ニュース
ホンダF1 田辺TD、レッドブルは2戦連続のもらい事故で今後のPUやりくりに影響も 2台のアルファタウリが入賞したことは「よいこと」
2021年8月27日 05:13
F1 第11戦 ハンガリーGPの決勝レースが8月1日(現地時間)に行なわれ、アルピーヌ・ルノーのエステバン・オコン選手が優勝するという劇的な展開で幕を閉じた。その後、F1産業全体がレギュレーションで定められたオフィスシャットダウンによる夏休み期間に入っていたため、次のレースは8月27日~8月29日の第12戦 ベルギーGP(スパ・フランコルシャン・サーキット)となる。
そうした前半戦最後のレースとなったハンガリーGPだが、バルテリ・ボッタス選手がランド・ノリス選手に追突した事故から引き起こされた混乱に上位勢の多くが巻き込まれ、その中には予選3位のマックス・フェルスタッペン選手と予選4位のセルジオ・ペレス選手という2台のレッドブル・ホンダが含まれていた。フェルスタッペン選手は右側の空力パーツやフロアなどを破損したまま走ることになり、10位に入り1ポイントを獲得するのが精いっぱいで、ペレス選手に関しては事故後も走り続けたが、クラッシュによりパワーユニットなどにもダメージが及んでいることがデータからも分かり、オープニングラップでリタイアと散々な結果に終わってしまった。
これで、フェルスタッペン選手はドライバー選手権のリードを、レッドブルはコンストラクターズ選手権のポイントリーダーの座を失って夏休みに突入することになった。
その一方で、姉妹チームのアルファタウリ・ホンダは、ピエール・ガスリー選手が5位(ゴール時は6位だったが、2位でゴールしたセバスチャン・ベッテル選手が燃料チェックに必要な規定のサンプルを取得できなかったとして失格処分になり繰り上がった)、角田裕毅選手が6位(ゴール時は7位だったが、同様の理由で繰り上がり)という結果になり、2台ともにポイントを獲得するといういい形で前半戦を終えることになり、ホンダパワーユニット勢としては悲喜こもごもの結果となった。
レース後にはそうしたホンダF1活動の技術的な側面を統括するホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏によるオンライン会見が行なわれた。今週末にベルギーGPが開幕直前とはなったが、ハンガリーGP後の田辺TDの会見をお届けする。
F1第11戦ハンガリーGP、スタート・リスタートでの大混乱を経てアルピーヌ・ルノーのオコンが初優勝、角田6位入賞
ボッタス選手追突による事故に巻き込まれたレッドブルの2台、ペレス選手の2基目のパワーユニットも使えない可能性が大に
──それでは田辺TDから今日のレースの振り返りを。
田辺氏:レースの開始直後に波乱が起きたレースだった。予報ではもう少し後になるハズだったが、レースの開始直前から雨が降り出してきて、一時は土砂降りになり、その影響で1コーナーにおいて多重クラッシュが発生した。それにマックス・フェルスタッペン選手とセルジオ・ペレス選手が巻き込まれることになり、ペレス選手はリタイアに、フェルスタッペン選手は戻ってきてできるだけの修復をしてレースに戻ったが、ダメージを負ったマシンでペースは上がらずに10位の1ポイントをなんとか獲得した。
アルファタウリの角田選手はスタートの混乱に巻き込まれず順位を上げることに成功し、ガスリー選手ともどもレースをきっちり走りきった。角田選手はかなり長いスティントをこなして、最後ヒヤッとする場面もあったが、ガスリー選手が5位、角田選手が6位と2台ともポイントを獲得した。(コンストラクターズランキングでアルファタウリよりも下位だったアルピーヌが上位入賞したため)ランキングでは後退してしまったが、混戦が続く中段グループの中で2人ともにポイントを持って帰ってきたのはよいことだ。特にガスリー選手は最後にファステストラップをマークして、ハミルトン選手から1ポイント奪い返したのはレッドブルグループにとってはいいチームプレイだったと思う。
これからサマーシャットダウンに入るため、いい形のレースをして、気持ちよく夏休みをすごして後半に向かいたいと言ってきたが、前戦に続いてレッドブルにしてはフラストレーションがたまるレースになってしまった。その一方アルファタウリは2台とも完走してポイントを持ち帰ることができた。その意味では半々で、完全に気分よくとはいかないが、サマーシャットダウンに入る前に、HRD Sakuraとミルトンキーンズ(ホンダF1のイギリスの本拠地)とがしっかりコミュニケーションをとって、2週間の夏休みで気持ちも体もリフレッシュして後半戦に臨んでいきたい。
──今回はレース前にフェルスタッペン選手のパワーユニットに前戦の大クラッシュの影響と見られるクラックが発見され、パワーユニット交換を行なっている。具体的にいつ頃それが見つかって、それは目視で見つかったのか、それともデータ上で見つかったのか?
田辺氏:予選後にマシンがガレージに戻ってきてから、通常の手順としてカウルを明けてパワーユニットまわりをチェックしている時に発見した。予選前も確認していたけれど、問題はなかったのだが、予選後に同じ所を確認するとクラックが入ってオイルがにじみ出てきていた。それらは見て分かるレベルで、データ上で出るようなものではなかった。金曜日、土曜日までは使えたけれど、日曜日のレースに向けて継続使用は危険と判断し、3基目の投入を決断した。
前回のクラッシュで足まわり、ギヤボックス、モノコック、そしてパワーユニットにもダメージはあったが、傷ついたパーツで交換できるものは全て交換した。ストレスがかかった部分、例えばギヤボックスとの締結地点などはFIAによるシール(封印)されている部分なので、中の状況を見たりすることはできなかった。そうした制約がある中でチェックしてオッケーを出したが、ストレスがかかっていることは分かっていたので、その辺りを入念に見ている中で確認された。
──交換されたICE(内燃エンジン)などは今後のレースで使えるのか?
田辺氏:まだ分からない。HRD Sakuraに送り返して、クラックの状況と入った位置などを確認して、進展具合をチェックしていく。部品交換に関してはまったくできない部位なので、外から補習できるかを試みて、使えるか使えないかを判断していく。かなり厳しいのではないかという感触はある。
──今回はICEだけでなく、MGU-HやMGU-K(エネルギー回生システム)などに関しても併せて交換したのはなぜか?
田辺氏:時間があればICEだけという選択肢もあったかもしれないが、今回は予選後というタイミングだったこともあり、HRD Sakuraから送られてきた3基目のアッシーとしてのパワーユニットを全交換した。
──予選前までに見つけられず、走らせても影響がなかったのが、予選後に発見されたのはまれなことなのか? このタイミングで見つけられたのは、レース中に出なくて最悪の結果にはならなくてよかったという感じなのか?
田辺氏:今回の例で言うと、予選だから(高負荷がかかり)発生したという訳ではない。木曜日の時点で、2基目のパワーユニットを継続すると発表して、その時に見つかっていないダメージがあってボディーブローのように効いてくるかもしれないという話をしたが、こんなに早くできるとは思っていなかった。
レースの結果(スタートでもらい事故で車体にダメージを負って10位に終わったこと)は置いておくとしても、予選後に見つかったことはラッキーだと捉えるしかない。もしもそのダメージを負ったパワーユニットを使い続けていて、レース中にそれが進展していたとなると、機能障害をレース中に起こして不安定になったり、事故につながったりも考えられるのでラッキーだったと思うしかないと思う。
ただ、結果(スタートでのもらい事故と10位にしかなれなかったこと)を考えると、うーんと言うほかない。(せっかく)3基目の新しいパワーユニットを入れたのにそうした結果に終わってしまったのはやや残念だった。
──ペレスのパワーユニットに関しても今後交換しないとだめそうか?
田辺氏:HRD Sakuraに戻して確認しないと分からないが、すでにデータ上に出てきている部分もある。結構厳しいかもしれないという感じだ。もらい事故なので……(以下無言のまま終了)。
F1第11戦ハンガリーGP 決勝結果
順位 | 号車 | ドライバー | 車両 | 周回数 | タイム | ポイント |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 31 | エステバン・オコン | アルピーヌ・ルノー | 70 | 2時間4分43秒199 | 25 |
DQ | 5 | セバスチャン・ベッテル | アストンマーティン・メルセデス | 70 | +1.859秒 | 0 |
2 | 44 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 70 | +2.736秒 | 18 |
3 | 55 | カルロス・サインツ | フェラーリ | 70 | +15.018秒 | 15 |
4 | 14 | フェルナンド・アロンソ | アルピーヌ・ルノー | 70 | +15.651秒 | 12 |
5 | 10 | ピエール・ガスリー | アルファタウリ・ホンダ | 70 | +63.614秒 | 11 |
6 | 22 | 角田裕毅 | アルファタウリ・ホンダ | 70 | +75.803秒 | 8 |
7 | 6 | ニコラス・ラティフィ | ウイリアムズ・メルセデス | 70 | +77.910秒 | 6 |
8 | 63 | ジョージ・ラッセル | ウイリアムズ・メルセデス | 70 | +79.094秒 | 4 |
9 | 33 | マックス・フェルスタッペン | レッドブル・レーシング・ホンダ | 70 | +80.244秒 | 2 |
10 | 7 | キミ・ライコネン | アルファロメオ・レーシング・フェラーリ | 69 | +1周 | 1 |
11 | 3 | ダニエル・リカルド | マクラーレン・メルセデス | 69 | +1周 | 0 |
12 | 47 | ミック・シューマッハ | ハース・フェラーリ | 69 | +1周 | 0 |
13 | 99 | アントニオ・ジョビナッツィ | アルファロメオ・レーシング・フェラーリ | 69 | +1周 | 0 |
NC | 9 | ニキータ・マゼピン | ハース・フェラーリ | 3 | DNF | 0 |
NC | 4 | ランド・ノリス | マクラーレン・メルセデス | 2 | DNF | 0 |
NC | 77 | バルテリ・ボッタス | メルセデス | 0 | DNF | 0 |
NC | 11 | セルジオ・ペレス | レッドブル・レーシング・ホンダ | 0 | DNF | 0 |
NC | 16 | シャルル・ルクレール | フェラーリ | 0 | DNF | 0 |
NC | 18 | ランス・ストロール | アストンマーティン・メルセデス | 0 | DNF | 0 |
ドライバーランキング(F1第11戦ハンガリーGP終了後)
順位 | ドライバー | 国 | 車両 | ポイント |
---|---|---|---|---|
1 | ルイス・ハミルトン | GBR | メルセデス | 195 |
2 | マックス・フェルスタッペン | NED | レッドブル・レーシング・ホンダ | 187 |
3 | ランド・ノリス | GBR | マクラーレン・メルセデス | 113 |
4 | バルテリ・ボッタス | FIN | メルセデス | 108 |
5 | セルジオ・ペレス | MEX | レッドブル・レーシング・ホンダ | 104 |
6 | カルロス・サインツ | ESP | フェラーリ | 83 |
7 | シャルル・ルクレール | MON | フェラーリ | 80 |
8 | ピエール・ガスリー | FRA | アルファタウリ・ホンダ | 50 |
9 | ダニエル・リカルド | AUS | マクラーレン・メルセデス | 50 |
10 | エステバン・オコン | FRA | アルピーヌ・ルノー | 39 |
11 | フェルナンド・アロンソ | ESP | アルピーヌ・ルノー | 38 |
12 | セバスチャン・ベッテル | GER | アストンマーティン・メルセデス | 30 |
13 | 角田裕毅 | JPN | アルファタウリ・ホンダ | 18 |
14 | ランス・ストロール | CAN | アストンマーティン・メルセデス | 18 |
15 | ニコラス・ラティフィ | CAN | ウイリアムズ・メルセデス | 6 |
16 | ジョージ・ラッセル | GBR | ウイリアムズ・メルセデス | 4 |
17 | キミ・ライコネン | FIN | アルファロメオ・レーシング・フェラーリ | 2 |
18 | アントニオ・ジョビナッツィ | ITA | アルファロメオ・レーシング・フェラーリ | 1 |
19 | ミック・シューマッハ | GER | ハース・フェラーリ | 0 |
20 | ニキータ・マゼピン | RAF | ハース・フェラーリ | 0 |
コンストラクターランキング(F1第11戦ハンガリーGP終了後)
順位 | チーム | ポイント |
---|---|---|
1 | メルセデス | 303 |
2 | レッドブル・レーシング・ホンダ | 291 |
3 | フェラーリ | 163 |
4 | マクラーレン・メルセデス | 163 |
5 | アルピーヌ・ルノー | 77 |
6 | アルファタウリ・ホンダ | 68 |
7 | アストンマーティン・メルセデス | 48 |
8 | ウイリアムズ・メルセデス | 10 |
9 | アルファロメオ・レーシング・フェラーリ | 3 |
10 | ハース・フェラーリ | 0 |