという目的で、その向上が認められたということでオイルを投入したという形になる。 ──来季のホンダのレッドブル・パワートレインズへのサポートに関しても報道があったが、田辺氏から何かコメントはあるか? 田辺氏:レッドブルとホンダで話をしていると承知している。私の方からお話しできることは、今の時点ではない。 ──次のイギリスGPではスプリント予選、レース形式の予選という新しいフォーマットが導入される。その見通しなどについて教えてほしい。 田辺氏:今のレギュレーションだと、レースではパワーユニットのモードが1つのモードにしかできない。通常のレースではそれが予選のQ1から適用されるが、次のレースでは予選から適用される(筆者注:レース形式のスプリント予選のグリッドを決める予選の予選。金曜日にFP1の後に行なわれる、次のレースでは金曜日にFP1/予選、土曜日にFP2/スプリント予選、日曜日に決勝レースという変則的なスケジュールで行なわれる)。このため、FP1で走った段階でパワーユニットのモード選択などを行ない、そこから金曜日の予選、土曜日のスプリント予選をそのモードで走らないといけない。したがってFP1で行なう最終的な最適化が大事になるので、事前のシミュレーションの精度を上げていくことが重要だ。仮にそれができないと、そのまま予選、スプリント予選に突入しかねないからだ。次戦ではそうしたシミュレーションと最適化が鍵になると思う。 (レース形式の)スプリント予選が入ってきてどういうGPになるかはやってみないと分からないところがあるので、考えられることを想定して対応して臨みたいと考えている。
勝利の美酒を浴びた田辺TD
チェッカーを受けてチームスタッフから祝福されるマックス・フェルスタッペン選手

F1第9戦オーストリアGP 決勝結果

順位号車ドライバー車両周回数タイムポイント
133マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・ホンダ711時間23分54秒54326
277バルテリ・ボッタスメルセデス71+17.973秒18
34ランド・ノリスマクラーレン・メルセデス71+20.019秒15
444ルイス・ハミルトンメルセデス71+46.452秒12
555カルロス・サインツフェラーリ71+57.144秒10
611セルジオ・ペレスレッドブル・レーシング・ホンダ71+57.915秒8
73ダニエル・リカルドマクラーレン・メルセデス71+60.395秒6
816シャルル・ルクレールフェラーリ71+61.195秒4
910ピエール・ガスリーアルファタウリ・ホンダ71+61.844秒2
1014フェルナンド・アロンソアルピーヌ・ルノー70+1周1
1163ジョージ・ラッセルウイリアムズ・メルセデス70+1周0
1222角田裕毅アルファタウリ・ホンダ70+1周0
1318ランス・ストロールアストンマーティン・メルセデス70+1周0
1499アントニオ・ジョビナッツィアルファロメオ・レーシング・フェラーリ70+1周0
157キミ・ライコネンアルファロメオ・レーシング・フェラーリ70+1周0
166ニコラス・ラティフィウイリアムズ・メルセデス70+1周0
175セバスチャン・ベッテルアストンマーティン・メルセデス69DNF0
1847ミック・シューマッハハース・フェラーリ69+2周0
199ニキータ・マゼピンハース・フェラーリ69+2周0
NC31エステバン・オコンアルピーヌ・ルノー0DNF0

※マックス・フェルスタッペン選手に最速ラップポイントとして1ポイント追加

ドライバーランキング(F1第9戦オーストリアGP終了後)

順位ドライバー車両ポイント
1マックス・フェルスタッペンNEDレッドブル・レーシング・ホンダ182
2ルイス・ハミルトンGBRメルセデス150
3セルジオ・ペレスMEXレッドブル・レーシング・ホンダ104
4ランド・ノリスGBRマクラーレン・メルセデス101
5バルテリ・ボッタスFINメルセデス92
6シャルル・ルクレールMONフェラーリ62
7カルロス・サインツESPフェラーリ60
8ダニエル・リカルドAUSマクラーレン・メルセデス40
9ピエール・ガスリーFRAアルファタウリ・ホンダ39
10セバスチャン・ベッテルGERアストンマーティン・メルセデス30
11フェルナンド・アロンソESPアルピーヌ・ルノー20
12ランス・ストロールCANアストンマーティン・メルセデス14
13エステバン・オコンFRAアルピーヌ・ルノー12
14角田裕毅JPNアルファタウリ・ホンダ9
15キミ・ライコネンFINアルファロメオ・レーシング・フェラーリ1
16アントニオ・ジョビナッツィITAアルファロメオ・レーシング・フェラーリ1
17ジョージ・ラッセルGBRウイリアムズ・メルセデス0
18ミック・シューマッハGERハース・フェラーリ0
19ニキータ・マゼピンRAFハース・フェラーリ0
20ニコラス・ラティフィCANウイリアムズ・メルセデス0

コンストラクターランキング(F1第9戦オーストリアGP終了後)

順位チームポイント
1レッドブル・レーシング・ホンダ286
2メルセデス242
3マクラーレン・メルセデス141
4フェラーリ122
5アルファタウリ・ホンダ48
6アストンマーティン・メルセデス44
7アルピーヌ・ルノー32
8アルファロメオ・レーシング・フェラーリ2
9ウイリアムズ・メルセデス0
10ハース・フェラーリ0