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水素カローラ、スーパー耐久オートポリス参戦か? 鈴鹿、岡山も検討中

2021年5月21日~23日 開催

水素カローラの次戦について語ったトヨタ自動車株式会社 GAZOO Racing Company President 佐藤恒治氏

 富士24時間レース終了後、トヨタ自動車による会見が実施された。会見にはモリゾウ選手こと同社 社長 豊田章男氏、水素カローラの開発を担当するGAZOO Racing Company President 佐藤恒治氏、32号車のドライバーたちが出席し、報道陣の質問に答えた。

 水素カローラは無事24時間レースを走りきったのだが、その会見の中で佐藤 GRカンパニープレジデントは「次のレースでは改善を行なっていきたい」との発言を行なった。今回は、24時間の耐久レースだったが、次戦の第4戦 TKU スーパー耐久レース in オートポリスは5時間の耐久レース。こちらにもエントリーしていくというのだ。

 さらに、モリゾウ選手が補足する。「スーパー耐久が開催されるサーキットで、もっとも(水素ステーションを展開する)ゆとりがあるが富士スピードウェイになります。今回見ていただいたように相当大きな場所を必要としますので、今後、オートポリス、岡山・鈴鹿と残された3戦、水素ステーションをどう位置づけていくかは今後話し合ってまわりたい」と、残る3戦へ水素カローラで参戦する意欲を示した。

 つまり、水素自動車を開発するトヨタ自動車にとって、水素自動車をレースに参加させるルーキーレーシングにとって、富士24時間レースの完走はゴールではなかったことになる。

 このレース期間中モリゾウ選手は、水素社会を見てほしいと常々語っていた。その水素社会での戦いを見るチャンスを各地域に広げていくことになる。

鈴鹿や岡山についても言及するモリゾウ選手。トヨタ自動車の社長でもあるのだが、鈴鹿サーキットには短パンで現われる地元のレース好きでもある

 もちろん、7月31日~8月1日開催のオートポリスは大分県にあり、レクサスを生産する宮田工場など、トヨタの一大生産拠点は九州になる。もちろん日産の工場など自動車産業関係者が多く住んでいる地域だ。その次の9月18日~19日開催の鈴鹿については説明不要。さらに最終戦となる11月13日~14日の岡山については、自動車関係者もそうだが、水島コンビナートに代表される日本のエネルギー化学の一大生産拠点となっている。

 ある意味、カーボンニュートラルや水素社会に転換するにあたって大きな影響がある地域でもあり、水素エンジンで走る自動車への興味が大きな地域であることが予想される。モリゾウ選手が語っていたように、移動式水素ステーションの設置が課題だが、今後カーボンニュートラルや水素社会を迎えるにあたって、水素の運用実績は地域の大きな財産になるだろう。

 これまでの発言を見ていると、ルーキーレーシングのチームオーナーとしての豊田氏は、ルーキーレーシングを純粋にレースの勝ち負けにこだわったGAZOO Racingと異なり、カーボンニュートラル社会の実験チームへ位置づけようとしているように見える。

 いずれにしろ、オートポリス、鈴鹿、岡山への水素カローラの正式参戦はこれからとなる。水素カローラを、そして水素社会を地元で見たいという声が大きければ、きっとモリゾウ選手&佐藤プレジデントの交渉もうまくいくだろう。そんな会見でのサプライズ発表だった。

水素エンジン搭載カローラ。世界でも初の実用レーシング水素マシン。富士の最速タイムは2分4秒台