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ZF、ADASの開発スピードを加速させる新技術「ADAS.ai」

2021年6月30日 発表

AIを使用したバーチャルへの変換

設計と検証にかかる時間とコストを最大20%削減することが可能

 ZFグループは6月30日、ADAS(先進運転支援システム)のバーチャル設計およびデジタル検証向けに、データとAIに基づくスケーラブルな新サービス「ADAS.ai」を発表した。

 ADAS.aiは2つの画期的な技術に基づいているといい、1つ目は超高解像度マルチセンサーと同期し、レベル2+のADASをグローバルに検証するために必要とされるすべてのシナリオで走行して収集されたデータセット、2つ目はこの超高解像度のデータセットを別車両のアプリケーションセンサーでも「実際に見たような」データへと変換するAIテクノロジー。これはイスラエルのレホヴォトにあるコグナタが独自に開発したもの。

 これにより自動車メーカーの乗用車/商用車向けADASの開発スピードを加速させるだけでなく、ZF以外のティア1サプライヤーが開発したADASでも使用可能になるという。

リアルからリアルへの変換

 クラウドベースのADAS.aiでは、物理的なテストドライブと既存のシミュレーション技術に基づく従来型の設計や検証と比較して、コスト面と品質面に大きなメリットがあるといい、実路走行から得たデータに基づくレベル2+のシナリオは「バーチャル」または「フルセンサー」のいずれかのモードで作られ、設計および検証段階の複数のポイントで活用されることで、設計および検証プロセスを劇的に加速させ効率を向上させるという。ZFによるADASのバーチャル設計およびデジタル検証向けサービスADAS.aiは、それにかかる時間とコストを最大20%削減することができるとしている。

 ZFでエレクトロニクスおよびADAS事業部を担当しているエグゼクティブバイスプレジデントのクリストフ・マーナット氏は「私たちはお客さまや規制機関が何を求めているかを理解しているので、エンドtoエンドのアプローチで実路走行のデータを使用します。このアプローチにおいて自動車メーカーは、信頼性の高い設計や検証のための多くのテストドライバーも何百万ドルの投資も必要ありません。私たちは実路走行データを使用し、現実世界と仮想世界の様相を統合しています。また、自動車メーカーは最初のプロトタイプが作られる前にデジタル上で完全に検証されることを求めており、ZFはこれを実現することができます。そして、ZFはすべてのティア1サプライヤーでADAS分野の完全なバーチャル設計を可能にすることを構想しています」とコメントしている。

 ZFのADAS.aiには、自動運転およびADAS向けAIアプリケーションのリーダーであるコグナタ独自のアルゴリズムが組み込まれていて、コグナタのCEOであるDanny Atsmon氏は「当社のAIによりZFのADAS.aiで、実路走行データをレベル2+までのADAS技術を搭載したすべての車両に転送し、仮想空間で検証を行なうことが可能になります。私たちは、これをリアルからリアルへの変換と呼んでいます」と説明している。

 世界最大のフロントカメラメーカーであるZFは、ADASのハードウェアおよびソフトウェア技術、自動車メーカー独自の検証、および国際基準に準拠する必要なドキュメント作成に豊富な経験があり、この経験と能力を完全なバックエンド機能と高度なAIと組み合わせることで、ADASシステムの市場投入方法を変える効率的で高速なプロセスが実現するとしている。

 また、マーナット氏は「私たちが優先するのは、現在と将来のADAS技術の安全性と信頼性です。私たちの設計および検証サービスはこれを反映し、シミュレーションではなく、世界中で数十万マイルを走行した現実世界の運転データをベースにしています。ZFは、ADASを実際の車両に搭載するために何が必要かを理解しているのです」とも述べている。