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ホンダF1 田辺TD、レッドブルは2戦連続のもらい事故で今後のPUやりくりに影響も 2台のアルファタウリが入賞したことは「よいこと」

角田裕毅選手を後ろに従えて走行するアルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリー選手

 F1 第11戦 ハンガリーGPの決勝レースが8月1日(現地時間)に行なわれ、アルピーヌ・ルノーのエステバン・オコン選手が優勝するという劇的な展開で幕を閉じた。その後、F1産業全体がレギュレーションで定められたオフィスシャットダウンによる夏休み期間に入っていたため、次のレースは8月27日~8月29日の第12戦 ベルギーGP(スパ・フランコルシャン・サーキット)となる。

 そうした前半戦最後のレースとなったハンガリーGPだが、バルテリ・ボッタス選手がランド・ノリス選手に追突した事故から引き起こされた混乱に上位勢の多くが巻き込まれ、その中には予選3位のマックス・フェルスタッペン選手と予選4位のセルジオ・ペレス選手という2台のレッドブル・ホンダが含まれていた。フェルスタッペン選手は右側の空力パーツやフロアなどを破損したまま走ることになり、10位に入り1ポイントを獲得するのが精いっぱいで、ペレス選手に関しては事故後も走り続けたが、クラッシュによりパワーユニットなどにもダメージが及んでいることがデータからも分かり、オープニングラップでリタイアと散々な結果に終わってしまった。

 これで、フェルスタッペン選手はドライバー選手権のリードを、レッドブルはコンストラクターズ選手権のポイントリーダーの座を失って夏休みに突入することになった。

 その一方で、姉妹チームのアルファタウリ・ホンダは、ピエール・ガスリー選手が5位(ゴール時は6位だったが、2位でゴールしたセバスチャン・ベッテル選手が燃料チェックに必要な規定のサンプルを取得できなかったとして失格処分になり繰り上がった)、角田裕毅選手が6位(ゴール時は7位だったが、同様の理由で繰り上がり)という結果になり、2台ともにポイントを獲得するといういい形で前半戦を終えることになり、ホンダパワーユニット勢としては悲喜こもごもの結果となった。

 レース後にはそうしたホンダF1活動の技術的な側面を統括するホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏によるオンライン会見が行なわれた。今週末にベルギーGPが開幕直前とはなったが、ハンガリーGP後の田辺TDの会見をお届けする。

F1第11戦ハンガリーGP、スタート・リスタートでの大混乱を経てアルピーヌ・ルノーのオコンが初優勝、角田6位入賞

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1341559.html

ボッタス選手追突による事故に巻き込まれたレッドブルの2台、ペレス選手の2基目のパワーユニットも使えない可能性が大に

ホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏。画像は開幕戦バーレーンGP時

──それでは田辺TDから今日のレースの振り返りを。

田辺氏:レースの開始直後に波乱が起きたレースだった。予報ではもう少し後になるハズだったが、レースの開始直前から雨が降り出してきて、一時は土砂降りになり、その影響で1コーナーにおいて多重クラッシュが発生した。それにマックス・フェルスタッペン選手とセルジオ・ペレス選手が巻き込まれることになり、ペレス選手はリタイアに、フェルスタッペン選手は戻ってきてできるだけの修復をしてレースに戻ったが、ダメージを負ったマシンでペースは上がらずに10位の1ポイントをなんとか獲得した。

スタート時に1コーナーに入るマックス・フェルスタッペン選手、セルジオ・ペレス選手、この後ボッタス選手に追突されてコントロールを失ったマクラーレンのランド・ノリス選手の車両と激しくクラッシュした

 アルファタウリの角田選手はスタートの混乱に巻き込まれず順位を上げることに成功し、ガスリー選手ともどもレースをきっちり走りきった。角田選手はかなり長いスティントをこなして、最後ヒヤッとする場面もあったが、ガスリー選手が5位、角田選手が6位と2台ともポイントを獲得した。(コンストラクターズランキングでアルファタウリよりも下位だったアルピーヌが上位入賞したため)ランキングでは後退してしまったが、混戦が続く中段グループの中で2人ともにポイントを持って帰ってきたのはよいことだ。特にガスリー選手は最後にファステストラップをマークして、ハミルトン選手から1ポイント奪い返したのはレッドブルグループにとってはいいチームプレイだったと思う。

 これからサマーシャットダウンに入るため、いい形のレースをして、気持ちよく夏休みをすごして後半に向かいたいと言ってきたが、前戦に続いてレッドブルにしてはフラストレーションがたまるレースになってしまった。その一方アルファタウリは2台とも完走してポイントを持ち帰ることができた。その意味では半々で、完全に気分よくとはいかないが、サマーシャットダウンに入る前に、HRD Sakuraとミルトンキーンズ(ホンダF1のイギリスの本拠地)とがしっかりコミュニケーションをとって、2週間の夏休みで気持ちも体もリフレッシュして後半戦に臨んでいきたい。

序盤5位を走行した角田選手、マシンのバランスなどが決まらない中だったが、6位と自己最高位を記録してポイントを獲得

──今回はレース前にフェルスタッペン選手のパワーユニットに前戦の大クラッシュの影響と見られるクラックが発見され、パワーユニット交換を行なっている。具体的にいつ頃それが見つかって、それは目視で見つかったのか、それともデータ上で見つかったのか?

田辺氏:予選後にマシンがガレージに戻ってきてから、通常の手順としてカウルを明けてパワーユニットまわりをチェックしている時に発見した。予選前も確認していたけれど、問題はなかったのだが、予選後に同じ所を確認するとクラックが入ってオイルがにじみ出てきていた。それらは見て分かるレベルで、データ上で出るようなものではなかった。金曜日、土曜日までは使えたけれど、日曜日のレースに向けて継続使用は危険と判断し、3基目の投入を決断した。

 前回のクラッシュで足まわり、ギヤボックス、モノコック、そしてパワーユニットにもダメージはあったが、傷ついたパーツで交換できるものは全て交換した。ストレスがかかった部分、例えばギヤボックスとの締結地点などはFIAによるシール(封印)されている部分なので、中の状況を見たりすることはできなかった。そうした制約がある中でチェックしてオッケーを出したが、ストレスがかかっていることは分かっていたので、その辺りを入念に見ている中で確認された。

──交換されたICE(内燃エンジン)などは今後のレースで使えるのか?

田辺氏:まだ分からない。HRD Sakuraに送り返して、クラックの状況と入った位置などを確認して、進展具合をチェックしていく。部品交換に関してはまったくできない部位なので、外から補習できるかを試みて、使えるか使えないかを判断していく。かなり厳しいのではないかという感触はある。

──今回はICEだけでなく、MGU-HやMGU-K(エネルギー回生システム)などに関しても併せて交換したのはなぜか?

田辺氏:時間があればICEだけという選択肢もあったかもしれないが、今回は予選後というタイミングだったこともあり、HRD Sakuraから送られてきた3基目のアッシーとしてのパワーユニットを全交換した。

──予選前までに見つけられず、走らせても影響がなかったのが、予選後に発見されたのはまれなことなのか? このタイミングで見つけられたのは、レース中に出なくて最悪の結果にはならなくてよかったという感じなのか?

田辺氏:今回の例で言うと、予選だから(高負荷がかかり)発生したという訳ではない。木曜日の時点で、2基目のパワーユニットを継続すると発表して、その時に見つかっていないダメージがあってボディーブローのように効いてくるかもしれないという話をしたが、こんなに早くできるとは思っていなかった。

 レースの結果(スタートでもらい事故で車体にダメージを負って10位に終わったこと)は置いておくとしても、予選後に見つかったことはラッキーだと捉えるしかない。もしもそのダメージを負ったパワーユニットを使い続けていて、レース中にそれが進展していたとなると、機能障害をレース中に起こして不安定になったり、事故につながったりも考えられるのでラッキーだったと思うしかないと思う。

 ただ、結果(スタートでのもらい事故と10位にしかなれなかったこと)を考えると、うーんと言うほかない。(せっかく)3基目の新しいパワーユニットを入れたのにそうした結果に終わってしまったのはやや残念だった。

──ペレスのパワーユニットに関しても今後交換しないとだめそうか?

田辺氏:HRD Sakuraに戻して確認しないと分からないが、すでにデータ上に出てきている部分もある。結構厳しいかもしれないという感じだ。もらい事故なので……(以下無言のまま終了)。

5位に入ったピエール・ガスリー選手は最終ラップにファステストラップをマークして、メルセデスのハミルトン選手から1ポイントを奪い、フェルスタッペン選手のダメージをより少なくした


F1第11戦ハンガリーGP 決勝結果

順位号車ドライバー車両周回数タイムポイント
131エステバン・オコンアルピーヌ・ルノー702時間4分43秒19925
DQ5セバスチャン・ベッテルアストンマーティン・メルセデス70+1.859秒0
244ルイス・ハミルトンメルセデス70+2.736秒18
355カルロス・サインツフェラーリ70+15.018秒15
414フェルナンド・アロンソアルピーヌ・ルノー70+15.651秒12
510ピエール・ガスリーアルファタウリ・ホンダ70+63.614秒11
622角田裕毅アルファタウリ・ホンダ70+75.803秒8
76ニコラス・ラティフィウイリアムズ・メルセデス70+77.910秒6
863ジョージ・ラッセルウイリアムズ・メルセデス70+79.094秒4
933マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・ホンダ70+80.244秒2
107キミ・ライコネンアルファロメオ・レーシング・フェラーリ69+1周1
113ダニエル・リカルドマクラーレン・メルセデス69+1周0
1247ミック・シューマッハハース・フェラーリ69+1周0
1399アントニオ・ジョビナッツィアルファロメオ・レーシング・フェラーリ69+1周0
NC9ニキータ・マゼピンハース・フェラーリ3DNF0
NC4ランド・ノリスマクラーレン・メルセデス2DNF0
NC77バルテリ・ボッタスメルセデス0DNF0
NC11セルジオ・ペレスレッドブル・レーシング・ホンダ0DNF0
NC16シャルル・ルクレールフェラーリ0DNF0
NC18ランス・ストロールアストンマーティン・メルセデス0DNF0



ドライバーランキング(F1第11戦ハンガリーGP終了後)

順位ドライバー車両ポイント
1ルイス・ハミルトンGBRメルセデス195
2マックス・フェルスタッペンNEDレッドブル・レーシング・ホンダ187
3ランド・ノリスGBRマクラーレン・メルセデス113
4バルテリ・ボッタスFINメルセデス108
5セルジオ・ペレスMEXレッドブル・レーシング・ホンダ104
6カルロス・サインツESPフェラーリ83
7シャルル・ルクレールMONフェラーリ80
8ピエール・ガスリーFRAアルファタウリ・ホンダ50
9ダニエル・リカルドAUSマクラーレン・メルセデス50
10エステバン・オコンFRAアルピーヌ・ルノー39
11フェルナンド・アロンソESPアルピーヌ・ルノー38
12セバスチャン・ベッテルGERアストンマーティン・メルセデス30
13角田裕毅JPNアルファタウリ・ホンダ18
14ランス・ストロールCANアストンマーティン・メルセデス18
15ニコラス・ラティフィCANウイリアムズ・メルセデス6
16ジョージ・ラッセルGBRウイリアムズ・メルセデス4
17キミ・ライコネンFINアルファロメオ・レーシング・フェラーリ2
18アントニオ・ジョビナッツィITAアルファロメオ・レーシング・フェラーリ1
19ミック・シューマッハGERハース・フェラーリ0
20ニキータ・マゼピンRAFハース・フェラーリ0



コンストラクターランキング(F1第11戦ハンガリーGP終了後)


順位チームポイント
1メルセデス303
2レッドブル・レーシング・ホンダ291
3フェラーリ163
4マクラーレン・メルセデス163
5アルピーヌ・ルノー77
6アルファタウリ・ホンダ68
7アストンマーティン・メルセデス48
8ウイリアムズ・メルセデス10
9アルファロメオ・レーシング・フェラーリ3
10ハース・フェラーリ0