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ZF、電動化車両開発期間を半分にする「モジュラーeDriveキット」をIAA Mobilityで発表
2021年9月7日 06:30
- 2021年9月6日(現地時間) 開催
グローバルにビジネスを展開しているティアワンの部品メーカー「ZF(ゼットエフ)」は、ドイツ共和国ミュンヘンで行なわれている自動車ショー「IAA Mobility 2021」(以下IAA Mobility)において記者会見を開催し、同社CEOのウォルフ=ヘニング・シャイダー氏が同社の電動化車両(BEVやPHEVなど動力に電気を利用している車両の総称)に関する各種の製品群に関して説明を行なった。
この中でシャイダー氏は同社が「モジュラーeDriveキット」と呼んでいる電動化車両向けのソリューションを紹介し、ZFの強みであるパワートレーン、さらには冷却や潤滑システムの高効率化などを1パッケージとして提供し、自動車メーカーが電動化車両の電動ドライブを開発する期間を50%削減、つまり従来の半分の期間で開発することが可能になると発表した。
また、ZFは4月に行なわれた上海モーターショーで発表されたL2~L5までの自動運転をサポートするコンピュータモジュール「ZF ProAI supercomputer」を欧州で初公開した。ZF ProAI supercomputerはNVIDIAの「DRIVE Orin」を演算チップとして搭載しており、1000TOPs(Tera Ops Per Second)の性能を実現している。
自動車メーカーの電動化車両開発期間を半分にする「モジュラーeDriveキット」
ZF CEO ウォルフ=ヘニング・シャイダー氏は、同社がIAA Mobilityで開催した記者会見で「この記者会見は20分間の予定で行なうが、その20分の間に地球上では130台の電動化車両の新車が売れ、EU地域では128台の電動自転車が売れ、そして地球上では再生可能なエネルギーは260GWhが作られている」と述べ、20分という短い時間であってもカーボンニュートラルに向けての取り組みが世界的に進展しているとアピールした。
シャイダー氏は「ZFは2040年までにCO2排出を実質ゼロにするロードマップを用意しており、パリ協定を10年も前倒しにする計画だ。そのために、2030年には2019年と比較して社内のCO2排出を80%削減する。さらに弊社の取引先などを含むサプライチェーン全体でも40%削減を実現していきたい」と意欲的なCO2削減のロードマップを掲げ、世界的なカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みにZFも積極的に関わっていくという姿勢を強調した。
シャイダー氏は「従来型のエンジンと電動パワーユニットのクロスオーバーは2030年に実現する。その後もその傾向は続いていくだろう」と述べ、今後もBEV(バッテリー電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)など電動化車両の市場シェアは増え続ける傾向で、それに対応した製品を部品メーカーとしても自動車メーカーに提供していくことが重要だと指摘した。
そうしたZFの電動化車両向けのソリューションとして、シャイダー氏は「モジュラーeDriveキット」を発表した。モジュラーeDriveキットはモーター、トランスミッション、インバーターなどの電動化車両向けのパワートレーンや回生ブレーキなどのハードウェアに、システムを制御するソフトウェアをセットにして自動車メーカーに提供されるプラットフォーム。100kW未満の「低」、最大200kWの「中」、さらに2022年に量産に入る200kW以上の「高」という3つの電動ドライブが用意される計画で、低や中に関してはまもなく量産が開始される。
また、4WD向けのソリューションとしてZF eConnectが用意されており、必要が無い場合には必要なら数ミリ秒以内に接続できるクラッチにより2番目の車軸を切り離しておき、エネルギーを節約する仕組みが導入されている。これにより機械的な効力損失が最大90%削減され、他社のシステムなどと比較して効率が2%改善しているという。
また、効率の実現にはEVnextという仕組みが導入されている。EVnextでは、インテリジェントな予測クルーズコントロール(ACCnext)とパワートレーンと回生ブレーキが協調して動作することで、エネルギーを最大13%削減することが可能になる。
シャイダー氏は「モジュラーeDriveキットにより、自動車メーカーは電動化車両の開発期間を最大50%削減することができる」と述べ、これから電動化車両をゼロから設計する場合でも、その開発期間を半分にすることが可能になり、製品投入までの期間や開発コストの削減が可能になるとアピールした。
1000TOPsの性能を実現しているZF ProAI supercomputerを欧州でも正式公開
また、シャイダー氏は4月に開催された上海モーターショーで発表されたL2~L5までの自動運転をサポートするコンピュータモジュール「ZF ProAI supercomputer」を欧州で初公開した。
ZF ProAI supercomputerはレベル2~レベル5までの自動運転に対応する安全運転機能を実現するコンピュータモジュールで、NVIDIAの発表によれば、心臓部にはNVIDIAが提供する「DRIVE Orin」が採用されている。
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https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1252739.htmlシャイダー氏によれば、ZF ProAI supercomputerは24×14×5cmのモジュールサイズになっており、1000TOPsの性能を備えている。高いAI処理能力を備えており、カメラ、レーダー、LiDAR、音声などのセンサーからのデータを処理しながら常に車両の360度方向の状況を把握しながら自動運転を行なうことが可能になる。それらのソフトウェアの開発はZFから提供される開発キットが利用できるほか、サードパーティのソフトウェアを使用することも可能だという。
シャイダー氏によれば「従来製品に比べて性能は66%向上しているのに、消費電力は70%削減されている。20TOPSから1000TOPSに対応可能で、1Wあたり3TOPsという高い電力効率を実現する」と述べ、レベル2~レベル5などの自動運転車両を設計するのに有望な選択肢になるとアピールした。シャイダー氏によればすでに乗用車、商用車の両方で受注を獲得しており、2024年から量産が開始されるとのことだ。
そして、こうした自動運転技術を利用した事例として、レベル4/5の自動運転を利用したシャトルバスの例を紹介し、「すでに技術的な成熟度が上がっており、都市部の交通に大きな革新をもたらす可能性がある。詳しくは10月に開催されるITS World Congressで発表する」と述べた。