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トヨタ自動車 豊田社長、オートポリスで水素の「つくる」を紹介 大林組の地熱発電など九州産の水素でカローラが走る
2021年8月1日 05:05
オートポリスでトヨタ、大林組がそろって会見
トヨタ自動車は7月31日、カーボンニュートラル社会実現に向けて開発中の水素エンジンを搭載したカローラ(水素カローラ)で参戦中のスーパー耐久第4戦オートポリスにおいて記者会見を行なった。登壇したのは、水素カローラのドライバーでもあるモリゾウ選手ことトヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏、GAZOO Racing Company プレジデント 佐藤恒治氏、トヨタ自動車九州 代表取締役社長 永田理氏、大林組 代表取締役社長 蓮輪賢治氏の4名。質疑応答では次戦の鈴鹿戦で水素輸送に携わる川崎重工業 代表取締役 社長執行役員兼CEO 橋本康彦氏も加わった。
豊田章男社長は、「前回の富士24時間レース、スーパー耐久において、私どもルーキーレーシングはGazooレーシングとともに、水素エンジンで参加をさせていただきました。これはまさにカーボンニュートラルに自動車技術の選択肢を与えようというようなことを、意思ある情熱と行動で示した活動だったと思っております」とあいさつ。24時間レースに水素エンジン搭載カローラで参戦することによって、多くの人に注目され、カーボンニュートラル社会の選択肢に興味を持ってもらえたと語った。
豊田社長は、この富士24時間での活動を、水素の「つかう」という活動だと紹介。カーボンニュートラルに対応可能な水素エネルギー社会を築くためには、水素の「つくる」「はこぶ」「つかう」が大切だとし、その出口である「つかう」を水素カローラのレース参戦という「意思ある情熱と行動」で示したことが、オートポリス参戦につながったという。
このオートポリス参戦での水素のテーマは「つくる」。前回の富士24時間レースの参戦では、福島県浪江町のFH2Rで製造された再生エネルギー由来のグリーン水素を全量使用していたが、今回はオートポリスのある九州で作られた水素を50%使う。
その1つが、トヨタ自動車九州の宮田工場で作られたグリーン水素。この水素は、トヨタ自動車九州の各屋根に設置された太陽光発電パネルで発電された電気で製造された水素で、再生エネルギー由来のグリーン水素となる。トヨタ自動車九州の宮田工場では、この電気でレクサス車の生産を行なっているほか、グリーン水素によって16台のFCEV(燃料電池)フォークリフトを運用している。その水素をオートポリスに持ってきた。
もう1つが、大林組が手がける大分県九重町の地熱発電で製造されたグリーン水素になる。
この地熱発電由来の水素がオートポリス戦に供給されるきっかけとなったのがトヨタ自動車九州の存在。トヨタ自動車九州では、自社の太陽光発電パネルの電気で製造された水素をFCEVフォークリフトや定置型燃料電池発電機に使っている。その中で、大林組がグリーン水素を同じ九州の大分県九重町で生産していることからトヨタ自動車九州で購入することになったと、永田社長はいう。
そこへトヨタ自動車からオートポリス戦でグリーン水素供給の要望があり、大林組も一緒にということになった。
大林組が大分県で取り組む地熱発電による水素製造
大林組の蓮輪社長は、建設会社の大林組が水素製造に携わるきっかけを紹介。大林組では再生可能エネルギーによる発電に注目しており、まずは地熱発電をやってみようということになったとし、大分地熱開発の協力を得て国内初の地熱を使ったグリーン水素製造プラントを設置。電気を水素に変えてためることによるエネルギーの地産地消に取り組んでいる。
大林組 蓮輪社長によると、山の中にあるこの地熱発電設備では、発電した電気をそのまま系統連系などの配電網に接続するには、山の中まで配電網を作り上げるなど投資額の問題が発生してくるとのこと。地熱発電で発電した電力を水素に変換することで、水素という形でエネルギーを販売することが可能になる。
ただ、このグリーン水素プランドの悩みは水素を「つくる」はできたものの、その水素を使ってもらえる場所がなかったこと。トヨタ自動車九州という水素需要家と結びついたことで水素の販売が確保でき、現場の技術者のモチベーションも上がっているという。
この蓮輪社長の発言を引き取り、豊田社長は日本のグリーン水素について語る。
再生可能エネルギーによって作られる日本のグリーン水素の多くは太陽光で発電しており、太陽光によって発電する以上、1日24時間の半分以下の発電になる。一方、大林組のような地熱発電であれば1日中発電でき、また天候の影響も受けづらい。このようなメリットのある地熱発電由来の水素を水素カローラで使うことで、地熱発電由来の水素が知られることにもなり、エネルギーの選択肢の幅を広げたのではないかと語る。
「自工会会長の会見などのときに申しておりますように、自動車業界をペースメーカーにお使いいただきたいと言っております。ペースメーカーの意味は、自動車だと今回のように充電時間はこのぐらいの方がいいですよとか、燃費をもう少し上げてくださいねとか、いろんな技術課題が出てまいりますし、いろいろ解決しなければいけない。課題が自動車というものを軸にすると分かりやすくなった」(豊田社長)といい、実際に水素を使う場を作ることで、水素エネルギーの課題も見えてくる。
「つくる、はこぶ、つかう。つかう側をペースメーカーにすることで、つくる側もはこぶ側も、そのペースに合わせて一緒に再生可能の世界を作り上げることができていくのではないかと思います」(豊田社長)と、自動車業界の活用を訴えた。
また、豊田社長によると地熱エネルギーを持つ地域は環太平洋に多く、日本はアメリカ、インドネシアに次ぐ世界で第3位の熱エネルギー埋蔵量があるという。ただし、活用は世界で第10位。エネルギー資源小国である日本にとって熱エネルギーは可能性があるものの、活用が進んでいないと語った。
その大きな理由については、大林組 蓮輪社長も異口同音に語ったように、地熱エネルギーのポテンシャルのある場所は国立公園や国定公園に集中しており、保護と開発の問題に突き当たる。国や自治体を含めての取り組みになるとの見方を示した。
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鈴鹿では水素エネルギーの「はこぶ」がテーマ。川崎重工業が参加
この会見の冒頭、豊田社長が明かしたのは次戦である鈴鹿戦に向けたのプラン。水素カローラは富士24時間レースで水素を「つかう」という実例を示し、このオートポリス戦で太陽光発電に加え地熱発電での水素を「つくる」という実例を示した。
9月18日~19日に開催される第5戦鈴鹿では、水素の「はこぶ」を見てほしいという。その「はこぶ」に加わったのが川崎重工業。バイクのカワサキでも知られる川崎重工は、水素の「つくる」「はこぶ」「つかう」のすべてを手がける企業。その川崎重工が鈴鹿サーキットにおいて、トヨタと一緒に水素の「つかう」を見せてくれるという。
会見の最後に豊田社長は、国に要望することを3つ挙げてくださいという質問に答える形で、カーボンニュートラルの現状に対する思いを語った。
「まずは仲間を増やしましょうよということにつきると思います。2番目の要望は、カーボンニュートラルを正しく理解していただきたい。3番目の要望は、達成への道のりの順番を間違えないようにいただきたい。この3つにつきると思います」。
「3つ目のところにちょっと補足させていただきますと、カーボンニュートラルに取り組むに当たっての敵は炭素です。決して内燃機関ではないと。順番として今、内燃機関が敵かのごとく、内燃機関をやめさせましょうということをおっしゃる方が多いですが、敵は炭素じゃないのかなというふうに思っております。そして、これが正解ですというものが今は見つかっていないと思います。正解がないときに選択肢を狭め、これがあたかも正解かのごとく持ってくるやり方ではなくて、今は多くの選択肢を与え、選択肢のどこに可能性が出てくるか分かりませんので、ぜひともそのサポートをお願いしたい」と、会見を結んだ。
スーパー耐久への水素カローラの参戦だけを見ていると、あたかもトヨタ自動車が水素燃焼エンジンだけにかけているように見えるが、多くの人がご存じのようにトヨタはHEV、PHEV、BEV、FCEVと世界最大の電動化車両販売メーカーだ。HEVが電動化かどうかは政治的な側面はともかく、技術的にはPHEVもHEVもそれほど大きな違いはないだろう。
さらにトヨタは、先日の新型アクアで示したようにリチウムイオンバッテリを体積エネルギー効率で超えるバイポーラ型ニッケル水素バッテリを世界で初めて実用化した。その上、次世代のバッテリとして注目されている全固体電池の研究で世界的にトップクラスに位置している。また、CO2を固定する人工光合成においても世界最高の太陽光変換効率7.2%を実現したのは記憶に新しい。
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豊田中央研究所、人工光合成で世界最高の太陽光変換効率7.2%を実現
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1320520.html
トヨタはカーボンニュートラルの選択肢を増やすべく努力し、さらにその社長は内燃機関の可能性を広げるために、意思ある情熱と行動で水素タンクを背負ってレースに参戦している。その結果として、大林組、川崎重工などカーボンニュートラル社会を切り開く仲間が一人一人増えている。
そんな思いを背負って走る水素カローラの決勝レースは、8月1日11時にスタートする。YouTubeでのライブ配信も行なわれる予定だ。