ニュース

パナソニック、2021年度第1四半期決算 オートモーティブの営業利益は98億円の黒字に転換

2021年7月29日 発表

パナソニック株式会社 取締役 専務執行役員兼CFOの梅田博和氏

 パナソニックは7月29日、2021年度第1四半期(2021年4~6月)連結業績を発表。オートモーティブの売上高は前年同期比77%増の3737億円、営業利益は前年の95億円の赤字から98億円の黒字に転換。調整後営業利益は前年同期比407億円増の112億円と黒字に転換した。

 パナソニック 取締役専務執行役員兼CFOの梅田博和氏は、「自動車市場の回復により、車載機器はIVI(In Vehicle Infotainment)を中心に伸長。車載電池は需要増加が寄与した。車載機器および車載電池ともに増販による収益貢献が大きかった」と総括した。

 車載機器および車載電池ともに増収増益となっており、オートモーティブの売上高の6割弱が車載機器、4割強が車載電池。営業利益では2割強が車載機器、8割弱が車載電池という構成。前年同期には売上高、営業利益ともに車載機器が6割弱、車載電池が4割弱となっており、車載電池の利益率が上昇している。

 車載機器では一部で半導体逼迫の影響はあるものの、自動車市場が回復傾向にあること、注力領域であるIVIが伸長したことがプラス影響となった。また、新型コロナウイルスの影響による一時的な工場停止の反動で固定費は増加したものの、増販による収益貢献がカバーした。

 車載電池では、円筒形車載電池において2020年の工場一時停止の反動や需要の増加、2020年度末に導入を完了した高容量新製品の効果、材料合理化などが寄与し、梅田CFOは「車載電池においては、北米工場で新たなラインが2021年8月に稼働するめどが立った。すでに増収フェーズであるとともに、利益の刈り取りができるフェーズに入ってきている。今後、赤字になるといった話はない」と自信をみせた。

 また、新たなリチウムイオン電池である「4680」については、「順調に開発を進めている。個別のパーツや機能ごとの設備を導入し、性能の検証を行なっている段階」と述べた。

2021年度第1四半期(2021年4~6月)のオートモーティブの売上高は前年同期比77%増の3737億円、営業利益は前年の95億円の赤字から98億円の黒字に転換

 一方、パナソニックの全社連結業績は、売上高が前年同期比28.8%増の1兆7924億円、調整後営業利益は前年同期の59億円の赤字から1195億円の黒字に転換。営業利益は前年同期の38億円から大きく改善して1044億円、税引前利益は同31億円から1085億円、当期純利益は98億円の赤字から765億円の黒字となった。営業利益が1000億円を突破したのは、リーマンショック直前の2008年度第1四半期以来、13年ぶりとなり、調整後営業利益額では過去最高益だった1985年度第1四半期以来の水準となった。

 これについても、オートモーティブの業績が大きく貢献。梅田CFOは、「売上高ではオートモーティブやアプライアンスにおける新型コロナの影響からの回復が貢献している。車載電池のほか、空調・空質、ホームアプライアンス、情報通信インフラ向けなどの社会変化を捉えた事業が伸長している」と述べた。

パナソニックの全社連結業績

 2021年度第1四半期業績は、すべてのセグメントで増収増益を達成。オートモーティブ以外のセグメント別業績は、アプライアンスの売上高が前年同期比22%増の6743億円、営業利益は177%増の421億円。ライフソリューションズの売上高は前年同期比9%増の3552億円、営業利益は127%増の126億円。コネクティッドソリューションズの売上高は前年同期比13%増の2085億円、営業利益は前年同期の160億円の赤字から2億円の黒字。インダストリアルソリューションズは売上高が前年同期比24%増の3576億円、営業利益は同284%増の353億円となった。

2021年度第1四半期のセグメント別業績

 今回の決算会見では、新型コロナの影響がなかった2019年度第1四半期と、今回の2021年度第1四半期の業績を比較した。これによると、2019年度第1四半期の売上収益は1兆7889億円、調整後営業利益は624億円に対して、今回の2021年度第1四半期の売上収益は1兆7924億円、調整後営業利益は1195億円となっている(2019年度の売上収益では、住宅、角形電池、セキュリティカメラなどの非連結化影響を除いている)。

 これを受け、梅田CFOは「売上高は2019年度とほぼ同じ水準まで回復。調整後営業利益はさらに大きく改善している。中期戦略において、事業ポートフォリオ改革や経営体質強化の取り組みを着実に進めてきたことが数字として現れた」と自己分析した。オートモーティブにおいても、2年前を上まわる利益水準と収益性を実現している。

新型コロナの影響がなかった2019年度第1四半期と2021年度第1四半期の業績比較

 2021年度を最終年度とする中期戦略においては、車載事業の収益改善が重点取り組みの1つに掲げられているが、「第1四半期の車載事業は増販益が貢献し、調整後営業利益は112億円となり、前年から400億円超の改善となった。年間見通しの500億円に向けて順調に進んでいる」と手応えを強調した。

中期戦略の重点取り組みの進捗

 一方、2021年度(2021年4月~2022年3月)の全社連結業績見通しについては据え置き、売上高は前年比4.5%増の7兆円、営業利益は27.6%増の3300億円、調整後営業利益は2703%増の3900億円、税引前利益は26.5%増の3300億円、当期純利益は27.2%増の2100億円としている。

 プラス要因としては、情報通信インフラや工場省人化への投資需要の拡大継続を挙げる一方、半導体逼迫などによる車両生産への影響継続、港湾混雑による物流の停滞、新型コロナ感染再拡大による工場などのロックダウン、資材の価格高騰および調達難などをマイナス要因に挙げており、「銅をはじめとする原材料高騰による影響は年間で500億円強を見込んでいるが、もう少し増やさなくてはならないと見ている。リスクの状況に応じ、コストコントロールを強化していく」(梅田CFO)とした。

 原材料価格の高騰や材料の調達難は車載機器や車載電池の生産にも影響するが、今後、材料合理化などの対策を進めていく考えを示した。また、「第1四半期の全社業績は、期初想定よりも堅調に推移している。今後の事業環境の不透明要因やリスクに対する対策を進め、年間公表値を上まわる水準を目指す」と、さらなる成長にも意欲をみせた。

 なお、パナソニックでは2022年4月から持株会社制に移行する予定であり、2021年10月からは現行のカンパニー制を廃止。組織を再編し、バーチャル体制へと移行する。

 10月1日付のバーチャル体制では、オートモーティブ社はフイコサ・インターナショナル、車載システムズ事業部、HMIシステムズ事業部、インフォテインメントシステムズ事業部で構成。オートモーティブ社社長兼CEOにはパナソニック常務執行役員の永易正吏氏(現オートモーティブ社社長)が就く。また、2022年4月以降は、パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社となる。

2021年10月からのグループ体制
2022年4月以降のグループ体制(予定)