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24時間レース中にカイゼンされた水素カローラの「給水素」 オートポリスでもトヨタのカイゼンが見られるのか?
2021年7月30日 09:32
水素充填イベント、「給水素」が九州にやってくる
7月31日~8月1日の2日間にわたって大分県日田市で開催されるスーパー耐久第4戦オートポリスに、水素燃焼エンジンを搭載する32号車 ORC ROOKIE Corolla H2 concept(以下、水素カローラ)が参戦することがエントリーリストで公表されている。
この水素カローラは。トヨタ自動車が多様なカーボンニュートラル社会のあり方を実証するために参戦している車両で、圧縮水素を燃料電池スタックで電気に変えて走る「MIRAI」のようなFCEVではなく、水素を直接燃やす内燃機関を搭載しているのが特徴になる。ベースとなっているのはGRヤリスに搭載されている直列3気筒 1.6リッター直噴ターボ G16E-GTS型エンジンで、そこから燃料噴射装置などの変更で水素を燃やして走ることに成功している。
もちろん難点もたくさんあり、この水素の燃焼コントロールが難しいほか、燃料としての圧縮水素を搭載するスペースが結構必要なこと、レーシングスピードではガソリンに比べて給水素(水素充填)のために多くのピットイン回数が必要なことなどだろう。
実際、5月末に全長4563mの富士スピードウェイで行なわれた富士24時間レースでは、約10周ほどでピットイン。1軒目、2軒目と表現される圧縮水素搭載トラックから、給水素を行なっていた。
富士24時間レースでモリゾウ選手が給水素 水素社会の幕開けを見る
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1326374.html
その給水素タイムは、24時間レース開始から約2時間後の時点で行なったピットインでは5分39秒。5分39秒で給水素をすれば、約10周富士スピードウェイをレーシングスピードで走ることが可能な燃費を実現していた。
これはSUPER GTで見られるようなガソリンの燃料補給に比べて長い時間となるが、バッテリのみで走る電気自動車、つまりBEVで行なわれている充電時間と比べると短い時間と言える。
水素充填が珍しいイベントであるととらえると、約5分の時間であれば最低ピットイン時間としてルールで隠蔽することも可能で、すでに何らかの可能性は示している時間になっている。
24時間レースの間にカイゼンされた給水素時間、5時間レースでは何が見られるのか?
すでに約5分という給水素時間により何らかの可能性は見せている水素充填作業だが、トヨタはレースという場を使ってそれを進化させようとしている。
水素カローラは新型ミライで使われている水素タンクの全長サイズ変更版を使っている。これは70MPa仕様の水素タンクで、ここにトラックに搭載された水素タンクとの圧力差を使って給水素して行くことになる。1軒目、2軒目として配置された給水素トラックも工夫の一つで、2台のトラックを使うことで圧力差の減少による給水素時間の増大を防ごうとしている。1軒目である程度給水素してトラックの圧力が下がったら(圧力差が小さくなったら)2軒目に移動して給水素するといった具合だ。
この工夫により、レース開始から2時間後の時点で5分39秒の給水素時間を達成していた訳だ。
しかし、驚くべきはトヨタのカイゼン力。なにをどのようにカイゼンしたのか不明だが、レース開始後23時間を経過した時点でのピットインによる給水素時間は約5分5秒と、34秒短縮されていた。339秒から305秒への短縮なので、レース中に約12%給水素時間を短縮したことになる。
この短縮は、1軒目給水素時間、1軒目→2軒目移動時間、2軒目給水素時間の3つの時間短縮の蓄積によって実現されており、各工程のすべてでなんらかのカイゼンが行なわれていた結果だろう。
今回水素カローラが参戦するオートポリスのコース全長は4674mと富士スピードウェイより約100mほど長くなり、アップダウンも含めると富士よりも1周の燃費が厳しいサーキットになると思われる。
ただし、24時間レースから5時間レースへとよりスプリントレースになることで工夫できる点もあるだろうし、富士24時間レースの知見を活かしてカイゼンされた点もあるだろう。
水素カローラが満水素で何周走るのか? 給水素に何秒かかるのか? そんな見所の多いトヨタの水素チャレンジとなる。
水素カローラの開発を担当するGAZOO Racing Company President 佐藤恒治氏は、富士24時間レース後の会見でオートポリスのほか鈴鹿戦や岡山戦への参戦意欲も見せており、各地でのアップデート具合も楽しみとなる。