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三菱ふそう、BEVトラック「eCanter」に見て、触れて、学べる施設「カスタマーエクスペリエンスセンター」と従業員向けトレーニング施設「eLab」公開
2021年12月1日 06:00
- 2021年11月30日 開催
三菱ふそうトラック・バスは11月30日、同社本社内に設定した顧客向けにeモビリティとエコシステムのソリューションを体感してもらう施設「カスタマーエクスペリエンスセンター」と、電動車両の従業員向けトレーニング施設「eLab」を報道陣に公開した。
eCanterに見て、触れて、導入から運用まで統合的に説明を受けられる
「カスタマーエクスペリエンスセンター」は電気小型トラック「eCanter」を実際の顧客に見て触れてもらい、説明をするための施設。eCanterそのものだけでなく、導入に至る各分野の担当者からの説明が受けられる。
対象は販売店の顧客などで、川崎市にある本社まで来てもらえる人を幅広く受け入れる予定。「カスタマーエクスペリエンスセンター」の説明だけなら1時間から1時間半程度だが、同敷地内にある川崎工場の見学など、来場者の希望などに合わせたスケジュールとし、合わせて半日程度の日程になるという。
顧客に対して実車を確認してもらう場所は栃木県の喜連川研究所で行なっていたが、eCanterの場合はクルマだけでなく統合的なソリューションの提供ということもあり、川崎の本社に設定したという。
電動化にはエンドツーエンドのソリューションの提供が重要
同社のチーフ・トランスフォーメーション・オフィサーであるアレキサンダー・ルージング氏は三菱ふそうの電動化について、2030年までにすべてのトラック及びバスの新型車両を電動化させると説明。2017年に電気小型トラック「eCanter」を発売したことから、「三菱ふそうがカーボンニュートラルではリーダー的立場にある」とし、学んできた知見を活かすという。
電動化についてはエンド to エンドのソリューションの提供が重要とし、カスタマーエクスペリエンスセンターではeCanterを体験してもらうことが柱となるが、金融サービスやリースも重要、規制や補助金といった点もサポートする必要があるとし、顧客の地域で利用できる補助金などを活用してもらうとした。
また、クルマの「充電」のソリューションも提供、使用方法に合わせて普通充電か急速充電のどちらがふさわしいかも一緒に考えていく。さらに、eモビリティのデジタルプラットフォームも提供、配送車であれば動的なルート検索のシステムも提供、パッケージとしても提供する。
ふそうのeモビリティ事業を担当する国内商品計画部部長の岩崎孝倫氏は、100年に1度の自動車の変革期では、「ディーゼルがEVに変わることや、さまざまなトランスフォーメーションが起こる」と指摘、アレキサンダー・ルージング氏ど同様に、トラックの電動化だけでなく、それに伴うエコシステムの構築が必要と唱える。
具体的には、これまでの三菱ふそうのビジネスは、およそ車両と架装物の提供というものだったが、これからは融資やリース、充電インフラの提案とコンサルティング、テレマティックス、デジタルプラットフォームにまで及ぶ統合ソリューションの提供になるとした。
さらに、eCanterの提供により電気トラックユーザーの生の声を聞いていることを強調、「音がなくて、振動がなくて、スムーズになる。1日トラックを使って帰ってくると、疲れ方が違う」「一度eCANTRERを運転するとディーゼルのクルマに乗りたくない」「深夜のデリバリーではお客から騒音でクレームを受けることもあるが、EVでは苦情の心配がまったくない」といった声を紹介した。
金融面ではダイムラー・トラック・ファイナンシャル・サービス・アジア デジタルトランスフォーメーション・カスタマージャーニー管理マネジャーのバラット・プラカシュ氏が説明。リースやローンを組みやすくするため、新車からのフィナンシャルサービスや保険を包括的に提供しているとした。そのなかでも新しいサービスとして走行距離に応じてリース料を払う「マイレージリース」を紹介した。
マイレージリースには固定料金部分はあるが、走行距離に応じた変動料金となることで、新型コロナウイルスの影響など、事業環境について先行き不安のある現在では、業務量が減りトラックを使わなければ支払いが少なくすることができるとするほか、季節によってトラックの稼働距離が変化するような場合にも有効と説明した。マイレージリースはテレマティックスサービスの「トラックコネクト」の仕組みを活用することで可能になったという。
テレマティックスなどのコネクティビティソリューションの説明は、コネクティビティ部のレナース・リークスト氏が担当。リモートで車両を診断し、サービス時間の向上やメンテナンスコストの削減を実現するほか、運転データを集め、データを活用しながらドライバーがより注意深く運転すると、CO2削減ができたという事例も紹介した。
アメリカのWise Systemsと提携して提供している配送ルートの自動作成システムも紹介。配送先を設定すると自動的にルートを設定するともに、必要に応じて先に届ける必要のある配送先がある場合、配送順を変更すると別の配送先の遅延見込みも計算して比較、配送順を変更する判断材料を示してくれるなどの機能のほか、ドライバーが急に欠勤した場合の配送ルートも自動で計算してくれるなど、配送ルート最適化技術を紹介した。
従業員向けに電動車を学べるトレーニング施設「eLab」
続いて、従業員向けのトレーニング施設「FUSO アカデミー」のなかに設置した「eLab」も公開した。これは、主にふそうの社員に向けて電動車について学ぶ施設。川崎本社に設置した「eLab」はカスタマーエクスペリエンスセンターの上階のFUSOアカデミーにあり、「eLab」で理論を学んだあとに実物の「eCanter」を確認するなども可能となる。
FUSO アカデミー部 国内テクニカル・トレーニング マネジャーの野本里恵氏によれば、FUSOアカデミーは2009年に標準化したトレーニングを提供するチームとして発足。社員のほかユーザーやビジネスパートナーなどの研修も実施している。
トレーニングセンターは国内に川崎を含めて5が所、海外にも5が所あり、川崎の施設はフラグシップロケーションになるという。実際に集まって研修するほか、オンラインの研修も実施しているという。eCanterの発売に合わせて、ここ数年、社員のスキルを上げることに注力してきたという。
FUSO アカデミー部 国内テクニカル・トレーニング マネジャーでテクニカルトレーナーであるエリック・ワイザー氏は研修内容について説明。全く電気のことが分からない人から、すでに専門技術を習得していて新たに電気トラックを手掛ける人向けまで、さまざまなレベルに対応可能だという。
内容は基本的な知識からスタート。ACとDCの違い、回路の仕組み、電気モーターの仕組みや、車両に使われている技術、CANBUS、ディーセルエンジンのターボの可変バルブの仕組み、ECUのシミュレーションなどができる。EVにフォーカスしたところでは、DC-DC昇圧装置、EVのモーターについてや電圧の測定なども学んでいく。
また、高圧電気の安全のトレーニングを組織全体に進めていくとし、研究開発や生産の人たちだけでなく、そのほかの役割の人にも広げていくつもりだという。
研修はeモビリティを広めているなかで、2022年夏ごろまでに70か所の販売拠点の少なくとも各拠点1人は研修を受けてもらい、残る120以上の支店については2022年末までに受けてもらう。さらに、海外の営業スタッフには川崎から発信してバーチャルの講座を受けてもらっているという。
今後は、年内に国内5か所のトレーニングセンターにeCanterの充電器を設置完了させるほか、喜連川トレーニングセンターにも第2のeLabを完成させて、2022年初めから稼働させるという。