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独ZF、4次元で車両の周囲を認識できる「フルレンジ・レーダー」を中国の上海汽車集団に2022年から供給

2021年4月13日(現地時間)発表

ZF製フルレンジ・レーダーは、一般的な自動車レーダーの16倍の解像度を提供。ZFのカメラやLiDARと組み合わせることで、とても正確な環境認識が可能

高度な自動運転機能に欠かせない技術

 ドイツの自動車部品製造大手のZFは4月13日(現地時間)、中国の自動車メーカーである上海汽車集団(SAIC)とフルレンジ・レーダー技術に関する生産契約を結んだと発表した。供給開始は2022年の予定。

 ZF製のフルレンジ・レーダーは「距離」「速度」「水平角」「仰角」の4次元で車両の周囲を認識し、カメラやLiDARなどの光学センサーと同様の機能を実現。仰角が追加されていることで、より高いレベルの交通状況の3Dイメージが生成できるほか、速度情報もより詳細になため、高解像度での環境センシングを可能としている。

 このデータは、例えば高速道路上の橋梁下の場合でも、渋滞車両の終わりを早期に検出し、ブレーキをかけるなどを可能にしたり、道路の端を検出して、追越し可否の判断にも役立つという。これらの技術を組み合わせることで、高解像度レーダーは、部分自動運転からレベル4を含む高度な自動運転機能に必要な安全性と信頼性の提供が可能になるという。

 フルレンジ・レーダーの高い情報密度により、とても詳細な物体認識が可能となり、例えば一般的な自動車用レーダーの場合、歩行者からのデータポイントが1つか2つなのに対し、約10のデータポイントを受信し、各測定ポイントで測定対象の速度を記録するため、より正確な情報が得られるようになる。また、個人の手足の動きを認知できるため、歩行者が歩いている方向を認識するといった使い方も考えられるという。

 またフルレンジ・レーダーは、通常12チャネル(3つの送信機、4つの受信機)しかない中距離用レーダーに比べ、より高解像度での認識が可能。特にZF製フルレンジ・レーダーは、4つのモノリシック・マイクロ波集積回路(MMIC)チップを組み合わせることで、チャンネル数が16倍に増え、合計192チャネルも使えるという。

ZFのエグゼクティブ バイスプレジデント クリストフ・マーナット氏

 ZFでエレクトロニクスおよびADAS事業部を担当するエグゼクティブ バイスプレジデントのクリストフ・マーナット氏は「ZFのフルレンジ・レーダーは、センシング技術が大きく前進したことを示しています。フルレンジ・レーダーは、物体やシーンの高解像度での認識と長距離の検出が可能です。これは、競争力のある価格で、自動運転レベル3/4向けの高い認識要件を満たすためのカギとなるものです。また、高度な運転支援やレベル2 +のアプリケーションの性能を大幅に向上させることもできます」と述べている。