ニュース
ZF、ジェームズ・ボンドが駆るボンドカー「DB5」のために60年前の5速MTを限定復刻生産
2021年9月28日 11:35
- 2021年9月21日(現地時間) 発表
280個の部品すべてを最新の技術を使って復活
独ZFは9月21日(現地時間)、1950年代からのパートナーであるアストンマーティンからの依頼を受け、約60年前の名車「DB5」に搭載される5速MT(S5-325)を特別に復刻生産したと発表した。
このDB5は、コレクターやチャリティーのために限定25台のみ生産された車両で、映画「007」の主役であるジェームズ・ボンドが乗るマシンと同じガジェット(秘密兵器)が多数装備された「ゴールドフィンガー仕様」となっている。
今回アストンマーティンは、本物のフィルムカーを限定復刻生産するために、歴史的なスポーツトランスミッション(S5-325)の復刻生産をZFに依頼。ZFは280個にわたるすべての部品の生産に最新技術を駆使したという。
例えばシフトレバーまわりでは、3Dプリンターを使ってシフトレバーに射出座席を操作するケーブルを通すための直径2mmの穴が開けられ、さらにシフトノブには、発射ボタンを隠すための開閉蓋も備えたという。
S5-325型トランスミッションは、当時も数多くのスーパースポーツカーに搭載されていたスポーツトランスミッションで、5つの前進ギヤはすべてロックシンクロメッシュ式のため、経験の浅いドライバーでも、ギヤシフトの際にダブルクラッチの必要がなく、素早く安全で静かにギヤチェンジが行なえたという。また、ギヤ比に応じて、最大400Nmのトルクまで受け止められたとしている。
今回新たに再生産されたトランスミッションは、5つの前進ギヤと1つの後進ギヤで構成され、すべての前進ギヤにはZFのロックシンクロナイザーが組み込まれ、リバースギヤのみスライディング式となっている。前進ギヤのギヤペアは常に噛み合っていて、各ギヤの内の1つがシャフトにしっかりと固定され、ほかのギヤはローラーベアリングにより自由に回転できる状態となる。
シフトチェンジは、ギヤは噛み合い式クラッチのスライドスリーブをシフトすることでシャフトに結合され、駆動力は対応するギヤペアを介してタイヤに伝達される。リバースギヤでは、中間にあるリバースアイドルギヤのシフトにより、出力の回転方向が反転する。ロック機能により、確実に1つのギヤのみが噛み合う仕組みとなっている。また、スピードメーターを接続することも可能としている。
ギヤとシャフトはステンレス製だが、焼き入れにより耐久性を強化。ギヤは強化ベアリングにより回転し、ねじ歯車や研磨歯面などは高精度製造により、トランスミッションの静粛性も保たれているという。なお、このトランスミッションは、修理とオーバーホールも可能で、必要に応じてパーツの再生産も対応するとしている。